プレイレポート
タイムリミットは23日間! 尋問を耐え抜き起訴を免れよ。「遠隔捜査 -真実への23日間-」の魅力を紹介
中には自分や,自分を応援してくれる人達を信じて,信念を曲げず戦い続ける人がいるのも事実だが,裁判で勝利する確率はたったの0.14%ともいわれている。つまりこういった場合,裁判で無実を勝ち取れる確率は非常に低いのだ。
だからといって,無実の人間がやってもいない罪で裁かれるなど,決してあってはならないことだ。裁判制度の見直しや,警察の捜査体制の強化など,改善していかなければならない問題は山のように存在する。
なぜこんな前振りをしたのかというと,今回紹介するゲームが,冤罪をテーマにしたものだからだ。タイトルは「遠隔捜査 -真実への23日間-」(以下,遠隔捜査)。2月5日にソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたPSP用ソフトである。
本作は,主人公である斉藤光志(プレイヤー)が殺人事件の容疑者として逮捕され,留置場に拘束されるというとんでもない場面からスタートする。
光志は酒に酔って,事件当日の記憶がほとんどない。しかし,自分のアリバイを証明しなければ起訴は免れない。そうなった場合,有罪はほぼ確定してしまう。どうすればいいんだ……。そんな,途方にくれていた光志の元に,一人の接見人が現れる。それが本作におけるキーマンともいうべき存在,新城法子である。
本作でいうところの“調査”は,一般的な推理アドベンチャーとは若干異なる。遠隔捜査における調査とは,光志(プレイヤー)が指定した場所を,法子に調査しに行ってもらい,その調査で得た情報を法子が光志に伝えるといった感じのものなのだ。ちなみに,調査パートでの法子の行動はすべてプレイヤーが操作するので,情報や証拠の取りこぼしがないようにしっかりと調査することが大事なのだ。
そして,法子から受け取った情報を元に,尋問での反撃方法を考えたり,事件の真相(何がこの事件を引き起こしたのか)を解明することが光志の役割。
法子は調査のみを目的として動き,光志は推理に注力する,というように,操作キャラクターによってやるべきことが大きく異なってくるのが,本作の大きな特徴であり,魅力である。
起訴されるまでのタイムリミットは23日間! それまでに自分の無実を証明し,裁判を回避するのだ。
調査パートでは法子を操作
怪しいものはとにかくチェック!
たとえば,犯行現場となったバー,ライトブルーは午後にならないと開店しない。そんなライトブルーへ午前中に調査に行っても空振りに終わってしまい,何の情報も得られぬまま時間だけが過ぎ去ってしまうのだ。なので,調査する場所を選ぶ際には,営業時間なども頭に入れておかなければならない。
かくいう筆者も,最初は何も確認しないで適当に場所を選んでいたため,法子に無駄足を運ばせてしまうことも多かった。……光志に申し訳ない。
ともあれ,ただ情報を得ていくだけではなく,得た情報を元に推理をして,次の調査に生かしていくことが大切なのだ。やや難しく感じるかもしれないが,証言などを聞いていると,“引っかかる”部分が大抵見つけられるので,きちんと話を聞いていればスムースに調査が進められるはずだ。
黙秘を有効に使い,尋問を切り抜けろ!
もし尋問内容とは関係のないクルーを使おうものなら,心証ゲージが減ってしまう。心証ゲージとは,アクションゲームでいうところの体力ゲージのようなもので,このゲージがなくなってしまうと,主人公は反論する気力を失い,犯してもいない罪を認めてしまってゲームオーバー,という最悪の結末になる。「せっかく法子が頑張って調査をしているのに,お前があきらめてどうする!」というツッコミを入れたくなるような光景が待ち受けているのだ。
そうならないためには,尋問に対し,的確なクルーを選んで三浦を納得させる必要がある。そうすれば心証ゲージはアップしていき,少なくともゲームオーバーは回避できる。
しかし,もし尋問に対して的確なクルーが用意されていなかったとしたら? そんな時に重宝するのが“黙秘”というクルーだ。
黙秘とはその名のとおり,尋問に対してだんまりを決め込むこと。もし,選ぶべきほかのクルーが見当たらなかったり,分からなかったりした場合は,無理せず黙秘を使うことをオススメする。心証ゲージは多少下がってしまうものの,間違ったクルーを選んだ時の減り具合に比べれば全然マシだ。ちなみに,黙秘権(供述拒否権)とは,日本国憲法でも保障されている,立派な権利の一つだ。
筆者も6歳のとき,借りていたファミコンカセットをなくしてしまい,友人による厳しい追及にあい,黙秘権を行使したことがある。最終的には(当然)カセットをなくしたことが発覚し,両親にこっぴどく叱られたものだ……話がそれてしまったが,とにかく尋問パートでは無理をしないで,積極的に黙秘を使っていくのも重要なのだ。
なお,黙秘を使わずに適当なクルーを選び続けるようなプレイをしていると,最悪の場合,勾留2日目(プレイ時間でいうとほんの数十分)でのゲームオーバーもあり得るので要注意だ(気になる人は一度試してみよう)。
松竹徳幸氏の描く魅力溢れるキャラクター達にも注目!
フルボイスで喋りまくるキャラクター達のやり取りは,まるでアニメを見ているような感覚で楽しめる。声優陣も非常に豪華な布陣で固められているので,声優ファンも必見,というか必聴である。
ゲームの性質上,あまりストーリー面に踏み込みすぎるわけにもいかないので,ここでは,本作の登場キャラクターについて紹介していこう。
また,人一倍正義感が強く,曲がった事が大嫌いで,本作でもことあるごとに「オレはやっていない」と無実を正々堂々と宣言する。その意思の強さには,担当刑事の三浦も一瞬たじろぐほど。また,断片的な情報から真実を導き出す,優れた推理能力の持ち主でもある。
光志同様,非常に正義感が強く,間違ったことに関しては毅然とした態度で挑んでいく。昔付き合っていた光志が,1通の手紙を残して突然去っていったことを今でも気にしており,留置場での再開シーンでは,何とも言えない悲しい表情を浮かべていた。光志の冤罪を証明するため,調査活動を進めていくうちに,光志とのわだかまりも少しずつ解消されていく。光志を第一の主人公とするならば,法子は第二の主人公といっていいだろう。
三浦は非常に頭がキレる刑事で,尋問パートにおいては光志(プレイヤー)を幾度となく苦しめる。しかし犯罪を憎む正義漢という意味では,光志と通じるものがある。それを象徴するようなエピソードがあるので紹介しよう。
ある日の尋問中,三浦の上司である近藤がやってきた。彼は光志に掴みかかり,脅迫まがいの尋問で光志を追い詰める。光志は当然のごとく容疑を否認したが,近藤は怒りが静まるばかりか,さらに激怒していく。放っておいたら暴力でも振るいそうな勢いだ。そんな時,三浦が止めに入り,「やめてください。これ以上は上に報告せざるを得ませんよ」と言い放ち,上司である近藤を制止したのだ。光志に事件の真相を白状させたいのは三浦も同様だが,そういったやり方は彼の正義が許さなかったのだろう。
何かと謎の多い人物ではあるが,年上のお姉さんキャラクターが好きな人なら初見でやられてしまうことは間違いないと思う。
遠隔捜査は,推理アドベンチャーとしてはオーソドックスな作品に見えるかもしれないが,冤罪というテーマや,23日間という時間制限,調査パート/尋問パートそれぞれの面白味など,注目すべき点は多い。何よりプレイしたあとに,冤罪事件という社会問題に対する興味(あるいは理解)を,プレイヤーに持たせてくれる点がすばらしい。
筆者もあらためて,自分を信じ,正義を貫く事の大切さを思い知らされたものだ。もし筆者が光志と同じような境遇に置かれた場合(ないとは言い切れないのが冤罪事件の恐ろしいところ)には,光志と同じように声を大にして叫びたいと思う。「オレはやってない」と。
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遠隔捜査 -真実への23日間-
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