インタビュー
薄型ノートPC「ALIENWARE m15」はどんなゲーマー向け? 「Aurora R8」は手動OCがメーカーサポート対象!? 製品担当者にいろいろ聞いてきた
4Gamerでは,このイベントのために来日したAlienwareのEddy Goyanes
話の中で,ALIENWARE m15がいかに新しいコンセプトに基づく製品かというのと,知られざるALIENWARE Aurora R8の衝撃的なサポート体制が明らかになったのだが,本稿ではその内容をお届けしたいと思う。
なお,インタビュー中,Eddy Goyanes氏と筆者はいずれも製品名の「ALIENWARE」を省略していたので,記事中でもそのまま省略して表記する。
「ALIENWARE m15」国内初披露。ブランド初の薄型ノートPC,気になるその特徴を担当者が明らかに
2018年10月23日,Alienwareは東京・秋葉原で新製品発表会を開催し,10月30日発売予定のノートPC「ALI
ALIENWARE m15は「1台ですべてをまかなう」人向けのゲームノートPC
本日はよろしくお願いします。まず,発表会のスライドについてなのですが,ロードマップがありますよね。あれを見る限り,13は完全になくなって,「持ち運べるゲームPC」というカテゴリーをm15で置き換えていくと解釈できるのですが,その理解で正しいでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
まず,地域によって違いはありますけれども,13は在庫がなくなるまで販売を継続します。これはFrank(※)が公式に発言しているとおりです。
※米DellでALIENWAREおよびXPS部門を率いるFrank Azor(フランク・アゾール)氏(Vice President & General Manager Alienware, Gaming and XPS, Dell)のこと
4Gamer:
はい。つまりそこはブレないということですか。
そうですね。13は素晴らしいノートPCで,有機ELパネルを選択できますし,15や17と同じ,プレミアムなキーボードを採用しています。m15はIPSパネルですから,13のほうが電力効率は劣りますが,より美しい。キーボードも13のほうはキーの高さがあり,より高コストです。
GPUも,13は「GeForce GTX 1060 6GB」まで,m15は「GeForce GTX 1070 Max-Q Design」までですから,そこも異なります。
というわけでお答えすると,確かに立ち位置は近いですが,カテゴリーは13とm15で異なるということになります。
4Gamer:
今ポロッと話に出てきたので確認ですが,m15の液晶パネルは,1920
Eddy Goyanes氏:
ええ。それは私も驚きました。
メディア向けに用意していた資料も最初は誤ってご案内するものになっていて,直したくらいです(笑)。
4Gamer:
いやー,びっくりしました。
本題に戻りますが,13や15,17と同じ「プレミアムなキーボード」を採用できなかったのは筐体設計の都合……というか厚みの問題によるものですか。強度を確保するための鉄板を入れていない,という話はありそうだなと考えているのですが。
Eddy Goyanes氏:
いえ,鉄板はm15でも採用していますね。m15のキーボードは「プレミアムなキーボード」とは機械的に異なる製品ですので,むしろそこが読者の方々には重要なポイントになるかと思います。
4Gamer:
それは「15や17と違って,m15ではアイソレートタイプ」とか,そういう話ですか?
Eddy Goyanes氏:
いえ,もっと抜本的な話です。
15と17では「TactX」という,長く使っているブランド名をキーボードに与えているわけですが,キーストロークは2mmあって,Anti-Ghosting(アンチゴースト),そしてNキーロールオーバーに対応しています。それに対してm15では――ノートPCとしてはそれでもかなりいい数字だと思いますが――キーストロークは1.4mmとなり,Anti-Ghostingに対応する一方でNキーロールオーバーはサポートしません。
4Gamer:
ああ,ストロークだけではなくて,Nキーロールオーバー対応の有無もあると。それは大きな違いですね。
Eddy Goyanes氏:
なので,最も高い性能を求めていて,プレミアムなキーボードも必要な方には15か17が最適でしょう。でも,軽くて持ち運べるPCがよいということであればm15が素晴らしい選択肢になるということです。
4Gamer:
ただ,キーボードについて言うと,品質云々とは別のところでm15には若干の懸念があります。
ちょっと15の話をさせていただくと,15は性能もさることながら,[W/A/S/D]キーのホームポジションに手を置いたとき,自然と身体が15の画面に対して正対し,また,まったく無理なく右手でマウスを操作できます。個人的には,15こそが現在最も優れたゲーマー向けノートPCだと考えているくらいです。
Eddy Goyanes氏:
ありがとうございます(笑)。
4Gamer:
それだけに,m15は10キーがある分だけキーボードが左へズレてしまっているのがとても気になるわけです。「ALIENWAREのノートPC」として,このバランスを許容してよいのか,という。
Eddy Goyanes氏:
いま,15が最高のノートPCだとおっしゃっていただきましたが,正直なところ,15を使うようなゲーマーというのは,もう1台別のPCを持って(いて,それをいろいろなことに使って)いると思うんです。なので15は,ゲームに特化した設計を行えています。
4Gamer:
はい。
Eddy Goyanes氏:
ですが,m15を選ぶような方というのはおそらく,ゲームだけでなく,ゲーム以外のことでもm15を使っていくことになるはずです。
そこでm15ではゲーム以外で使うときの利便性を考えています。トラックパッドは[G]キーと[H]キーの間に中央が来て(文字入力時に)違和感がないようになっていますし,ゲーム以外の生活全般では10キーが便利です。10キーはゲーム以外の用途で頻繁に使われることになるでしょう。
4Gamer:
ああ,それでInspiron風なキーボードデザインになっているわけですか。
Eddy Goyanes氏:
というか,Dell GとALIENWAREのハイブリッド的な,中間的なものになっていますね。ですので繰り返しになりますが,m15はゲーマーの中でも「生活のあらゆる場面で1台のノートPCを使っていきます」という方向けです。それと比べると,13,15,17のほうがよりゲーム特化型になっています。
4Gamer:
そういう方向性なんですね。ようやくm15の立ち位置が見えてきました。
Eddy Goyanes氏:
はい。m15は純然たるゲーム用というのではなく,「ゲームも積極的にプレイする学生」とか,「ゲームをちょっとプレイしてみたい,高性能ノートPCの欲しい人」の間で支持していただけると考えています。そういう意味では歴代ALIENWAREノートPCの中でも,対象となるカスタマー層が最も幅広いと言えるでしょう。
4Gamer:
そうやってターゲット層を下の方向へ広げていくと,Dell G7やDell G5あたりと競合しませんか?
Eddy Goyanes氏:
そうかもしれません。ただ,デザインの部分の違いがあるので(そこまで競合はしないと思います)。
m15のほうがDell Gよりも薄く,軽いわけです。それだけでも十分に差別化できるでしょう。キーボード部のLEDイルミネーションが「RGB」対応というのもDell Gにはない要素です。目立ちたい,ほかの人とは違うものがいい,ALIENWAREを持つことに意味があるといった,デザインやブランドを重視する方の選択肢になると考えています。
Dell Gシリーズのユーザーの中には,「自分自身,ゲーマーとまでは言えない」という方が多くいます。ゲームはプレイするけれども,「ゲーマーです」と自分からは言わないような方々ですね。(そこもm15との違いになるでしょう)。
4Gamer:
m15の方向性はよく分かりました。Dell GとALIENWARE上位モデルのハイブリッド的なキーボードというのも,言われてみれば納得です。
ただ,そのうえで気になるのは,[Enter]キーの1つ上にあるキーのレイアウトです。ご存じのとおり日本語配列というのは英語配列とかなり異なるわけですが,Dell Gシリーズと同じ,アイソレートタイプのキーボードですから,日本語配列になると,限られたスペースでキーの数を確保しなければならないため,[Back Space]キーと[¥]キーが物理的に隣接してしまうと思います。このレイアウトはエンドユーザーから受け入れられているのでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
日本語キーボードについてのフィードバックとしては存在しませんね。新規のフィードバックとして開発チームに伝えたいと思います。もう少し具体的にお話しいただけますか。
4Gamer:
日本語配列で[¥]キーを打とうとして[Back Space]キーが入ってしまうことがあるというのは,アイソレートタイプのキーボードかつ日本語配列を採用したノートPCで,とても頻繁に生じる問題です。日本語配列は英語配列と比べてホームポジションが左へ若干オフセットされているため,メインキーボードの右寄りがどうしても物理的に遠くなるんです。遠くのキーであるがゆえに届きにくく,結果としてつながったキーを“誤爆”しやすくなると。
DellのノートPCですと,XPSのクラムシェルとこれまでのALIENWAREではこの問題がない一方,少なくともInspironはこの問題を抱えているわけですが,m15の日本語キーレイアウトは後者寄りになる可能性が高いのではと危惧しています。
Eddy Goyanes氏:
私はまだ日本語版のほうのレイアウトがよく分かりませんが,確認します。良いご質問です。
4Gamer:
ありがとうございます。次に天板の話なんですけど,今回「Nebula Red」(ネビュラレッド)という天板色を標準色とは別に1色だけBTOオプションとして用意した,というか「復活させた」のは,どういう経緯によるのでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
ご指摘のとおり,過去に赤い天板色はありましたね。ポートフォリオ上,Dell Gシリーズには赤がないので,m15で再導入することによって差別化を図ったということです。ただ,「ならなぜ赤だけか?」というのは分かりません(笑)。
4Gamer:
(笑)。
Eddy Goyanes氏:
ゲーマーはカスタマイズが大好きで,BTOオプションも大好きです。しかし,いざ用意してみたら,市場によってはほとんどのゲーマーが同じ色を選択するというケースもままあります。「格好いいね!」と評判になっても,実際に買われるのは1色だけということがけっこうあるんです。
我々もビジネスなので利益を上げなければなりませんが,色を加えれば加えるほど(コスト面での)マネジメントが難しくなりますので,ビジネスだけのお話をするなら,まあ,色数は少ないに越したことはないんですね。
4Gamer:
今回,赤が復活したということでちょっと頭をよぎったことに,北米のカスタムPCメーカーが,かなり高価ですけど,有償でペイントサービスをやっているというのがあります。たとえばそういう,「ものすごく高価ではあるけれども,そこまでしたいなら好きな色に塗れます」くらいのほうが,ベースモデル1色で済んでいいんじゃないかなと思ったんですね。
Eddy Goyanes氏:
それはいいですね。日本のデルで始めるといいんじゃないかな(笑)。
……まじめにお返しすると,そういうカスタム化に「品質を維持しながら世界規模で対応する」と,結局コスト的にとても大変なんですよ(。なので,「日本で」やるなら面白いかもしれません)。
クールですけどね。お話しいただいたアイデアそれ自体はすごくいいと思います。
4Gamer:
天板の話を先にしてしまったので,早めに伺おうと思っていた質問が後になってしまったんですが,冷却系の話もさせてください。
今回のm15は,吸排気の仕様が15と比べるとかなり変わっているように見えます。とくに印象的なのが,上下から吸って側面奥側の4方向から出すというところですが,吸排気の仕様が変わったのは薄型化のためですか? それともコストダウンの結果でしょうか。
薄さの実現のためですね。15や17ですと,本体後方に冷却系が飛び出したようなデザインになっていますよね?
4Gamer:
ええ。
Eddy Goyanes氏:
ですが薄さを追求するm15では,15や17のようなゴツい冷却系は採用できません。なのでこういう(=上下吸気&奥側4方向排気という)デザインになっています。
4Gamer:
その冷却周りでちょっと気になったことが2点ありまして。
Eddy Goyanes氏:
なんでしょう?
1つめは,側面の手前側にあるスリットが何かということです。スピーカーはキーボードの奥側にあるスリット部への実装となっているということでした。一方で,ここの周囲はバッテリーなどでしょうから,ここから給気するメリットもあまりなさそうなんです。ひょっとしたら低音用のバスレフポートなのかな? とも考えていますが,これはいったい何ですか?
Eddy Goyanes氏:
良いご質問ですが,ここも2chスピーカー用のスリットですね。
4Gamer:
ああ,難しく考えなくてよかったやつですね(笑)。
もう1点は,15や17だと吸気になっている本体右側面スリットがm15で排気になっていることです。
15や17でここが吸気なのは本当に素晴らしく,マウスを本体の右に置いても熱気が襲ってこないんですが,m15だと多少なりとも熱の影響を受けそうだな,と。
Eddy Goyanes氏:
マウスパッドはもっと手前に置きませんか?
日本の場合ですとやはり机が小さいので,ノートPCのすぐ右隣にマウスパッドを置くようなケースが多いように思います。おっしゃるとおり,手前に置きたいんですが,スペースがないという。
Eddy Goyanes氏:
なるほど。
ただ,やはりそこはユーザーによると思います。私個人としても,ノートPCから(右手前方向に)少し離したところが標準的だと感じています。
有線LANもビデオ出力も本体の右には来ないようになっていますから,本体の右側で窮屈な思いをすることはないでしょう。
4Gamer:
そうですね。インタフェースの配置は相変わらずほぼ完璧なので,「LANケーブルやHDMIケーブル,電源ケーブルが,右手持ちしたマウスの邪魔をする」心配はまったくしていません。
Amplifierの端子も含めて全部奥側だったりと,本当によくできていますよね。
ええ,これらはすべて意図的にこう配置しています。(他社製品の一部でHDMIケーブルが右側面にあったりしますが)HDMIやAmplifierのポートが右側面,などということはあり得ないわけです。
4Gamer:
ところで,そのAmplifierですが,現時点におけるアタッチレート,要するに「本体と一緒に購入されている割合」というのは情報として公開されているのでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
いえ,していませんね。具体的なアタッチレートも申し上げられません。
4Gamer:
だと思いました(笑)。
そのAmplifierですが,今後の拡張の予定というのはあるのでしょうか。素人考えですが,搭載するGPUへの信号を完全にカットするなりすれば,現在の仕様である4レーンではなく,8レーンや16レーンといった,もっと広い帯域を確保することも可能ではないかと思うのですが。
いえ,そういう計画はありません。4よりも多くのレーンを使うとピンが増え,ケーブルが非常に太くなり,コストも高くなります。
ご存じのように,他社の外付けグラフィックスソリューションが採用しているThunderbolt 3では,USBやら何やらと帯域をシェアしていますが,Amplifierはグラフィックス専用で40GB/sもの帯域幅を確保できているわけです。PCI Express x4接続だからといって,それほど致命的な問題があるとは思えません。
むしろ,これこれこういう問題があるというのであれば,ぜひ教えていただきたいです。いまのところゲーマーからそういう不満の声は聞いていませんが,あるならお寄せいただければ,私達は喜んで対処します。
4Gamer:
分かりました。
あと,これもスペックの話なんですが,簡単に言うと,m15の搭載するGPUとCPUの話です。搭載するGPUはGeForce GTX 10シリーズで,CPUは第8世代です。となると,そう遠くない将来にm15のGPUとCPUは最新世代に変わるのではないかというのが「普通」の考えだと思いますが,その点についての見解をいただけませんか。
Eddy Goyanes氏:
NVIDIAはまだ何もリリースしてませんよ(笑)。
ロードマップはもちろん彼らにもあるでしょうが,ブランディングがどうなるというのかというのは分かりません。GTXなのか,ドラゴンボールZ(DBZ)なのか(笑)。
4Gamer:
DBZは面白いかも(笑)。
Eddy Goyanes氏:
まあ,いずれ新しいラインのノートPC向けGPUは出てくるでしょう。しかし,「おそらく来年あたりかな」とは期待していますが,それがいつというのも分かりません。
4Gamer:
一番懸念されるのは,エンドユーザーが「どうせ新しいGPUが出るんだから待てばいいよね」と判断することではないかと思うのですが,いかがでしょう。
Eddy Goyanes氏:
そういう考えだとスマホも買えませんよ(笑)。
4Gamer:
確かに。
Eddy Goyanes氏:
そういうことは常に起こり得ます。ですので「常に最先端」というのは難しいわけです。日本の場合は分かりませんが,北米市場の場合,ほとんどのゲーマーは2〜3年おきにシステムを置き換えます。
ですので,「アップグレードの体験をどう提供していくのか」というのは,(私達メーカーにとって)チャレンジだと思います。m15について言えば,ゲーム性能と持ち運びやすさのバランスという点で,「現時点におけるベスト」と考えています。
4Gamer:
分かりました。
さて,m15……というか,ALIENWAREのノートPCについてあと1つだけ聞かせてください。
発表会でもお話がありましたが,ALIENWAREのスポンサードを受けているTeam Liquidの選手はデスクトップPCであるAuroraを使っているとのことでした。
Eddy Goyanes氏:
はい。
Eddyさんは「ノートPCを使ってもらうのはこれからだ」的なお話しもされていますが,現実問題として,プロゲームシーンを考えたときに「大会でノートPCを使ってもらう」というのはほぼノーチャンスだと思うんです。会場にデスクトップPCが置いてあって,それを使うわけですから。
となると,「大会で勝つためのPC」というプロモーションは,ノートPCでは将来にわたっても行えないことになります。少なくとも私はそう認識しているのですが,その点はどうお考えですか。
Eddy Goyanes氏:
発表会でもお話ししましたが,プロゲーマーはセットアップにとてもこだわります。マウスやキーボードは言うに及ばず,それこそディスプレイや椅子の高さや角度も個々人で異なりますよね。そこで使われるPCは(高さや角度を調整できるようなゲーム環境に対応できる)デスクトップモデルであり,だからこそ私達はTeam Liquidの選手にAuroraを提供しているわけです。
4Gamer:
ええ,そこはよく分かります。
Eddy Goyanes氏:
一方で,各地を転戦するようなプロゲーマーはノートPCを好みますが,それは「主なトレーニング用デバイス」ではありません。たとえば「クルマが好き」だと言っても,日常生活用のクルマと,山に登ったりレースに出たりするためのクルマがあるわけです。ですので,「プロゲーマーにとってゲーマー向けノートPCは価値がない」ということはなく,用途の異なるゲームPCだということになるだろうと思います。
実際,発表前のm15をTeam Liquidの選手に見てもらったときのフィードバックは極めてポジティブでした。私も「ノートPCなんてどうでもいいよ」という反応が来るかと身構えていたんですが,彼らの反応は一様に「すごい!」だったんです。「デザインはいいし,薄いのもいい,持って運ぶのにとてもいい」と。
しかし,トレーニングで使うとは言っていません。そういう話ですので,私達としても,プロゲームシーンやeスポーツとは異なるアプローチが必要だと考えています。
AuroraはCPUの手動オーバークロックもメーカーサポート対象!
スペック変更となるAuroraについては細かいことを伺いたいと思います。
Auroraの搭載するGeForce RTX 20シリーズと第9世代Coreプロセッサはいずれも従来世代の製品と比べて消費電力が高くなっていますが,それに対してAuroraのコンポーネント側で対策した部分はありますか。
Eddy Goyanes氏:
従来から80 PLUS Gold仕様で850Wの電源ユニットを搭載していますので,これで対応できると考えています。
グラフィックスカードが最大2枚でざっくり600W,CPUが120Wで,850Wなら賄えるという計算ですね。
4Gamer:
マザーボードのほうはどうですか?
第9世代Coreプロセッサに合わせて登場した市販のマザーボードを見ていると,電源のフェーズ数が増えている印象を受けるのですが,たとえばAuroraの採用するマザーボードでも同様の変更が生じたりはしているのでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
ハードウェアの改変,改良は新しい世代のCPU向けに入っていますが,電源フェーズ数は変わっていません。そもそも今世代のAuroraでは,「全員が全員デュアルGPUを求めるわけではなく,オーバークロックを求めるわけでもないが,その能力は持っておく」コンセプトで開発がスタートしていますので,(より多くの電力を消費するCPUに対する)準備は十分にできているのです。
4Gamer:
そのオーバークロックに関して,新しい世代の「Command Center」を,私は17でしか使ったことがありませんが,17の「オーバークロック設定」は,CPUの動作クロックをスライダーで5GHzまで上げられるだけでした。コアごとのCPUクロック設定も電圧設定も行えず,GPUのクロックも何ひとつ弄れなかったと記憶しています。間違っていたらご指摘ください。
それを踏まえての質問ですが,今回,Auroraではどの程度までCPUとGPUのオーバークロック設定をユーザーが弄れるようになっているのでしょうか。
Eddy Goyanes氏:
まず,17のオーバークロック設定についてのご理解は正しいです。CPUのクロック設定は行えますが,5GHzを超えることはできませんでした。しかもこの5GHzというのは「最大値」の設定でして,常時5GHzで動作するわけではなく,ブーストでそこまで到達できるようにするというものです。
ノートPCのフォームファクタという限界から,制約があったわけですね。
4Gamer:
はい。
で,Auroraですが,Auroraにおいては,Command CenterからCPUとGPU両方のオーバークロック設定が行えます。これはAuroraのユーザーにとって新たな体験になります。
そのうえでAuroraでは,第9世代のCoreプロセッサの全コアをファクトリーオーバークロック状態で出荷することに決めました。第9世代Coreプロセッサのような多コアシステムを必要としている人は,ゲームと録画や配信を同時に行ったりといったこともやりたいでしょうから,それゆえの仕様ですね。
4Gamer:
それとは別に,ユーザー側で弄れるオーバークロック設定があるということですか。
Eddy Goyanes氏:
そうです。Command Centerからは「Level 1」「Level 2」と2段階の設定が――17と同じように――できますが,Auroraにおいてはユーザー側でマニュアル設定も可能です。もちろんマニュアル設定を行った場合,さまざまな理由で正常に動作しなくなる状況は発生しうるわけですが,いずれにせよ,ユーザーの皆さんに対してそこまでの選択肢を提供できるというのは新しいことだと考えていますし,以前より使い勝手もいいということで,私達も誇りに思っています。
4Gamer:
GPUのほうはいかがでしょう。
GPUのほうはこれまでもサードパーティ製ソフトウェアを使うことでオーバークロックできたわけですが,今回からはCommand Center上で設定を行えるようになりました。Command Centerから一元的に管理できるようになったことは,ユーザーにとってよいことだと思っています。
4Gamer:
一点確認ですが,ALIENWAREとしてはオーバークロックのどこまでをサポートするのでしょうか。メーカーレベルのクロックアップ設定だけで,CPUのマニュアル設定やGPUのオーバークロックは自己責任,もっとはっきり言うとメーカー保証外という理解でいいですか?
Eddy Goyanes氏:
いえ,少なくともCPU側はフルサポートです。CPUのオーバークロックでは,大きな問題が発生する前に保護機能が働きますから(CPUが壊れる心配はありません)。なのでフルサポートとなります。
一方,GPUは確認が必要です。GPUオーバークロッキングというのはCommand Centerにとって新しい要素なので,いずれきちんとした回答をさせてください。
4Gamer:
ありがとうございます。それにしても,CPUがフルサポートなのは驚きました。
Eddy Goyanes氏:
実のところ,Command Centerというソフトウェアは,バックグラウンドでかなりいろいろな保護機能を動かしています。だからこそできるフルサポートですね。
4Gamer:
実に素晴らしいと思います。ほかのブランドでは聞いたことがないレベルのサポートですね。
Eddy Goyanes氏:
フロントのType-Cポートは(マザーボード上にある)別のコントローラとつながっているので,残念ながらサポートできないと思います。将来的にできるようになる可能性がないわけではないと思いますが,現時点では難しいでしょう。
4Gamer:
質問は以上です。本日はありがとうございました。
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