インタビュー
「龍が如く」の名越稔洋総合監督に,仕事術や次回作のことを聞いた――男色ディーノが。
PLAYSTATION 3用ソフト「龍が如く3」が発売されてから早2か月。発売から3週間で50万枚の出荷を記録するなど,見事なヒットを記録している。
そんな本作の顔といえば,セガで「龍が如く」シリーズの総合監督を務める名越稔洋氏ではないだろうか。とくに龍が如く3の発売前後からここ最近に至るまで,さまざまなプロモーション活動を自ら積極的に行ってきている様子は,4Gamerでもたびたびお伝えしてきたとおりだ。
さて,そんな名越総合監督に,ぜひ一度会ってみたいと熱望している男がいた。その男の名は,男色ディーノ。DDTプロレスに所属する現役のプロレスラーにして,4Gamerで連載「男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ」を執筆している彼は,龍が如くシリーズの大ファンである。
「龍が如キストである私としては,一度あの名越ちゃんにお目にかかってみたいのよね。たぶん,こっち側(どっち?)の人間だと思うから。あと,名越さんて普段,どんな仕事をしてるのかしら? ちょっとそのあたりを確かめたいわ」
そんなこんなで実現したのが,今回のインタビューである。
龍が如くシリーズにおいて,名越総合監督が果たしている役割や,このシリーズを生み出すきっかけ,タイアップ時の苦労,ゲームにおける表現について考えていること,そして気になる今後の展開など,さまざまな話題を聞いてきた。
名越稔洋総合監督の仕事術
男色ディーノ選手(以下,DD):
よろしくお願いします。
「龍が如く」シリーズは全部遊んでいますし,名越さんがプロモーション活動している姿も,何度となく見てきました。そこでまずお伺いしたいんですが,このシリーズにおいて,名越さんは具体的にどういうお仕事をなさっているんですか?
そうですねぇ……けっこう,楽してますよ。
DD:
えっ!?
名越氏:
いや,まあそんなことはないですけど(笑)。
プロデューサーとしての最初の仕事は,どういうゲームを,どのプラットフォームで作るかというのを考えることです。そして,ゲームとしての面白いポイント,見どころ,ボリューム感などを決めていく。
同時に,龍が如くシリーズであれば,アクションアドベンチャーゲームですから,“ドラマを見る”“アドベンチャーを楽しむ”“バトルをする”という三本柱の割合も構成してくんです。これらをひっくるめたものが,第一歩ですね。
DD:
第一歩というわりには,もの凄く広範囲なんですね。
名越氏:
ここの判断が間違っていると,大惨事を招きかねないですから。
で,こうしたことが決まった段階から,開発現場でどれぐらいのことをできるのかという基礎研究が始まるんです。そしてその成果を,週に一回チェックしていきます。この作業が進んでいくと,あとは毎日何かのチェックですね。開発が終わる日まで。
DD:
では,プロジェクトの進行具合は常に把握しているわけですね。
名越氏:
ええ。さらに開発途中で発表会をやる場合は,トレーラー用にシーンを切り出して,編集して……となるんですが,基本的に編集とMA(音声やBGMの加工)は,全部立ち会っています。
DD:
そこまで直接手がけるんですね。
毎日のチェックというのは,ゲームのボリュームが大きくなるにつれて,相当しんどいことになりそうな気がします。
名越氏:
実は,独自のノウハウがあるんです。
例えば,Aというポイント,Bというポイント,Cというポイントの3回でチェックしなければならないものがあるとします。普通は,AをクリアしたらB,BをクリアしたらCという順番だと思うんですが,僕の場合はA,B,Cを並行してやるんです。
DD:
Aの結果を見ないうちから,BとCも見ていくということですか?
名越氏:
そういうことです。これは凄くリスキーではあるんですが,僕の頭の中で編集できていれば,うまく回るんですよ。ミーティングには全部出ますし。こうすることによって,時間を短縮できるんです。もちろん,全部が全部こうできるというわけではないですが。
スタッフもこのやり方に慣れてきているっていうのが,うまくいく理由かもしれません。
DD:
龍が如くシリーズで,4作リリースしてきた積み重ねが生きていると。
名越氏:
そうですね。こういうことができるチームだからこそ,1年という開発期間で新作を出せているのかなと。第一作のときは,2年かかりましたけどね。
開発期間は1年ぐらいがちょうどいい
やっぱり最初は手探りでしたか?
名越氏:
ええ。実際にやってみないと分からない部分っていうのは確実にあって,その経験を元に,常識の枠を取り外して端折れる部分を探してみたんです。そしたら,このスタイルができてしまったと。開発期間が延びれば,その分,お金もかかりますしね。
DD:
そこはプロデューサーとしてシビアに考えないといけない部分ですよね。
では実際,開発において最も時間がかかるのは,どんな部分ですか?
名越氏:
アイデアを生むのには時間がかかるんです。こればっかりは,端折れません。とはいえ,これに2倍の時間をかけたら2倍面白くなるかというと,決してそういうわけではありません。人間の発想って,瞬発力だと思いますし。
そういう意味では,1年で楽しめるものを作る! という具合に自らを追い込むほうが自分には向いているんでしょうね。逆に一つの作品に2〜3年費やせる人のことは,尊敬しちゃいますし。
DD:
開発期間が長くなると,途中で飽きてしまいますか?
名越氏:
飽きるっていうか……たぶん,途中で次に作りたいものが出てくると思うんですよ。これを抑制して,今進んでいるものを続けるのが,僕にとっては何よりたいへんなことなんです。
DD:
ああ,分かります。
名越氏:
映画だって,大作と呼ばれていてもほどほどの期間で撮るじゃないですか。僕にとってのクリエイティブな仕事って,あれぐらいがちょうどいいんじゃないかと思うんですよ。だからもし,半年で1本ゲームを作れるような方法論が見つかるんだったら,半年で作りたいぐらいですね。
むしろ長くはあんまりやりたくない。開発スタッフも,短い期間でいろいろなタイトルに触れたほうが,幅広い経験を積めますし。
DD:
映画……ということで思い出したんですが,「龍が如く 劇場版」を手がけた三池崇史監督も,短い期間にばんばん撮る方ですよね。
名越氏:
やっぱり三池さんとは話が合いましたね。撮ることにモチベーションを持っていて,自分の働く姿にプライドを持っている方ですし。ジャンルも問わないですしね。
実際,劇場版も数名の監督には断られたんですが,三池さんはあっさり引き受けてくれました。「やらかしてるゲームだから,やらかした映画でいいんだよね?」って(笑)。
最初から常識を変えるつもりだった
DD:
確かに「やらかしてる」ゲームですよね。第一作が発表されたときは,「え,いいの?」とびっくりしたものです。
僕は当たると思ってたんですよ,最初から。それか,見向きもされないかのどちらかで。そのかわり,ほどほどはないだろうと。
DD:
三振かホームランのどちらかだと?
名越氏:
それに近いですね。
だから,第一作で会社を説得するときに気をつけたのは,企画内容についてではなく,宣伝費をたくさん使わせてもらうことだったんですよ。まず,目立たなきゃいけないですから。
というのもゲーム業界って,説明するのに奥歯にものが挟まったかのような表現が必要なものって,極力表に出さないようにしてきていると思うんですよね。その要素をゲームの中ではどんなに押していても,宣伝では触れない……みたいな。
DD:
確かに。ちょっと不思議な宣伝ってありますよね。
名越氏:
でも常識って,時代ごとに変わっていくものなんですよ。
僕がこの業界に入った約20年前は,「エデュケーション」なんて言葉を使った瞬間に,「教育は金にならない。エンターテインメントとは違う」って,プレゼンすら聞いてもらえなかったんです。でも今,ニンテンドーDSでは教育系のソフトも売れてますし,学校の授業でDSを使うようなところも出てきています。こんな未来が訪れるなんて,当時は誰も予想していなかったと思うんですよ。
DD:
それが当時の常識でしたね。
名越氏:
だから龍が如くも,ちょっと前まで非常識だったんです。偉大な先人達が作ってきたゲームの流れからいうと,不必要というか,あってはならないものに近い部分すらあったかもしれません。でも,こういう流れだって,タイミング次第で変えられるんですよ。
DD:
タイミング……ですか?
名越氏:
そう。そしてそのタイミングって,ある程度はお金で作れる部分もあるものだと思うんです。だから「圧倒的な宣伝費が必要ですよ」というプレゼンを会社に対してしました。「外れる可能性もあるし,クレームだらけになる可能性もある。でも,うまくいったら常識が変わるんですよ?」と。
DD:
凄いプレゼンですね。
名越氏:
プレゼンって,やっぱり最初の輝きが一番いいんですよ。でも経営サイドは,いろいろなリスクを考えたうえで,「このあたりの角を取ってよ」とか「サイズを少し小さくしてよ」とか言うんですよね。お金……ひいては会社の命運に関わることだから理解はできるんです。
だけど,それを飲んでしまったら龍が如くというプロジェクトが僕にとって何の意味もないものになってしまう。企画的にもシナリオ的にも丸めたくなかったですし。
4年間で10数年分の仕事をしてきた
DD:
でもやっぱり,いろいろと丸めた企画にしようという意見はあったんですよね?
「これ,面白いと思うんだけど,主人公は刑事のほうがいいんじゃない?」とか。僕にとっては違うものになっちゃうんですけど,「同じでしょ? 大都会が舞台でドラマがあってさ。刑事モノのほうが絶対いいじゃん。テレビでもよくあるし」って。
こちらとしては,テレビでもよくあるものなんか作りたくないわけですよ。龍が如くは,それこそ指で触れたら血が出るほどエッジの尖ったものにしたかったんですから。
まあ……プレゼンで落とされたとしても,これに近い何かをまた出したと思いますけど(笑)。
DD:
それが今や,4年で4作品という人気シリーズになりましたね。
名越氏:
この4年間で,他社でいう10数年分の仕事をやってきたのに等しいと思うんですよね。そういう意味では凄く濃かったですし,やっぱりつらくもありました。要するに,立て続けに4回,全力でマラソンをやるようなものでしたから。
DD:
開発チームの皆さんも,大変だったでしょうね。
名越氏:
1が終わった時点で相当疲れていたんですけど,「ここで温度が冷え切らないうちにもう一回勝負しよう。これがうまくいけば,このシリーズは定着するから」という話をして勝負をしたのが2です。
セールス的にも,1の倍を最初に売ることができて安心しているところに,PS3が出るという話が入ってきたので……。
DD:
あ,そういうタイミングでしたよね。
名越氏:
「PS3で3作めを作れば,ノウハウがたまるから!」と言いながら,「龍が如く 見参!」を作ったんです。で,これも評価していただけたので,やっぱり1年後に現代劇をやらなきゃダメだな……と。それが3ですね。
DD:
プロレスとはゴールのないマラソンだなんて言いますけど,龍が如くシリーズの開発は,一度ゴールがあるのに気を抜けないんですね。
名越氏:
「これが最後」って2回ぐらい言いましたからね。でも開発チームは,騙されていると薄々感づきながら,楽しんでくれているんで,本当にありがたいことです。
非日常が詰まった繁華街の魅力を描きたい
ではこのシリーズの企画段階で,プレイヤーに楽しんでもらいたいと考えていた一番のポイントを教えてください。
名越氏:
正直なところ,一番楽しくて面白いのって,現実世界だと思うんですよ。そして現実世界の中で,非日常が詰まっていて魅力的な場所って,僕にとっては繁華街なんです。だから繁華街というものを描きたいというのが,一番大きかったですね。
例えば,繁華街にあるお店をたくさん知っている人がいたとしても,その人が全部のお店を知っているかというと,そうではないですよね。
DD:
たいてい,行きつけのお店が数店あるとかその程度ですよね。
名越氏:
ほかのお店には興味がなかったり,もしくは興味はあるけど,ダイレクトに怖い思いをしそうだとか,お金がたくさんかかりそうとか,そういうのが理由で行ってなかったり。
興味がないっていうのはともかく,覗いてみたい気持ちがあっても,ある程度の度胸がなければそれを実際に体験することはできないわけですよ。
DD:
繁華街に限らず,初めての場所に足を踏み入れるのって,緊張しますもんね。これが繁華街だと,そのハードルも上がりますし。
名越氏:
でもゲームでは,現実でもできる体験なんだけど,度胸がないと絶対にできないことを体験してもらえるんですよ。かといって,現実の代用品というわけではない,ゲームだけの体験……バーチャルリアリティなんていうとちょっと古めかしい言葉ですけど,あえてこれを使うなら,“ときめきのあるバーチャルリアリティ体験”を描きたかったんです。
DD:
確かに,ちょっと怪しげなお店に初めて入るときのときめきって,龍が如くの世界でも味わえました。
名越氏:
でしょ?
それを強調していこうとすると,神室町にあるすべてのお店に入れるようにしたいぐらいなんですよ。コスト的に見合うかどうかを別にすれば,ですけどね。
DD:
名越さんがそこまで繁華街というものに力を入れるのは,なぜですか?
名越氏:
繁華街ってどこも魅力的で,日本人にとってのアイデンティティが満ちあふれていると思うんです。例えば山奥に住んでいても,繁華街のことはメディアを通じて知っていたりしますよね。
アイコンとしての繁華街というものに対する認識は,全国各地でそう差はなさそうです。
名越氏:
一方で,都会に住んでいる人も繁華街のすべてを知っているかというと,さっきも話しましたとおり知らない場所だらけで,想像しかしたことのないことだらけなんですよ。
繁華街をよく知っている人,近くで暮らしている人,遠くで暮らしている人,それぞれがそれぞれなりに繁華街へのときめき感を持っていると思うんです。大人の遊園地だから。
DD:
なるほど,確かに大人の遊園地ですよね。繁華街特有のマスコットキャラクターもいますし(笑)。
名越氏:
でもこれまで,そういうものにゲームとして正面から取り組んだ例っていうのが,なかったんです。
僕の中でヒットするものの公式というのは,“アイデンティティが高く,誰もやったことがないもの”なんですが,龍が如くはこれに則っているんです。だからこそ,「宣伝さえうまくいくならば,売れないという判断をするほうがおかしい」ぐらいに思っていました。
龍が如くは繁華街ありきで生まれた企画
DD:
ここまで聞いて気付いたんですが,桐生一馬らキャラクター達や物語というのは,繁華街というものが大前提にあって,その上に載せたという形ですか?
名越氏:
そうです。街からですね。
普通はキャラクターと舞台が同時に生まれるんだと思いますけど,龍が如くに関しては街ありきです。その街のどこへでも出入りできるのは? ということを考えていったときに,国家権力を持っている刑事では平凡過ぎるだろうと。
DD:
そうなるともう,職業的には一つしかないですね。
繁華街……というと,キャバクラの要素もこのシリーズを特徴付けていると思います。
あれは,繁華街を作ろうとなったら,かなり早い段階で決まった企画ですね。キャバクラに関しては,実際に行ったことのある人も少なくないでしょうから,繁華街特有の非日常感というのとはちょっと違うかもしれません。でも,そこでお金を無尽蔵に使って通いまくり,女の子を口説く……となると,ほとんどの人にとって非日常的な体験ですよね。エンターテインメント性も高いですし。
そんなこんなで,企画もドドドドドッと決まりました。
DD:
キャバクラに関しては,作り手の願望がとくに盛り込まれているのかもしれないですね(笑)。
それもあってか,龍が如くのキャバクラは凄い楽しめるんですよ。現実のキャバクラの面白さは分からないんですけど。だって,あんなに簡単にモテないじゃないですか。
名越氏:
そこはよく突っ込まれるんですけど(笑)。
桐生一馬は,元々凄くモテるんですよ。だから普段,それほどモテないという人があの通りにやっても,そりゃうまくいかないですよね。
DD:
ああ,基本戦力に問題が……。
面白さが分からない! と言いつつも,龍が如くで遊んでいると実際のキャバクラってものも気になってくるんですよね。ちょっと怖いんで行かないんですけど,行ったら行ったで何らかの経験値はもらえるのかな? とか。
名越氏:
龍が如くの経験値っていうのも,考え方としてはそこなんですよね。
当初の企画では,経験値を稼ぐにはバトルしかなかったんです。でも,バトルを楽しんでもらう前に,繁華街であちこちに行きまくってほしいわけです。その場所が面白ければ行ってもらえるでしょうけど,何度も行きたくなるとか,もっと行動範囲を広げてみたくなるような動機を作るには,どうしたらいいのか? ということを考えていました。
そんなときに,ある企画担当者が,「行ったら経験値がもらえるようにすればいいんじゃないですか?」というアイデアを出してきたんです。
DD:
最初それを聞くと,「え?」ってなりますよね。
ええ。実際,「どういう意味?」と聞きました。
すると,「飯を食うというのも一つの経験だから,飯を食ったという経験値が入る」という例を出してきたんです。確かに生きていると何事も経験ですから,それに応じて経験値が入っても不思議はないかなと。
それで,ゲーム内でさまざまな場所や経験にアクセスすることで,それ自体を楽しむだけでなく,ゲーム的にも得をしていくというシステムが生まれたんですよ。
DD:
ちょっと話は違うんですけど,子供の頃,そろばんを習わされていたんです。それがイヤでイヤでたまらなかったんですけど,母親に「そろばんをやっておいて良かったと思う日が必ず来るから続けなさい。30歳になってもそんな日が来なかったら,そのときに口答えしてもいい」と言われて,辞められなかったんですね。
30過ぎて振り返ってみると,やっぱりそろばんが役に立った局面というのが一つもなくて,そのことを母親に言ったんですよ。大人げないと思いながらも。そうしたら「直接役に立ってなくても,そろばんをやっていたからこそ,今のあんたがいるのよ」みたいなことを言われてしまったんですが……。そうか,そろばん分の経験値が入っていたのか。
名越氏:
まあ,そういうことでしょうね(笑)。
PS3でエモーショナルな演出をしやすくなった
ではそろそろ,「龍が如く3」(以下,3)の話を聞かせてください。
この作品は,現代劇という意味ではシリーズで初めてのPLAYSTATION 3用タイトルですが,プラットフォームが変わることによって開発への影響はありましたか?
名越氏:
ハードウェアの性能が向上すると,やれることの手数が増えるので,その分大変にはなりましたね。ただ,例えばこれまでソフト側で光っているように見える演出をしていた部分が,ハードウェア的にサポートされるようになったことなど,楽になった部分もあります。
だからまあ,影響はあるけれども,差し引きで考えるとそれほど大きなものではありませんでしたね。
DD:
では,ゲームに込めたいメッセージは,表現しやすくなりましたか?
名越氏:
エモーショナルな演出をしやすくなったので,その分,伝わりやすくなったんじゃないかと思います。泣けるシーンは昔より泣けるようになったと思いますし。
でも,これはプラットフォームが変わったことというより,アイデアと密接に関係している部分なんですよね。だから,次にまた素晴らしいアイデアが見つかれば,同じプラットフォームであれ,演出自体は飛躍的に向上するでしょうし。
DD:
演出という点では,グラフィックスのクオリティが上がったことで,キャラクターの表情も細かく描かれるようになったと思います。このことで,声の演技とのバランスについても,シビアさが求められるのになったのかな? と思うんですが,実際のところいかがでしたか?
名越氏:
声の演出に関しては,毎回いろいろ考えています。
とくに龍が如くシリーズの場合,声優さんというより俳優さんもいますし,中には声だけの芝居を初めてやる方もいます。それぞれ個性も違いますし,こちらが何か言いすぎるとまずい人もいれば,言わなすぎてもまずい方もいるんです。ただ一つ確実なのは,ゲーム業界自体にこういうことに対するノウハウが集積されてきているということでしょうね。
DD:
最近だと声の入っていないゲームのほうが,むしろ少ないぐらいかもしれません。
名越氏:
ちょっと前だと,専門の演出家に依頼しなければならなかったと思うんです。でも,そこを僕らだけでできるようになりました。ゲームを作っている人間が,ゲームに適した形の演出をできるようになったというのは,けっこう大きな出来事だと思うんですよね。
DD:
と,言いますと?
名越氏:
映画だと編集してだいたい100〜110分に収めなければいけないという運命があります。でもゲームの場合,短いものであればムービーを全部足しても10数分,長いものであれば5〜6時間のものもあります。そういう意味では凄く自由なんですよ。演出にしても,好きなように間をとれますし。
DD:
なるほど。ゲーム業界の人が演出するのであれば,そのあたりもきっちり理解しているからやりやすいということですね。
名越氏:
僕らだけでなく,俳優さんもやりやすいみたいですよ。アフレコと違って,声に対してキャラクターの芝居を当てているんで,自由に演じられるそうですし。
DD:
あ,役者さん達はあの絵は見ないで演じているんですね。そうなると,演出も一筋縄ではいかなそうな気がします。
名越氏:
彼らは脚本やプロットを見て役作りをしていると思うんですが,彼らが演じながら思い描いているイメージと,僕らが作るゲームのイメージにギャップがあると,はめ込んだときにギャップが生まれてしまうと思うんですよ。だから演出のときには,一番そこを気をつけています。
DD:
アニメなんかだと,絵が先というパターンのほうが一般的ですよね。
名越氏:
ええ。でもこういうゲームの場合,尺に合わせてセリフを言ってもらうより,このやり方のほうが生っぽさが出ると思うんですよ。
DD:
美しくなったグラフィックスと,俳優陣の演技が組み合わさっているわけですが,こうなるといっそのことムービーは実写に! みたいなことは思いませんか?
名越氏:
ある意味,究極形はそういう形かもしれないですね。ただ,フィルムだと撮影したあとからカメラワークを変えることはできませんが,CGであればいくらでも変更できます。それこそ,当初思い描いていたプランとは違っていても,声の質に合った映像をつけることも可能なんです。
一発の緊張感を持つフィルムの世界に対する憧れはありますけど,CGにはCGなりに,こういう面白さや奥深さがあるんですよ。
CGでもキャラクターの表情なんかは,実写を超えている部分すらありますよね。とくに3では。
名越氏:
ええ,顔のエンジンも進化していますからね。ただ単純な怒りの表情というだけでなく,笑えるような状況ではないんだけど笑わなくちゃいけない場面の表情とか,エモーションの掛け合わせみたいなものがツールで用意できているんです。このシーンは,怒りのパーセンテージがこれぐらいで……という感じで。
DD:
え,例えば怒りのパーセンテージを設定すると,眉がつり上がったりするわけですか?
名越氏:
だいたい標準的な筋肉の動きをしますね。ただ,ツールはツールなんでテンプレートは作れるんですけど,細かい部分はやっぱり最終的な手作業になります。
もっと引きつった感じを出したい! となったら,右の眉だけをちょっと上げてみたり。そうなると,右の眉だけを上げているのが分かるように,カメラ位置を変えてみよう! とか。
DD:
それは,キリがなくなりそうですねぇ……。
名越氏:
キリはないですね。
だから仕上がったあとでも,もっとこうしたかった……っていう部分は山ほど出てきます。ただ,そういうものが次回作に役立てられるノウハウとして蓄積しますし,モチベーションにもなっていきますから,やり残しがあるっていうのは悪いことばかりじゃないんですよ。
認知度が上がり,タイアップ交渉が楽に
DD:
グラフィックスやボイスだけでなく,各種のタイアップもゲームのリアリティを増すことに一役買っていますよね。とくにお酒の説明が細かいのが気に入りました。私自身,お酒は飲まないんですが。
おかげさまで今回は,サントリーさんと組めましたからね。
3では,27社とタイアップしたんですけど,本当はもっともっとやりたかったんです。ただ,あれは契約ができてから作成をすることになるんで,プロジェクトの最後のほうの作業なんですよ。だから数的な限界はありました。
DD:
こういう交渉ごとは,名越さんが直接先方に出向かれるんですか?
名越氏:
3では必要な部分だけでしたけど,最初は全部行きましたよ。俳優さんを起用するにも,事務所までご挨拶に行きましたし。羽田空港で羊羹買って。もう,どれだけ羊羹好きなんだっていうぐらい,しょっちゅう羊羹を買ってました(笑)。
DD:
3での交渉は,スムースに進みましたか?
名越氏:
やっぱり以前と比べて,認知度が上がったことのメリットは感じましたね。各社の広報や宣伝担当の方はアンテナの感度が鋭いですから,こちらが「龍が如くとは?」という説明をする前にすでに知っていたり,遊んだことがあったり。それどころか,アポイントをとって伺ったら,もう先方はすぐにでも契約書を出すぐらいの勢いだったり(笑)。こういうのはやっぱり,嬉しかったですよね。
DD:
つまり,以前は苦労されたということですよね?
名越氏:
ええ……。
ゲームでこんな企画って大丈夫なの? なんて,こちらの心配をされてしまったり,参加することがデメリットになるんじゃないかと思われてしまったり……。
DD:
世界観が世界観ですし,前例がないことだとどうしても及び腰になっちゃいますよね。
名越氏:
だから今回のサントリーさんも,交渉は難航するだろうと思っていたんですよ。ところが,わりと二つ返事に近い形で承諾していただけたんです。
DD:
それは意外ですね。大きな企業ですし。
僕も不思議に思ったんで,理由を聞いてみたんですよ。
すると,「家ではどんなときにお酒を飲みますか?」というアンケートの結果で,1位は“テレビやDVDを見ているとき”,そして2位が“ゲームで遊んでいるとき”だったらしいんです。
DD:
ああ,なるほど。ちょっと面白い傾向ですね。
要するにかつてゲームを遊んでいた子供が,成長して大人になって,ゲームで遊びながらお酒を飲むようになったっていうのは。
名越氏:
なのでサントリーさんとしては,お酒とゲームの架け橋になるようなものを模索していたみたいなんですよ。
DD:
そこにタイアップの話が入ってきたら,まさに渡りに船ってところだったかもしれません。
名越氏:
サントリーさんのお役に立てるのであれば,こちらとしても嬉しいですしね。
DD:
逆に,交渉はしたものの実現しなかったタイアップなんかはありますか?
名越氏:
それはもう(笑)。企画書を出した段階でNGが出て,「用があったらこっちから連絡します」なんて言われてしまったり,「僕らはこの世界のイメージを払拭しようと戦ってきたんです」なんて涙ながらに言われてしまったり……。
DD:
まあ,そこはプロとプロの戦いってことですよね。
3で初めて,ど真ん中のストレートを投げた
龍が如くシリーズは,作を重ねるごとに行ける街が増えたり,対立する組織が増えたりと,物語のスケールも大きくなっていますよね。3では国際政治的なにおいも漂ってきましたし。
これはやはり,続編は前作よりもスケールアップしなければならないという姿勢の現れなんでしょうか?
名越氏:
実はそのあたりは,まだ模索中という気がするんです。試しているというか,プレイヤーさんと対話しているというか。
このシリーズって,形式的になってしまうとつまらないと思うので,もっと破天荒なものがいいのかな? と思ったり,逆に狭い世界でどんどん濃い方向に掘り下げていけばいいのかな? と思ったり。そのどちらにも振れる自信はあるんですけどね。
DD:
2に比べると,3の飛躍の仕方は実験的だったのかな? と。
名越氏:
2のほうが王道的な続編でしたよね。強いライバルがいて,西と東に対立組織があって。シナリオがあっという間にできあがったのも2ですし。
DD:
3のシナリオには時間がかかったんですか?
名越氏:
悩みに悩みましたね。
ただシナリオは,最初の設定と見せるシーンを決めると,その間を紡いでもらうんです。そうすると最初のプロットが出来上がるんで,そこで不自然なところのチェックや,もっと面白くできる展開を考えます。これを10回ぐらい繰り返して,第一稿になる感じです。
DD:
その間,開発チームは何をしているんですか?
名越氏:
シナリオの第一稿が出来上がるまでの間に,キャラクターや設定が決まってくると,キャラクター班や背景班はばーっと作り始めますね。それまでは,どんなシナリオが来るのかちょっと悶々としながら,前作でやりきれなかった技術課題をクリアしたり,そんな感じです。
3のシナリオを語るうえで,子供達の存在も印象的でした。
3で描かれていたものの中に,大人と子供の関わりだとか,大人社会と子供社会の対比のような構造があったと思うんですが,これは最初から狙って描こうとしていた部分なんでしょうか?
名越氏:
人間って,悪いと言われている人,悪そうと言われている人も根っこの部分はいい人だったりしますよね。職業を問わず,信念を持っている人は輝いていますし。
でもそういうのって,大人だけじゃないと思うんですよ。子供は子供でそういうカルチャーを持っていて,大人に比べるとスケールは小さいかもしれないですが,子供なりの信念を持っていたり,助け合ったりといったことがある。
そういう対比は描きたいと思っていました。どこまでうまくできたかの判断は,実際に遊んでくれた方にゆだねるしかないですけど。
DD:
大人と子供,それぞれの信念を描くことで人間の根っこの部分を浮き彫りにしようとしたのかなと感じました。
名越氏:
これもいろいろ試している中の一つの要素ではありますね。子供という要素は,このシリーズにいらないという反応もあるかもしれないですし。
DD:
その逆の反応もあるかもしれません。
名越氏:
そういう意味では,キャスティングでもそうなんですよ。これまで僕は,基本的に女性はさほど立てていないんです。男臭い世界を描いているんだから,必要なかろうと。でも一方で,やっぱりちょっと立ててみようかな? という思いもなくはないですし。
DD:
それも試している最中なんですね。
名越氏:
そうです。今回はついに矢沢永吉さんにお願いできたんですが,実はこれまでの横山 剣さんやZEEBRAさんでは,ど真ん中のストレートじゃなくて,直球は直球なんだけど少し外れたところ,外れた部分の格好良さを狙ったんですよ。
でも今回は,あえてど真ん中のストレートを投げてみました。これに対して,世間はどう反応するんだろう? と。そういう意味でのチャレンジって,龍が如くでやり残していることはいっぱいあるんですよ。
DD:
確かにそのあたりは,実際に投げてみないと分からないですね。
名越氏:
「変に丸まってる感じがして,魅力が減るんじゃないの?」という意見もありますし,「いやいや,もっとマスを目指すんだったら,こうじゃないと」という意見もあります。だから,それを問うている最中なんですよ。
DD:
現時点で,その答えは見つかっていますか?
名越氏:
うーん……,うまくいっている部分もあると思いますし,それについては間違っていなかったんだなと。ただ,この先の未来を見据えたときにはどうなんだろう? というのは考えちゃいますよね。
DD:
たとえ間違っていなかったという答えが出ても,それだけを繰り返しているわけにはいきませんもんね。
プロデューサーは,客観的で冷静な目を持っていないといけないんですが,自信がなくなってしまったらそもそもクリエイターではいられないですしね。客観的な冷静さと主観的な自信の二つを,年を重ねるごとに問われるようになっていますし,時代も相当シビアになっていますし。
その中でプレイヤーの期待と勝負しながら,予算や期間の制限がある中で,どういう内容のものをどれだけ用意しようか……みたいなことは頭から離れないですよ。でもこの勝負が物作りの楽しさなんでしょうね,たぶん。
DD:
楽しいからこそ,ずっと勝負を続けてこれているんですよね。
名越氏:
そういう意味では,幸せな仕事をさせてもらってるなぁと思います。
1は廉価版も含めると,気がつけば100万枚売れたんですよ。最初は社内で「2万しか売れない」って判断されていたんですが,これがミリオンセラーになったのかと思うと,不思議な気分ですよ。
ゲームにおける倫理観に挑戦した責任
DD:
未来という言葉が出てきたのでお聞きしたいんですが,やっぱり次回作というのは考えているんですよね?
宣言はしてないですけど,頭の中には常にあります。なかなか離れられないものもありますし。作った責任もありますし。
DD:
作った責任……?
名越氏:
発売して,売れたらやっぱり嬉しいんです。でも売れることで,また責任が大きくなります。プレイヤーや会社の期待に対する責任もありますし,いろんな意味での責任が,ね。
それこそ,ゲームにおける倫理観みたいなものに挑戦した部分もありますから。
DD:
ああ,そういう部分の責任もあるんですね。
名越氏:
「あれは龍が如くだから許される」というような言われ方をされている部分もあって,それだけで終わらせてしまうのは,ちょっと違うと思うんですよ。別にゲームの暴力性を認めさせようということではないんですが,ほかのメディアで表現できていることを,ゲームで表現することがタブー視されるのはなぜか? とか。
そこに理由があるならそれはそれでいいんです。ただ,そういうことをゲーム開発の内側の人間が,公の場で真剣に語り合ったことはないと思うんですよね。
DD:
結果ありきではなく,まず語るところから始めなければいけないし,龍が如くを作ったからにはその旗振りをする責任があると。
名越氏:
ええ。こういうことをちゃんと語っていかないと,「ゲームとはこういうもの」という方程式の外側のものを作れなくなると思うんですよ。今はそれで産業が成り立っているかもしれませんが,エンターテインメントは,その壁を破って行かなきゃつまらないでしょう? だから,僕らの弱気は未来を潰していくことになるとすら思うんです。
DD:
方程式の内側だけだと,表現はどんどん小さくなっていくものですからね。
名越氏:
もちろん,ただ闇雲に過激な方向に走っていけばいいというわけではないですけどね。だから,責任を取りながら進めていきたいんです。龍が如くを生んだからこそ。
DD:
それを背負おうという姿勢にも,やはり信念を感じます。
ちょっと話を戻させてください。龍が如くの次の展開を考えるうえで,見参! の存在も視野に入れる必要があると思うんですよ。急に時代劇でしたから。
実はあれ,現代劇の面白いアイデアが浮かびきらなかったんですよ。
DD:
ええっ?
名越氏:
いや,もちろんそれだけじゃないですよ(笑)。
2が60数万枚という売り上げを記録したのだから,もっと上を目指したい,目指せるだろうと考えたんです。そのためには,ゲームのクオリティをもっと上げていく必要がありました。もちろん,PS3という新しいハードが持ち上げてくれる部分というのは確かにあるんですが,ハードの力に頼るだけじゃダメだろうと。
DD:
PS3になってグラフィックスがきれいになったね! っていうだけじゃ,シリーズのファンは納得できませんもんね。
名越氏:
でもやっぱり,PS3初挑戦というのはハードルが高いのも確かでした。そういう諸々のことを考えていったんです。で,いったん目先を変えて,現場にもちょっと新鮮な空気を吸わせたいなということで,いくつかの企画の中から選んだのが時代劇だったんですよ。
DD:
なるほど,そういう経緯が。
名越氏:
あれはいい経験になりましたよ。PS3というハードを学習して基礎技術を磨くことができましたから。和装ってブラブラするものが多いから,プログラム的にはスーツよりたいへんでしたし(笑)。
それに見参! があったからこそ,3のバトルもシームレスにできたんです。本当は見参! でも,もう少し時間があればバトルをシームレスにできたんですけどね。
DD:
そんな見参! があって現代劇に戻った3では,CIAまで登場しました。こういう流れを考えると,1から2のときのような正当な続編が3の次にきても不思議はないですが,2から見参! のような……それこそいきなり宇宙人と戦うぐらい飛躍した話になってもおかしくないですよね。龍が如くシリーズであればそういう荒唐無稽なものも飲み込めるんじゃないかと思うんですよ。
名越氏:
個人的にはやりたいですよね。
リアルさだけでなく,独特の“何でもあり感”という,一見すると相反する魅力を龍が如くは併せ持っているんで,舞台や時代がどこになっても構わないというか。意識していたわけではないですけど,それが許されるようなテイストを開発チームがこれまで作ってきたんですよね。
DD:
私の中では龍が如くって,ゲームにおける「魁!!男塾」なんですよ。だからこの先,たとえ舞台が宇宙になったとしてもおかしくはないなと思っているんです。
名越氏:
たぶん,それも大丈夫だと思いますね。
僕の感性的には,ゾンビと戦うより,凄い顔で宇宙人と殴り合ったりしてほしいかもしれません。
DD:
それこそ,ロケットに龍の入れ墨が彫ってあったりしても格好良く見えちゃうと思うんですよ。
名越氏:
そういうのは,僕も割と好きです。
ただこういう話ができるのも,これまでに積み上げてきた土台があることから生まれる,余裕のようなものがあるからなんですよね。その土台を一生懸命作り,保ってきた努力があるからこそ,シリーズのファンも,僕達のそういう余裕を楽しんでくれるんじゃないかとは思います。
一番大事なのは,本筋をしっかり作り続けることですけど。
DD:
……つまり,本筋は今でも作り続けているということですか?
どうですかねぇ(笑)。
DD:
え,本筋以外にもスピンオフ作品みたいなものが? 例えば神室町を別のキャラクターで覗ける……とか?
名越氏:
そういう考え方があってもいいかもしれませんねぇ。
DD:
うーん……,えっと,では1や2をPS3用にリメイクするような計画はありますか?
名越氏:
ありかなしかでいうと,やってみたい気持ちはあります。でも,ほとんどの人は過去を振り返るより,先に進んでほしいんじゃないですかね。
DD:
あ,じゃあ進むは進むんですね(笑)。
男色ディーノが次回作に?
ところで,自分はゲイなんですけど……龍が如くシリーズには,いわゆる新宿二丁目的な表現がたまにちょろっと出てきますよね。なんであの街を描いているのに,ちょろっとなんだろう? と不思議に思っているんですが……。
名越氏:
繁華街っていうのはいろいろな人が集まる場所ですから,要素として外すことは絶対にないんですよ。ただ,ゲイの方達の持つ深さというのを語ることはできるはずなんですけど,それを共感してもらえるところまで構築できるか? っていう部分が難しいんですよね。
DD:
あ,じゃあゲイが大好きだから,あえてそっとしておこうとか,そういうことでもないんですね。
名越氏:
やっぱり,いろんな知り合いがいますし,彼らは彼らで哲学を持っていると思うんで,変に笑いものにはしたくないんですよね。実際,そういうサブストーリーのプロットはこれまでにいくつも出てきているんですが,全部潰してきているんです。深みがあって,なおかつ普通の人が共感できるようなものを描けるんであれば,ぜひ取り組んでみたいとは思いますけど。
DD:
でも3では,ミチルに追いかけ回されるシーンがありましたよ?
名越氏:
まあ,チェイスバトルは……。
以前からチェイスバトルは凄くやりたかったんですけど,技術的に難しかったんですよ。街の中をただ歩いたり走ったりして移動するときに,ドラマがないのがイヤで。遥が「待って!」というのは一つのアクセントであって,一つの愛は作れるけれど,深いものがあるドラマにはならないですし。
DD:
ドラマ性を持ったアクションとして,チェイスバトルを用意したということですか。で,ミチルは……,まあいいや。
それでは,もし仮に,次回作を作っていて,その舞台が神室町になるならば……私も神室町に住んでみたいなぁ,桐生ちゃんを追いかけ回したいなぁって思うんですが,いかがでしょうか?
名越氏:
まあ,企画次第で(笑)。
面白い企画を出していただければ,ちゃんと前向きに考えます。
DD:
本当ですね? では,企画を出します!
名越氏:
お待ちしております。
DD:
といったところで,今日はありがとうございました。
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