インタビュー
システムの追加/拡張だけでなく“新たな遊び”をもたらす。「信長の野望・天道」のプロデューサーに「パワーアップキット」のアレコレを聞いた
既報のとおり,コーエーテクモゲームスは,12月17日に「信長の野望・天道 パワーアップキット」を発売する。これは2009年9月に発売されたPC版「信長の野望・天道」(以下,天道)の拡張キットで,「こちら」の記事で紹介したように,戦略の幅を広げる「文化」のほかに,各種データを編集するエディタや,新たなシナリオやイベント,武将などが追加される。
またパワーアップキット定番の各種データエディタにも,今回,新たな試みとして新機能「AIエディタ」が登場している。今回,この新要素について,天道のプロデューサーを務めるコーエー ソフトウェア本部 ソフトウェア2部 マネジャーの北見 健氏に聞いてみた。
「信長の野望・天道」公式サイト
追加シナリオは戦国時代の醍醐味を再現する“群雄割拠”のシチュエーションが大半
本日はよろしくお願いします。まずは,開発中の天道のパワーアップキットの企画意図や概要などを教えてください。
北見 健氏(以下,北見氏):
はい,そもそもコーエー(現:コーエーテクモゲームス)のパワーアップキットシリーズは,17年前の1993年から始まった企画です。昔からのPCゲームに馴染みの深い人は分かると思うのですが,「信長の野望」のようなPCのシミュレーションゲームでは,セーブデータをいじって武将の能力などを変動させたい,カスタマイズしたいというプレイヤーの方のニーズがあるんですよ。今回のパワーアップキットの柱も,こういったニーズに応えるデータエディタになります。
4Gamer:
データエディタは天道を遊び尽くして,内容をガッチリと把握している人向けの内容になるわけですね?
北見氏:
ええ。より深く遊んでいただくための機能という位置付けなので,通常のパッケージには,含めていないんです。
エディタと並んで柱になるのが,ゲーム開始年代の異なるシナリオの追加です。こうした歴史シミュレーションですと,開始年代が違うとゲームの進行がかなり変わります。例えば,信長が元服した頃のスタートでは,すぐ北にある斎藤家や東の今川家が織田家よりも強い勢力ですから,それをどう抑えるかというシチュエーションから始まります。
それより少しあとの本能寺の変の頃になると,もう信長が京都を押さえていますから,いったん戦乱が治まった状態から,どう全国を統一していくかというシチュエーションになります。
4Gamer:
その中で,目玉と言える追加シナリオを教えてください。
そうですね,「信長誕生」というシナリオでしょう。文字どおり,信長が誕生したときにスタートする内容で,大名も松平清康──つまり徳川家康の祖父が現役の頃になります。
4Gamer:
どういったところがポイントなんですか?
北見氏:
信長の誕生時点という早い年代からスタートするので,勢力が分かれて群雄割拠の状態になっているところです。当然ですが,あとの年代になるほど日本の統一が近くなります。そうなると,各勢力の規模が大きくなる一方で,勢力数は減っていきます。
しかし戦略シミュレーションとしてみると,それでは醍醐味が薄れてしまいます。やはり群雄割拠する中でのし上がっていくというのが,魅力的じゃないですか。
4Gamer:
中小の勢力が各地に多数存在して,まさに戦国時代といった感じでやりごたえがありそうです。
北見氏:
また信長が元服するころには,すでに鉄砲が伝来していました。しかし,このシナリオでは,ゲームを進めていく中で鉄砲が伝来しますので,まだ鉄砲がないなかを,どう戦っていくのかという過程が含まれています。
4Gamer:
鉄砲以外の兵科をどう扱うかで大きく戦略が変わりそうですね。そのほか,追加シナリオで特徴的なものはありますか?
北見氏:
全部で11シナリオを追加していますが,約半分が短時間でプレイできる「群雄覇権モード」のシナリオで,残り半分が,通常の全国シナリオになります。これら追加シナリオにはPlayStation 3/Xbox 360版で追加されたものはもちろん,「信長誕生」のような本作で新規に作成されたものもあります。
中でも,今回追加された「野望、再び」は,本能寺の変で織田家の勢力がなくなった直後,羽柴家と柴田家が細かく分断されるシナリオなんですが,さらにその後のifシナリオとして,天下人秀吉の死後,全国で転封が行われる「慶長大転封」というのも面白いですね。普段は配下としてしか出て来ない武将が,大名になって登場したりします。
私個人が,群雄割拠というシチュエーションを好んでいることもあって,こういった大名家が細かく分断されたシナリオが多めになっています。
シリーズ初のAIエディタは武将データを思いどおりに設定するだけのものではない
今作のデータエディタには,新機能はありますか?
北見氏:
はい。今回は「AIエディタ」を追加しました。これは各大名のAIを編集するもので,例えば騎馬軍団や鉄砲軍団に特化したAIを組むことができます。また攻略方針にしても,堅実に進めるのか,それとも果敢に攻めるのかといったような設定ができます。
これまでのエディタは,大名家単位で兵糧や金の設定はできても,AIの根本は一緒でした。今作では,AIを設定することで,より個性を出すことができます。
とはいえ,これもAIの設定ができるだけですので,このAIエディタの機能を生かせるような,遊びの要素を増やそうと考えました。
4Gamer:
それはどのようなものですか。
北見氏:
天道には,60以上の城が登場します。それが全部個別の勢力だと仮定すると,一つ一つの大名家にAIを設定していくのは大変ですよね。
そこで,登場させる勢力を限定できるようにもしています。一部の地域に限定する,あるいは極端な例だと,二つの勢力しか登場させないといったこともできます。例えば,武田家と上杉家だけで遊ぶこともできますので,AIをいじり,武田軍は武田軍らしく,上杉軍は上杉軍らしくそれぞれ設定することで,川中島の戦いを再現するようにも楽しめるわけです。
4Gamer:
自分の理想に近い武田軍を演出できるということですか。
北見氏:
ええ。あるいは,より史実に近い武田軍ですかね。AIをいじらなくてもそれなりに動きますが,織田信長を退けながら,上洛を目指す設定もできますよ(笑)。
また,編集したデータを入出力する機能もついていますから,「私が作った武田軍を,アナタの上杉軍で粉砕してみてください」というような遊びもできるんです。
4Gamer:
それは面白そうですね。
北見氏:
また,数人でデータを持ち寄って,プレイヤーが一切介入しない場合に,どのAIが最も強いかを競うことも可能です。さらに目標とする勢力も設定できますから,プレイヤーそれぞれが武田軍,上杉軍,北条軍のAIを作り,誰が一番最初に今川家を滅ぼすか,というような遊びもできます。
4Gamer:
AIを使って,自分の想像するいろいろな戦国時代が楽しめそうです。
北見氏:
また「国替え」といって,周囲の大名をシャッフルする機能を大名家選択時に使用できます。これは,スタートした地域によってどうやっても勝てないという状況を回避するための機能です。正直,蠣﨑家などはデフォルト状態では,どうしようもないくらい圧倒的に不利ですから。
さらに,プレイヤーが介入しなければ各大名家は毎回同じ行動を取るようにチューニングを施しています。これは編集データをやり取りした場合に,差が生じないようための配慮です。したがって,編集データを使った大会なども開催できます。
- 関連タイトル:
信長の野望・天道
- 関連タイトル:
信長の野望・天道 with パワーアップキット
- 関連タイトル:
信長の野望・天道 パワーアップキット
- この記事のURL:
キーワード
(C)TECMO KOEI GAMES CO., LTD. All rights reserved.
(C)TECMO KOEI GAMES CO., LTD. All rights reserved.
(C)TECMO KOEI GAMES CO., LTD. All rights reserved.