レビュー
中世ヨーロッパ風の世界を背景に,善でも悪でも好きなように生きる
マウント&ブレード:ウォーバンド【完全日本語版】
8月27日,サイバーフロントから中世の世界を舞台にしたPC向けアクションRPG,「マウント&ブレード:ウォーバンド 完全日本語版」(以下,ウォーバンド)が発売される予定だ。
本作は2008年にParadox Interactiveからリリースされた「Mount & Blade」をベースにした作品で,トルコのデベロッパ,TaleWorlds Entertainmentが開発を担当している。ゲーム内容はMount & Bladeのグラフィックスを強化したり,オンラインマルチプレイを追加したりしたという「拡張パック」なのだが,スタンドアロンでの起動が可能なので,プレイするために前作は必要ない。
ゲームの舞台は,当然オリジナルと同じ「カルラディア」という架空の世界だ。広大なオープンワールドで,そこを自由に馬で移動できる。架空とはいえ,パッと見は,中世のヨーロッパから中央アジアにかけての地帯といった雰囲気。
カルラディアの覇権を巡ってはさまざまな国が争っており,今や群雄割拠の時代となっている。プレイヤーは,そんな世界で一人の男性(女性も可)として生きていくことになるのだが,何をしようと自由自在である。名を上げてどこかの国に士官し,王の配下になるもよし,盗賊になって集落を襲い,悪名を轟かせてもよしだ。「ああしろ,こうしろ」といったことは何もなく,どうやって生きるかはプレイヤー次第。
部隊を率いて,各地で起きている戦闘を勝ち抜いていこう。騎兵や歩兵など,さまざまな兵士がぶつかり合い,戦場は迫力満点だ |
これがカルラディアの勢力図の一部。フィールドはかなり広く,街から街へ移動するのに(ゲーム内の時間で)1日かかったりする |
住民から情報を聞いたり,アイテムを購入したりと,村や街へはよく行く。テキスト量は多いので,しっかり日本語になっているのがありがたい |
キャラクターメイクで質問に答え,その結果で能力の初期値が決まる。一定以上の名声があれば,紋章が描かれた旗を掲げることも可能 |
なんだったら最終的にカルラディア全土を手中に収め,王の中の王になることも夢ではないのだ。ゲームの設定としても,それほど込み入ったものは用意されていないので,この,ちょっと突き放したところに戸惑う人もいるだろう。だが,これこそ本当のロールプレイングゲームだと感じる人も多いはずだ。
中世風の架空世界とはいえ,ウォーバンドにファンタジーの要素はほとんどなく,当然ながら派手な攻撃魔法などは使えない。タイトルにもあるように,馬に乗って(マウント)剣(ブレード)を振り回したり,槍で突き刺したりといった古典的な戦闘に重点が置かれている。ちなみに,別に槍を主に使っても,「マウント&スピア」とかにタイトルが変わることはないから安心だ。
ゲームモードはシングルプレイゲームのほか,シチュエーションを設定して戦闘を楽しめる「カスタムバトル」,オンラインで対戦ができる「マルチプレイヤーモード」などがあるが,今回のレビューはシングルプレイを中心に見ていきたい。
「マウント&ブレード:ウォーバンド【完全日本語版】」公式サイト
キャラクターは細かく作りこむことができる
名声を得て,カルラディアの世界に名を刻もう
ゲームを始めると,性別や「自分の父親の職業」「青年期に何をしていたか」など,さまざまな質問に答えなければならない。ここでどういう答えを選んだかによって,能力の初期値が微妙に変化するようだ。この世界では,貴族に高い地位が与えられているので,父親の職業を「没落した貴族」にしておくと,ほかの職業と比べて,名声が最初から高い状態でスタートできるため有利になる。ちょっとしたTipsだが,名声については,あとで詳しく説明する。
これらの強化に必要なポイントは,レベルアップ時に得られる。レベルアップには経験値が必要で,序盤は経験値500程度でレベルアップするが,上に行くにつれて,次のレベルアップに経験値が1万必要になったりと,なかなかハードだ。
パラメータを設定したら,プレイヤーの外見を作り込もう。いくつか用意された顔のテンプレートから気に入ったものを選び,髪形を変えたり,ヒゲを生やしたり,さらには目の大きさや鼻の形など,かなりカスタマイズできる。面倒ならランダム生成のオプションもあるので,AIにまかせてしまってもいい。
キャラクターを作り終えたらいよいよゲームスタートだ。カルラディアには6つの王国があるので,そのうちの一か所を選ぶと,その王国の街からプレイが始まる。勢力ごとに「騎兵はいないが,代わりに強力な歩兵がいる」「馬と弓矢の扱いに長けるが,打たれ弱い」などといった特徴があり,いろいろなプレイを楽しめるのも魅力の一つだ。
どこからスタートしても,ゲーム開始直後に何者かに襲われてしまう。これを倒せば商人が登場し,彼の弟を助けに行くというクエストが始まる。この時点での主人公は無名の冒険家という扱いなので,持っている装備品も乏しく頼りないが,クエストをこなし活躍していけば,やがて強くなっていく。武器の熟練度が上がれば,より大きなダメージを与えられたり,矢の命中精度がアップしたりするので,成長を実感できるはずだ。
ゲームの基本的な流れは,国王やギルドマスター,村長などからのクエストを受け,それを期日以内に達成するという,割とオーソドックスなもの。クリアすれば,お金や経験値,名声などが得られる。
クエストの内容は,「王に代わって税金の徴収に向かえ」「盗賊を退治しろ」「誘拐犯に身代金を渡し,女性を連れて帰って来い」など,バリエーションは豊富だ。いずれも「30日以内」「90日以内」といった時間制限があり,期限内に達成できなかったり,引き受けてから辞退すると,評価を下げてしまったり,信頼関係を損ねてしまうなどデメリットが多数ある。受けたからには,中途半端はいけないのだ。
また,戦闘で特徴的なのは,一人で戦うのではなく,そのへんの村や街から手勢を集め,彼らを率いていくという点だ。
クエストをクリアしたり,名のある諸侯を討ち取れば名声を得られるが,この名声の役割は大きく分けて二つある。
まず,名声が高いほど,プレイヤーが率いることが可能な兵士の数が増し,大部隊を作れるようになるということ。序盤は50人程度の部隊しか作れないが,ゲームを進めればやがてそれが倍以上になったりするのだ。
もう一つ。名声が一定以上の値になると,国に仕官するチャンスがやってくる。条件を満たしているなら,国を訪ねて自分を売り込んでもいいし,噂を聞きつけた王が仕官を求めてくることもある。仕官は貴族への仲間入りを意味し,これであなたの名前を大いに上げられることになる。
仕官すれば,攻め落とした城や街を王からちょうだいしたり,国から支援金を得られるので,部下へ支払う給料など,必要経費の負担が少し軽くなる。また,国王が主催する宴に参加することもでき,ここで貴族の子弟と知り合い,相手が女性なら交際を経て結婚することも可能だ。ハイソですな。
なお,仕官したら,一生そこに尽くさなければならないということはなく,契りを破ってしまってもいい。その場合,当然ながら国王との関係を損ねることになるし,与えられた城や街も没収されてしまう。そうしたペナルティをよく考えてから,行動したい。
馬で先陣を切ったり,軍師さながらに部隊を指揮したり
シミュレーション色の強い戦闘
ウォーバンドの楽しさの一つに挙げられるのが戦闘だ。戦闘はおもにフィールドを移動中に,敵国の部隊や山賊,海賊(野山を駆け回ったりしているので,どのへんが海賊なのか微妙だが)などの敵対勢力と接触したときに発生する。
戦闘では,騎乗したまま戦うことが可能だ。馬上,敵との距離を詰め,ここぞというときにバッサリ斬り倒すのは爽快感があって病みつきだ。ただし,距離の判断が難しく,狙って攻撃を当てるのはなかなか大変。
流鏑馬(やぶさめ)のように,馬上から弓で攻撃をすることも可能だが,こちらも難度は高い。シングルプレイモードとは別に「チュートリアルモード」があるので,こちらで馬の操作や,乗馬攻撃のタイミングなどを練習して,感覚を体に覚え込ませたい。
プレイヤー自ら敵陣に飛び込んで斬り結んでもいいが,味方に攻撃させたり,陣形を作らせたりと,軍師さながらに戦闘を指揮するのもまた面白い。歩兵部隊を前に出して壁を作り,そのうしろに弓兵部隊を配置して敵を迎撃したりなど,部隊ごとにコントロールできるので,まるでシミュレーションゲームのようだ。もっとも,部下への指示の出し方は少々複雑で,また,コマンドの効果も分かりづらい。何度もプレイして,それぞれの指示をどういうときに使えはいいのかを,あらかじめ確認しておく必要があるだろう。まあ,要は慣れの問題だ。
ほかに自らは後方に下がり,戦闘を完全にAIに任せるのもアリだ。その場合,勝負は一瞬でつく。
戦闘に勝つと,敵軍の兵士を捕虜にできることがある。自軍の戦力として雇用してもいいし,街にいる奴隷商人に売却してもいい。有名な諸侯を捕まえた場合には,身代金を要求したりなど,ちょっとダーティーな遊び方も楽しい。
もちろん,こちらが戦闘に負けた場合は捕虜にされることがあるので要注意だ。ゲーム内の時間で数日経過すると,脱走イベントが始まったり,なんとなく釈放されるなどして自由になれるが,シャバに出たら部隊を再編成しなければならず,損害はかなり大きい。とほほである。
フィールドで戦うほか,敵の城に攻め込むことも可能だ。城攻めは,かなり大量の敵を相手にしなくてはならず,簡単ではない。精強な兵を揃え,万全を期した状態で攻め込むことが望まれるところだ。めでたく勝利できたら,部隊を駐留させて防衛に当たらせるといいだろう。
戦闘で優位に立つには,より多くの兵士を引き連れる必要がある。兄貴,イクサは数よ。
フィールドにいるユニットを見ると,31,75,149といった数字が出ているが,これがその部隊の大きさだ。もちろん,数字が大きいほど,大規模な部隊である。
兵士の種類としては歩兵,騎兵,弓兵などがある。彼らは上述のように,村を訪れたときにスカウトしたり,街の宿屋に滞在しているときに話しかけて雇ったりできる。多くの兵士を雇うことは,そのまま戦力アップにつながるが,ゲーム内の時間で一週間が経過すると,給料を支払わなければならない。なんと,週給制なのだ。
つまり隊員が増えるほど,維持費がかさむということで,さらに,100人以上の大部隊を率いたいのなら,「統率力」のスキルも強化しておく必要がある。
主人公と同様,兵士にもレベルがあり,レベルが上がることでアップグレードする。例を挙げると,「スワディア新兵」から「スワディア民兵」,「剣客」から「剣豪」といった具合だ。ただし,能力アップと共に給料も上がり,維持費がさらにかさむようになる。ここはフトコロ事情と相談といったところ。
まれに宿屋などに名前のあるNPCがいるが,彼らも雇用可能だ。このNPCはコンパニオン,つまりヒーローユニットであり,主人公同様にスキルを覚えられる強力なユニットだが,その分,例によって一般兵と比べて給料はお高め。
給与と共に,食料も部隊の維持に必要不可欠だ。街の市場や村などで買った食料は,持ち歩いているだけで自動的に消費され,そのぶん部隊の士気を上がる。だが,食料が底をつくと今度は士気が下がり,不満を持った兵士が脱走したりする。給料も支払いが滞っても,兵士が脱走したりする。やはり世の中,お金と食べ物なのだ。
捕虜を連れていた敵を倒した場合,その捕虜を自軍の戦力として雇用することも可能だ |
コンパニオンを雇えば,彼の持つスキルも作用するので,足りてない部分を補足できる |
装備を整えたり,部隊を維持するにはお金が必要
さて,どうやって稼いだらいいのだろう?
強敵との戦いに備えて性能のいい装備品や軍馬を買ったり,兵を雇い士気を維持していくためには,定期的な収入が欲しい。むろん,クエストをクリアして報酬を得るのも悪くないが,オススメは商品の転売だ。街の市場にいるときに相場調査ができ,「○○(商品)を仕入れて,○○(街)に持っていけば,一つあたり○○の利益が出る」という情報が分かったりする。土地ごとに鉄や香辛料,染料,油などさまざまなアイテムがあり,「安く仕入れ高く売却する」ということを守っていけば,これでかなり稼げる。
さらに,戦闘で勝てば敵の装備品を奪えるので,これを売ったり,武闘大会にエントリーして勝ち進み,賞金を得たりと,その気になれば,さまざまな方法でお金が稼げるシステムになっているのだ。
そのほか,「生産小屋」というものがあり,街に自分の施設を作り,アイテムを加工して商品を作って儲けることさえできる。小屋の種類は穀物からパンを作る「パン窯」や,鉄から工具を作る「製鉄所」などがあるが,いずれも土地代や建材費など,かなりの初期コストがかかってしまうので,ある程度の元手が必要だ。投資したぶんを取り戻すには,それなりの時間がかかるが,一度軌道に乗ってしまえばオイシイ商売になる。一度はチャレンジすべし。
カスタムバトルで好みの設定にして遊んだり
マルチプレイヤーモードで腕を試そう
ルールとしては,相手を全滅させれば勝利となる「戦闘」,城を攻め落とすか,侵略部隊を退けられれば勝ちとなる「包囲戦(攻撃/防衛)」がある。このモードの設定をいじって,こちらが倒されにくい状態にしてから,コマンドの出し方など戦いの方法を勉強してもいいだろう。
ちなみに200人同士の部隊で戦うと,兵士数は400人になるわけで,描画すべきオブジェクトが多くなるため,動作は重くなる。だが,大規模な部隊同士のぶつかり合いは迫力があって壮観だ。
最大で64人のプレイヤーが参加できるマルチプレイは,英語版がすでに発売されているため稼働中のサーバも豊富で,多くの部屋が賑わっている。
マルチプレイのモードは,自分以外すべて敵になる「デスマッチ」,敵の陣地にある旗を奪い,自陣に持ち帰る「旗争奪戦」,拠点を制圧てポイントを得る「征服」など,全部で8種類が用意されている。
マルチプレイではよくあることだが,しかるべきMODを導入していないとサーバーに入れなかったり,ゲームのバージョン(日本版はVer. 1.127)が違ったりするとサーバーから弾かれることがあったりするので,軽く注意が必要。MODを使っているサーバーにアクセスした場合,そのMODの配布先を教えてくれるのは,親切設計といえそうだ。
プレイヤーの遊び方で,いろいろな人生が送れる
ボリュームも十分で,やり応え抜群
国王の忠実なしもべだったり,極悪非道の無法者として恐れられたりと,いろいろなタイプのキャラクターがプレイできるウォーバンド。悪者になったからバッドエンドということもなく,生き様は自由だ。
戦闘は馬が全面的にフィーチャーされており,独特の戦闘スタイルは多少の慣れが必要だが,コツをつかめば,走りながら敵を射抜けるだろう。アクションゲームのように,プレイヤー自らが前線に突撃して敵を蹴散らしてもいいし,リアルタイムストラテジーのように後方から戦況を見つつ,的確な指示を出して戦いを進めることもできる。戦闘システムは,ユニークだ。
交易でお金を稼ぎ,戦いとは無縁な商人として活躍,名声を上げて奥さんをもらい,公私ともに恵まれたリア充ライフを送るのもいいだろう。スクリーンショットを見ると,シンプルなアクションゲームかと思われるかも知れないが,ここまで自由度の高いゲームは,ほかにちょっと思いつかない。どう遊ぶかはプレイヤーの自由だ。
マルチプレイでもちょっと触れているが,PCゲームならではといえるMODも数多く開発されている。あくまで自己責任でお願いしたいが,MODの導入によってさらに長い期間,遊び続けれられそうだ。また,英語版ながら4Gamerの「こちら」に体験版を掲載しているので,ウォーバンドが気になった人は,まず試してみるといいだろう。
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