プレイレポート
「FINAL FANTASY XV」に向けて,シリーズナンバリングタイトルのバトルシステムを振り返ってみた。タイトルごとの大胆なアプローチは最新作にも受け継がれる
その人気から派生作品も数多く作られており,最近でも「WORLD OF FINAL FANTASY」(PS4 / PS Vita),「ファイナルファンタジー レジェンズII」(iOS / Android)といったタイトルがリリースされているが,2016年11月29日には,最新ナンバリングタイトルである「FINAL FANTASY XV」(PS4 / Xbox One。以下,FFXV)が世界同時リリースされる。
FFシリーズの大きな特徴として,作品ごとにゲームシステムが大きく異なる点が挙げられるだろう。ここは,FFと並んでスクウェア・エニックスの看板IPであるドラゴンクエストシリーズが基本的なシステムを変えていないのと対照的だ。とくにバトルには,規模の大小こそあれ,タイトルごとに必ず新しいチャレンジが盛り込まれている。
そこで今回,FFのナンバリングタイトルにおけるバトルとその関連システムの変遷を振り返ってみることにした。対象としたのはオンラインRPGタイトルを除く12本。さらに,FFXVの体験版「JUDGMENT DISC」もプレイし,最新作のシステムも探ってみた。
記事を執筆するにあたり,「FINAL FANTASY」(以下,FFI)から「FINAL FANTASY IX」(以下,FFIX)までは,Wii U バーチャルコンソール版とPlayStationのゲームアーカイブス版を利用した。「FINAL FANTASY X」(以下,FFX)はPS Vita用のHDリマスター版,また「FINAL FANTASY XII」(以下,FFXII)は初期型PlayStation 3の互換機能を使ってプレイしている。
FINAL FANTASY(1987年)
シリーズ第1作となるFFIのバトルシステムは,オーソドックスなターン制だ。味方パーティメンバー4人分のコマンドを入力するとそのターンがスタートし,主に「すばやさ」のパラメータに応じて敵と味方が行動。それが一とおり終わると次のターンに移行するという仕組みである。
パーティメンバーはゲーム開始時に作成する4人のキャラクターで構成され,ゲーム内で入れ替わることはない。各メンバーにはジョブとして「戦士」「シーフ」「モンク」「赤魔術士」「白魔術師」「黒魔術師」からいずれかを設定する。バトルで一定の経験値を獲得するとレベルアップし,さらにゲームの進行によって,それぞれの上位ジョブへジョブチェンジが可能だ。
また,パーティの並び順が前(画面上側)であるほど敵から攻撃を受けやすくなる仕様となっているため,前方にはHPや防御力が高い戦士などのジョブ,後方にはHPの低い魔術師系のジョブを配置するのがセオリーとなる。
バトル中に選択可能なコマンドは各ジョブ共通。装備している武器で攻撃する「たたかう」,習得している魔法を使う「まほう」,所持している回復薬などを使う「くすり」,道具を使う「もちもの」,そしてバトルから逃走する「にげる」の5つ。魔法を使えないキャラクターでも,「まほう」コマンド自体は表示される。
「まほう」コマンドは各ジョブ共通だが,実際に魔法を使えるジョブは一部のみで,魔法はレベルアップではなく,魔法屋での購入で習得する。
魔法は主に回復・支援系の「白魔法」と,主に攻撃系の「黒魔法」に分類でき,それぞれの魔法には8段階あるレベルのうち1つが設定されている。HP回復魔法の「ケアル」はレベル1,その上位魔法である「ケアルア」(「ケアルラ」ではない)はレベル3といった具合だ。
1つの魔法レベルには白魔法と黒魔法がそれぞれ4種類用意されているが,メンバー1人が習得可能な魔法は1レベルにつき白魔法と黒魔法合わせて3つまでと制限されているため,取捨選択が必要だ。
魔法はMPのようなポイントを消費して使うのではなく,初期「Wizardry」シリーズのように,魔法レベルごとに使用回数の上限が設定されている(宿屋で回復は可能)。たとえばHPを回復する「ケアル」と「プロテス」(防御力を上昇させる)はどちらもレベル1の白魔法なので,バトル中にプロテスを連発していると,あとでケアルが使えなくなる事態に陥ってしまう。
これらの仕様によって,プレイヤーはどの魔法を習得(購入)し,どのタイミングで使うべきか,あるいは使用回数を回復するために宿屋に戻るか……といったように,魔法のマネジメントで悩まされることになる。
そして,FFIを語るうえで外せないのは,サイドビューのバトル画面だ,左側に敵,右側に味方が表示され,プレイヤーがバトルを俯瞰的に把握できるだけでなく,味方の攻撃アクションや瀕死状態(ひざまずく)を確認できるようになっている。
「バトル画面としてはごく普通だし,そんな大げさな」と思う読者がいるかもしれないが,FFIがリリースされた1987年当時は,「ドラゴンクエスト」にしろ,「Wizardry」にしろ,RPGのバトルは敵の姿しか表示されない“一人称視点”が主流で,FFIのバトルは,プレイヤーからするとかなり新鮮に映ったのだ。FFシリーズのビジュアル的演出へのこだわりは,この時点ですでに存在していたと言っていいだろう。
FINAL FANTASY II(1988年)
「FINAL FANTASY II」(以下,FFII)のバトルは,FFIからターン制やサイドビューなどを継承している一方,キャラクターレベルやジョブの概念がなくなり,大きな変貌を遂げている。パーティメンバーは全4人中3人が固定で,残りの1人はストーリー進行に応じて入れ替わっていく形だ。
FFIIではキャラクターレベルの代わりに,各パーティメンバーがバトル中に取った行動に応じてパラメータが変動するシステムが採用された。たとえばバトル中に「たたかう」を選択すると「ちから」や「すばやさ」などが,魔法を使うと「ちせい」や「まりょく」などがそれぞれ上昇。また,バトル開始時と終了時を比較してHPが下がっているとHPの上限値が上昇するといった具合だ。
入手した武器と防具,魔法はメンバーの誰もが装備したり使ったりできるのも特徴的。魔法はMP制で最大16種類まで習得可能というシステムになった。さらに習得した魔法を“忘れる”ことができるので,ゲームの進行に応じて入れ替えられる。
また,同じ種類の装備や魔法を使い続けると,攻撃のヒット回数や魔法の威力および成功率が上がっていく「熟練度」という要素が導入された。
これらの仕様により,プレイヤーはジョブにとらわれることなく,各メンバーの育成方針を自由に決められる。しかし,行動によってはある能力値が上がる一方で,ほかの能力値が下がることもあるので,一筋縄ではいかない。
そしてFFIIでは,一見小さく思える変更点が,後々語り継がれるほどの影響をもたらした。その変更点とは,味方を攻撃できるようになったこと。眠ってしまった味方をたたき起こすのが本来の使用法なのだが,前述の成長システムを利用し,わざと味方を瀕死状態やMP枯渇状態に追い込んで,大きく成長させるというテクニックが流行した。オールドプレイヤーの中には,FFIIと聞いてまっさきにこれを思い出す人も少なくないだろう。
FINAL FANTASY III(1990年)
「FINAL FANTASY III」(以下,FFIII)では,パーティメンバーのジョブを変更(転職)できる「ジョブチェンジ」システムが登場。取得しているジョブであれば,移動中いつでも変更できるというのがポイントで,ダンジョンに登場する敵の特性や弱点などに合わせたパーティ編成が攻略のカギとなっていた。
ジョブチェンジは,バトルに勝利したときに獲得できる「キャパシティ」を消費して行う。パーティメンバーが転職可能なジョブは全22種で,序盤が基本職中心で,ストーリーが進むほど応用的かつ強力なものが増えていく。ジョブによっては竜騎士の「ジャンプ」に代表されるように,固有のコマンドや特性を持つものもあるなど,バラエティ豊かだ。
加えてジョブには,FFIIの武器や魔法のように,熟練度の概念が設けられている。熟練度は同じジョブで戦い続けていると高まり,そのぶん攻撃や魔法の威力が上昇する。
ジョブチェンジシステムは,FFIIのパラメータ変動システムと熟練度システムを,より取っつきやすい形に落とし込んだという印象だ。
バトルの基本システムはFFI,FFIIのターン制を継承しているが,いくつか細かい変更が施された。とくにビジュアル面では,ダメージ量や回復量を表す数字が対象キャラクターの側に表示されるようになったのが目を引く。
また,パーティメンバーの誰がどの敵を攻撃する予定なのか数字で示されたり,ターゲットした敵を通常攻撃する前にほかのメンバーがその敵を倒した場合,オートでターゲットが切り替わったり(ただし魔法やアイテムの場合は適用されない)と,全般的に遊びやすくなった。
遊びやすくはなったが,バトルに勝利するのが簡単になったわけではなく,厄介な要素も追加された。その1つが,背後から敵に襲われたという設定でバトルが始まる「バックアタック」で,敵の先制攻撃かつ味方の隊列が前後逆になるという,二重に不利な状態での戦いになる。
こうなってしまったら戦うより逃げたいところなのだが,FFIIIの「にげる」コマンドは,選択したターンでパーティメンバー全員が防御不可状態となり,通常時よりも受けるダメージが極めて大きくなるため,うかつには選べない。
魔法ではレベル制が復活。FFIと同じく8段階のレベルに魔法が分類され,各魔法レベルごとに総使用回数の上限が設けられている。
また,魔法はアイテムのような存在になっており,特定のジョブになっているメンバーが所持している場合のみ使用可能だ。ただし,ジョブによっては,一定レベルの魔法までしか習得できないという制限も存在する。
そして忘れてはならないのが,FFシリーズを象徴する存在の1つである「召喚獣」が本作から導入されたこと。バハムートやオーディンなどといった,おなじみの召喚獣が登場している。
FINAL FANTASY IV(1991年)
プラットフォームがスーパーファミコンになった「FINAL FANTASY IV」(以下,FFIV)では,ターン制に代わって「アクティブタイムバトル」(以下,ATB)が登場した。FFIVのATBは,以降のFFシリーズに採用されるバトルシステムのベースとなったものだ。
ATBでは,バトルに参加しているキャラクターそれぞれにアクションを起こすまでの待機時間が設けられる。敵味方を問わず,待機時間がゼロになったキャラクターからコマンド入力(行動)が可能となり,行動終了後再び待機時間に戻るというサイクルとなっていて,プレイヤーが味方のコマンドを入力しなければ,敵から一方的に攻撃を受けることになるのだ。
また,魔法の詠唱時間など,コマンド入力後にさらなる待機時間が設けられる行動もあるので,バトル中のキャラクターの行動順は一定ではない。とくに強力な魔法や技は待機時間が長めに設定されており,1体のキャラクターが2回行動する間に,別のキャラクターが3回行動するといったことも頻繁に起こる。したがってプレイヤーは常にバトルの状況を把握し,局面に応じて誰にどの行動を取らせるか判断しなければならない。
なおATBは,コンフィグでバトルスピードを6段階から設定できるうえ,常に時間が流れる「アクティブ」と,魔法やアイテムの選択中のみ時間が止まる「ウェイト」を切り替えられる。より緊張感を持ってプレイしたい場合にはアクティブにしつつバトルスピードを速めればいいし,その逆も可能というわけだ。
FFIVのパーティメンバーは最大5人。メンバーはストーリーの進行に沿って入れ替わっていき,パーティが4人以下になることもある。
また,メンバーは全員ジョブが固定化されており,それぞれ固有のコマンドが存在する。そのためか隊列は前列2人後列3人と前列3人後列2人という2種類が用意されており,そのときどきのメンバー構成によって切り替えられるようになっている。
魔法は基本的にパーティメンバーのレベルアップ時に習得し,どの魔法を習得するかは,メンバーごとに決まっていて,基本的にプレイヤーが介在する余地はない。また,使用についてもレベル制でなくMP制だ。
魔法まわりがクラシックなスタイルになっていたり,前作で自由度が高いジョブチェンジシステムを採用しながら,今作では一転して固定ジョブになったりしている点は興味深い。ATBという当時としては斬新なシステムを採用したことから,バランスを取ったのだろうか。
FINAL FANTASY V(1992年)
「FINAL FANTASY V」(以下,FFV)のバトルは引き続きATBだが,「ATBゲージ」が表示されるようになり,プレイヤーが味方の待機時間を視覚的に把握できるようになった。また,FFIVで魔法や技ごとに設定されていた待機時間がなくなったため,バトル全体のテンポが上がっている。
そして,前作では固定だったジョブ周りのシステムにも手が入った。FFIIIのジョブチェンジが進化して復活したという印象で,ゲームの局面に応じてプレイヤーが自由にパーティを編成できる。
転職可能なジョブはストーリーの進行に沿って増えていき,各ジョブにはバトル時に選択できる「ジョブコマンド」や,自動発動する「ジョブ特性」が用意される。
また各ジョブには,固有の「アビリティ」が用意されており,バトル勝利時に獲得できる「アビリティポイント」(ABP)を消費して習得可能だ。一度習得したアビリティは,そのメンバーがほかのジョブに転職しても一つだけ装備できる(複数装備可能なジョブもある)ようになっている。
たとえばナイトに白魔導士で習得した「しろまほうL1」を装備すれば,ケアルで味方のHPを回復できるナイトが誕生する。加えてアビリティの中には,セットしたメンバーのパラメータを引き上げる効果を持つものもある。
このように,ジョブとアビリティの組み合わせでもたらされる効果は大きく変わるため,転職可能ジョブが増えるほど,プレイヤーは幅広い戦術でバトルを楽しめるようになるのだ。
魔法の習得には,召喚獣とのバトルに勝って習得する「召喚魔法」の大部分と,初登場の青魔道士が敵から攻撃を受けて習得する「青魔法」以外は,基本的に魔法屋などで購入する形式を採用。
一度入手した魔法はパーティ内で共有され,各魔法の種類および魔法レベルに該当するアビリティを持つパーティメンバーが使用可能となる。
細かいところでは,バトルのコマンドをコントローラの十字キーに割り当てるショートカットが用意されたり,一定時間内に目標を達成しないと強制的にゲームオーバーとなるイベントが設けられたりと,利便性やエンターテイメント性を高める試みも見られる。
FFVのシステムは全体的に,前作で「惜しい」と思ったところにしっかりと手が入れられたという印象で,完成度は高い。
FINAL FANTASY VI(1994年)
「FINAL FANTASY VI」(以下,FFVI)では,ストーリーの進行に沿ってさまざまなキャラクターが仲間となり,その中からプレイヤーが任意にパーティメンバーを選択するという,以降のシリーズに継承されるシステムが登場した。
なおFFVIでは各キャラクターのジョブが固定されており,最大4人のパーティメンバーでバトルを戦うこととなる。
FFVIのバトルでは,ATBゲージがMAXになっているパーティメンバーが複数いる場合,そのメンバー間の行動順を選択できるようになった。
またメンバー固有のコマンドの一部に,格闘ゲームライクなボタン入力など,独特の操作を要求するものが登場。さらにメンバーが瀕死のとき,低確率で固有の必殺技を繰り出す仕様や,敵を前後から挟み込む形で先制攻撃する「サイドアタック」,逆に味方が前後から先制攻撃される「挟み撃ち」といった要素も追加されている。
全体的な印象は,FFIVから続くATBに新しい遊びを持ち込みつつ,正統進化させたという感じだ。
魔法は,パーティメンバーがゲーム内で入手した「魔石」を装備した状態でバトルに勝利すると,魔石が持つ魔法の熟練度が上昇し,そして熟練度が100%に到達して初めてその魔法を習得し,使用可能になるというシステムになっている。
ほかにも魔石には,1回のバトルにつき各メンバーが一度「幻獣」を召喚できたり,レベルアップ時に装備しているメンバーの特定のパラメータを上昇させたりする効果があり,本作のバトルシステムを特徴付けるものとなっている。
FINAL FANTASY VII(1997年)
プラットフォームをPlayStationに移し,シリーズ初となる3Dグラフィックスを採用するなど,シリーズの中でも大きな転換点となった作品とされている「FINAL FANTASY VII」(以下,FFVII)。だが,バトルだけを見れば,FFVIまでのATBをベースに,いくつか新要素を追加したようなものになっており,大きく変化したという印象はない。
FFVIIのバトルでは,ダメージを受けると溜まる「リミットゲージ」がメンバーそれぞれに用意されている。これがMAXになると「リミットブレイク」となり,メンバー固有の「リミット技」を発動できるのだ。
リミット技には4段階のレベルがあり,レベル3まではバトルで敵を一定数倒すことで習得する。また,同じくレベル3までは,各レベルの基本技を一定回数使用すると,同じレベルの上級技を習得可能だ。そしてレベル4にあたる「究極リミット技」は,レベル3までのリミット技をすべて習得した状態で専用アイテムを使用すると習得できる仕組みになっている。
リミット技は敵に大ダメージを与えたり,パーティ全体を大幅に回復したりと全般に強力な効果を持っているため,ピンチからの一発逆転を期待でき,バトルの大きなアクセントとなっている。
同作のバトルを特徴付けているのは,装備や魔法などに関わってくる「マテリア」システムだろう。魔法やアビリティは,「マテリア」というアイテムとして用意されており,武器や防具に空いた穴にこれを装着すると使用できるようになる仕組み。装着するマテリアによって一部のパラメータも変化する。
マテリアは「魔法」「コマンド」(アビリティ)に加え,メンバーのパラメータやバトルのエンカウント率など変動させる「独立」,「召喚魔法」を使用可能にする「召喚」,そして「支援」の5種類に分類される。
支援マテリアは単独では効果を発揮しないが,一部の武器や防具に用意された「連結穴」と呼ばれる2つ1組の穴に装着することで,魔法を全体化したり,通常攻撃に属性効果を付与したりといったことを可能にする。
さらに各マテリアは,メンバーが装着した状態でバトルに勝利すると「アビリティポイント」(AP)が蓄積され,これが一定量溜まるとレベルアップして効果が高まっていく。
このシステムが面白いのは,武器や防具に設けられた穴の数や種類,獲得AP量にバラツキがあることだ。「攻撃力は圧倒的だが穴が1つもない」「獲得AP量が2倍だが穴の数は少ない」「穴の数は多いが,単体ばかりで連結穴がない」といった感じなので,手に入れてからしばらく使っていなかった装備がいきなり日の目を見るようなこともある。そのときどきの状況に合わせた装備選びが楽しいのだ。
FFVIIは,このマテリアシステムにより,メンバーが使用する魔法をプレイヤーが任意に決定できるため,シリーズ中でもFFIIと並んでジョブの概念が感じられない作品となっている。ただ,前述のリミット技と,3Dグラフィックスの演出などによってキャラクター性は確保されており,“誰でも同じ”という感じにはなっていない。
FINAL FANTASY VIII(1999年)
「FINAL FANTASY VIII」(以下,FFVIII)には,防具やアクセサリーの代わりに「G.F.」(Guardian Force,召喚獣にあたる)と魔法を“装備”してパーティメンバーを強化する「ジャンクション」システムが登場。G.F.はストーリーの進行や,特定の敵を倒すことなどで入手していく。
ジャンクションしたG.F.はバトル中に召喚できるだけでなく,バトル勝利時に得られるAPによって,さまざまなアビリティを習得していく。そしてパーティメンバーは,ジャンクションしたG.F.のアビリティに応じてHPやMPを増やしたり,バトル中に特殊なコマンドを使用したり,特殊効果を発揮したりできるようになるのだ。
こうしたG.F.のアビリティの中には,パーティメンバーの各パラメータへ魔法をジャンクション可能にしたり,攻撃や防御に属性などを付与したりするものもある。基本的には威力の高い魔法をジャンクションすると,パラメータの上がり幅や付与される効果が大きくなる仕組みだ。
加えて,FFVIIIの魔法はアイテムと同じような形で所持する仕様となっており,ジャンクションした魔法の所持数が多い(最大100個)ほど,パラメータの上がり幅が大きくなる。当然だが,ジャンクションしている魔法を使うとパラメータが下がるので,ここがプレイヤーの悩みどころになる。
G.F.の一部や魔法は,バトル時に敵から「ドロー」して入手する。魔法をドローする場合は,その場で効果を発動する「はなつ」と,魔法の所持数を増やす「ストック」を選択可能だ。
また魔法は,G.F.のアビリティによって精製することもできる。この仕様を利用すれば,ゲーム序盤から強力な魔法を所持することもできるのだ。
FFVIIIでもう1つの重要なポイントは,パーティメンバーのキャラクターレベルに応じて,一部を除く敵のレベルが変動する仕組みだ。これとジャンクションをうまく組み合わせれば,キャラクターレベルを低く保ちつつ,強力な魔法のジャンクションでパラメータを強化し,有利にゲームを進められる。
これ以外にも,バトルで敵を倒してもお金が入手できない(一定距離を歩くとお金が入る給料制)など,FFVIIIのシステムはシリーズ全体から見てもかなり独特だ。戸惑う人も少なくないと思われるが,一方で理解が深まれば自在なキャラクター育成が可能で,ゲームを進めていくと本作の世界観やストーリーがシステムと密接に絡み合っていることも分かってくるなど,かなり作り込まれている。
FINAL FANTASY IX(2000年)
「原点回帰」をコンセプトの1つとしたFFIXでは,バトルシステムもオーソドックスなATBとなった。パーティメンバーにはジョブと明記こそされていないものの,それぞれに固有の役割が与えられている。
新要素の「トランス」は,敵の攻撃を受けるとゲージが蓄積していき,MAXになるとトランス状態となってパワーアップしたり,一部コマンドが変化したりするという,シンプルなものだ。
魔法を含めたアビリティは,武器や防具に紐付けられていて(ただし青魔法だけは特定のコマンドを使う),それを装備することで使用可能だ。バトルに勝利してアビリティポイント(AP)を溜めてゲージをMAXにすれば,その装備がなくても発動可能になる。
メンバーによって装備できる武器や防具が違うので,事実上,習得可能なアビリティも決められているということになる。
アビリティには,各種魔法などバトル中にコマンドとして選択可能な「アクションアビリティ」と,状態異常を防ぐなど,自動的に効果を発動する「サポートアビリティ」が存在する。
サポートアビリティは複数同時発動が可能だが,そのためにはパーティメンバーが持つパラメータの1つ「魔石力」が必要。サポートアビリティごとに定められた必要魔石力の合計が,魔石力を超えないように設定しなければならない。
FFIXは原点回帰を謳うだけあって,前作とは打って変わって非常に分かりやすいシステムで,とてもよくまとまっている。うがった見方をすれば「尖っていない」とも取れるのだが,尖った作品が揃うFFシリーズ全体から見れば,独特の存在感があり,印象に残る作品と言っていいだろう。
FINAL FANTASY X(2001年)
プラットフォームがPlayStation 2となったFFXでは,シリーズの代名詞的存在であったATBを採用しないという大変革が行われた。また,レベル制もない独特の仕様となっている。
新たに採用された「カウントタイムバトル」(CTB)は,ターン制とATBのハイブリッドのようなシステムで,ATBとの最大の違いはリアルタイム進行ではない点。敵味方を問わず,バトルに参加しているキャラクターのいずれかが行動を取って初めて時間が進む仕組みだ。
敵味方の行動順は,画面右側に表示される。この行動順は各キャラクターの素早さと,直前に取った行動の待機時間などによって決定される。そして,味方メンバーの行動順が回ってくると,コマンド選択が可能になるという流れだ。
またコマンド入力時には,そのコマンドを選んだ場合の行動順変化をあらかじめ確認できる。したがって,待機時間の短い行動を選んで次の行動につなげるか,あるいは待機時間は長くなっても威力の高い技で攻撃するかといったような,バトルの局面に合わせた選択ができるのだ。
魔法やアビリティの習得を含むパーティメンバーの育成は「スフィア盤」を使って行う。スフィア盤は,各種パラメータや習得可能な魔法/アビリティをマスに配置したスゴロクのようなものだ。
各メンバーは,バトル中に行動を取ったり敵を倒したりすることでAPを得て,それが一定量溜まると「スフィアレベル」(S.Lv)が上がり,その分だけスフィア盤のマスを進められる。そこでゲーム中で入手する「成長スフィア」を消費すると,マスに応じたパラメータが上昇したり,アビリティを習得できたりするのだ。
なおスフィア盤上の出発点はメンバーごとに異なり,それに伴って進むべき大まかな育成の方向性が示される。その一方でところどころに分岐が存在しており,各メンバーの育成にはプレイヤーの裁量に任される余地もある。
後のシリーズ作品では,このスフィア盤に似たような成長システムが採用されることになる。ATBの廃止と合わせて,FFXはシリーズのターニングポイントとなった作品と言っていいだろう。
FINAL FANTASY XII(2006年)
FFXIIのバトルは,ATBの派生形となる「アクティブディメンションバトル」(ADB)を採用。フィールド上やダンジョン内の移動とバトルがシームレスに展開する。
バトルは敵が視覚や聴覚などでパーティメンバーを感知するとスタートし,バトル中はATBと同じく,敵味方がリアルタイムで行動を取る。ただしADBではメンバーのコマンドを選んだあとにゲージが溜まっていき,MAXになるとコマンドに沿った行動を取る仕組みだ。
ゲージが溜まる時間は武器や魔法などの種類によって異なり,それぞれの特徴の1つとなっている。また,ゲージがMAXになる前に別のコマンドを選択すれば,前のコマンドをキャンセルできるが,ゲージもリセットされ,あらためて溜め直すことになる。
また,攻撃や魔法に射程の概念があったり,敵がどのメンバーを狙うかの判定にヘイトの概念が導入されたり,バトルから逃げ出すには敵が追ってこなくなるまで距離を置く必要があったりと,FFXIなどのオンラインRPGから受けたと思われる影響が随所に感じられる。敵から逃げている途中,別の敵に感知されてさらに大変な事態に陥る,ということがあるのもオンラインRPGっぽい。
本作におけるもう1つの特徴が「ガンビット」システムだ。これを使えば,パーティメンバーがバトル中,AIによって自律的に行動を取るようになる。
具体的には,対象や行動条件を指定する「ターゲット」と,行動自体を指定する「アクション」を組み合わせることで,各メンバーの行動方針を決定するという感じだ。ターゲットには「目の前の敵」「リーダーの敵」「味方一人」「HP<50%の味方」といったものがあり,ゲームの進行に応じて入手できる。
プレイヤーの意図に沿ったパーティプレイを自動で実現するという利便性を目的としながら,実はその過程が遊びとなっている。最初は少々苦労するだろうし,使わなくてもゲームは進められるのだが,本作を存分に味わいたいなら欠かせないシステムだろう。
パーティメンバーの育成には,経験値を溜めて上げるキャラクターレベルに加え,「ライセンス」を採用。FFXIIでは,武器や防具,魔法,技は入手しただけでは使うことができず,別途ライセンスを取得する必要がある。
ライセンスはバトル勝利時に得られる「ライセンスポイント」(LP)を消費し,メンバー各自の「ライセンスボード」上に配置された能力を開放する形で取得していく。メンバーごとにHPが高い,魔力が高いなどの基本傾向はあるが,ライセンスボードの盤面は共通で,プレイヤーが自由な方針でそれぞれを育成できるようになっている。
FINAL FANTASY XIII(2009年)
PlayStation 3向けにリリースされた「FINAL FANTASY XIII」(以下,FFXIII)のバトルは,ATBをベースに「コマンドシナジーバトル」「オプティマ」「チェーンゲージ」などの新要素が加えられたものとなっている。
コマンドシナジーバトルは,リアルタイムで進行するバトルの中で,時間の経過とともに「タイムゲージ」が溜まっていき,これを消費することで各種のコマンドを選択・実行できるというもの。
各コマンドには,それぞれタイムゲージを消費する「コスト」が設定されており,基本的に強力な効果を持つ行動ほど多くのコストを消費するため,その分ゲージを溜める時間が長くなる。逆に効果が低めの行動であればゲージ消費量が少ないため,すぐに次の行動を起こせる仕組みだ。
コマンドは,タイムゲージを使い切るまで続けて入力できる。たとえば3コスト分のタイムゲージを持つキャラクターであれば,「ルイン」「たたかう」「たたかう」とコマンドを組み合わせることで,遠距離にいる敵に対して最初は無属性魔法攻撃を仕掛け,相手が近づいてきたら武器で攻撃する,といった連続行動が可能となるのだ。
オプティマは,バトルにおける「ロール」の組み合わせをセッティングするシステム。ロールは従来のシリーズ作品におけるジョブのような概念で,攻撃力が高い「アタッカー」,主に魔法による連続攻撃を行う「ブラスター」,防御に長けた「ディフェンダー」,回復役の「ヒーラー」,味方を強化する「エンハンサー」,敵を弱体化する「ジャマー」の6種類がある。
前述したようにパーティは最大3人なので,バトルの状況に応じてメンバーのロールを変えたいところだが,メンバー個別にロールを切り替えることはできない。3人のロールの組み合わせをオプティマとして設定しておき,それをバトル中に切り替えるというシステムになっている。
たとえば最初はアタッカー/ブラスター/ブラスターという攻撃的なオプティマでバトルを開始し,メンバーのHPが下がってきたらブラスター/ヒーラー/ヒーラーに切り替えて攻撃しつつ回復を図るといった感じだ。
とくに中盤以降はストーリーの進行に従ってパーティメンバーが減ったり,サポート系のエンハンサーやジャマー,パーティ全体の盾となるディフェンダーの使い方が重要になったりするため,バトルを有利に進めるには頻繁なオプティマの切り替えが必要となる。
チェーンゲージは敵1体ごとに用意されるもので,味方が攻撃を加えるごとに溜まっていき,それに従ってダメージのボーナス倍率も増えていく。そしてゲージがMAXになると敵がブレイク状態となり,大ダメージを与えられるようになる。
なおブレイク後は時間の経過に応じてゲージが減少していき,ゲージがなくなるとブレイク状態は解除される。
またブレイク前のチェーンゲージは溜まっていく一方ではなく,時間の経過で減少もする。さらにアタッカーが攻撃を当てるとゲージが溜まりにくい反面減少しにくく,ブラスターの攻撃だと溜まりやすいが減少しやすい,というロールに応じた特性もあり,よりチェーンゲージを有効活用するためには,ロールの組み合わせを熟慮してオプティマをセットしておく必要が生じる。
これらの新しいシステムを導入したことにより,パーティメンバーがAIによって自律的に行動するという点ではFFXIIと同じでも,FFXIIIではよりプレイヤーに能動的な操作を求めるようになった。チェーンゲージが時間の経過で減っていくこともあり,操作はかなり忙しい。
その一方で,やけに防御の固い敵が出てきて何もできずに負けたような場合でも,ロールの特徴を踏まえてオプティマを見直すだけで,メンバーが勝手に敵の弱点を突いてあっさり倒せたりもするなど,戦略性も高い。
このようにかなり尖ったシステムなので,最初は面食らうかもしれないし,実際バトルの難度は高めと言っていいだろう。しかし,本作ではゲームオーバーになっても,そのバトルの直前からリスタートできる仕様になっているので,“死んで覚える”が前提のシステムなのかもしれない。
キャラクターの育成は「クリスタリウム」を使って行う。クリスタリウムはFFXのスフィア盤をキャラクター別かつロール別にしたようなもの。バトル勝利時に得られる「クリスタルポイント」を消費して魔法やアビリティを習得したり,パラメータを伸ばしたりできる。
なお同じロールでも,キャラクターが違うとクリスタリウムの内容が異なっているので,バトルにおけるキャラクターごとの役割にも差が生じる。
また,クリスタリウムおよびロールにはレベルがあり,その上限がストーリーの進行によって定められているなど,ゲーム途中のキャラクター育成には制限がある。
このように,FFXIIIは,バトルと成長システム両方から,かなり歯応えのある内容を目指していることが感じられる。“レベルを上げれば何とかなる”という,一般的なRPGにおける鉄則が通用せず,プレイヤー自身の成長を求めるようなシステムだ。
バトルシステムの変遷を確認した今,さらに高まるFFXVへの期待
というわけでFFシリーズのバトルシステムの変遷を列挙してみたが,今回まとめてプレイして記事を構成する中で強く感じたのは,やはりタイトルごとに大胆にアプローチを変えていくチャレンジ精神である。
とくに,多数のキャラクターの中からプレイヤーがパーティメンバーを任意に選ぶ形式が登場したFFVI以降は,パーティ編成の自由度を高める一方で,いかにしてゲームの進行とキャラクターの育成を切り分けるか──すなわち,特定のキャラクターが育っていない場合に,ゲーム後半で“詰み”状態になることを回避するか──に配慮しつつ,積極的に新しい遊びや戦術性を盛り込もうとする姿勢が読み取れるのではないだろうか。
さてそうなると気になるのが,最新ナンバリングタイトルであるFFXVのバトルシステムである。4Gamerでもプレイレポートを掲載しており,また11月11日より配信されている体験版「JUDGMENT DISC」で実際にその一端を体験している人も多いと思うが,最大の特徴はコマンド制の廃止だろう。
主人公であるノクトのバトルにおける各種行動はコントローラのボタンにそれぞれ割り当てられ,またジャストガードが導入されるなど,アクションRPGと呼んで差し支えないシステムになっている。
オールドファンにとっては,“伝統”であるコマンド制がなくなるのは寂しいかもしれないが,世界的にコマンド制バトルを採用しない作品が主流となりつつある現在,最先端を目指すFFがこの選択をしたのは極めて自然なことと言っていいだろう。
その一方で,ガードはボタン押しっぱなしでも可能で,ジャストガードなどの入力待機時間は比較的長めに設定されているなど,アクションゲームほどシビアではない(ただし「JUDGMENT DISC」はイージーモード設定になっているので,製品版におけるほかの難度は違うかもしれない)ところを見ると,より幅広い層にプレイしてもらうための配慮はしっかりとなされている。
またノクト以外の3人のパーティメンバーは,バトル中にノクトがピンチに陥ると指示しなくとも近くに寄って来てくれるなど,実に自然で人間らしい行動を取る。彼らの行動を制御するAIは,バトルにドラマ的な展開をもたらすよう,相当に力を入れて作られていると,開発スタッフの講演などで紹介されている。製品版ではストーリー上の演出と相まって,プレイヤーにさらなる驚きや感動をもたらすだろうことは想像に難くない。
こうしてFFシリーズのバトルシステムにおけるさまざまな試みをあらためて確認した今だから言えることだが,FFXVにも製品版を実際にプレイして初めて判明する要素が多数存在するはずだ。何しろ「JUDGMENT DISC」でプレイできる範囲には召喚獣すら出てきていない。11月29日以降,多くの人と新たなFFのゲーム体験を共有できることを楽しみにしたい。
「FINAL FANTASY XV」公式サイト
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