プレイレポート
「Thief」プレイレポート&インタビュー。2014年の最新作でありながら,旧シリーズのファンをも満足させるこだわりを見た
さて,Eidos Montrealといえば,往年の人気アクションRPG「Deus Ex」シリーズを新たに構築した「デウスエクス」(PlayStation 3 / Xbox 360)のデベロッパとして知られているが,ロイ氏によれば,「Thief」の企画開発にあたっても,「デウスエクス」と同様のアプローチを採用し,新規IPとしてシリーズをリブートするのが狙いになっているという。
旧「Thief」シリーズは,今なお根強いファンが多数存在しており,主人公が暗闇の中を探索するというスタイルの先駆けとも言えるゲームであるため,開発チームは今回のチャレンジに大きなプレッシャーを感じたとのことだ。
架空の街「シティ」を舞台に暗躍する主人公の“マスターシーフ”「ギャレット」
とくに重視されているのはプレイの没入感で,ロイ氏によれば,プレイヤーが主人公の“マスターシーフ”ギャレットとなり,実際にシティの住人になったかのような感覚が得られることを目指し,一人称視点での表現にこだわったとのこと。
たとえばスリをするときは相手に極めて近づかなければならないため,プレイヤーは非常に緊張するだろうと話す。また,手足など,ギャレットの身体の一部分が見え隠れすることにより,あたかもプレイヤーが実際にゲーム中のオブジェクトに触れているかのような感覚を狙っているともいう。
ゲームの基本部分は,建物への「潜入」,隠された貴重品などの「盗み」,そして「脱出」というサイクルで進行していく。
ギャレットが使う道具は,「弓矢」「ブラックジャック」「鉤爪」の3種類だ。
弓矢は,敵にダメージを与える武器としてだけではなく,遠く離れたスイッチを操作するなど,さまざまな使い方ができる。矢にはいくつか種類があり,「ウォーターアロー」でランプやたいまつなどの明かりを消して暗闇を作り出したり,矢尻がなく威力が弱いが安価な「ブラントアロー」で遠方にあるガラス瓶などを割り,敵の注意をそらしたりといったことが可能だ。
ブラックジャックは,ギャレットが愛用する棍棒で,殺傷能力がなく,主に敵を気絶させるために使用する。ほかには,壁を叩いて音を出し,敵をおびき出すといった使い方もあるようだ。
鉤爪は,ギャレットが高所によじ登ったりするときなどに使用する道具。ゲーム内のさまざまな局面で使用できるとのことで,ロイ氏は開発のレベルデザイン上でも非常に便利な存在だったと語る。また,後述するが,この鉤爪は,ストーリー上でも重要な意味合いを持ってくる。
ゲームの舞台となるのは,架空の街「シティ」。シティには「ストーンマーケット」「サウスクォーター」などの区画があり,さまざまな建物が並んでいるが,その中でも目を惹くのがギャレットの隠れ家となる「時計塔」だ。この時計塔は,ストーリー上で発生するメインミッションをクリアするたびに訪れることとなる。次のミッションをスタートさせるまで,ギャレットはシティの中を探索可能で,矢の購入や,持っているスキルのアップグレードなどができるとのことだ。
ステルスアクションと情報収集で“お宝”を狙う。気に入らない結果なら即リプレイも
それでは,プレイアブルデモのレポートを以下に記していこう。ゲームの冒頭では,ギャレットが,友人バッソの依頼により,とある屋敷に潜入する様子が描かれる。パートナーは,かつてギャレットの弟子だった女盗賊のエリン。この数年間,ギャレットとエリンが行動をともにすることはなかったが,今回の依頼の目的を達成するため,バッソが再びコンビを組ませたのだ。
2人が異なる道を歩んでいたのは,お互いの流儀が違ったからだ。ギャレットは理由なき殺しを避け,静かに目的を達成することを流儀としていたが,かたやエリンは目的のためなら殺しも厭わないという考えの持ち主だった。今回の仕事にあたっても,エリンは鉤爪を使い,屋敷の警備兵を始末していく。そこでギャレットは,無用な殺しを避けるためエリンから鉤爪を盗み取ってしまう。
目的となる屋敷の中では怪しげな儀式が執り行われていた。その異様な雰囲気に危険を感じたギャレットは,仕事を終え素早く立ち去ろうとするのだが,その瞬間,屋敷は轟音とともに崩れ落ちる。そしてギャレットとエリンは,闇に飲み込まれてしまう……。
ギャレットが気づいたときには,シティの様子がどこか変わっており,エリンの姿も見当たらない。ここでゲームの最初の目的として,隠れ家の時計塔に戻ることが提示され,ミッションがスタートする。
プレイ中,画面の左下には,「ライトジェム」が表示される。これは,ギャレットが暗闇の中にいるときは暗く,逆に光の当たる場所にいるときは明るく表示され,他人からの見つかりやすさが一目で分かるようになっている。
ちなみにPS4版の場合,DUALSHOCK 4のライトバーの色がゲーム内のライトジェムに対応して変化し,ギャレットが暗い場所にいるときは青く,明るい場所にいるときは白く光る仕様となっている。
ギャレットの移動は左アナログスティックで行うが,スティックを押し込むと,しゃがみ移動が可能になる。また,移動時に[×]ボタンを押すと,「スゥープ」で少し離れた場所に一瞬で移動できる。これらは誰かに見つからないよう,物陰から物陰へと移動するときなどに多用することとなる重要なアクションだ。
また,[L2]トリガーでは,そのときの状況に合わせて鉤爪を使って高所によじ登ったり,ロープにつかまったり,あるいはジャンプしたりといったことが可能で,一人称視点のゲームながら,移動のアクションは多彩だ。
だが,通常の状態では,ギャレットがよじ登ったり,つかまったりできる場所が少々分かりづらい。そこで役立つのが「フォーカス」と呼ばれる特殊能力だ。これは[△]ボタンで発動でき,周囲の状況をスキャンして,ギャレットが移動可能な場所をハイライト表示させられるだけでなく,ドアや金庫のピッキングを容易にしたり,戦闘時に相手の弱点を示したりといったことも可能になる。
ただしフォーカスは,1回使用するごとに画面左下の青いバーを消費していき,バーがなくなると使えなくなってしまう。このバーは自動回復せず,回復するには専用アイテムが必要となるため,使いどころを考えなければならない。
こういったアクションを駆使して進むミッションは,基本的に画面中に示されるマーカーに従い,街中を徘徊している住人や警備兵に見つからないよう移動していけばクリアできるようになっている。しかし街の隅々には,コインや換金できるアイテムなどが隠されているので,“マスターシーフ”であればぜひそれらを探し回りながら進みたいところだろう。
また,道中を進んでいると,人々の会話などから,さらにレアなアイテムの存在が判明することもある。今回のミッションでは,警備兵の会話から,宝石店に貴重な仮面が保管されていることが分かった。もちろん,これを無視して時計塔に向かってもかまわないのだが,せっかくなので仮面を頂戴していくことにした。
宝石店の左奥にある建物によじ登れそうな場所があり,そこから店内へ侵入できそうなのだが,店の前の通りを2人の警備兵が行き来しており,そのままでは近づけない。そこでフォーカスを使ってみると,宝石店右脇にロープで吊された材木があることに気づく。弓矢でロープを切って材木を落とせば,警備兵の注意を惹くことができそうだ。
弓は[R2]トリガーで構えることができ,DUALSHOCK 4のタッチパッドで矢を選べる。ちなみにそのほかのアイテムを使用する場合も,タッチパッドで選択可能だ。
ロープを射貫いて首尾よく材木を落とすことに成功すると,案の定,通りにいた2人の警備兵はそっちに向かって行ってしまった。運悪く,落ちてきた材木に当たってしまった別の警備兵もいたようだが……。ともあれ,これで宝石店潜入の取っ掛かりができた。
路地に入り,ロープを上ったり,足場を渡ったりしながら宝石店に潜入すると,内部にも警備兵が。明かりを消して暗闇を作ったり,クローゼットに隠れて警備兵を急襲したりしながら,宝石が保管されていそうな部屋へと向かう。なお,戦闘では弓に加え,[R1]ボタンでブラックジャックを使用できる。急にドアを開けるなどして相手を怯ませることができれば,[R1]ボタンの長押しにより,一撃で気絶させることも可能だ。
さて,マーカーにしたがって部屋にあった引き出しを開錠したところ,中に入っていたのはガラス製の仮面。表の警備兵が言っていたような高価なものには見えないが,それ以外にこの部屋にあるものというと,コインや二束三文の装飾品ばかり……。
ここでロイ氏が説明してくれたのだが,このミッションでは,宝石店潜入前にきちんと情報を収集しておくと,仮面がダイヤル式金庫にしまってあることが推測できるのだそうだ。今回は潜入を急いだために情報収集が疎かになってしまたが,それでも宝石店の中を隅々まで探し回って,本物の仮面を見つけることは可能だ。ただし今回のケースでは,ガラス製の偽の仮面を手に入れた時点でマーカーが脱出経路を示してしまっているので,見つけるのが難しくなっていた。
店からの脱出時も,動いているものを見ると鳴き声を上げる鳥がいたり,路地に見回りの警備兵が徘徊していたりと,なかなか一筋縄ではいかない。しゃがみとスゥープを多用し,暗闇から暗闇へ,ときに鍵穴からドアの向こうをのぞいたり([□]ボタン長押し)しながら慎重に進んでいく必要がある。
そうこうして時計塔にたどり着くとミッションクリアとなり,リザルト画面が表示される。画面左には,どれだけ見つからずに進んだかを示す「ゴースト」,どれだけ周囲の状況を利用できたかを示す「オポチュニスト」,どれだけ好戦的だったかを示す「プレデター」の割合を示すグラフが示され,そのときのプレイがどのような内容だったかを確認できる。
そのほかリザルト画面では,ミッション内に隠されていたアイテム数と実際に発見した数や,見つかってしまった回数,殺した人数などが示される。また発見したアイテムのうち通常のものはコインに換金され,マーケットで消費アイテム購入に使えるが,「コレクタブル」と呼ばれるアイテムは時計塔にコレクションとして飾られることとなる。
これらの結果に不満があれば,□ボタンを押すことで,もう一度同じミッションに最初からチャレンジ可能だ。また旧シリーズのコアなファンが満足できるよう,ミッションの難度調整も細かく行えるようになっており,Roy氏によれば,一度でも誰かに見つかってしまうと即ミッション失敗となるような設定も可能とのことだ。ちなみに一番難しい設定では,鳥などに見つかっただけでも,ゲーム本編を1からやり直すことになるという。
旧シリーズのテイストを尊重したゲーム性と奥深い人間ドラマの融合を目指した
体験プレイ後,いくつか疑問に思った点について,Roy氏に直接答えてもらったので,以下にそれを掲載しよう。
4Gamer:
ゲームの時代設定は,いつ頃なんでしょう。ギャレットが使う道具を見ても,弓は金属製で,そこそこの工作技術がある時代かとも思ったのですが,一方でブラックジャックは原始的にも感じられます。
ステファン・ロイ氏(以下,ロイ氏):
中世から近代に移行する,1800年ごろです。このゲームでは,光と闇に代表されるように,さまざまな部分で“対比”を表現しており,たとえば街並みを見ると,基本的には中世風の石造りですが,ところどころにパイプが設置してあって,近代化の波が押し寄せていることが分かります。また「Thief」のタイトルロゴは印刷したかのようなデザインにしていますが,これもゲーム内の世界で印刷技術が発達していることを示しているんです。
4Gamer:
ライトジェムのON/OFFや難度の設定などをはじめ,かなりオプションが充実しているようですが。
ロイ氏:
旧シリーズのコアファンからすると,ライトジェムやフォーカスの存在自体がチートのようなものですから,それらの新システムを使わなくとも済むようにしています。その一方で,ストーリーを中心に楽しみたいというプレイヤーもいるでしょうから,さまざまなリクエストに応えられるよう,プレイ環境を細かく設定可能にしました。
4Gamer:
今回の体験プレイでは,街にいる警備兵の会話から,新しい目的が発生しましたよね。そのほかに,住人の会話からヒントを得ることはできますか。
ヒントはたくさんあります。たとえば,メインミッションの合間にシティに探索に行くと,道を歩いている女性が何かをなくしたというような話をしているのですが,それを聞いた瞬間に新たな目的が発生します。それ以外にも,住人達は目的についていろんなヒントを話していますよ。また文書などに暗証番号などの重要な情報が隠されていることもあります。
4Gamer:
警備兵や住人は,全員がスリや攻撃の対象になりますか。
ロイ氏:
基本的には,そうです。ちなみにターゲットが一人でいくつものアイテムを身につけている場合は,フォーカスを使うと一瞬で全部まとめてスリ取ることができます。
4Gamer:
もしも,スリに失敗した場合はどうなるんでしょう。
ロイ氏:
相手が警備兵なら,そのまま戦闘に突入します。普通の市民なら,大声で警備兵を呼ばれてしまい,やはり戦うことになります。
戦闘に関しては,ギャレットは戦士ではなく盗賊ですから,あまり強くありません。1対1なら普通に勝てますが,2人相手だとかなり苦戦します。相手が3人以上だと,弓やフォーカスを駆使すれば勝てなくもないですが,逃げた方が得策という感じですね。実は,ここは開発上,最も力を入れた部分の一つで,プレイヤーが戦闘を最低限に抑えられるバランスに仕上げました。部屋にいる敵全員を強引に殴り倒してから,お宝を漁るようなゲームじゃないですからね。
4Gamer:
そう言えば体験プレイでは,警備兵が物音に気づいたにも関わらず,暗闇の中にいるギャレットをなかなか発見できないという局面がありましたけれども。
ロイ氏:
ここもまた,開発上でこだわった部分です。10年前の旧シリーズでは,まだグラフィックスが今ほど優れていなかったので,光の当たるところと暗闇は,はっきり分かれていました。しかし現在は,グラフィックスのクオリティが大きく向上していますから,リアルと同じく,完全な闇は存在しません。信憑性を保つため,光と闇の間に段階的なグレーゾーンを設け,かつゲームとして成立するラインを試行錯誤しました。
ゲーム中では,ギャレットの気配に気づいた警備兵の頭上には,目のアイコンが表示されます。そのアイコンがメーターになっており,距離などの状況に応じて溜まり方が変化します。メーターがMAXになると訝しむフェイズに入って「そこに誰かいるのか?」と声を上げるので,プレイヤーはそれまでにどうするか判断しなければなりません。
これは難度設定でも変化し,イージーモードでは斜め後ろに立っていると見つからないケースでも,ハードモードでは真後ろから近づかないとダメというような感じになっています。
4Gamer:
それでは最後に,ストーリーについても教えてください。発表されているプレストーリーやムービーに目を通すと,ギャレットにとって,エリンは非常に重要な存在だと感じます。しかし彼女は,ゲーム開始直後に事件に巻き込まれて,死んでしまったかのような描写がされていますよね。今後,エリンが何かしらの形でストーリーに絡んでくることはあるのでしょうか。
ロイ氏:
私達の思惑どおりの反応ですね(笑)。ストーリーの冒頭に印象的な事件が起こって,ギャレットが気づいたら周囲が変わっており,エリンの生死も分からない。そうやってプレイヤーの興味と関心を煽っているわけです。
実際,エリンはこのゲームの重要人物です。ギャレットは,事件の前にエリンの鉤爪を盗んでいますが,もしそうしなければ彼女は死ななかったかもしれない。ギャレットは,そうした悶々とした思いを抱きながら生きています。ぜひ実際にゲームをプレイして,その先のストーリーを確認してください。
4Gamer:
と言うと,ステルスアクションだけでなくストーリーも「Thief」の大きなセールスポイントとなっているわけですね。
ロイ氏:
ええ,私達はどちらか一つだけを推すのではなく,両者をいい形で“結婚”させたいと考えながら開発を進めてきました。
4Gamer:
分かりました。日本語版の発売が,今から非常に楽しみです。本日はありがとうございました。
「Thief」公式サイト
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Thief (C) 2014 Square Enix Ltd. All rights reserved. Developed by Eidos-Montréal. THIEF, the THIEF logo, EIDOS-MONTRÉAL and the EIDOS logo are trademarks of Square Enix Ltd. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are trademarks or registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. All other trademarks are the property of their respective owners.
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