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「ALIENWARE Aurora R5」レビュー。優れた使い勝手の筐体を採用するゲームPCは,性能や静かさも満足できるものなのか
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印刷2016/11/30 19:26

レビュー

優れた使い勝手の筐体を採用するゲームPCは,性能や静かさも満足できるものなのか

ALIENWARE Aurora R5

Text by 宮崎真一


ALIENWARE Aurora R5(ALIENWARE Aurora スプレマシー)
メーカー:ALIENWARE(Dell)
問い合わせ先:問い合わせ先一覧ページ
スプレマシーBTO標準構成価格:28万9980円から(税別,送料込み,2016年11月30日現在)
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 Alienwareから復活したゲーマー向けミドルタワーデスクトップPC「ALIENWARE Aurora R5」(国内製品名:NEW ALIENWARE Aurora。以下,Aurora R5)が,使い勝手の向上を考慮し,細かな気配りの行き届いた筐体を採用していることは,すでにお伝えしているとおりだ。

 さて,そのとき入手した個体は,CPUの冷却機構として簡易液冷ユニットを採用する最上位モデル「ALIENWARE Aurora スプレマシー」をベースに,BTOで「GeForce GTX 1080 Founders Edition」(以下,GTX 1080)をもう1枚加え,SLI HBブリッジで2-way SLI構成としたものだったわけだが,ここまでのスペックだと,性能も気になるところ。
 今回は,先の記事であえて触れていなかった性能を中心に,温度や冷却能力,動作音といった部分をチェックしてみたいと思う。

ALIENWAREの新型デスクトップPC「Aurora R5」を隅々までチェック。細かい気配りが良好で,長く使いたくなる筐体だ



伝統のアプリケーション「Command Center」は,やや古さを感じる仕様。そろそろ要更新?


Command Center
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 性能評価に先立って,Aurora R5のプリインストールアプリケーションである「Command Center」(コマンドセンター)を紹介しておきたい。

 Alienware製PC伝統の独自アプリケーションであるCommand Centerは,以下の機能を集約したものだ。

  • Thermal Controls:CPUとアンビエント(周囲),GPUの温度,GPUファンの回転数,それにCPUクーラーのポンプの動作状況をモニタリングする機能
  • AlienFX:Aurora R5本体が搭載するLEDイルミネーションの色や光り方を変える機能
  • AlienFusion:細かな電源設定を行う機能
  • AlienAdrenaline:ゲーム中にチャットツールや各種アプリケーションの起動を許可するかを,ゲームごとに設定できる

AlienFX
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 Command Centerは,起動するとAlienFXを選択した状態で立ち上がり,Aurora R5の電源ボタンと本体左右側面部にあるLEDの色を選択できる。選択できる色は19色と,AlienFXのデビュー当時は画期的だったが,今となっては少々見劣りする印象を受けるのも確かだ。AlienFXというか,LEDイルミネーションの色周りは,そろそろ刷新が必要ではなかろうか。

Thermal Controls
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 次にThermal Controlsだが,まず「アンビエント」はそれだけだと意味が通らないが,CPU温度と連動しているので,CPU周辺の温度という理解でよさそうである。
 GPUは2基ともセンサーの情報を取れていた。また,ファンは筐体前面側のものと,上面のラジエータ冷却用,両方の回転数を自動もしくは手動で設定可能だ。

AlienFusion(左)とAlienAdrenaline(右)。AlienFusionでは,起動時にAlienFXを有効にするかどうか,電源ボタンを押すとシャットダウンになるかスリープになるかなど,主に電源周りの設定を行うことが可能だ
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GTX 1080×1となるベースモデルを比較対象に。DOOMではVulkanだけでなくOpenGL 4.5もテスト


 テスト方法に話を移そう。
 今回の試用機における具体的な構成はのとおり。ただし冒頭でお伝えしているように,今回の試用機はALIENWARE Aurora スプレマシーをベースとして2-way SLI構成としたマシンとなっているため,ベースモデルのスコアも取ることした。以下本稿では,入手したマシンを「Aurora R5(GTX 1080 SLI)」,グラフィックスカードを1枚外してベースモデル相当にした構成を「Aurora R5(GTX 1080)」と表記し,区別する。
 なお,テストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時点の最新版となる「GeForce 375.95 Driver」である。
 なお,確認した限り,CPUクロックはリファレンスどおりだった。

※本文でも触れているとおり,シングルカード構成でもテストを行います
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 テスト方法は基本的に,4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。Aurora R5(GTX 1080 SLI)がハイエンド市場向けGPUの2枚差し構成であるため,アンチエイリアシングおよび異方性フィルタリングの無効化を伴った,より低い描画条件のテストは行わず,より高い描画条件のテストを行う。テスト解像度も2560×1440ドットと3840×2560ドットの2パターンとした。
 また,スケジュールの都合で,「ARK: Survival Evolved」と「Fallout 4」のテストを省略する一方,ベンチマークレギュレーション19世代を先取りする形で,「3DMark」(Version 2.1.2973)の「Time Spy」を追加し,さらに「Tom Clancy's The Division」の代わりに「DOOM」を実施するので,この点もあらかじめお断りしておきたい。

 なお,Time Spyのテストにあたっては,レギュレーション18.0で規定する「Fire Strike」と同様に2回実行し,総合スコアが高いほうを採用する。一方のDOOMでは,アーケードモードの「UAC」ステージにおいて,一定のルートを移動し,1分間の平均フレームレートを計測。「実際に操作する」という不確定要素は残るため,2回テストを行い,その平均をスコアとして採用する。ここでのグラフィックス設定は描画負荷が最も高くなる「ウルトラ」だ。
 グラフィックスAPIは「Vulkan」と「OpenGL 4.5」を選択し,Vulkan版では平均フレームレートの取得には「PresentMonLauncher」(Version 1.0A)を用いている。


Aurora R5(GTX 1080 SLI)が真価を発揮するのは4K環境。VulkanではSLIはうまく機能せず


 ここから,順にテスト結果を見ていこう。
 グラフ1は3DMarkにおけるFire Strikeの総合スコアをまとめたものだ。Aurora R5(GTX 1080 SLI)とAurora R5(GTX 1080)のスコア差は68〜81%程度で,Aurora R5(GTX 1080 SLI)はより描画負荷の高い「Fire Strike Ultra」で対シングルカード構成のスコア差を広げるという,SLI構成らしい傾向を示した。

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 続いてグラフ2はTime Spyの結果だが,両者の差は66%と,DirectX 12環境においても,Aurora R5(GTX 1080 SLI)はシングルカード構成のベースモデルに対して優位性も保てている。

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 「Far Cry Primal」のテスト結果がグラフ3だ。Aurora R5(GTX 1080 SLI)にとってFar Cry Primalの2560×1440ドット条件は,もはや「最高」プリセットであっても“軽すぎる”ようで,相対的なCPUのボトルネックにより,スコアは頭打ちの傾向を示している。
 それに対して3940×2160ドット条件だと,Aurora R5(GTX 1080 SLI)はAurora R5(GTX 1080)より約78%高いスコアを示した。レギュレーションでハイクラス以上のGPUにおける合格ラインとなる平均60fpsを,4K解像度で軽々と超えてきたのは見事だ。

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 グラフ4,5はDOOMの結果となるが,Vulkan版だとテスト対象の2条件でスコアはほぼ横並びというか,むしろAurora R5(GTX 1080 SLI)のほうがスコアは低い。これはVulkan API版でSLIが正常に機能していないということなのだろう。
 一方のOpenGL 4.5版だと,SLIの効果自体は確認できる。ただ,Aurora R5(GTX 1080)に対するスコアは3840×2160ドット時にプラス約23%なので,SLI動作によるメリットは大きくないということになる。

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 「2560×1440ドットでもSLIの効果は十分に出た」と言えるのが,グラフ6にスコアをまとめた「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)だ。それでも,3840×2160ドットのほうが差が広がっている点は,Far Cry Primalと同じ傾向だ。ここでは2560×1440ドット条件でも,Aurora R5(GTX 1080 SLI)がAurora R5(GTX 1080)に対して約50%高いスコアを示している。
 もっとも,3840×2160ドット条件だとスコア差は約89%に広がるので,ここでも,より高い負荷条件のほうがSLIの効果は大きいと言えるのだが。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 グラフ7は「Project CARS」の結果だ。Project CARSでも2560×1440ドットではスコアの頭打ちが発生しているのが分かるが,3840×2160ドットでは,シングルカード構成がスコアを落としていくのに対し,SLI構成は平均100fps前後で踏みとどまった。
 CPUの相対的なボトルネックを解消できれば,もう少しスコア差は開きそうな気配である。

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Aurora R5(GTX 1080 SLI)の消費電力は500W前後。動作音はかなり静か


 省電力性に優れるPascalアーキテクチャを採用するとはいえ,ハイエンド市場向けグラフィックスカードを2枚搭載するということで,Aurora R5(GTX 1080 SLI)の消費電力は気になるところだ。ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定してみることにしよう。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果はグラフ8のとおりだ。当たり前のこととして,2-way SLI構成時のほうが消費電力は高いわけだが,それでも実スコアは最大でも517Wであり,搭載する定格850Wの電源ユニットで,十分賄えるレベルなのが分かる。
 シングルカード構成ならシステム全体で300W前後にまとまっている点にも注目したい。

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Aurora R5の筐体は前面および側面吸気で,上面および背面排気。底面からは給気しない仕様だ
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 Command CenterのThermal Controlsがあるので,これを使い,システム各部の温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともどもThermal Controlsから温度を取得することにした。なお,テスト時の室温は約24℃。当該環境下で,PCを机上に置いている。

 結果はグラフ9のとおり。まずアイドル時は,カードとカードの間に1スロット分の余裕がある設計であるものの,それでも,よりCPUに近い「GPU#1」の温度が高くなっているというあたりから,グラフィックスカード2枚差しの難しさを若干感じ取れよう。
 続いて高負荷時だが,こちらは一転して,Aurora R5(GTX 1080 SLI)とAurora R5(GTX 1080)との間に大きな違いは見られなくなった。GPUの温度が80℃オーバーなのは気になるかもしれないが,これはGTX 1080のFounders Editionであれば納得できる値で,少なくとも「Aurora R5におけるGPUの冷却性能は十分に足りている」と言い切って問題のない結果ではある。

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 気になる動作音だが,これはビデオで確認してもらえればと思う。
 下に掲載したのは,Aurora R5(GTX 1080 SLI)が実際に動作している様子を録画したものだ。カメラをPCと正対する形で30cm離した地点に置き,アイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の3840×2160ドットで4分間実行したものだ。

 GPUのファンの回転数が十分に上がっているベンチ実行から3分後,つまりファイル冒頭から4分後と冒頭のアイドル時を見比べて欲しいが,Aurora R5の動作音はさほど大きくなっておらず,かなり静かである。ハイスペックな構成をコンパクトなサイズに詰め込んでいながら,静音性に見るべきものがあるというのは,立派と言うほかない。



SLIの価格差とデメリットは要理解ながら,Aurora R5というマシン自体はとても魅力的


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 Aurora R5(GTX 1080 SLI)がAurora R5(GTX 1080)より高いパフォーマンスを発揮するのは,至極当然の結果だ。しかし,Aurora R5(GTX 1080 SLI)を手放しで勧めるわけにはいかない理由が2つある。
 その1つはBTO構成価格だ。Aurora R5のスプレマシーは,ベースモデルが28万9980円(税別,送料込み)のところ,もう1枚のGTX 1080カードを追加すると,価格は10万8900円も増えてしまう。GTX 1080カードは,ブランドにこだわらなければ今や6万円台半ばから購入できてしまうわけで,端的に述べると,BTOによって2-way SLI化を図ることのコストパフォーマンスが悪い。AlienwareのPCは,「元に戻せるのであれば,カードなどを差し替えても保証対象」なので,2-way SLI化を図るなら,カードを後から追加したほうがいい。

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 そしてもう1つは,SLIのメリットを享受できる局面が限られるということだ。解像度やグラフィックス設定次第ではメリットが薄くなり,さらにVulkan版DOOMなどの非対応タイトルを前にすると,むしろフレームレートが低下する可能性がある。この点は十分に理解しておくべきだと思う。

 ただ,とにかく面倒なことなしに4K環境でゲームをプレイしたいなら,2-way SLI化したAurora R5はアリだ。またそうでなくとも,ゲーム用として長く使えるデスクトップPCを探しているのであれば,筐体設計に優れ,将来的にハイエンドクラスのグラフィックスカードを仮に2枚差したとしても静かに運用できる筐体を採用したAurora R5は,一考の価値があるマシンだと言える。

デルのAurora R5製品情報ページ

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