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[AGDC 08#01]オンラインゲーム開発者会議「Austin GDC」は「Club Penguin」で幕開け
9月15日から17日までの3日間,アメリカはテキサス州オースティン市において,今年で6回目となる「Austin Game Developers Conference」(以下,AGDC 08)が開催されている。会場となっているのは,例年通りオースティン市の中心部にあるAustin Convention Center。もともと,オースティン市は「Ultima Online」を生み出したElectronic Arts傘下のOrigin Systemsの本拠地であり,そこで養われた人材が,NCsoftやSony Online Entertainment,BioWareなど各社のオンラインゲーム開発部隊へと分離していった経緯から,オンラインゲーム開発における北米のメッカとなっていったわけだ。
Club Penguinとは,6歳から14歳までの青少年層をターゲットにしたWebゲームで,プレイヤーはペンギンのアバターを操ってミニゲームをしたり,友人とさまざまな活動を楽んだりというSNSだ。
Club Penguinは2005年10月にローンチして以来,「子供でも安心してインターネットゲームが楽しめる場所」として,半年間で120万というアカウントを獲得。その後2007年末までには,さらに10倍の1200万アカウントという膨大なファンベースを育て上げている。
ペットなどを所有できる有料のメンバーシップに加え,オンライン広告やミニゲームの売り上げなどで,年商は4000万ドル(約45億円)程度とされているが,この成長っぷりに目をつけたWalt Disneyが,「3億5000万ドル」(約410億円)という膨大な金額で2007年8月に買収した。未公表のノルマを2009年7月までに達成すると,さらに同額のボーナスが支払われることになっているという。
冒頭では,南カリフォルニアで生まれ育ったメリフィールド氏自身が,16歳のときにディズニーランドで夏休みのアルバイトをしていたという逸話を明かし,「ディズニーとは何かの因縁があったのかもしれない」と語っていた。なんでも,パレード時に使うライオンキングのフロートの内部に隠れ,小窓から実物大のワニの模型をリモコン操作するという役目だったそうだ。
このエピソードを持ち出したのも,Club Penguinが「410億円」というディズニーの商品に生まれ変わったからであるが,メリフィールド氏は「実際に,(ディズニーランドを作り上げた)ウォルト氏と我々Club Penguinの志は非常に似ていた」と話す。ウォルト・ディズニー氏の
「人生で最も達成感のあるのは,自分がやりたいことを成し遂げたときではない。我々人類に必要な思いやりを持って,自分の愛する人に何かをしてあげたときなのではないだろうか」
という言葉を引用しつつ,Club Penguinも自分達の子供が安全にインターネットで遊べる環境を作ってあげたかったのだと,このSNSが誕生したいきさつを明かすのだった。
SNSはアイテム課金との相性が良いものだが,Club Penguinでは「子供と親の間で問題が起きる」ことから儲けを無視してまで拒否している。オフィスには「Crush the Joy」(楽しみを押し潰せ!)という標語がアチコチに掲げられているそうだが,これも「自分のエゴを断ち切ってチームワークを優先しよう」という意味らしい。
筆者も以前どこかで読んだことがあるのだが,Club PenguinはWalt Disneyから得た膨大な収入を含め,毎月の収益の数パーセントは必ず子供向けチャリティに寄付しているのだという。このことを対外広報に使ったりしないことからも,彼らの純粋な思いやりの精神が見て取れるのではないだろうか。
今回の基調講演では,とにかくプレイヤーから送られてくる要望を聞いてゲームに反映させると話していたメリフィールド氏だが,一つだけどうしても聞き入れられない要望があると話す。それは,プレイヤーのアパートに設置できる「ベッド」のアセットを作るというもの。理由は「ペンギンは立ったまま寝るもの」だからだそうだ。