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[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
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印刷2010/02/13 10:00

インタビュー

[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー

画像集#009のサムネイル/[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
 2月17日,東京・ベルサール神田にて「Online Game & Community service conference 2010」(以下,OGC 2010)が開催される。ここでは,OGC 2010の講演者に事前インタビューを行い,講演の概要などを紹介していく。

 さて,さんざん言及され尽くしている感もあるが,2009年における日本のオンラインゲーム市場の大きな特徴といえば,ブラウザゲームの台頭とソーシャルゲームの勃興だ。とくにブラウザゲームに関していえば,2009年後半から2010年に入った今もなお,多くのパブリッシャが相次いで新タイトルのサービスを開始している。あらためて説明するのも気恥ずかしいが,その流れの先鞭をつけたのがベクターの「ドラゴンクルセイド」である。そこで,今回のOGC 2010にて「ブラウザゲーム国内本格参入」と題したセッションを行うベクター 代表取締役社長 梶並伸博氏に,ブラウザゲームの現状と今後の展望,そして同社の2010年の展開などについて話を聞いてみた。


万全のトロイカ体制で迎える第三の創業期


ベクター 代表取締役社長 梶並伸博氏
画像集#004のサムネイル/[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
 2009年度第3四半期におけるベクターのオンラインゲーム事業は,過去最大の大幅な黒字化を遂げている。この要因は,いうまでもなくブラウザゲーム事業のスタートとドラゴンクルセイドの大ヒットであり,梶並氏はこれを同社の"第三の創業"と表現する。

 そもそもベクターは,ソフトウェアのダウンロード販売で業績を伸ばした企業である。しかし,その好調ぶりに翳りが見え始めたのが2004年頃。当時,普及し始めた"SaaS"(Software as a Service)──今,流行のクラウド・コンピューティングの走りである──などによって,ソフトウェアをローカルPCにインストールしなくともさまざまな作業ができるようになったこと,Webサイトの閲覧やメールなどの日常的な作業は,特別なソフトをインストールしなくても十分に行える環境が構築され始めたことが主な理由だ。結果として,ベクターのダウンロード販売売上も低落傾向を見せるようになったのである。

 そこで"第二の創業"となったのが,2006年のオンラインゲーム事業参入である。梶並氏は,オンラインゲームパブリッシャを流通や小売と同等の事業と捉えており,またベクター自体も従来の事業で固定ユーザーを獲得していたため,参入に関しては非常にスムースだったという。しかし,そのあとの展開は必ずしも順風満帆とはいえなかった。GAMESPACE24やELEVEN-UPといったパブリッシャを相次いで子会社化し,売上は伸びたものの,2008年春頃まではずっと赤字の状態が続いていたのだ。またこの時期,社内的に発生した問題を解決するのに労力を費やしていたため,新規タイトルの展開も控えめになっていたと梶並氏は述べる。

日本でブラウザゲーム旋風を巻き起こした「ドラゴンクルセイド」
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画像集#008のサムネイル/[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
 そして2009年春,子会社の合併と売却により系統を一本化したベクターは,「転生絵巻伝 三国ヒーローズ」と「ドラゴンクルセイド」のサービスを相次いでスタートさせた。同時に不良資産──赤字タイトルの精算を行い,その結果,同社のオンラインゲーム事業は第3四半期に大きく業績を伸ばし,現在も引き続き好調というわけである。

 「今期,ベクターが好調の理由は三つあります。まず,もともとのソフトウェアダウンロード販売はずっと黒字です。また不良資産の精算によって,クライアントサーバー型(専用クライアントで起動する一般的なゲームのこと)オンラインゲーム部門が黒字化しました。そしてブラウザゲームです。
 これまでのベクターは,ダウンロード販売広告という馬が一頭で馬車を牽いていました。もう一頭のクライアントサーバー型オンラインゲームは,いわば荷台で寝ていた状態だったんですね(笑)。しかし,それがようやく馬車を牽いてくれるようになりました。そこに三頭目となるブラウザゲームが現れたというわけです」(梶並氏)


 梶並氏は,本来ならドラゴンクルセイドのあと,矢継ぎ早にブラウザゲームの新タイトルを投入する予定だったが,予想以上の大ヒットにドタバタしてしまい,仕込みが遅れてしまったと裏側の事情を明かした。AQインタラクティブが開発した「ブラウザ三国志」,キューエンタテインメントの「NikQ 〜ひだまりの騎士団〜」などのブラゲタイムでの業務提携を経て,ベクター自身が仕込みを手がけた「まじかるブラゲ学院」(2009年12月)と「熱血三国」(2010年1月)がようやくスタートしたわけである。

 そうした好調を受けて,2010年は新規のクライアントサーバー型タイトルとブラウザゲームタイトルを,それぞれ少なくとも4タイトルずつ投入する予定だ。しかも,これは前期だけの話とのことで,後期分を合わせると,総タイトル数は確実に10を超えるという。加えて2009年12月に欧米でスタートさせたドラゴンクルセイドの英語版「The Seventh Dragon」を足がかりに,さらなる世界展開への挑戦を図ると,梶並氏は意気込みを見せた。

 ここで気になるのが,中国のブラウザゲーム市場だ。というのは,ドラゴンクルセイド以下,ベクターで扱うブラウザゲームは中国で開発されているからである。梶並氏は,数年前から中国では10人程度の開発スタジオも含めて200社ほどが乱立し,300タイトル以上が開発されたと説明する。現在は淘汰が進んでおり,成功しているといえるのは上位20社程度の大企業ばかりだそうだ。しかし,そのおかげか,他業界でいわれているほどいい加減な態度の企業はなく,手間を惜しまずにきちんと説明すれば,一緒にビジネスをするうえでとくに問題はないと梶並氏は述べる。

画像集#005のサムネイル/[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
 「ブラウザゲームを一時期のブームで終わらせないためには,きちんとしたビジネスのできる企業と付き合って,いいものを紹介していかなければならないと考えています。中国企業と一口にいってもそれぞれカラーは違っています。またゲーム業界は経営者が若く,真面目な人が多いですね。ビジネスにガツガツしている感じはなく,むしろ大学のサークルのようなノリです」(梶並氏)


 梶並氏は,ベクターの事業コンセプトを「BMW-S」と表現する。これはブラウザ・モバイル・ワールド・ソーシャルの頭文字を取ったものだが,こうしたことを考えるようになったきっかけは,ネットブックの台頭にあるそうだ。
 というのも,昨今のノートPCの販売台数を見ると全体数は上がっているのだが,その数字の大半はネットブックであることに気づいたからだ。ここで梶並氏は,Linuxベースのネットブック用インタフェース「Instant-On」を例に出す。このインタフェースは,OSが完全に起動する前に,特定のアプリケーションを数秒で起動することができるというのもの。現在,世界で1億台以上のネットブックにインストールされているというこのインタフェースから,ベクターのブラウザゲームにアクセスできないものか──梶並氏は,日々そうした考えを巡らせているという。

 さらに梶並氏は,ソーシャルアプリが持つ大きな可能性についても指摘する。ベクターでは,2009年8月にモバイルアプリ「恋する私の王子様」のサービスを携帯2キャリアでスタートしたが,ユーザーは数千人前後で推移していた。ところが,10月27日,mixiアプリモバイルのスタートに合わせて「恋する私の王子様 for mixi」を投入したところ,現在までの3か月程度で150万人を超えるユーザー数を記録したのだ。この事例から,そもそもベースとなるSNSのユーザー数が多いうえに,招待やメッセージといったバイラルで拡大できるソーシャルアプリの優位性をあらためて確認したと梶並氏は述べる。

 しかし,SNSの歴史がまだ浅い日本ならともかく,世界的に見るとFacebookだけでもすでに8万タイトルを超えるPC版のソーシャルアプリが存在しており,これから新規参入してもほとんどチャンスはない。そこで梶並氏は,同じソーシャルアプリでもモバイル版に活路を見出しているという。Flashベースのブラウザゲームなら,これまでガラパゴス扱いされていた日本のモバイル(携帯電話)市場からでも世界に進出することが十分に可能だと,梶並氏は展望を述べた。

画像集#006のサムネイル/[OGC 2010]今年は10本以上の新タイトルを投入! ブラウザゲームの大ヒットで"第三の創業"を本格化させたベクター 梶並伸博社長インタビュー
 「オンラインゲームのヘビープレイヤーにとっては,ブラウザゲームやソーシャルアプリは物足りないかもしれません。しかし,これが初めてのゲームという人もまだまだたくさんいるんです」(梶並氏)

 とはいえ,そうしたライトプレイヤーが将来的にヘビープレイヤーにたどり着くかというと,かなり難しいだろうと梶並氏は述べる。正直なところ,多くの人にとって,PCとは,文書の作成やメールの送受信,そしてWebブラウザの起動ができれば十分であり,ハイクオリティなゲームが要求するスペックは必要ないからだ。

 さらに梶並氏は,今,ソーシャルアプリを発見してプレイしている人達というのは,これまでニンテンドーDSでさえも獲得できなかった層に属しており,プレイスタイル自体も従来のゲームプレイヤーと異なると指摘する。

 「ブラウザゲームやソーシャルアプリは,『さあ,やるぞ』と身構えなくとも気楽にやれます。これがクライアントサーバー型だと,お菓子と飲み物を用意して,一応トイレにも行っておくかと,いろいろ準備しなければならないのですが(笑)」(梶並氏)

 実際,ブラウザゲームの場合は月〜金曜日のウィークデーのほうがアクセス数が多く,土日祝日には減少しているというデータも存在するとのことで,ベクターでは通勤や移動中の電車内で遊ぶケースが多いのではないかと分析している。

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 「こうなると従来型のオンラインゲームよりも,キッチリと生活サイクルにハマっていますよね。従来型で1日3時間プレイを毎日続けていたら生活が破綻しますが,ブラウザゲームを毎日やってもそうはなりません。また,ほかのゲームをプレイするついでに立ち上げておいても,まったく邪魔にならないのも特徴です」(梶並氏)

 梶並氏自身が,ブラウザゲームに初めて触れたのは2008年の9月頃。そこで「Travian」にハマり,その年末には自社で運営するブラウザゲームの買い付けに走ったそうで,それがドラゴンクルセイドへと結びついた。その間もずっとTravianはプレイし続けており,今でも月に数万円ほど有料アイテムを購入しているヘビープレイヤーだそうだ。
 さて,ベクターの2010年の展開は,今のところ今回のインタビューで触れたとおり,かなり大規模なものとなるが,詳細は追って公開となる。なおベクター社内では,韓国語を話せるスタッフに加えて,英語と中国語のできるスタッフが急増,ロシア語のできるスタッフもいるという。この事実から,いろいろ想像が膨らむところだが,より詳細なヒントはOGC 2010当日のセッションで披露されるかもしれない。興味のある人は,ぜひ会場に足を運んでみよう。

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    ドラゴンクルセイド

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