インタビュー
[TGS 2010]“ω-Force”から世界のアクションゲームファンへ。最新作「TROY無双」と「TRINITY Zill O’ll Zero」について,コーエーテクモ 鈴木プロデューサーに聞いてみた
TGS期間中,コーエーテクモゲームスのω-Forceチーム 鈴木亮浩プロデューサーにお話を聞く時間をいただいたので,両作についてのインタビューをお届けしよう。ω-Forceチームといえば,「真・三國無双」シリーズで知られる開発チームだが,今回の2作はどちらも従来の無双とは,少し毛色が違うタイトルとなっている。両作の狙いとは,なんなのだろうか。
「TROY無双」公式サイト
「TRINITY Zill O’ll Zero」公式サイト
無双シリーズに革新をもたらす「TROY無双」
まず「TROY無双」についてお聞きしていきたいと思います。同作については,E3でもお話をうかがいましたが,現在の制作状況はいかがでしょうか。
鈴木亮浩氏(以下,鈴木氏):
E3でお見せしたときは,主にアクションのキモの部分をFixさせている段階でした。以降は製品版に向け,ステージなどのデータを,どんどん揃えていっている状況です。
それとビジュアル面に関しては,現在E3からもう一段階上の表現を目指して,ディテールアップを図っています。TGS 2010のバージョンではちょっと気づきにくいですが,製品版ではもう少し,はっきりした形で見えてくると思います。
4Gamer:
“欧米向けの無双シリーズ”をコンセプトに生まれた本作ですが,日本のプレイヤーの反応はいかがでしたか?
鈴木氏:
おかげさまで上々ですね。「TROY無双」が欧米向けというのは,確かにそのとおりなんですが,「かつての無双ファンに戻ってきてもらいたい」というのも,コンセプトの一つです。「無双」シリーズは今年でちょうど10周年になるんですが,最初の1〜2作だけプレイして,今はもうやってないという方が結構いるんですね。大人向けの世界観で,ハードなアクションが楽しめる本作は,そういう方にピッタリだと思います。
4Gamer:
トロイという題材は,日本ではあまりメジャーではないと思うんですが,海外ではポピュラーな題材なんでしょうか。
鈴木氏:
そうですね。日本でいえば「関ヶ原の戦い」などのように,誰でも知っているレベルです。詳しい内容までは分からなくても,トロイ戦争とトロイの木馬は皆が知ってる。実は題材を選ぶ段階では,前回もお話したゾンビものや,アーサー王の円卓の騎士なんて案もあったんですが……。
4Gamer:
日本人的にはどちらかというと,そちらの方がウケが良さそうな気がしますが。
鈴木氏:
たしかに良さそうに思えますよね。でも欧州と北米の両方で受け入れられる題材というと,やはりトロイのほうなんです。トロイというのは教科書にも載るような題材なので,むしろ本作を元に,学校向けの何かを作ろうって話が出るくらいです。
4Gamer:
ということは,ストーリーも原本にかなり沿った形になんでしょうか。
鈴木氏:
えぇ,ギリシャ神話の中にトロイ戦争を描いた「イリアス」という叙事詩があるんですが,それを忠実に再現した形になっています。
「無双」シリーズの海外評価とアクション性
ところで「無双」シリーズというのは,海外ではどのような評価なのでしょうか。日本と同じく,最初だけプレイしたという人も多いのですか?
鈴木氏:
海外にもその傾向はあるんですが,日本よりももっと,それが顕著ですね。本当に最初の1本だけやって,それきりという方が多いです。根強いファンの方ももちろんいるのですが,メディアで「アクション性の部分に変化がない」と書かれると,もう買ってくれない。海外メディアからは,同じものを出しすぎだと思われているみたいで。
4Gamer:
ということは,TROY無双は,これまでの無双とは違うと。
鈴木氏:
アクション面が大幅に強化されています。無双はもともと「簡単操作で奥深いアクション」がコンセプトでしたが,今回はその部分を少しハードに設計してあります。
4Gamer:
具体的には?
鈴木氏:
例えば,これまでボタン連打で出ていた連続攻撃が,TROYではタイミング良くボタンを押すことで威力が上がるようになっています。攻撃のモーション自体は一緒ですが,成功するとスローモーションになるなど,演出やエフェクトが変わります。
4Gamer:
ああ,なるほど。そういえば,今回はジャンプもないんでしたね。
鈴木氏:
ジャンプボタンの代わりに,盾による崩し攻撃が入ってます。それで相手を崩してから攻撃という流れも作れますし,弱と強のコンボの中に,崩しを組み込むことも可能です。ボタンが一つ増えたことで,攻撃のパターンが複雑になっています。
4Gamer:
試遊させてもらった感じだと,ガードもうまいタイミングでやると,敵の攻撃をはじき飛ばしたりするようですね。
鈴木氏:
それもあります。すごくタイミング良くやるとカウンター攻撃まで入ります。そういう要素を入れて,プレイヤーのスキルが上がると,よりアクションを楽しめるという方向で作ってます。そこが,まず一番違うところですね。
4Gamer:
そういえば試遊の最後に出てきたボスも,かなり手強かったですね。雑魚の敵も,しっかりこっちの攻撃をガードしてきますし。
鈴木氏:
敵の見た目と行動は,一致するようになっていますね。盾を持っている敵はガードしてくるので,考えて攻撃してくださいと。ボスのクイックタイムイベントも,これまでの無双にはない要素です。うーん,でも開発している本人達は,難しいとは思っていないんじゃないかな(笑)。そういう意味では,本当にアクション寄りな作りになっています。
ω-Forceチームが挑むアクションRPG「TRINITY Zill O’ll Zero」
では「TRINITY Zill O’ll Zero」について,うかがっていきます。前作「Zill O'll」はRPGでしたが,今回はアクションRPGになっているんですね。
鈴木氏:
実はこれは流れが逆なんですよ。「ω-ForeceでRPGを作りたい」という話が先にあって,そこにどんな世界観を持ってくるかで選んだのが,「Zill O'll」なんです。ωーForceでRPGを作るとなれば,やはりアクションRPGになりますし,もちろんZill O'llのブランドを広げていきたいという意識もありますが,本作について言えば,そういう流れになります。
4Gamer:
前作のZill O'llというと,やっぱり“フリーシナリオシステム”が一番の特徴だったと思うのですが,そのシステムではなく,世界観から選んだというのは,面白いですね。
鈴木氏:
フリーシナリオシステムって,プレイヤーが自分のペースで進めていくには適しているんですが,逆にアクションRPGというテンポの早いゲームには,あまり向いていないんですよ。アクションRPGとして楽しんでもらうには,一本筋の通ったストーリーがあって,それを追いかけるほうが良いだろう,ということで,今回フリーシナリオシステムは採用していません。
4Gamer:
あれ,でも会場で流れていたムービーには,フリーシナリオについての説明もあったようですが。
鈴木氏:
あれはあくまでフリーシナリオ「進行」であって,前作のフリーシナリオシステムとは違うものです。メインストーリーのほかにサブシナリオがたくさんあって,それを寄り道しながら進めるという。寄り道しても,結局はメインストーリーに戻ってくることになります。
4Gamer:
寄り道すると,何がいいことがあるんですか?
鈴木氏:
例えば前作に登場したキャラクターのエピソードがあったり,もちろん主人公の3人に関わるサブストーリーもあったりで,報酬ももらえます。必ずしもプレイしなければならないわけではありませんが,レベルやお金を稼ぐには丁度いいはずです。
4Gamer:
なるほど。お金を貯めて,武器やアイテム,スキルを買って,キャラクターを強化していくと。
鈴木氏:
装備してるだけで効果のあるスキルもあるし,武器の種類,回復系のアイテムもあります。普通のRPGのように各種パラメータなんかもあって,そのあたりはしっかりRPGしてますね。
4Gamer:
TGS 2010の試遊ではアクションの部分しか分からなかったので,そのことを聞けてちょっと安心しました(笑)。
RPGのパーティプレイをアクションで再現
4Gamer:
グラフィックスについてなんですが,キャラクターデザインの末弥純さんのイラストを,よく再現してるなぁと感心しました。モデリングなどは相当苦労したのではないですか。
鈴木氏:
前作の世界観を再現するなかで,末弥純さんのイラストは欠かせないので,これは最初から目標の一つではありました。ただ末弥純さんの絵画調の表現と,3Dグラフィックスを共存させるのが難しくて,苦労はしましたね。我々にとっても初めての挑戦で,「無茶だからやめたほうがいい」とも言われたんですが,強行してよかったと思います。
4Gamer:
あの三人のキャラクターは,どういった経緯で生まれたのでしょうか。RPGの主人公キャラクターとしては,ちょっと珍しい組み合わせのような気がしますが。
RPGって役割分担として,壁役と回復系に魔法使いといったオーソドックスな組み合わせがあるじゃないですか。それをベースにアクションに落とし込んだときどうなるか,というがキャラクターの基本になっています。そこにストーリー上の性格を肉付けしていった形ですね。
4Gamer:
パーティプレイの基本ですね。あれ,でも回復役っていましたっけ。
鈴木氏:
あくまでベースなので,実際のゲームに回復役はいませんね。戦闘が終わると体力は自動的に回復するようになってます。例えばセレーネはサポート役で,敵の足止めとか,二段ジャンプを駆使して,空中の敵とかの担当になります。
4Gamer:
その3人の主人公を切り替えながら遊ぶというスタイルというのは,最初からそういうコンセプトだったんですか?
鈴木氏:
それはアクションRPGでパーティアクションを再現するにあたり,自然に出てきた要素です。属性に合わせた攻撃や,地形を利用した攻撃なんかも,パーティアクションとして当初からのコンセプトになります。
4Gamer:
今回試遊できたバージョンでは,かなりいろいろな要素が次々と使用可能になっていって,覚えるのが大変そうに感じたんですが,あれはTGS用の特別バージョンだからでしょうか。
鈴木氏:
そうですね。スキルは一部のものだけですが,やれること自体は中盤以降のものが結構入ってますね。ただ本編では順を追って覚えていくことになるので,それほど大変ではないはずです。キャラクターも最初はアレウス一人で,次にダグザ,セレーネと順に増えていきますし,AIもかなり賢く作ってあるので,プレイヤーの行動に合わせて,残りの二人が勝手にいろいろやってくれます。
4Gamer:
プレイヤーが意識しなくても,それらしいプレイができるのですね。確かにそんな印象を受けました。では最後に,前作ファンやω-Forceファンに向けたメッセージをお願いします。
鈴木氏:
本作は前作のZill O'llをプレイしてない人でも問題なく楽しめる内容になっています。もちろんプレイしていれば,過去の登場人物のエピソードが入ってるので,より楽しめるはずです。アクションに関しても,初心者から上級者まで,やり込める内容を用意していますし,アクションが苦手でもAIが手厚くサポートするようにできています。触ってすぐに爽快なアクションを楽しめるので,アクションゲーム好きな人は,ぜひプレイしていただきたいなと思います。
4Gamer:
ちなみに今作をプレイした後で,「前作もやってみたい」となったときには,どうすればいいですか?
鈴木氏:
PSPで最新版が出ているので,こちらをぜひ。「Zill O'll 〜infinite plus〜」,お求めやすいコーエーザベストで。お値段もリーズナブル(笑)。
ちなみに私はPSP goしか持ってないんですが……。
鈴木氏:
あー。それはなんというか,珍しいですね(笑)。
4Gamer:
ダウンロード版もぜひお願いします(笑)。TROY無双のほうは,いかがでしょう。
鈴木氏:
TORY無双についてはもっと明確で,かつて無双をやったことがあるけど,今はご無沙汰という人には,ぜひ手にとってもらいたいですね。発売時期はまだ未定なので,もうしばらくお待たせすることになりますが,これまでの無双よりも,ずっとアクション寄りにチューニングしていますので,アクションゲームファンにオススメです。
4Gamer:
ということは,どっちもアクションゲームファン向け,ということで良いのでしょうか。
鈴木氏:
アプローチは若干違いますが,ω-Forceのゲームって,やっぱりアクションゲームが好きな人に向けて作っていますから。どっちもアクションゲームファン向けであっています。どちらかの世界観に興味を持っていただけたら,好みの方を選んでいただければ幸いですね。願わくば両方ですけど(笑)
4Gamer:
本日はありがとうございました。
折しも「真・三國無双6」の開発も発表され,アクションゲームファンからの注目が集まるω-Forceチーム。だが海外のプレイヤーはいうに及ばず,国内のファンにとっても,同シリーズに若干のマンネリを感じている人がいるというのは,確かなようだ。そのマンネリ感からの脱却を目指し,アプローチの方向は違えど,これまでと違うステージを目指す両作。あくまでアクションゲームの面白さを追求しようとする,ω-Forceチームの挑戦に期待しよう。
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