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英雄やスーパーマンのいない戦場がここにある。戦術性の高いヘヴィーなFPS「OPERATION FLASHPOINT:DRAGON RISING」
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印刷2010/03/06 15:56

レビュー

英雄やスーパーマンのいない戦場がここにある。戦術性の高いヘヴィーなFPS「OPERATION FLASHPOINT:DRAGON RISING」


» 4Gamerスタッフ/ライターが,個人的に大好きなゲームを熱っぽく紹介する不定期連載,「極私的コンシューマゲームセレクション」。今回はライターのAlexander服部氏が,「選ばれた者のみが楽しめる」と評する,リアル系FPS「OPERATION FLASHPOINT: DRAGON RISING」をみっちり紹介する。



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 ここ数年,PlayStation 3やXbox 360といった家庭用ゲーム機が,着実に売り上げを伸ばしてきたこともあり,FPSというジャンルのゲームが“普通のゲーム”として,日本でも遊ばれるようになってきた。最近では,ワールドワイドで驚異的な売り上げを記録した“映画のようなFPS”,「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア2」PlayStation 3 / Xbox 360)の成功が記憶に新しいが,一口にFPSといっても,そのプレイフィールはさまざまだ。今回紹介する「OPERATION FLASHPOINT: DRAGON RISING」PlayStation 3 / Xbox 360)は,ある意味“癖のある”FPSだと言える。

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 OPERATION FLASHPOINT: DRAGON RISINGの舞台は,日本の北方,樺太沖に浮かぶ架空の島“スキラ島”だ。海底に眠る天然資源の利権を主張し,スキラ島への侵攻を開始した中国軍と,同様に権利を主張するロシア軍との間で戦いの火ぶたが切って落とされる。プレイヤーは,ロシアを援助するアメリカ軍海兵隊の兵士となり,中国軍と戦うことになる。

 ……という設定自体は,戦争物FPSとしては別段珍しいものではないが,本作ではプレイヤーが部隊長として,部下に命令を出すことができる。これは「レインボーシックス ベガス」のようにシンプルなものではない。移動を始め,威嚇射撃,援護射撃,拠点防御,建物襲撃,乗り物の使用などなど,その内容は細やかで多岐にわたる。
 プレイヤーは,戦況を的確に判断し,それに応じた指示を出して部隊を運用し,勝利を目指していくのだ。ステージによっては(あるいは戦術によっては),自分自身が一度も発砲することなくクリアすることも可能というところは,本作の面白い部分と言えるだろう。単純なプレイヤースキルを磨くことも大事だが,本作を楽しむためには,部隊長としてのリーダーシップ,戦術手腕も不可欠なのだ。

※本稿で使用しているムービーは,筆者のフレンド達に許可を得て撮影/掲載したものです


“リアルな戦場”に,派手な演出は必要ない


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 このゲームをプレイしていると,ほかのゲームと極端に異なる魅力に気づく。それは,本作のリアリティが生む,呼吸を忘れるような緊張感だ。
 たとえば,どこからか攻撃された敵は,伏せたり隠れたりする。棒立ちのまま撃ち合いをする敵は一人もいない。被弾による出血をすぐに止血しなければ,最終的には死に至る。もちろん,止血したところで怪我が治るわけではない。腕を怪我すれば狙いが定まりにくくなり,足を怪我すれば移動速度が遅くなる。言うまでもないが,急所に被弾すれば即死もあり得る。銃弾も無限に持てるわけではないので,倒した敵から回収する必要があるかもしれない。とはいえ,敵も死ぬまでの間に一発も撃たないわけではないので,一度に多くの銃弾を得られることは,それほどない。
 ……これらの要素は,チュートリアルになっているステージ1以外のすべてのステージで,プレイヤーに大きなプレッシャーを与えてくる。

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 地形に関して説明すると,スキラ島には,障害物らしい障害物はあまりなく,基本的にブッシュに身を隠すようなケースが多い。にも関わらず,銃弾一発の重みがプレイヤーにとっては大きなプレッシャーになるゲームデザインだ。その結果として「敵を先に発見する,敵に発見される前に射殺する」という2点が非常に大事なポイントになってくる。そこで,双眼鏡を覗きながら安全を確認し,できるだけ速やかに,それでいてひっそりと,短距離移動を繰り返すことになる。ゲーム全体のプレイ時間を100とすれば,索敵と移動を足した時間は70を超えているのではないだろうか。
 こういうゲームだから,味方に出す指示も,撃ち合いを避ける,もしくは有利に進軍するためのポジションを取る,といったことが優先されることになる。筆者の経験では,山頂からの威嚇射撃で敵の頭を押さえておくと,他の部隊やプレイヤーが前進するための,最高のヘルプになる。威嚇射撃であれば,敵に当たらなくても敵の動きを止めることができるし,自分が高所にいると索敵能力が上がるので,これは一度に二度おいしい。ただし,山頂で敵に囲まれて壊滅したこともあったので,すべての状況で使える作戦ではないようだ。このゲーム,そんなに甘くはない。



これを楽しめるのは選ばれた人のみ


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 ここまで読んだ人なら分かると思うが,OPERATION FLASHPOINT: DRAGON RISINGを,一般的な戦争物FPSと同じようなものだと考えていると,痛い目に遭う。
 ちょっとした被弾が死に結びつき,敵はすぐに隠れたり伏せたりする。遮蔽物が少なく一気に距離を詰めるような戦い方も難しい。このような状況を理解すれば,自ずと遠距離での狙撃を中心とした戦い方になるし,狙撃するにしても,居場所を悟られないようにこまめに移動を繰り返すような地味な戦い方を強いられる。たとえ所有している武器がアサルトライフルであろうと,接近戦のリスクを無視できないこともあり,命中率やスコープの倍率を無視してでも,狙撃に偏った戦い方になる。
 とはいえこれが,スキラ島でのリアルな戦い方なのである。本作は,ちょうど良い場所に遮蔽物があったり,じっとしていれば怪我が治ったり,殺される直前まで元気いっぱいで戦えたりするゲームではない。英雄やスーパーマンのいない戦場がここにあるのだ。万人受けするゲームとは決して言えないが,このゲームに魅力を感じる人は,確実に存在するだろう。この“重さ”に興味があるなら,ぜひ一度は本作をプレイしてみてほしい。



プレイヤーの“視点”が変わるマルチプレイ


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 ここまでは,基本的にキャンペーンモードに関して紹介してきたが,ここからはマルチプレイモードについて紹介していこう。
 本作は,フレンドと一緒に遊ぶと評価が激変する。そのシビアなシステムゆえに,Co-opや対戦での遊び方が,一般的なFPSとはかなり異なり,誤解を恐れずに言ってしまうと,RTSっぽいゲームの遊び方に変化するのだ。

 まずCo-opに関してだが,本作では,キャンペーンモードを最大4人でプレイできる。ホストが部隊長で,ほかの参加者は部隊の中で好きな兵科を選べる。ソロでキャンペーンを進めていると,アサルトライフルがメイン武器の部隊長しか選べないので,遠距離での撃ち合いが少々つらいのだが,Co-opであれば,狙撃兵でも衛生兵でも好きな兵科が選べるのだ。
 部隊長を担当する際に,実際にボイスチャットで指示を出せる点も,Co-opならではの魅力だろう。もちろん部隊員達も,戦況を自分の声で伝えることができる。狙撃兵がスコープで敵を発見し,敵の居場所を具体的に説明したり,衛生兵に助けを求めたりといったこともスムースに行える。シビアなゲームだからこそ,ボイスチャットでの密な連携が重要な意味を持ってくるのだ。

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 対戦に関しては,「殲滅作戦」と「潜入作戦」が用意されており,いずれも最大8人(4vs.4)でのバトルが楽しめる。殲滅作戦は,いわゆるチームデスマッチなので,多少でもFPSをたしなんでいる人であれば,すぐにチャレンジ可能だろう。
 一方,潜入作戦は少々特殊な対戦モードで,これは攻撃組と防御組に分かれて行われる。攻撃側は敵陣に存在している目標を破壊すれば勝利となり,防御側はそれを守りきることが目標となっている。このモードでは,人間+CPUで1つのチームになっている。かなり広大なマップなので,攻める側も守る側も,兵士の布陣に頭を悩ませることになるだろう。
 攻める側は,味方をおとりに使って敵の動きを牽制したり,バラバラに配置して隠密行動に徹したりといった戦い方が楽しめる。守る方は,敵が通りそうなルートに味方を配置して,進軍を阻止したり,敵の裏に回り込ませて壊滅を狙ったりというプレイが可能だ。すべてがリアルタイムで進む広大な戦場で,味方に細かく指示を出しながら戦うその様は,まさにRTSそのものだ。もちろん撃ち合いで大いに暴れても良いのだが,本作での勇敢な行為は,あまり勝利に貢献できない。常に味方に指示を出しながら,相手の思考を読み取り,その虚を衝くことこそが重要なのだ。マップが広いため,敵と遭遇するまでに時間がかかるのが,気になるといえば気になるのだが,ゲームに慣れてくれば,その緊張感さえもが本作の魅力に思えてくるだろう。

画像集#018のサムネイル/英雄やスーパーマンのいない戦場がここにある。戦術性の高いヘヴィーなFPS「OPERATION FLASHPOINT:DRAGON RISING」

 潜入作戦をプレイすれば,本作を「地味なだけ」と判断している人であっても,評価は一変するはずだ。とくに,FPSにアクション性以外のものを求めている人には,実際に体験してほしいゲームの一つである。「人を選ぶ地味なゲーム」という印象から,本作をプレイしないのはあまりにももったいない。「映画のようなFPS」で,手に汗握るど派手な物語を楽しむのもいいが,本作が与えてくれるとびきりの緊張感で,冷や汗をかきまくってみるのも悪くない。

動画撮影機材:トムソン・カノープス HDRECS
動画編集用ソフト:トムソン・カノープス Edius Pro 5

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