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Gulftown対抗の6コアCPU「Thuban」を2010年第2四半期投入へ。攻勢に出るAMDのロードマップアップデート
次世代アーキテクチャを採用するCPUの登場こそ,2011年以降と変更のないAMDだが,ハイエンド向けのデスクトップPC向けCPUでは,6コアモデル,「Thuban」(トゥーバン,開発コードネーム)を,Phenom IIシリーズの最上位モデルとして,2010年第2四半期に市場投入する計画だ。
アラビア語で「竜」を意味するThubanは,L2キャッシュ容量が1コア当たり512KB,L3キャッシュ容量6MBというキャッシュ構成のサーバー&ワークステーション向けCPU「Lisbon」(リスボン,開発コードネーム)とコアを共用する製品だ。そのため「Lisbonをベースに,Socket AM3対応を果たしたCPU」というイメージが分かりやすいだろう。あらためて述べるまでもなく,Intelの6コアCPU,「Gulftown」(ガルフタウン,開発コードネーム)の対抗である。
OEM関係者の話によれば,Thubanには「Intel Turbo Boost Technology」(以下,Turbo Boost)対抗となる,「C State Performance Boost」技術が採用される見通しとだという。
現時点で,その詳細は明らかになっていないが,「より積極的にコア電力を低減させるために,コアがアイドル状態のときに動作クロックと電圧を下げるC1Eを,他のコアのクロックアップ要件として使うようだ」(OEM関係者)とのことで,これが事実だとすれば,Turbo Boostと同等の効果が期待できることになる。
2010年前半にチップセットも強化
新サウスブリッジ周りがトピックに
AMDは,2010年前半にチップセットも強化する。最大のトピックは,次世代サウスブリッジ「SB850」のサポートと,それに伴って行われる,チップセット間インタフェースの強化だ。
次期フラグシップチップセットとなる「AMD 890FX」は,SATA 6Gbpsに対応するSB850と組み合わされ,チップセット間インタフェースが,現行のPCI Express x4から,PCI Express 2.0 x4へと強化される。この拡張により,パッケージサイズも大型化され,AMD 890FXは29×29mmのFCBGA(※「AMD 790FX」は同27×27mm)となる予定だ。
AMD 890FXの基本機能そのものは現行製品から変わらず,PCI Express 2.0グラフィックスカードのサポートは,AMD 790FXと同じ16レーン×2または8レーン×4構成。PCI Express 2.0 x1を6レーンサポートする点も同じだが,チップセット間インタフェースの強化により,消費電力の目安となるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)はAMD 790FXの13Wから18Wへと引き上げられるようである。
さて,肝心要のSB850だが,こちらはSATA 6Gbpsを新たにサポートするだけに留まらず,PCI Express 2.0 x1の4レーンをサウスブリッジ側にも内蔵することになる。
SATA 6Gbpsは最大6ポートに対応し,RAIDは0/1/5/10構成が可能。USB 2.0は14ポート(およびUSB 1.1を2ポート)までサポートされ,1000BASE-T LANの論理層(MAC)も内蔵する。クロックジェネレータを内蔵するのも,地味ながらトピックとはいえるだろう。
下位モデルとして用意される「SB810」だと,SATA 3Gbps×6でRAID 0/1/10のサポートに制限されるが,そのほかはSB850を踏襲する見込みである。
また,グラフィックス機能統合型チップセットでも,SB800シリーズ対応の2製品が投入される。「AMD 790GX」の後継と位置づけられる「AMD 890GX」は,「AMD 785G」のグラフィックスブランド「ATI Radeon HD 4200」をベースとしたDirectX 10.1世代のグラフィックス機能とUVD 2.0を搭載し,そのコアクロックは700MHzに達する予定だ。AMD 785Gだと500MHzだったので,1.4倍ということになる。
オプションで,ローカルフレームバッファ「SidePort Memory」も搭載可能なほか,グラフィックスカードを差す場合は,PCI Express 2.0 x8 ×2によるATI CrossFireX構成を選択できるのも特徴だ。
その下位モデルとなる「AMD 880G」は,AMD 785Gの強化版という位置づけで,グラフィックスコアクロックが560MHzへと引き上げられる。サウスブリッジはSB810が組み合わされるが,しかしチップセット間インタフェースは,現行と同じPCI Express x4に留まる見込みである。
Fusion計画も加速
「Orochi」に代わり「Zambezi」が登場
CPUとGPUの融合実現に向けて,AMDはFusion関連のロードマップも更新している。
しかし,最近になってOEM関係者に公開された最新ロードマップでは,Orochiが消え,代わりに「Zambezi」(ザンベジ,開発コードネーム)が登場。容量8MBのL3キャッシュを搭載し,最大8コアを内蔵するなどといった概要が明らかになった。
Zambeziは,32nmプロセス技術を採用して製造されるCPUで,パッケージは,現行AM3のリビジョンアップ版「AM3r2」へ変更される計画になっている。メモリコントローラはDDR3-1866対応を目指すようだ。
対応チップセットは,AMD 890FXなどのAMD 8ファミリーを継続して利用できる予定だが,AM2からAM2+へCPUパッケージが変更になったときと同様,AM3r2のフル機能を利用するには,マザーボード側の設計変更を求められる可能性が高い。
一方,グラフィックス機能を統合する初のAPU(Accelerated Processing Unit)となる「Llano」(ラノもしくはリャノ※,開発コードネーム)は,32nmプロセス技術で製造され,新しい接点配列のパッケージとなる「FM1」を採用。CPUコアは最大で4基を統合する。デザインは,ノートPC用とデスクトップPC用とで共用となる見通しだ。
CPUアーキテクチャ的に見ると,Llanoは新しいものではない。Llanoに統合されるコアは,「Turion II」の発展系といえるのものだからである。ちなみに,コア当たり容量1MBのL2キャッシュを持ち,メモリコントローラはDDR3-1600対応になる。
AMDでは,デスクトップPC向けLlanoを,現行のPhenom IIシリーズと同じく,4/3/2コア製品で展開する計画を持っているが,これは,Llanoがフラグシップに据えられるノートPC向けでも同じだ。TDP 35〜57Wの枠には,4/3/2コア製品をラインナップし,薄型ノートPC向けとなるTDP 20〜30Wの枠には,デュアルコア製品を投入する。
加えて低価格ノートPC向けには,Llanoではなく,「Ontario」(オンタリオ,開発コードネーム)というグラフィックス機能統合型デュアルコアCPUを用意するが,このOntarioでは,半導体製造プロセスに,当初計画されていた32nmではなく,40nmを採用することになったようだ。
Ontarioは低価格プラットフォーム向けということもあり,現行の低価格ノートPC用プラットフォーム「Yukon」「Congo」(順にユーコン,コンゴ)の後継,「Nile」(ナイル)プラットフォームで採用が予定されるCPUである「Geneva」(ジェネヴァ,開発コードネーム)をベースに,グラフィックス機能の統合が図られる予定。ただ,40nmプロセスという情報が確かだとすると,製造には,AMDから分離した半導体製造企業,GLOBALFOUNDRIESではなく,TSMCを使う可能性もある(※2009年10月現在,GLOBALFOUNDRIESは,低消費電力プロセスとして40nmプロセスの開発を進めている途上だ)。
AMDは大手OEM関係者に,「Ontarioは,これまでと異なる新しいセグメントのCPUになる」と伝えているので,IntelのAtom同様,低価格ノートPCだけでなく,ハンドヘルドや家電製品を視野に入れたプロセッサとなる可能性もある。
なお,Llanoと組み合わされるチップセットは,USB 3.0に対応した「Hudson」(ハドソン,開発コードネーム)。6ポートのSATAと,PCI Express x1 ×4をサポートするとされるが,どの世代のSATAやPCI Expressをサポートするかは,現時点では不明だ(※もっとも,ノートPC向けHudsonでは,熱設計上の問題でUSB 3.0が非サポートとされる)。
統合されるグラフィックス機能は,ATI Radeon HD 5000シリーズのエントリーモデルとして2010年第1四半期の投入が予定されている「Cedar」(シダー,開発コードネーム)ベースになるとされるが,ビデオ再生支援機能として,「UVD 3」(UVD:Unified Video Decoder)を統合するなどの機能強化が果たされる見通しになっている。ただし,UVD 3の詳細も,Hudsonと同様,まだ明らかになっていない。
※2009年10月20日21:20追記
初出時に「Liano」としていた表記を,「Llano」へ書き換えた。取材時には「Llano」と「Liano」2種類の表記があり,発音は「リャノ」に近いものだったため,「Liano」の方を採用したが,どうやら,正式な綴りは「Llano」のほうのようだ。
RedwoodとCedarのスペックは未決定
ノートPC用も順次投入へ
すでにDirectX 11世代のGPUを2モデル4製品投入済みのデスクトップPC向けGPUでは,2009年末までに,ATI Radeon HD 5800シリーズの「Cypress」(サイプレス)コアを2基搭載するデュアルGPUソリューション「Hemlock」(ヘムロック,開発コードネーム)を投入。続けて2010年第1四半期中に,「Mainstream」市場(≒エントリー〜エントリーミドルクラス)向けの「Redwood」(レッドウッド,同)と,「Entry」市場(≒ローエンド〜エントリー)向けのCedarを投入するという計画に変更はない。
一方,ノートPC向けには,開発コードネーム「Manhattan」(マンハッタン)シリーズとして,ハイエンド向けの「Broadway」(ブロードウェイ),ミドルクラス向けの「Madison」(マディソン),エントリー向けの「Park」(パーク)という3コアを順次投入する。これらはそれぞれ,デスクトップPC向けGPUであるJuniper(ジュニパー,「ATI Radeon HD 5700」シリーズ」,Redwood,Cedarとコアを共用すると見られている。
AMDのグラフィックスアーキテクチャが大きく変わるのは,次世代の「Hecatonchires」(ヘカトンケイル,開発コードネーム)シリーズになる見込み。
ギリシャ神話に登場する百手の巨人からコードネームが付けられた同シリーズに関する情報は,まったくといっていいほど出てきていないが,NVIDIAが「Fermi」(フェルミ)で汎用コンピューティングの効率を大幅に引き上げたように,AMDも,現行アーキテクチャの弱点を潰し,Stream Core当たりの性能を大幅に引き上げる計画のようだ。
- 関連タイトル:
Phenom II
- 関連タイトル:
AMD FX(Zambezi)
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Llano)
- 関連タイトル:
AMD 8
- 関連タイトル:
Hecatonchires(開発コードネーム)
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