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「最新ブラウザー Internet Explorer 9 とHTML5で実現するブラウザーゲーム」と「GPUを使ったIE9ゲーム開発」イベントレポート。KinectのPC向けSDKリリース予告も
IE9では,ハードウェアの活用で高速化だけでなく消費電力低減も実現
IE9ではHTML5のサポートが大きな目玉となっているが,溝口氏はIE9の特徴として「高速」「洗練」「信頼」「相互運用性」の4つを挙げ,「今日はIE9の高速さに焦点を当てたい」とセッションを切り出した。
IE9の高速性の最大のポイントとして溝口氏が挙げたのが,GPUアクセラレーションの活用だ。
「IE9はすべての(描画)処理をGPUで行っている」と述べ,GPUをはじめとしたハードウェアの活用で,従来のブラウザに比べて大幅な高速化が達成できたとアピールしていた。
また,溝口氏は,「PCのハードウェアを活用した副産物というわけではないのだが,消費電力も下がっている」と発言。GPUにも適切に負荷を分散させることで消費電力が低減できるというのは十分にありえることで,単に動作が速くなっただけでないという点は,なかなかに興味深い話である。
ちなみに,溝口氏が消費電力の例として挙げたグラフはMSDNの記事を元にしたもの。このページでは多くの項目での比較が掲載されている。なかなか面白いデータなので,興味のある人は参照してみてほしい。
溝口氏が挙げるIE9の4つの特徴。本セッションでは主に“高速さ”が取り上げられた |
IE9の「速さ」の例としてJavaScriptを挙げる溝口氏。「(いまだにユーザーが多い)IE6に比べると50倍は速くなっている。これを機会にIE9に乗り換えてほしい」と呼びかけた |
GPUの機能を活用するIE9。HTML5のビデオ/オーディオ機能やCanvasといった新しいグラフィックス機能やSVGの描画にもGPUが使われるという |
溝口氏が「Safariと比べると1時間以上もバッテリが持つ」と述べつつ紹介されたデータ。HTML5のグラフィックスサンプル“Galactic”を実行したときの消費電力を比較したグラフで,IE9が最も低くなっている |
溝口氏は以上のようなIE9のメリットを語ったあと,IE9でプレイできる各種ゲームやデモをスライドで紹介した。以下に,その主なものを取り上げて紹介しておこう。
溝口氏が最初に紹介したのが4GamerのHTML5のベンチマークだ。IE9が他ブラウザを圧倒するという結果については,「こちら」の記事で確認してほしい |
「THE WORLD's BIGGEST PAC-MAN」(公式サイト)は,膨大な数のマップで遊べるPAC-MANである。遊ぶだけでなく,自らマップを作って公開することもできるというあたりがブラウザゲームらしい。プレイするだけならFacebookのアカウントは不要だ |
「Pirates Love Daisies」(公式サイト)は,HTML5を使ったタワーディフェンス風のゲームだ。HTML5に対応していれば,IE9以外のブラウザでもプレイできる |
「HTML5 Beats」(公式サイト)は,HTML5を使ったサウンドプレーヤー風のデモだ。溝口氏が「音楽ゲームもHTML5を使えば簡単に作れるのではないか」と語っていたが,確かにそう思わせてくれる |
IE9リリース当時に話題になった,HTML5のインラインSVG(Scalable Vector Graphics)を使ったアニメーションデモ「SVG女子」(公式サイト) |
GPUを使ったブラウザゲームの課題とは?
なお,IE9とは無関係だが,PCゲーマーとしては見逃せないニュースとして,セッションの冒頭で鵜木氏が,Xbox 360用モーションコントローラであるKinectのPC向けSDKのリリースを予告していた。米Microsoftの「こちら」のページで近々ダウンロードできるようになるとのことなので,期待して待ちたいところだ。
佐野氏は,「インストール不要」「ユーザー登録の簡略化」といったブラウザゲームのメリットを挙げつつも,いま一つ流行らない理由として「2Dゲームなどシンプルなゲームが中心になってしまううえ,アクションも足りないためではないか」と分析した。
従来のブラウザゲームといえば,Flashが主流だ。Flashでもそれなりのゲームは作れるが,3Dを含めたグラフィックスを“リッチ”にしようとすると,動作速度が遅くなってしまう場合があるという。
前半のセッションにもあったように,IE9ではHTML5のレンダリングにGPUが使われているため,よりリッチなグラフィックスが利用できるようになるが,佐野氏はブラウザによるパフォーマンスの差を課題として挙げていた。
さらに佐野氏は,HTML5を使ったゲームの課題としてツールの必要性を挙げていた。Flashはツールが豊富だが,HTML5はまだまだ整備が必要ということだろう。
GPUアクセラレーションによって高速なHTML5のレンダリングが可能なIE9は魅力的に感じられるが,Adobe Flash Playerも10.1以降はGPUアクセラレーションに対応していることもあり,絶対的な優位性とまではいかないだろう。ゲームに関して言えば,プラットフォームがIE9に絞られることで,プレイヤーの間口が狭くなってしまうというデメリットもある。となると,佐野氏がデモで示したように,開発サイドはIE9以外でも遊べるように工夫するという形が多くなりそうだ。
ともあれ,IE9はブラウザの可能性を広げてくれる楽しいツールであることは間違いない。OSがWindows 7またはVistaであれば,誰でもIE9をインストールできるので,興味のある人は,以下のサイトにアクセスしてみてほしい。
日本マイクロソフト公式サイト内
「Internet Explorer のダウンロード」ページ
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Windows 7
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