インタビュー
「FINAL FANTASY」は再びゲーム業界の最先端を目指す。田畑 端氏と野末武志氏が語る「FFXV」の展開戦略と物作りとは
今回4Gamerでは,FFXVのディレクターを務める田畑 端氏と,シネマティック・ディレクターの野末武志氏に,タイトルがリリースされるまでの展開と戦略の意図,そして開発にあたって重視したポイントなどを聞いてみた。
デモや映像作品で関心を集め,ゲーム本編の発売日を迎える“線”の展開
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。FFXVの発売日が9月30日に決定しました。田畑さんは以前のインタビューで,ディレクターに就任してまず,自分なりのスケジュールを立てたと話されていましたが,この発売日は予定通りですか。
予定どおりです。2016年9月と最初に決めて,その後に30日という日付まで決めました。
4Gamer:
おお,それは素晴らしい。
田畑氏:
もっとも,無理矢理そこに合わせた部分もなくはないのですが(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
リリースの日付までをきちんと決めた理由について教えてください。
田畑氏:
最大の理由は,発売日を決めてブレない目標にすることでした。そのために現行のプラットフォームでAAAと呼ばれるタイトルが,どの時期に,どのくらいの水準になるだろうか,という予測を立てたんです。自分達の作っているものが,AAAの範疇に入っているうちにリリースしなければダメだろうと。
4Gamer:
リリースしなければならないものの中には,発売日と同時に発表された「PLATINUM DEMO」や「KINGSGLAIVE」なども含まれていたのでしょうか。
田畑氏:
もちろんです。今回はゲーム本編の発売前に映像作品を出すことを重視していました。
4Gamer:
それはなぜですか。
田畑氏:
たとえば「ドラゴンクエスト」シリーズは,ナンバリングタイトル以外にも,多くの人が触れる機会を用意していますよね。その中にはグッズ展開もあり,まだゲームでは遊ばないようなお子さんにも親しまれていますが,そんなお子さんが年齢を重ねたときに,ゲームをプレイしてくださるんです。ところがFFシリーズは,ナンバリングごとに世界観が異なるという理由もあって,基本的には各タイトルごとの展開に留まっていました。
つまり「ドラゴンクエスト」の展開を“線”とするならば,FFシリーズの展開は“点”だったわけです。
4Gamer:
なるほど。FFXVは本編の発売日前に,デモや映像作品で,ドラゴンクエストのような“線”の展開を作っておくということですね。
田畑氏:
そのために野末には,社内の映像制作部門であるヴィジュアルワークスから,FFXVを作っている第2ビジネス・ディビジョンに移籍してもらいました。
ヴィジュアルワークスは,ほかの部署から発注を受けてゲームなどの映像を作り,基本的にはそのゲームの売れ行きにかかわらず仕事ぶりを評価されます。
しかし僕は,業績,つまりゲームの売上で評価される事業部で映像を作ってほしい,と野末に持ちかけたんです。そうすれば自分達と一緒の目標・覚悟・責任を背負って作れると。
4Gamer:
FFXVチームに移籍したことで,野末さんの物作りに対する考え方は変わりましたか。
大きく変わりましたね。もともと自分でも今のようなやり方が向いているんじゃないかとは思っていたのですが,きちんとビジネスモデルがあって,予算を決めて,ターゲットを定めてしっかり物作りをするという部分で,意識からして変わりました。
4Gamer:
田畑さんからすると,狙いどおりというところだったのでしょうか。
田畑氏:
いやいや,そんなことはないです(笑)。
ただ競争相手がいると,自然と鍛えられますよね。競争がないと,純粋培養できる反面,惰性に流されやすいというデメリットがあります。
野末に移籍してもらった理由としては,部署が違うと僕達の都合に合わせて作業をしてもらえない可能性があったから,というのも大きいです。それは一つの戦略で物事を進めるうえで,大きな支障となりかねません。
そういう意味では,野末に来てもらって,本当にうまくいきましたね。FFXVチームの全員がベストパフォーマンスを発揮するという目標を,ブレずに実現できていますから。
明確な意志を持って開発している人間が矢面に立つ
4Gamer:
FFXVのWeb番組「ACTIVE TIME REPORT」(以下,ATR)では,すでにリリースされている体験版「EPISODE DUSCAE」のリリースも当初の目標に含まれていたと話されていましたね。
田畑氏:
はい。ただ,「EPISODE DUSCAE Ver.2.0」だけは,予定外でした。「EPISODE DUSCAE」を出したら,すぐ次に取りかかるつもりだったんですが,久しぶりに成果物を世に出したメンバーも多くて,「ここまではやっておきたかった」「あきらめたけど,本当はこれを入れたかった」という声が,マスターアップの翌日から続々と上がったんです。それで「じゃあ,やろうか」と。
また配信直後から,実際に遊んでくださった皆さんからの感想も寄せられていましたので,それに最速で応えてみたいという意識もありました。
そのおかげで,取り戻さなければいけない期間が1か月半ほどできました(笑)。
4Gamer:
予定外のことをやったので,その分しわ寄せが生じたと。
田畑氏:
あのときは,相当無理をしました。
4Gamer:
一般に体験版というと,発売日の直前に,ほぼ製品版と同じバージョンから一部を抜き出すという形式を取りますよね。しかしFFXVは,発売日も発表されておらず,ゲームとしても未完成という段階で体験版を公開しました。その狙いを教えてください。
一つは,さっき話したとおり,長らく世間に物を出していないメンバーがチーム内にかなりいたからです。まずはきちんと物を出しておこうと。
また世の中には,FFXVの前身となる「Versus XIII」の頃からずっとリリースを待っている方がたくさんいらっしゃいます。そういう人達に向けて「開発体制が変わりました。順調にいけば4年後にゲームが完成する予定です」とは,さすがに言えないですよね。「そんなバカな話があるか」と怒る方もいるかもしれません。
4Gamer:
確かに,「Versus XIII」からどう変わるのか,あるいは変わらないのか,気になっている人は多かったと思います。
田畑氏:
なので「自分達の現在地はここ」「作っているのはこれ」「目指しているのはあっち」ということを皆さんに対して明確に示し,理解していただいたうえで,お互いの関係を築いていこうと考えたわけです。つまり体験版は,「僕達もきちんと作っているから,待っていてください」というメッセージだったんです。
4Gamer:
ATRで体験版をプレイした人からのアンケート結果が公開されていましたが,全般的に評価が高かったですね。
田畑氏:
FFXVのゲームスタイルが概ね受け入れられたという感触を得ました。1日というサイクルがあり,その中で冒険を組み立てていくこと,自分のアクションでモンスターを倒すこと,仲間との連携,そういった建て付けが「今度のFFなんだ」と受け取っていただけたと感じましたね。もちろん,要望もたくさんありましたけれど。
やっぱり,何かしら物を出して,そのフィードバックをいただくことは,ものすごく大事だと感じました。これまでのFFシリーズは,どちらかと言うと作ったものを一方的にプレイヤーに提供するイメージだったと思うんです。
でも今の時代は,いろんなフィードバックを受けてアップデートしていくことが,ゲームに限らず普通になっています。体験版では,あらためてその重要性を実感しました。
田畑氏:
ただし,それはいただいた意見をそのまま採用するという意味ではないんです。
4Gamer:
FFとして譲れない部分があると。
田畑氏:
うーん,“FFとして”というよりも,「完成すれば,こういう新しい価値になるはずだ」と自分達が考えている部分ですね。開発途中だと,なかなか理解していただけないのですが,そこを曲げてしまうと骨がなくなってしまうんです。なので,そこをしっかり伝えつつ,枝葉末節の部分はなるべく快適に遊べるようにするということです。
4Gamer:
田畑さんはATRに寄せられた視聴者からのリクエストに,その場で「やりましょう」と答えることがありますよね。たとえば,ゲーム中にモーグリを出してほしい,といったものとか。もちろんゲームを根本から変えるような大きな変更ではないのでしょうが,「え,そんなに簡単に決めちゃっていいの」と思うこともあります。
田畑氏:
本当にニーズがあるのであれば,僕達が頑張って取り組むことは悪くないとも考えています。そして頑張るけれども,ダメだったらそのときはごめんなさいという気持ちも半分ありますけど。
個人的には,あれについては視聴者に対する問いかけの形式がフェアじゃなかったと思うんです。「モーグリを出してほしいですか」と質問して「はい」「いいえ」で答えさせたら,絶対「はい」になりますよね(笑)。
(一同笑)
4Gamer:
分かりました。ただ,ああいった情報公開の場で,ディレクター自身が前面に立って自分自身の言葉で受け答えするケースはあまりないですよね。どちらかといえば,広報担当とかタレントさんが出てくる印象があります。
田畑氏:
自分の言葉で,とまでは思っていないのですが,矢面に立つのであれば僕がいいだろうとは考えていますし,おそらくチームの皆もそうです。
また今やっていることは,決して成り行きではなく,明確な意志を持ってやっていることなので。明確な意志を持っている人間が発言しないと,批判を受け止められませんから,やはり現場の張本人がいいでしょうね。
4Gamer:
たとえば,どんな批判が寄せられるのでしょう。
田畑氏:
一番多いのは,「Versusを勝手に変えた」というものです。開発者からすると,変えるところは変えないと……という感じなんですけれど。
4Gamer:
とくにヒロインの変更については,ATRでもかなり時間を割いて説明されていましたね。
※「Versus XIII」のヒロインとして発表されていたステラは「FFXV」に登場しないことが明らかにされた
田畑氏:
FFXVとして,ストーリーを1作の中で完結させようと修正を加えていく中で,ヒロインの役どころを大きく変えなければいけないことが,すぐに判明したんです。
ステラは,設定が全部公開されていたわけではないにせよ,皆さんの中に何となくイメージができあがっていました。そうなると,単純に役どころを変えてしまうのが難しいんです。
最初のイメージと全然違う形でゲームに出てきたら,嫌がる人が絶対出てきますよね。
4Gamer:
確かにそのままステラが出ていたら,人格が変わったように見えてしまうかもしれませんね。
田畑氏:
人の気持ちが乗っていることなので,どんなに説明してもしきれませんし,作っている側にとっても,最初のイメージから役どころを変更したキャラクターは扱いにくくなるんです。であれば,役どころとあわせてキャラクターも変えるべきだろうと考えました。
4Gamer:
あぁ,作る方にとっても気になるんですね。
田畑氏:
正しいと思って一生懸命やっていることが批判の対象になると,僕達も人間ですから,やりきれない思いが生じます。また「Versus XIII」に携わっていなかったスタッフが,そういった部分に関わることになったとき,何か自分が間違ったことをしているという気持ちにもなるでしょう。
それは決して健全な状態ではないですから,ヒロインの件を含め,“言霊”とでも表現すべきものが残りそうな部分は引き継がないことに決めたんです。
4Gamer:
ヒロインの変更は,チーム全体に向けてもしっかりと伝える場を設けたのでしょうか。
田畑氏:
こういう理由で,ステラではなく別のキャラクターをヒロインにする,と説明しました。FFXVチームでは,よほど秘匿性の高いものでない限り,情報を徹底的にオープンにして共有することに努めていますから。その代わり,情報はきちんと管理するという方針です。
生きている仲間とともに旅する感覚が「ロードムービーらしさ」を生み出す
4Gamer:
「EPISODE DUSCAE」をプレイすると,FFXVの世界は,FFシリーズの中でもかなり現実寄りであると感じます。
田畑氏:
そこは「Versus XIII」にあった現実世界に近いファンタジーというコンセプトをさらに推し進めて,とくに入口の部分は僕達の暮らす現実と本当に地続きであるかのように作ろうと考えました。FFシリーズのファンは一見ガッカリするかもしれませんが,ゲームを進めていく中で舞台は徐々にファンタジーの世界に移っていきます。
一方,これまでシリーズに触れたことのない人は,いきなりFFの世界観を見せられてもついて行けないかもしれません。なので入口は現実世界に近いほうがいいだろうと考えました。
4Gamer:
FFシリーズに親しんできた人と,そうでない人の双方を考えた結果であると。
田畑氏:
はい。FFのファンなら現実世界からファンタジー世界へのダイナミックな変化を楽しめますし,初めてプレイする人は自分の知っている世界から始まるゲームとして入っていきやすくなるのではないかと。
4Gamer:
それでは,前回のインタビューでも話していただいた「ロードムービー」というキーワードについて,もう少し詳しく教えてください。確かに体験版では,ロードムービーらしさを感じられたのですが,「複数のキャラクターが一緒にさまざまな地を訪れる」という部分は,これまでのFFシリーズや,ひいてはほかのRPGと変わらないはずですよね。なぜこの雰囲気が出るのか,不思議に思えるんです。
田畑氏:
FFXVでは,ほかのRPGのように主人公とその周囲で都合よく起きる変化をずっと追いかけていくのではなく,主人公達を見守るように,引いた視点で物語を描くことで,ロードムービーらしさを表現しています。
また,もちろん主人公はノクトですけれども,物語では4人の仲間全員を主人公として描いているようなところもあって。そこもロードムービーらしさに一役買っているんでしょうね。
4Gamer:
そう言われれば,4人の他愛ない会話まで描いているところは,ロードムービーっぽいですね。
田畑氏:
会話を重要なことではなく,情景として描写していくところですよね。それを移動中に挟み,何となく情報を提供することも意図的にやっています。
4Gamer:
映像面ではそういった試みはあるのですか。
野末氏:
僕が個人的に意識したのは,「日常と非日常の近さ」なんです。FFXVでは,家とも言える車が日常で,旅する先々で起きる出来事が非日常となりますが,その格差が少ない状態だと,ロードムービーらしさが生まれるんじゃないかと。
田畑氏:
移動中に,まるで仲間が一緒にいるかのように振る舞うAIやアニメーションシステムをしっかり作りました。今回は,シームレスに世界が続くオープンワールドと,この仲間のAIの二つは,技術的なトライとして確実にやり遂げようと決めていたんです。操作するのは一人であっても,常に行動を共にする仲間がいるように思わせるAIを絶対に作りましょうと。
4Gamer:
具体的には,どんなAIなのですか。
田畑氏:
一口にAIと言ってもいろいろあるのですが,今回の仲間のAIはノクトを常に意識して,自分がノクトの仲間として振る舞うよう設計されています。たとえば歩行時は,さも一緒に歩いているかのように,ランダムで適度な速度と距離を保ち,少し離れたら走って追いつきます。
4Gamer:
ときどきノクトの前に出たりもしますよね。
田畑氏:
そうですね。あれは,そうなるように移動データを作っているわけではなく,仲間のAIが判断していることなんです。そうすることで,動作がなるべく生の人間っぽく,自然に見えるようになり,仲間を連れて旅をしている感覚が生まれますから。
4Gamer:
仲間の動きはなかなか予想がつかなくて,確かに人間っぽいです。
田畑氏:
常に判定が連続していますから,AIのCPUコストは非常に高いです。自分一人だけ動かせばいいのであれば,もっと深く表現できることもあると思いますが,それだとFFXVは新しいRPGの体験にはなりません。
FFXVでは,「ゲームをやっていないときに,あの仲間達との旅に戻りたくなる」ことを目標としています。生きている仲間と気心が知れてくる感覚が宿ってきたら,そう思えてきますよね。
「人間としてコイツが好きだ」と思えるまでキャラクターを作り込む
4Gamer:
これもロードムービーっぽさにつながるかもしれませんが,男4人の旅を描いていることもFFXVの特徴ですよね。これまでのFFシリーズには,白魔法を使うのは女性キャラだったり,ヒロイン的な存在がいてちょっとした恋愛劇が繰り広げられたりなど,なんとなくのお約束がありました。その意味だと,男4人のFFXVではやりにくいところもあったんじゃないかと思うのですが。
田畑氏:
FFシリーズのナンバリングに携わるのは初めてなので,やりにくいかどうかはよく分からないんですよ。でも「なぜレギュラーパーティに女性キャラがいないのか」ということは,いつも指摘されます。
おっしゃるとおり,男同士の旅だからこそ出せる雰囲気がありますし,父親と息子という男同士の関係を描くために,車がキーアイテムとなっているところもあります。
4Gamer:
ええ,車が父から引き継いだものという設定は,とくに男性はグッと来ると思います。FFXVは車に乗って旅をすると最初に聞いたときは,まったくイメージがつかめませんでしたが,今こうしていろいろと分かってくると,しっくり来るというか。
田畑氏:
今回は,中途半端に女性キャラを入れるよりは,そうやって男性が共感できる価値観をしっかり作って,女性にも可能なかぎりその良さを知ってもらう形に振り切ったほうがいいだろうと考えました。
4Gamer:
なるほど。「EPISODE DUSCAE Ver.2.0」で,ノクトとイグニスが星を見ながら昔を振り返るシーンがあって,「すごくいいな」と思ったんですが,確かにあの感じは男同士じゃないと出ないものでしょうね。男女だと,ロマンチックにはなるかもしれませんが,本音で語ってる感じにはならないんじゃないかと。
田畑氏:
そうですね。男女のシーンだと,男が恰好つけてしまいますよね。“モテたいスイッチ”が入ってしまって。仮に旅の仲間の中に女性が加わっていたとしたら,表現が変わる部分もたくさんあると思いますよ。
実際ゲーム中では,ゲストとして女性キャラが加わることによって,4人の男達が普段の雰囲気ではなくなるという描写もしています。それは男の性(さが)ですから(笑)。これは,より人間らしく描いているからこそ,挑戦できた部分だと捉えています。
4Gamer:
4人の仲間それぞれの見た目や性格なども,試行錯誤した部分かと思うのですが。
田畑氏:
まず見た目に関しては,全員黒い服装(※)でもきちんと識別できるようにと,アートスタッフ達が少しずつ手を加えていきました。
あとは,僕達自身が好きになれるような人物像にしようと心がけました。一人一人を記号的に「コイツはこういうヤツ」と決めただけで終わりにするのではなく,本当に生きている人間と思えるくらい,技術的にもアート的にも,そしてゲームプレイ的にも作り上げていったんです。言い換えれば,大事に作っています。
※ルシス王国では黒が特別な色とされているという設定があり,王族であるノクトや,その仲間の3人はいずれも黒い服を着ている
野末氏:
チーム内で活発に議論したんです。「いかに自分達が愛せるキャラにできるか」「こんな記号的なことはしない」といったように,連日深夜まで話し合いました。とにかく“人間”にしようと。
田畑氏:
「オレはコイツが好きだな」と思えるまで徹底的にやる。そうやって,なるべく人間として命を吹き込もうとしました。
野末氏:
開発初期には,キャラクターの人格形成に特化した専門チームも編成しましたからね。
田畑氏:
そうやって一とおり人格が固まったら,あとはアップデートしつつ,チーム全体で共有していきました。
野末氏:
もちろんプレイヤーの皆さんから得られるフィードバックも参考にしました。最初はプロンプトの評判がすごく悪くて……。
田畑氏:
プロンプトは表面的な部分がすごく前面に出てしまっていたんですよね。ギャーギャーキャンキャン目に付くし,耳に付くし。
4Gamer:
ノクト,グラディオ,イグニスが割と落ち着いた感じのせいもあって,確かに目立ちますね。
野末氏:
そこで,もう一度チームで真剣に考えました。
田畑氏:
プロンプトは一生懸命周囲のことを考えて,自分がツラくても明るく振る舞い,絶対に雰囲気を暗くすまいとしている,という性格的な奥行きをもっと打ち出していこうと。
でも実は一番人間らしく表現するのが難しかったのは、ノクトでした。
4Gamer:
ぱっと見で分かる“人間くささ”みたいなものがあまり感じられないキャラクターですね。
田畑氏:
はい。そのため実を言うと,僕は最初,ノクトのことをあまり好きになれていませんでした。これはあとで気づいたら,そうだったというものです。何かハッキリしないし,とても記号的な印象で。しかし,何かを成し遂げそうな雰囲気はちゃんと持っているんですね。
4Gamer:
途中からディレクターに就任したという事情があるにせよ,ノクトは主人公ですから,そのままではいけないですよね。
田畑氏:
そこで,どうすればノクトを好きになれるか,いろいろと考えました。夕食の席で,父親であるレギス王をずっと我慢して待っている幼少期ノクトの設定など,子どもの頃からのノクトをいろいろ妄想して,ようやく人間だと思えるようになったんです。そうすると自然とノクトを好きになりました。
4Gamer:
開発作業の中に「主人公を好きになること」があるとは……。
田畑氏:
彼をいかに人間的にするかについては,少し前までチーム内でも議論が続いていました。「もっと,こういう人間じゃないとダメだろう」「ノクトがこういう感じ方をしないと,オレ達も彼の行動を支持できないだろう」というレベルで話し合いました。セリフ回しのような表層的な部分はもちろん,人格に至るまで深く掘り下げましたね。
4Gamer:
ここまで体験版をプレイしたり,映像を見たりする中で,FFXVでは一人一人が生々しいという感じがしたんですが,今の話を聞いて納得できたような気がします。
野末氏:
そうやって設定を深く作り込んだ結果,今回発表した「KINGSGLAIVE」にもつながったんです。
4Gamer:
「PLATINUM DEMO」や「KINGSGLAIVE」「BROTHERHOOD」などを通過した時点で,かなりノクトの人物像を確立できるんじゃないか,感情移入できるんじゃないかという気がします。
田畑氏:
ええ,キャラクターに過去があることを実感できると,一気に人間らしく思えますよね。
もちろん,「KINGSGLAIVE」までで十分だという方は,それで構いません。一作で満足して頂ける素晴らしい作品になっていますしね。
ただ、せっかくFFXVのリリース前に,より物語に深みを与えてくれる作品を用意できたので,「この綺麗なCG映画のゲームがあるらしい」というところから,FFXVに接点を見出したり,FFシリーズから離れていた人に「最新作が出るならやってみようか」思ったりしていただければ本当に嬉しいです。
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