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[CEDEC 2010] 「FINAL FANTASY XIV」の2万4000ものモーションは,どのように作られたのか。そのワークフローに迫る
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印刷2010/09/04 18:03

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[CEDEC 2010] 「FINAL FANTASY XIV」の2万4000ものモーションは,どのように作られたのか。そのワークフローに迫る

画像集#001のサムネイル/[CEDEC 2010] 「FINAL FANTASY XIV」の2万4000ものモーションは,どのように作られたのか。そのワークフローに迫る
鈴木健夫氏
 CEDEC 2010の最終日に,「FINAL FANTASY XIV のアニメーションワークフロー 〜単純作業からの解放! よりクリエイティブな世界へ!〜」と題された講演が行われた。登壇したのは,スクウェア・エニックスの開発部で「FINAL FANTASY XIV」PC / PS3 以下,FFXIV)のテクニカルアニメーションディレクターを務める鈴木健夫氏と,リードアニメーターの市田真也氏の2名だ。鈴木氏と市田氏はモーション班と呼ばれるグループを率いて,キャラクターのアニメーションを作り上げた。

 ファイナルファンタジーシリーズといえば,グラフィックスへのこだわりが伝統となっており,回を重ねるごとにその凄さをまざまざと見せ付けてきている。当然,FFXIVにも同様の期待がかけられるわけで,戦闘,採集,合成などのアニメーションも高いレベルが求められたため,膨大な量の作業が必要となった。それは従来の作業方法では期限内にこなしきれない量に達していたため,新たな作業方法を見出すことが必要となったという。本稿では,講演で語られた,開発チームが新たな作業方法を見出す過程と,最終的に導き出した新たな作業方法について,お伝えしよう。

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モーション班に与えられたノルマは2万4000


画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2010] 「FINAL FANTASY XIV」の2万4000ものモーションは,どのように作られたのか。そのワークフローに迫る
 鈴木氏は最初に,モーション班の開発環境を紹介した。メインで用いたのは「Softimage XSI 5.11」で,テストには同社のグラフィックスエンジンCrystal Toolsを採用。同ツールはPlayStation 3用ソフト「ファイナルファンタジーXIII」の開発にも用いられていたが,今回はMMORPGであるFFXIVに最適化されたものが用いられた。

 FFXIVのアニメーションを開発するにあたり,モーション班は大きく二つの目標を提示。一つは,MMORPGジャンルの最前線で今後5年,10年と戦っていけるだけの“質”を求めること。そしてもう一つの“量”が,本セッションにおけるメインテーマだ。

 FFXIVでは現時点で18種類の職業があり,戦闘や採集,合成などといった幅広いジャンルでの動きが必要となる。しかも同じ操作を行った場合でも,五つの種族+各部族を合わせた,9タイプのモーションがある。さらに,どの種族(部族)で動かした場合でも,装備品や所持品の干渉などが破綻しないように,モーションを作らねばならない。

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 FFXIVの開発では,さまざまな制限もあった。同社のゲームではイベントシーン用にハイポリゴンモデルを別途用意することが多く行われていたというが,FFXIVではパターン数も多く,メモリ&記憶容量が膨れ上がるので採用されていない。
 また,昨今のゲームでは,キャラクターのモーションに物理演算(布や揺れモノなど)やIK(インバースキネマティクス:ここでは足が地面に自動で接地してくれる機能を指す)などを使って,ある程度動きを自動化する方向を選ぶものも多くなっているのだが,高精細モデルを使ったMMORPGであるFFXIVでは,処理負荷の関係でそういったリアルタイム処理は採用されていない。つまり,パターンアニメーションですべて対応することになり,これもモーション班の負担になったと鈴木氏は語る。

 こういったいきさつがあり,FFXIVのリリースまでに作らねばならないモーション数は,約2万4000パターンというとてつもない数へと膨れ上がった。

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ワークフローを一部自動化することで作業効率が5倍に!


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市田真也氏
 続いて市田氏によってアニメーションを作る際のワークフローが解説された。
 最初に紹介されたのは,従来のワークフロー。リストの作成に始まりアニメーションの作成,装備品の干渉チェックなどを経たあとに,実機での確認を行い,問題がなければ完了となる。ここまでで計11の工程があり,“手作業”で行った場合,一人のスタッフが1日に作れるモーション数は,一つが限界。このペースでは,2万4000というノルマをこなすには,膨大な人と時間が必要になってしまう。

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 そこで市田氏らはワークフローを見直し,できるかぎり自動化を目指した。
 細かい部分は省略するが,自動化されたのは,端的にいって退屈でつまらない作業部分であり,モーションキャプチャのデータを流し込めば,それぞれのキャラクターで暫定モーションの付いた段階から作業ができるようになったという。
 その結果,5項目の自動化に成功。旧ワークフローと比較すると,5倍のペースで作成できるようになり,一つの感情表現×5種族のモーションを,1人が1日で作成可能になったという。

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自動化におけるメリット・デメリット


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 続いて,自動化に伴うメリットとデメリットが具体的に説明された。
 メリットとしては,モーションの作業効率アップはもちろん,ヒューマンエラーの減少,さらには作業コストの管理がしやすくなった点が挙げられた。
 だが,1番のメリットは,モーション作成作業と並行して,仮実装が行えるようになったことだ。これによりプランナーからの追加オーダーにも柔軟に対応できるようになった。一部の作業を自動化したことによって,離れたセクション間のスタッフ同士の連携が取りやすい環境の構築にも役立ったというわけだ。

 一方デメリットは,一人のスタッフが担当する範囲が狭くなってしまうため,全体の工程が把握しにくくなったこと。アニメーションの本質は“無から有を作り出す”ことで,自動化によって損なわれるこの部分のスキルアップを,いかに補うかが大きな課題なのだという。

 この問題に対し同社は,プロジェクト参加の際に1〜3か月の研修期間を設けている。そこえ,極力短時間でアニメーションを作成するといった訓練が行われ,全体の工程を把握しながら作業することを重視しているのだそうだ。

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社内の制作環境について。テクニカルアーティストが鍵


 ここで話は大きく変わり,FFXIVのモーション作成に関わるスタッフの社内体制が,鈴木氏によって紹介された。モーション作成に携わるスタッフは,以下の3グループに分けられる。

・技術開発部内のTA(テクニカルアーティスト)チーム:
FFXIVに限らず,汎用的に使えるツール/プラグインを提供

・FFXIVプロジェクト内のプログラムセクション:
実機側のツール作成

・モーションセクション内のツール班:
TAチームではカバーしきれないFFXIV固有の作業に関して効率化を追求

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 ここでポイントとなるのは最後の“ツール班”で,モーションセクションの中にこのグループを作ることの重要性を鈴木氏は強調していた。というのも,FFXIVの日々のモーション作業の効率化には,技術開発部のTA(テクニカルアーティスト)チームでは対処しにくく,かといって(FFXIVプロジェクト内 の)プログラムセクションは実機作業に集中してもらいたい。
 このような問題に対して臨機応変に対応していくには,モーションセクションの身近に,“痒いところに手が届く”ツールを作成できるスタッフが必要になるというわけだ。キャラクターの仕様にちょっと変更が入ったとして,それまであった多くのモーションデータに変更を反映する必要が出てきたとしよう。これを3Dツールでいちいち作業していると日が暮れてしまう程度では済まないことは容易に想像できるだろう。そこにツール開発者がいれば,全データに対して一括処理を行うこともできる。

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画像集#034のサムネイル/[CEDEC 2010] 「FINAL FANTASY XIV」の2万4000ものモーションは,どのように作られたのか。そのワークフローに迫る
 ツール班を導入したことで,先のワークフローの自動化と同様に,数多くのメリットがあったと鈴木氏は語る。退屈な繰り返し作業が減ることでケアレスミスが減り,各スタッフのスキル差が均一化され,新たなスタッフが加わった場合も適応しやすいという。

 そのほか,仕様変更に柔軟に対応できるようになったのも大きなメリットだ。本来は納品後の仕様変更は避けたいところだが,FFXIVはオンラインゲームであるため,頻繁にアップデートが行われていく。そういった中,どうしても仕様変更が必要になることがある。そういった追加オーダーに対しても,ある程度は対応できるようになったそうだ。

 自動化を行うには,ファイルの命名規則などのルールを徹底したり,さまざまな情報をデータベース化するなど,最初にチーム全体の協力を必要とする。一見,面倒に思えるかもしれないが,一度きっちりとしたフォーマットを決めてしまえば,作業効率のアップに大きく貢献すると鈴木氏は語る。FFXIVでは,ファイル名を見るだけで,どのようなモーションデータか分かるような工夫がされ,かつ,管理が徹底されている。
 とくにTAに関しては,ツールなどを使って効率を上げるには運用ルールの徹底が重要なので,ある程度の権限を付与することも含めて,積極的に導入を検討してみてほしい,と本セッションを締めくくった。

 全体的にゲーム内部の細かな話が多く,門外漢の筆者にとってはなかなかに難解な講演であった。とはいえ,普段遊んでいるゲームが,こういった努力のうえに成り立っていることを知るというのは,意義のあることだと実感できた講演でもあった。

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「FINAL FANTASY XIV」公式サイト


  • 関連タイトル:

    FINAL FANTASY XIV(旧)

  • 関連タイトル:

    ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア

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