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[GDC 2010]大きなスタジオの片隅でゲリラ的に作られた一本「Battlefield 1943」の制作物語が明らかに
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印刷2010/03/14 18:23

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[GDC 2010]大きなスタジオの片隅でゲリラ的に作られた一本「Battlefield 1943」の制作物語が明らかに

画像集#001のサムネイル/[GDC 2010]大きなスタジオの片隅でゲリラ的に作られた一本「Battlefield 1943」の制作物語が明らかに
 現地時間3月13日,GDCで行われたレクチャー「Battlefield 1943: My First Arcade Game」は,「Battlefield 1943」PlayStation 3 / Xbox 360。邦題,バトルフィールド1943)がどのようにして作られたのかを説明するものだ。
 スピーカーは,同作のプロデューサーである,Patrick Liu氏で,Liu氏は北米のデベロッパであるStarbreeze Studiosにおいて「The Darkness」PlayStation 3 / Xbox 360。2007年)や「The Chronicles of Riddick: Assault on Dark Athena」PC版 / PlayStation 3 / Xbox 360。2009年)の制作に携わったほか,EA DICEでは「Battlefield: Bad Company」(PlayStation 3 / Xbox 360。2008年)の制作にも参加してきた人物だ。
 これまではパッケージばかりを作ってきたが,今回のBattlefield 1943はLiu氏としては初めてのダウンロード専用コンテンツであり,「私の最初のアーケードゲーム」だと語る。ここでいうアーケードゲームとは,ゲームセンターなどに置かれる業務用のゲーム機器のことではなく,パッケージゲームに対比して,Xbox LIVE arcadeなどで配信されるダウンロードコンテンツくらいの意味。なんで,Battlefield 1943がアーケードゲームなの? などと筆者のように考え込む必要はないので,考え込まないように。

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 ともあれ,2009年7月にPlayStation 3/Xbox 360向けに配信が始まったBattlefield 1943は,予想を超えるヒット作になった。配信開始から2か月以内に,100万ダウンロードを達成。強力なライバルだと思われたEpic Gamesの「Shadow Complex」を抜いて,“初日”および“一週間後”,そして“一か月後”それぞれの売り上げ成績のレコードを現在も保持している。
 メディアやプレイヤーの評価も高く,おなじみのMetascoreは,PlayStation 3版が84点,Xbox 360版が83点というスコアを獲得した。
 ちなみに,なぜか知らないが,2010年内に発売される予定のPC版もMetascoreで82点を取っており,「発売前のタイトルとしては,なかなかいい成績ではないかと思います」とLiu氏は聴衆を笑わせた。

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 彼のアイデアはこうだ。ゲーム開発会社がお金を儲ける手段として最もスタンダードなのは,人を集めてゲームを作り,それをパッケージして店頭で売ること。だが,それは何度もやった経験があるので面白くない。幸い,ここには一仕事終わって体の空いている開発者が何人かいる。ベテラン揃いであれこれ指示を出す必要のない彼らを集めて,ダウンロードコンテンツを作ろう。それもコンシューマ機向けに,安く。……儲かりそうだぞ,というわけだ。

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画像集#011のサムネイル/[GDC 2010]大きなスタジオの片隅でゲリラ的に作られた一本「Battlefield 1943」の制作物語が明らかに
 使える予算は,フルゲームの約10分の1。そのためには,既存のアセットを多用することが必要だ。Wake Island(ウェーク島)やCoral Sea(珊瑚海)など,収録された三種類のマップ(プラス実績により解除されるマップが一つ)は,「Battlefield 1942」で使用されたオブジェクトが多く使われている。もっとも,Battlefield 1942とまったく同じだと思っているプレイヤーも多いとのことだが,実はサイズの変更などを含めて大胆かつ細かく手が入っている。ハードウェアの制約から,最大参加プレイヤー数が24人になるため,最大64人向けにデザインされたマップと同じというわけにはいかないのだ。
 「島における戦い」のみになったのも似た理由で,参加人数が減っても敵に遭遇しやすくするためとのことだった。
 開発メンバーは最大でも15名で,人数が少ない分,コミュニケーションは容易だった。そのためLiu氏は彼らに,“ありものを使い,少人数ですばやくダウンロード専用ゲームを開発する”という制作意図を十分に伝えることができた。驚いたことに,彼らの仕上げてくるものの質はきわめて高かったという。なんとなく分かる気がするが,こういう状況のほうが開発者魂が燃えるのだろう。
 もっとも,15名という人数が多いか少ないかについては,聞いた人の環境に左右される部分で,最後の質疑応答のときにも「ベテラン開発者15名の体が空いているなんて,信じられない」という意見もあった。それに答えてLiu氏は,EA DICEのリソースが豊富である,ということにしていたが,ちなみに,15名の中にはゲームエンジンである「Frostbite」のサポート要員やQC関係は含まれていない。また,最終的に開発に関わった人数は,のべ約70名になり,これは,フルパッケージのタイトルを作成する人数とそれほど変わらない。

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 続いてLiu氏は,どのようなプレイヤーを対象にするかについても決めた。考えられるのは,「Battlefield 1942のプレイヤー」「Rosy colored glasses」「Battlefield: Bad Companyのファン」「Battlefieldシリーズを遊んだことのない人」,そして「カジュアルゲーマー」という五つのセグメントだ。ちなみに,Rosy colored glassesには適切な訳語が思いつかないのだが,陽気で出来事のいい面ばかり見る人のことで,まあ,なんでもやりたがり屋さんという雰囲気だろうか。
 Liu氏はこのうち,Battlefield 1942のプレイヤーとカジュアルゲーマーはオミットする。これはBattlefield 1942のプレイヤーはいまだにBattlefield 1942をプレイしており,Battlefield 1943に移ってくる理由がないこと。そしてカジュアルゲーマーの多くはFPSをあまりプレイしないことからだという。

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 こうしたことを踏まえて,Battlefield 1943のアウトラインが作成されていったのだ。体力は自動的に回復するが,これは遠く離れた場所にあるヘルスパックを取りに戻ったり,衛生兵に治療をお願いしたりという面倒さをなくすため。弾薬も無制限だが,これもまた弾切れ時にいちいち補充するわずらわしさを減らすためだ。
 兵科も3種類に減らしてビギナーにも分かりやすくし,ついでにミニマップと分隊もなくそうと思ったが,これはやめておいたという。ミニマップはバトルフィールドシリーズの目立つ特徴でもあるし,最前線近くにリスポーンできる分隊システムは,ゲーム展開をスピーディにしてくれるからだ。

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 このように,Battlefield 1943は潤沢な資金と人員を与えられたタイトルではなかったのだが,それでも実績が示すようにスマッシュヒットになった。ネームバリューを含め,手持ちのリソースを最大限に活用した結果の成功だといえるだろう。大きなスタジオの片隅でゲリラ的に制作された本作だが,手を抜いたわけではなく,考えるべきところは十分に考え抜いているという。
 バトルフィールドシリーズの中でも異色の立ち位置にある,Battlefield 1943制作の秘密が明かされたこのレクチャー。次のビッグプロジェクトが終わり,体の空いた開発者が増えたとき,Liu氏の暗躍が再び始まるのかもしれない。
 まあ,それより先に,PC版を早くリリースしてほしいのだけど。
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