インタビュー
セカンドライフとは似て異なるサービス? ゲーム機初の本格仮想世界サービス「PS Home」とは何かについてSCEに直接聞いてみた
というのも,今後のダウンロードコンテンツ市場の拡大などを睨むと,これらの指標が,プラットフォームの競争力を計るうえで重要な意味を持ってくるからだ。実際,Xbox 360の「NEW XBOX EXPERIENCE」や任天堂のWi-Fiコネクションなど,プラットフォーマー各社間のオンラインサービス競争は,年末に向けていよいよ激化しつつある。
今回4Gamerでは,そんなゲーム業界におけるオンラインサービスの一角,ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)が現在クローズドβテストを行っているPLAYSTATION 3(以下,PS3)向けサービス,「PlayStation Home」(以下,PS Home)について取材を行った。「PS Homeとは何か」「PS3におけるPS Homeの存在意義」といったストレートな質問を,直接SCEの担当者にぶつけてみたのだ。
PS3が世に出てから,はや2年。ハードウェアの性能はともかく,コミュニティ機能などネットワークサービスの面では,Xbox 360にやや水を開けられている感もあるSCE陣営だが,そんななかでPS Homeとは,どういった理念のもとに進められているプロジェクトなのだろうか?
本日はよろしくお願いします。
まず初めに,PS Homeの開発体制/運営体制からお聞かせ願えますか? PS Home自体は,確かイギリスで制作されているものなんですよね?
赤川良二氏(以下,赤川氏):
PS Homeの基幹部分は,おっしゃる通り,イギリスで開発が行われていますが,それ以外の部分……ホームスクエアのマップとか各ラウンジなどの“コンテンツ部分”の制作は,欧州/北米/日本/アジアといったそれぞれのリージョンごとに行っています。
システム部分のベースや運営・サービスの基本方針などは同じですけど,実際のコンテンツ展開や具体的なイベントプランなどは,基本的にリージョンに任されているという形ですね。そして,日本におけるPS Homeの展開をどうしていくか?を考えるのが,私を含めた,いわゆる日本のPS Home Projectチームという体制になっています。
4Gamer:
なるほど。そういえば,クローズドβテストで遊んでいて感じたことなのですけど,PS Homeって地域(リージョン)ごとの仕切りがかなりカッチリと行われていますよね。例えば日本のプレイヤーは,欧州や北米のホームスクエアには,自由に行けない仕様になっています。
仮想世界サービスというと,どちらかというと「沢山の世界に行けて」「異文化交流があって」「世界中の人と触れ合えて」みたいな部分が強調されがちな気がしますけど,PS Homeはそうはなっていないと言いますか。これには何か明確な理由/意図があるのでしょうか?
金丸義勝氏(以下,金丸氏):
基本的な理念としては,やはり各リージョンに合った適切なサービスを行うべきだ,という大前提があります。
大きなところでは,言語の問題もありますね。
おっしゃるように,せっかくオンラインで世界とつながっているのだから,いろんな国の人と……というニーズは,確かにあるだろうとは考えています。ただ,「PS Homeをプレイされるお客さんがみんなみんな英語が堪能なのか?」というと,そういうわけではないと思いますし,接続したらチャットログが外国語で埋まってたなんていうのは,日本のPLAYSTATION 3のユーザーさん達からするとどうなんだろうとも思うんですよね。
4Gamer:
なるほど。
赤川氏:
やっぱり日本のプレイヤーさんにとっては,日本人のコミュニティにいるほうが居心地が良いと思いますし,またそれが普通だろうと考えているんです。外人と友達になれる方というのは,やはり少数派だと思いますからね。
4Gamer:
確かにそうですね。
赤川氏:
また,これはサービス/運営方針の話にはなるのですが,実は各国ごとのリーガル(法律)の問題もあって,画一的なサービスがしづらかったという側面もあります。
4Gamer:
それは例えば,露出が多い服装が駄目だとか,そういう話……ではないですよね。
金丸氏:
もっと根本的な部分ですね。
各国ごとにオンラインサービスへのアクセスに対しての年齢制限の考え方が違っています。例えば,北米におけるPS Homeは,「13歳以上のサービス」という方針になっています。
一方,日本のPS Homeは,利用できる機能・コンテンツを制限することで,誰でもでも参加できるサービスにしたいと考えているんです。
赤川氏:
ただ先ほどもいったように,こうしたリーガルの問題を抜きにしても,地域ごとに合ったサービス/コンテンツがあると考えていますし,また実際そのように準備していますから,リージョンごとに世界が仕切られているということがデメリットだとは考えていません。
4Gamer:
ちょっとまだPS Homeの仕様を把握してきれてないので,もしかしたら的外れな質問かもしれませんが,そうなると,ゲームの対戦プレイなども各国ごとに仕切られるスタイルになっていくのでしょうか?
以前,PS Homeについて軽くお話しを伺ったとき,「PS Homeとは,まずゲームを遊ぶためのインフラなんです」という説明を受けた記憶があるのですが,そういったPS Homeのサービス思想にゲーム側も引きずられるのでしょうか?
赤川氏:
いえ,そこは基本的にはゲーム次第,という形になりますね。実際,ワールドワイド対戦が楽しめるタイトルは,今でもすでに存在していますし,そこが「ほかの国の人と遊べなくなる」というような方向にはなりません。
ただ,同じゲームを遊んでいる方々の集会所として,ゲーム毎にラウンジを用意したりはしようと考えているんですが,その中に“全世界共通のラウンジ”を用意するなどというのは,将来的にはありだろうなとは思います。
4Gamer:
当初はデフォルトで,日本人なら日本のコミュニティにまず参加するのが良いだろうと。
赤川氏:
ええ,そうです。
「PS Homeはゲームのためのインフラ」セカンドライフとは似て異なるサービス?
4Gamer:
先ほど「PS Homeはゲームのためのインフラ」という話に触れましたけど,第三者的に見てどうしても考えてしまうのが,競合となるマイクロソフトの「Xbox Live!」などとの比較です。
Xbox Live!といえば,サービス面もそうですが,手軽に対戦できる機能や「Windows Live! メッセンジャー」との連携など含めて,非常に強力なインフラだと思うのですが,PS Homeのプロジェクトというのは,それらとの差別化という発想からスタートした……というような経緯はあるのでしょうか?
他社のネットワークサービスを見て,我々が大きく意識しているのかというと,少なくともそういう感覚はありません。4Gamerさんに限らず,ほかのいろいろなメディアさんからも同様の質問をよくされるのですが,「他社サービスに対抗するためにPS Homeが……」ということはないんです。
PlayStationのアイデンティティとして,一貫して「3D表現」というものがありましたから,コミュニケーションツールを3Dで表現するというのは,ある意味で自然な流れでもあったんです。
4Gamer:
これもかなりぶっちゃけたお話になってしまいますけど,PS Homeって,「セカンドライフ」と比較されることが多かったのではないかと思います。見た目の類似性もありますが,去年(2007年)などは,セカンドライフが何かと話題になった年でもありましたし,「PS Homeは,セカンドライフのブームに乗っかったサービス」という見られ方すら少なからずあったと思うのですが。
赤川氏:
正直なところ,いろいろな方にPS Homeのご説明をさせていただくとき,「PS Homeってセカンドライフみたいなものですよね?」というような解釈をされることは確かに多かったですね。3D空間でアバターを使うというビジュアル自体は,セカンドライフと似ている部分もあるかもしれません。
ただ先ほどもご説明したように,PS Homeはあくまでも「ゲームのため」「ゲームをより楽しく遊ぶため」のサービスですから,セカンドライフとは,根本的な思想がまったく異なるんです。ただコミュニケーションを楽しむのではなくて,あくまで「ゲームを軸にしたコミュニケーション」であるという点が大きな違いだと思います。
4Gamer:
ちょっとお金周りの話題になりますけど,そうしますと,PS Homeは「アイテムを売って売上をたてなきゃ」とか,そういうサービスではないということなのでしょうか? PS Homeのビジネスモデルとはどうなっているのでしょうか?
赤川氏:
そうですね,まず言えるのはPS Homeはアイテムを売ってなんぼ……というようなサービスではないことです。これは綺麗事に聞こえてしまうかもしれないのですが,PS3でゲームを遊ぶうえでのコミュニケーションインフラを整備していきましょう,というのが大枠の方向性になっています。
仮想世界というと,やれ仮想マネーだ仮想アイテムだ,そしてそれで仮想経済が……みたいな部分のみが強調されていますけど,PS Homeというサービスでそういった部分を強く押し出すことは,現状ではあまり考えていません。
4Gamer:
とはいえ,有料アイテムの販売などというのはしていくんですよね?
ここは説明が難しいのですが,有料アイテムというのも,ユーザーサービスの一環だという考え方もあるんですよね。例えば,人とは違った服が欲しい,オブジェクトが欲しいというニーズがあったとして,それを,ゲームをクリアした結果の報奨としてだけではなく,お金を払って手に入れるという“選択”があってもいいだろうなとは思うのです。そういう選択肢を提供する(ニーズを満たす)という意味で,有料アイテムというのも必要ではないかと。
4Gamer:
なるほど。
赤川氏:
もちろん,まったくマネタイズを考えていないということではないんですよ。売上がたてば,それだけ投入できる人員/リソースを増やせますし,そうなれば,結果としてサービスの品質を高められます。また各メーカーさんにご協力いただくにしても,多少なりともお金を稼げる道筋があるほうが,いろいろと話がしやすいという側面もありますから,有料アイテムが必ずしもプレイヤーの方にとって悪い……という言い方も変ですけど,そういうものではないと考えています。
4Gamer:
そうですね。
「毎日PS3を触ってほしい」PS Homeが目指すオンラインサービスのあり方
4Gamer:
ちょっと課金アイテムについて質問させていただきたいのですけど,今後の方向性として,例えば,トロやアニメのキャラクターなどになってホームスクエアの中を闊歩していたり……みたいなものは想定されているんでしょうか? ネタじゃないですけど,仮想世界サービスというものに,そういうノリを求めるお客さんも少なからずいそうに思えるのですが。
金丸氏:
いわゆるゲームやアニメのキャラクターをそのままアバターにできるというのは,現時点では考えていません。ただ,そのキャラクターのトレードマークであったり服装であったりというものを,部分的にアイテム化するという方向は考えています。
PS Homeらしさというか,方向性という意味では,あくまでも人間らしいアバターのモデルがベースになっています。極端なアニメ絵のアバターなどが登場するのは,PS Homeというサービスの世界観からすると違うだろうなと考えているんですよ。
ですから,例えばリアルなトロ……っていう言い方も変ですが(笑),まぁトロの姿そのままになれるということはないんですが,猫の着ぐるみみたいなものというか,どう考えても「中に人が入っていそうなもの」であればOKといいますか。
金丸氏:
簡単に言ってしまえば,“コスプレ”というイメージですね。キャラクターそのものを表示させるのはNGだけど,コスプレならあり……という。このあたりは権利の問題なども絡んでいて,なかなか難しいのですが。
ただ最近,ソフトメーカーの皆さんとお話しをさせていただいているのですが,「コスプレという考え方は面白いよね」という意見は頂いてます。そういうものを提供することで,プレイヤーさんに一定の満足感であったり,楽しさを提供できれば,サービスのあり方としては悪くないだろうと思います。実績でポイントが付きました……というだけよりも,ゲームをクリアして○○の服装を手に入れよう! とかの方が,ゲームを遊ぶモチベーションも高まるでしょうし。
4Gamer:
ふむふむ。
赤川氏:
ゲームを軸にしたコミュニケーションという意味でいえば,例えば,すごく難しいゲームをクリアした証なんかがビジュアルとして表現されるというのは,なかなか面白いと思います。「あいつ,あのゲームで1000万点取ったのかよ!」みたいな(笑)。
金丸氏:
ただ,どういうアイテムだとお客さんが喜ぶのか? などについては,これからリサーチを重ねていかなければいけない部分だとは思いますね。
赤川氏:
そうですね。まだまだ何が受け入れられるのか分からないというか,予想もしないものが評判をよぶ可能性はあります。
そういえば,先日の東京ゲームショウの講演で,「まいにちいっしょ」の南治一徳さんが「有料アイテムでは,竹がものすごく売れているんです」という話をされていました。アイテム課金云々や,日々のオンラインサービスの運営のノウハウという意味ですと,やはり「まいにちいっしょ」の存在意義は大きかった……といえるのでしょうか?
赤川氏:
「まいにちいっしょ」は日本だけで行われているサービスなのですが,このような日々更新されるオンラインサービスというのは,PS3では稀で,ほかの地域では,日々触れられるコンテンツという意味では,PS Homeは貴重な存在なんですよね。日本においては,「まいにちいっしょ」をこれまで続けていたことで,いろいろなノウハウもできました。
金丸氏:
PS Homeの企画会議などでも,竹の話題はよく出るんです。「竹より売れるアイテムはなんだろうか?」みたいな話は,本当によく議論されます(笑)。
赤川氏:
我々というか,SCEの大枠の目標という意味では,「すべてのユーザーさんが,PS3をオンラインにつなげておいてほしい」「毎日PS3を利用してほしい」というものになるのですが,PS Homeは,そのための施策の一環ということになります。
金丸氏:
実は,PS Homeのオープンβサービスが開始される段階で,クロスメディアバー(PS3の基本インタフェース)にPS Homeが加えられる予定なんです。
赤川氏:
「PS Homeはプラットフォームサービスの一つなんだ」というのが,そこでかなり鮮明にユーザーの皆様に伝わるのではないかと思います。
次期バージョンから見えてくるPS Homeの今後とは
4Gamer:
PS Homeで今後実装される予定の機能など,もし話していただけるものがあればお聞かせ願えますか?
最近のメジャーバージョンアップでは,実はかなりの部分に変更が加えられます。大きいところでいえば,まずは,PSP「プレイステーション・ポータブル」を模した表示だったメニュー画面が,PDAライクな,より機能性重視のものへと置き換えられます。
4Gamer:
なるほど。
金丸氏:
またこれまでは,各スペースに入る前に,そのスペースのマップデータなんかをそのつどダウンロードするような形だったんですけど,それがバッググラウンドで行われるようになったりなど,細かいところでいろいろ快適になっていると思います。
赤川氏:
あとは,「クラブハウス」機能の実装が大きいですね。これは,各プレイヤーさんが作れる「公共の場」というか,部室みたいなものなんですが。
4Gamer:
mixiでいうところの「コミュニティ」みたいなものですか?
金丸氏:
まさにそうですね。いわゆる自室である「パーソナルスペース」とは違って,これはプレイヤーさんがオンラインになっていなくても,サーバー上にずっと維持されていて,みんなでいつでも出たり入ったりできるというものです。
4Gamer:
常設されるチャットルーム,みたいなイメージの方が近いですかね?
金丸氏:
ああ,確かにそちらのほうが近いですね。
パーソナルスペースと同様に,クラブハウスには,いろいろなオブジェクトや連絡用のメッセージボードなどを置くことができます。使い方としては,とあるゲームの愛好者の溜まり場だとか,そういう使い方をしていただければと考えています。
赤川氏:
まだアイディアレベルですが,「Webとの連携」も考えています。メッセージボードがそのままWeb上のBBSとしても機能していて,PS HomeとWebサイトのどちらからも見られるだとか,そういうものですが。
4Gamer:
なるほど。そういう形になると,ユーザーもかなり便利に使えそうですね。
正直な話,PS Homeの中の情報が「PS Homeに入らないと見られない」というのは,それはそれでちょっと面倒かなとも思うんですよね。
そうですね。そのあたりについては,もちろん我々もいろいろ考えていまして,例えば,PS Homeで行われるイベントの情報などが,PS3のメニュー画面上からも確認できて,そこをクリックするとPS Homeが起動してイベントに参加できるとか,そういうものがあるといいな、と考えています。そういう見せ方があれば,イベントの参加率やPS Homeの利用率というのは,飛躍的に上がると思うんですよね。今後,こういった便利さ/分かりやすさみたいなものを指向していきます。
4Gamer:
なるほど。
ちなみに正式サービスの時期というのは,いつ頃を予定されているのでしょうか?
赤川氏:
まぁまずは11月中に最終的なクローズドβテスト(バージョンアップ)を行って,その結果をみたうえで,年内にオープンβサービスという形で公開できればと考えています。
4Gamer:
オープンβサービスというのは,全PS3ユーザーに公開という意味ですよね?
赤川氏:
そうです。
4Gamer:
インフラ周りなどは大丈夫なのでしょうか? クライアントのダウンロードだけでもかなりのトラフィックだと思いますが。
赤川氏:
ええ,現在のPlayStation Networkのアカウント数が国内だけで150万ですから,それが全世界ということになれば,それこそ100万超のプレイヤーが同時に……という規模になる可能性があります。
ただトラフィックに関していえば,これまでも,システムアップデートでそういったアクセスが集中するような経験はすでにありますし,PlayStation Storeで何十万ダウンロードというコンテンツも数多くあります。そのあたりは安心していただければと思います。
4Gamer:
分かりました。
本日はありがとうございました。
さて,かなりいろいろとストレートに聞いてしまった今回のインタビューだったが,PS Homeの運営体制やその理念をはじめとして,コミュニケーションサービス然としていながらも,あくまでゲームのためのツールという点にこだわる部分など,いろいろと興味深い話が多かったと思う。いかがだっただろうか。
冒頭でも述べたとおり,近年,ゲーム業界……というか,主にプラットフォーマーの間において,オンラインサービスの品質競争が目立ってきているわけだが,そんななかでもPS Homeがとくに興味深いのは,ここに,「既存のMMORPGや仮想世界サービスをまったく知らない人が,かなりの割合で参加してくるだろう」という点にある。端的に言えば,PS Homeが多くの人にとっての「初めての仮想世界」になるだろうということが,コンシューマ系のゲーマー達にどういった影響を与えていくのか? そこが気になるのである。
というのも,インタビューでも触れたように,PS Homeは,何かとセカンドライフと並べて語られる印象が強いサービスである。ネット上で展開される意見の中には,「こんな二番煎じでは駄目だ」的な批判も少なくない。
確かに,PS Homeは,コミュニケーションのツールとしては「かなり重い」サービスである。メッセンジャーやSNSなどを使い倒し,またすでに他の仮想世界サービスを体験した人々にとって,PS Homeに新奇性を感じないというのは理解できる。しかし,PS Homeのようなスタイルが,本当に“一般の人”にとって不要なのだろうか?
これはセカンドライフにまつわる議論でも感じたことだが,「仮想世界に参加すること自体の面白さ」というのは,誰もが一度は通る道なのではないか,と思う。
例えば筆者は,1997年にサービスが開始された「ウルティマ オンライン」で初めて大規模な人が参加する仮想世界サービスに触れたのだが,その時に感動というか,ワクワク感は今でも覚えている。その後,今度は「EverQuest」において3Dで表現された仮想世界を体験したわけだが,ネットの向こうに「世界がある」感動,面白さというのは,やはりシングル用のゲームをいくら遊んでも味わえないものかもしれない。
ウルティマ オンラインがサービスされたとき,ファン達は口々に
「そこに紛れもない“世界”がある」
「仲間と冒険できるのが楽しい」
「人と人の触れあいや,出会いがある」
というようなことを語っていた。当時の筆者も,まったくそのとおりだと思っていた。数年後に「ラグナロクオンライン」がサービスされたときも,そのプレイヤー達は口々にまったく同じような反応を示していた。ラグナロクオンラインは,いわゆる洋ゲーファンではないプレイヤーが多く流入した先駆的なMMORPGであったわけだが,要するにラグナロクオンラインは,そんな人達にとって“仮想世界サービスの原体験”となったのだと思う。
そして2007年,セカンドライフが本格的に日本で喧伝されたとき,一部のヘビープレイヤー層からは冷ややかな視線が送られつつも,やはりそれにハマったファン達は,同じような売り文句を口にしていた。……つまりはまぁ,そういうことなんじゃないかと思うのだ。
筆者から見ると,そうした「世界が」とか「触れあいが」というのは,言ってしまえば“今更感のあるフレーズ”でしかなかったわけだが,彼らが感じている楽しさは,紛れもない本物だったのだと思う。
一定以上の参加者がいる仮想世界サービスは,ただそれだけで楽しいものである。その原体験をどこで持つか。仮想世界サービスを語る上でのポイントは,そうした“ファーストコンタクトの要素”を抜きには語れないのではないか。筆者としてはそんな気がしてならないのだ。
PS Homeの話に戻るが,今回のインタビューで金丸氏などが「案外,ゲーマーじゃない人のほうがハマっている」と口にしていたのが,筆者としては非常に印象的であった。その話を聞いて「ああ,やっぱり」というか,妙な納得をしてしまったのだ。
正直,PS Homeが「ゲームのためのインフラ」として本当に正しいあり方なのかどうかはまだ分からない。しかし,本サービスが多くの人にとっての“原体験(仮想世界の)”になり得る可能性が高いのは確か(※注)であり,それがどんな化学反応を引き起こすかについては未知数だろう。
セカンドライフやMMORPGなどというのは,まだまだ世間的にはマイナーなものでしかない。それを“PS3の基幹サービスとして見せた”としたら……。年末に行われるというオープンβサービスで一定の答えは見えてくるだろうが,いろいろな意味で興味深いプロジェクトなのは確かだ。ゲーム業界における挑戦的なプロジェクトとして,今後とも本作の動向を見守りたいと思う。
※注:ただPS3の所有者は,比較的年齢層が高い(つまり,原体験をほかでもっている率が高い)だろうから,そこがどれほど影響するのかは未知数である
- 関連タイトル:
PlayStation Home
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週刊トロ・ステーション
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