レビュー
遊び尽くせないアドベンチャーがあなたを待っている
SPORE
ギャラクティック アドベンチャー
» エレクトロニック・アーツから発売中の「SPORE ギャラクティック アドベンチャー」は,数十億年にわたる生命進化を手軽に楽しめる類例なきシミュレーションゲーム「SPORE」の拡張パック。銀河にちらばる無数の星の一つにプレイヤー自らが降り立ち,そこで繰り広げられるさまざまなアドベンチャーを楽しむという寸法だ。そんな本作に,4Gamerきっての冒険野郎といわれるUHAUHA氏がチャレンジした。
そのへんの惑星に降りて冒険を楽しめる
「SPORE」の拡張パックが登場
顕微鏡でしか見えないちっこい単細胞生物からインテリジェンスきらめく知的生命体へ進化し,やがて地上から宇宙へ飛び出て銀河系を制覇するまでの数十億年の生命進化をそれなりに体験できるシミュレーション,「SPORE」。天才ゲームクリエイター,ウィル・ライト氏渾身の一作にして,ライト氏がどうやらゲーム制作から手を引いたらしいので,最後の作品。もっとも,個人的にはいつか帰ってくると信じているのだが。
それはともかく,週刊連載「SPOREで作る,あなたの銀河」などで本作の魅力をお伝えしてきた筆者としても,スポアぺディア(プレイヤーが制作したクリーチャーのオンラインライブラリー)に登録されたクリーチャーが1億匹を超えたと聞いて,世界にはそんなにたくさんのプレイヤーがいるのかとあらためてビックリである。一人で100匹ぐらい登録している人もかなり多いだろうけど,まあ,凄めのタイトルであることには違いない。
さて,ここで紹介するのは,2009年6月にエレクトロニック・アーツから発売となった,そんなSPOREの拡張パック「SPORE ギャラクティック アドベンチャー」である。
昨年12月に発売された,「SPOREクリーピー&キュートパーツパック」に続く拡張パック第二弾で,今回は「宇宙ステージ」でプレイヤーの操る艦長(クリーチャーキャプテン)が惑星に降り立ち,そこで冒険が繰り広げられるというものだ。ご存じのように,これまでの宇宙ステージでは,宇宙船に乗ったまま地上を探索したり,攻撃をしかけたりするだけしかできなかったが,今回は二本の足で大地にすっくと立つことができるわけだ。いやほら,クリーチャーによっては足が二本じゃない場合もあるけど。
念のため書いておくが,ギャラクティック アドベンチャーをプレイするには別途SPORE本編が必要となる。また,ギャラクティック アドベンチャーの購入は,エレクトロニック・アーツが運営するオンラインストア「EA STORE」,あるいはPC版のパッケージ販売を行っている「Amazon.co.jp」で購入する必要があり,店頭では購入できないので注意しよう。
ギャラクティック アドベンチャーを導入すると,最初のメニュー画面に「ギャラクティック アドベンチャーメニュー」が登場する。この中には「クイックプレイ」「アドベンチャークリエイター」,そして「アドベンチャーの編集」の三つのモードが用意されているという趣向だ。もちろん,SPORE本編(SPORE クリーピー&キュートパーツパック含む)も今までどおり楽しめるので,「冒険などより,ひたすら進化したいんだオレは」という人も安心してほしい。というか,そういう人は買わないか。
宇宙ステージの銀河マップ。アドベンチャーのある惑星には旗マークがついている。また,アドベンチャーは何度でも挑戦できる |
スポアぺディアには沢山のアドベンチャーが登録されている。プレイ回数,評価,難度が分かるので,これは! と思ったら挑戦だ |
宇宙ステージにオリジナルアドベンチャーも登場!
無数に用意されたアドベンチャーを楽しもう
ゲームに用意されているのはMaxisが制作したアドベンチャーだけでなく,スポアぺディアに登録されているものも自動的に出てくる。つまり自分や,どこかの誰かが作ったアドベンチャーがゲームの一部として自然に登場してしまうわけで,プレイできるアドベンチャーは無限といってもいいのだ。いやー,凄いスケール。
アドベンチャーには「戦士」「狂言者」「シャーマン」「外交官」「貿易商」「科学者」「吟遊詩人」,そして「エコロジスト」の八つのテーマがあり,内容はそれらに沿ったものになっている。アドベンチャーを始めると,惑星に降り立った艦長に対し「〜に近づく」「〜に話しかける」「〜を確保する」「〜を〜に渡す」「〜を全滅させる」といった指示が出て,それらをクリアしていくのがプレイヤーの仕事。すべきことが複数ある場合がほとんどで,すべての目標をクリアするとミッション完了,もしくは次の章へと進んでいけるというダンドリだ。
数分で終わるものから全8章で構成された長編までと,アドベンチャーはさまざま,その内容も戦闘ではなくコミュニケーションを重視したもの,逆に戦闘をきちんとこなさなければならないもの,そしてパズル要素を含んだものなど,内容もバリエーションに富んでいる。
とはいえ,中には単純すぎるものもあるし,ちょっとどうかなと思うようなものもあり,これはまあ普通のプレイヤーが作った作品も混じっているからだ。とはいえ,絶妙な難度がお見事だったり,引き込まれるようなストーリーを持っていたりと,全体的にレベルは高い印象。ちなみに,プレイヤーオリジナルのアドベンチャーをクリアすると,最後に面白かったかどうかの評価を付けられる。
なお,アドベンチャーをクリアすると最大で100ポイント(難度により違いがある)が加算され,一定ポイントに達すると艦長レベルが上がってアクセサリーが次々にアンロックされていく。アクセサリーは八つのテーマごとに用意されており,すべてをアンロックすると,そのテーマの「アビリティ」を利用できるようになる。アビリティのなんたるかは,SPOREプレイヤーならよくご存じだろう。
ギャラクティック アドベンチャーは宇宙ステージを拡張するものなので,ポイントやアンロックされたアクセサリーは艦長として使用したクリーチャーごとに管理されている。そのため,あるクリーチャーでアンロックしたアクセサリーを別のクリーチャーで使うことはできない。
ギャラクティック アドベンチャーメニューのクイックプレイを選ぶと,スポアぺディアに登録されているアドベンチャーからダイレクトに選択できる。そのアドベンチャーがどれくらいプレイされたか,評価はどうか,難度や獲得できるポイントなどは,といったことが分かるようになっているので,面白そうなものがあれば挑戦してみよう。
世界中のプレイヤーを唸らせる
オリジナルアドベンチャーを作ろう!
アドベンチャークリエイターを使えば,自分だけのオリジナルアドベンチャーが作成できる。完成したアドベンチャーはスポアぺディアに登録され,どこかの誰かのゲームに登場する。そのうち,どれだけの人が遊んだのか,出来映えをどう思われているのかなどが分かってしまう仕掛けなので,ちょっとドキドキである。
ベースとなる惑星がたくさん用意されており,サイズの変更こそできないものの,テラフォームモードで丘や山脈,大陸や島,海や湖,道路,天候,惑星の色,植生などを好みに合わせて調整できる。惑星全体を使ったシナリオだけでなく,例えば章ごとに異なる場所を使ったりすることも可能と,惑星をどう活用するかは,クリエイターとしての腕の見せ所だ。
艦長は冒険のスタート位置に配置するが,決められたクリーチャーにするのか,プレイヤーが選択できるようにするのかなどが設定できる。また,艦長と行動を共にする乗組員クリーチャーを三匹まで追加可能だ。艦長以外のクリーチャー,ビークル,建物,固定オブジェクト(木や岩など),ゲームプレイオブジェクト(回復&パワーアップアイテム,鍵など),音声,効果(爆発や雨など)はすべて“キャスト”と呼ばれる。つまり,必要なキャストを惑星上に配置していくことが基本となる。
キャストそれぞれに「個性」(平和的,中立,知性なし,縄張り意識あり,攻撃的)の設定,状況を察知できる範囲を決める「認識度」,移動速度となる「スピード」,与えるダメージを調整する「ダメージボーナス」など,さまざまな項目をかなり細かく調整でき,これらの組み合わせによってキャストの個性を作り上げていくわけだ。また,セリフや字幕もキャストごとに割り当てることができ,テキストは吹き出しの形で表示される。
冒険の途中で死ぬと最初からやり直しだ。長いアドベンチャーで死ぬと悲しい。チェックポイントから復帰できる機能がほしかった |
大量のクリーチャーを登場させ,与えるダメージを調整すれば,バッサバッサと倒しまくるアドベンチャーができる。SPORE無双と名づけよう |
さて,ストーリーを作るためには,「近づく」「倒す/破壊する」「仲良くなる」といった11種類の「目標カード」が用意されている。例えば,仲良くなるなら,キャストと仲良くなることで目標達成となり,渡すならば設定したオブジェクトを拾って指定したキャストに渡せば目標達成になるわけだ。
複数のキャストに対して目標を設定することもでき,キャストのチーム行動やパターン,復活の時間などを組み合わせることで,倒しても倒しても襲ってくるクリーチャーなどが作れる。
要するに,配置した艦長とキャストを目標カードで関連づけて,ストーリーの流れを作っていくことになり,文章にするとちょっと面倒に聞こえるかもしれないが,やってみればとても単純だ(いくらか話をはしょっているが)。
もっとも,いきなり大長編大河アドベンチャーを作るのはやはり難しい。まずはMaxisが用意したアドベンチャーや他のプレイヤーが作成したアドベンチャーを試したり,「アドベンチャーの編集」でどんな作りになっているのかを参考にするといいかもしれない。
艦長アクセサリーの装着は「艦長服装クリエイター」で行う。艦長アクセサリーは強力なものばかりなので,入手したら必ず装備しておきたい |
一番頭を悩ませるのは吹き出し表示されるセリフかもしれない。登場するクリーチャー全員に用意する必要はないが,要所で使用すると効果的 |
SPOREを持っているなら,導入して損はない
かくいう筆者も,いくつかアドベンチャーを作ってみた。かなり簡単に作業は進むのだが,割り当てられる目標カードが11種類と少ないせいか,単純に組み合わせてしまうと,「〜に会って」「〜を拾って」といった感じの単調な展開になりがちだ。
目的地に行く途中でクリーチャーに襲われたり,誰かと会話があったりなど,冒険をワクワクさせる要素を組み込んだりするといいかもしれないと思うが,なかなか難しい。
プレイヤーの気持ちを引きつけるようなテキストを考えるのも大変だし,ぶっちゃけ,自分で作ったアドベンチャーで「うまくできた」「面白い」と感じたことは一度もなく,楽しんで遊んでもらえる作品を作るのは非常に大変なのだ。こればかりは,自分のセンスのなさにガッカリするしかない。とほほ。
場所の使い方や,アドベンチャーのまとめ方など,Maxisの作成したアドベンチャーは非常に勉強になる。ただプレイしていても楽しいし |
見知らぬ誰かが作ったアドベンチャーがあなたのゲームに登場する。冒険は無限に用意されており,毎日プレイしても遊び尽くせない |
ギャラクティック アドベンチャーを導入すると宇宙ステージのお楽しみが各段に向上する。オリジナルアドベンチャーをわざわざ作らなくても,ネット上に無数にあるアドベンチャーが楽しめるので,SPOREで遊んでいるのであれば導入しておいて損はないだろう。
多くの人が楽しめるオリジナルアドベンチャーを作るのは一筋縄ではいかないが,誰かが作ったアドベンチャーを参考にしたり,気に入らないところを手直しして楽しんだりできる。このような遊び方が可能なのも,UCC(コーヒーではなく,User Created Contentのこと)との連携を十分に考えてデザインされたSPOREならではだろう。ギャラクティック アドベンチャーを導入して,宇宙を股にはさんだ,じゃなくて股に掛けた壮大な冒険を楽しんでみよう。
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