インタビュー
「ブラウザ三国志」世界へ,ONE-UPはグローバル展開に向けて東南アジアに拠点を設立。同社の2012年の展望を聞いてみた
これまでにも同社は,上記タイトルを韓国,台湾,シンガポール,タイ,マレーシア,フランスといった海外各地にライセンス供与してきたが,今後は海外子会社を拠点に,パブリッシング事業などにも手を広げていくという。その展望や今後の予定などを,ONE-UP 事業開発グループ マーケティングマネージャー 島嵜直樹氏に聞いた。
まずONE-UPでは,2011年にシンガポールで設立した子会社のONE-UP ASIA HOLDINGSを拠点に,東南アジア各国への進出を予定している。島嵜氏いわく,ONE-UPはそれ以前からインドネシアに事業所を構えていたとのことで,今回の進出はそういった東南アジアでのビジネス経験を踏まえたものとなるわけだ。
ONE-UP ASIA HOLDINGSを介した具体的な東南アジア進出の第1弾は,先だって発表された,香港Run Up Games Distributionとの業務提携による,みんなで牧場物語のライセンス供与である(社名が少し似ているが,偶然とのこと)。この提携により,同タイトルは香港/台湾/シンガポール/マレーシア/マカオの5か国で2012年春からサービスが展開されることとなる。いずれも中国語圏ということで,サービスは中文に翻訳されて行われるとのこと。
また,それと並行して,みんなの牧場物語をFacebookアプリとして展開する準備も進めているという。島嵜氏は,この取り組みについて,同タイトルのワールドワイド展開を視野に入れたものと説明する。
加えてインドネシアでのブラウザ三国志の展開,そしてタイでのみんなの牧場物語のライセンスアウトも,契約の最終調整段階に入っている。時期的な都合により,パブリッシャ名はまだ公開されていないが,2012年春〜初夏にかけて,それぞれサービスインとなる見込みだ。
パブリッシングタイトルは,日本で展開しているゲームのローカライズ版に加え,現地デベロッパが開発したものも予定しているとのことだ。すなわち,現地向けのタイトルを現地で開発し,現地でちゃんと成立するビジネスを展開しようというわけである。
例えばインドネシアでもスマートフォンが流行しているが,主流となっているのはBlackBerryとのことで,地域が違えば環境も変わってくる。地域に合わせた展開を行いたいとのこと。そのほか,宗教上の問題など,カルチャライズすべき部分も多いという。
今回の海外展開にあたって,東南アジアを選んだ理由として,島嵜氏は市場の成長性と,オンラインゲームに対するニーズの高さを挙げる。東南アジアはインフラ環境がまだ整っていないため,ブラウザゲームに対する需要が高いとのこと。そうした国々に“日本で大ヒットした”というキャッチコピーを付けてブラウザ三国志などを持ち込めば,高い反響が期待できるというわけである。
その一方で島嵜氏は,各国の文化をゲームに取り入れるような試みにも挑戦していきたいと述べる。「日本で受けたから他国でも受けるはず」という考え方ではなく,リサーチやヒアリングに基づく,きちんと地に足の付いた展開を目指すわけだ。今後,東南アジアでの展開が順調に進めば,インドなどその他のアジア方面へと順次展開する構想もあると島嵜は語る。
「一連の取り組みの目的は,ONE-UPとして海外展開を果たすとともに,それぞれの国できちんとビジネスを成立させることにあります。2012年度はその基盤を作り,そのあと一気に花を咲かせるようなイメージで作業を進めています」(島嵜氏)
ONE-UPは,2012年夏以降に数本の自社開発による新作ブラウザゲームを,日本でサービス開始する見込みとなっており,期待の高まるところである。開発会社として知られていた同社は,これまでどおり国内で積極的に開発を続けていくとともに,海外展開においては,ライセンス供与とともにパブリッシング,そして現地生産も睨んだ動きをしている。ブラウザゲームで東南アジアを中心に新たなムーブメントを巻き起こしていくことに期待したい。
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