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AMD,エントリーミドルクラスGPU「ATI Radeon HD 4670/4650」を発表
事前説明会には米AMDからグラフィックプロダクトグループ・マーケティングディレクターのDavid Cummingus(デビッド・カミングス),同マネージャーのShaila Bansal(シェラ・バンサル)両氏が来日。「強力なGPUをメインストリームに展開することでAMDは真のパフォーマンスリーダーになる」(Cummingus氏)と,この製品にかける意気込みを語っていた。新製品の概要を紹介していくことにしよう。
RV770をベースに規模を縮小し
低消費電力・低発熱とローコストを両立
David Cummingus氏(Product Marketing Director,Desktop Product Management,Graphic Product Group,AMD) |
HD 4600のブロックダイヤグラム |
HD 4800との最大の違いは「Streaming Processing Unit」(以下,SPU)と呼ばれるシェーダプロセッサ(もしくはStreaming Processor)の数である。HD 4800はSPUが800基で,1TFLOPSもの演算性能を持っていたが,HD 4600ではSPUが320基に抑えられている。
記憶力の良い読者は,320基と聞いてピンと来るかもしれない。そう,「RV730」ことHD 4600のSPUは,「RV670」と呼ばれていたATI Radeon HD 3800(以下,HD 3800)と同じなのだ。ならばHD 3800の焼き直しかと言えばそうではない。HD 4600はあくまでRV770をベースにSPUを抑えたGPUである。
実際,Cummingus氏は「RV730のアーキテクチャはメモリコントローラなどの細かい部分を除くとRV770と変わらない」とはっきり述べていた。
というわけなので,HD 4600はハイエンドのHD 4800で新設されたフィーチャーをフルにサポートする。3Dで言えばDirectX 10.1対応,テッセレーションエンジン,改良されたアンチエイリアシングなどがそうだ。事前発表会では,このことを証明する意味も含めてか,HD 4670を用いた「Froblins」(フロブリンズ)の実働デモが披露された。Froblinsについては,HD 4800によるこの記事が詳しい。デモの詳細については当該記事も参照してほしいが,AIの演算もシェーダプロセッサを用いて行うというデモである。
なお,HD 4600では,H.264/AVCの2ストリーム同時再生を支援するUVD 2.0や,DVDのアップスケーリング,コントラストを動的に変化させて動画の高画質化を行うダイナミックコントラストといった動画再生支援の機能もHD 4800と同じくサポートされる。1万円前後のグラフィックスカードとしては,まさに機能満載といってよく,買い得感は高いだろう。
さて,先ほどCummingus氏の発言を引いたように,HD 4800とのもう一つの違いがメモリコントローラである。HD 4800はGDDR5をサポートすることが大きな特徴だったが,HD 4600ではGDDR3に加え,DDR3をサポートする。このDDR3のサポートについてCummingus氏は「DDR3のサポートは重要な点で,今後のトレンドになるだろう。DDR3は今年から来年にかけて大幅な低価格化が見込まれる。同時にDDR3は高速化の可能性もある。DDR3のサポートで低価格と高性能の双方が実現できる」と,その意義を強調していた。
動画再生支援機能もHD 4800と同じものを備えている |
DDR3メモリは今後サポートするGPUが増加することが予想されている。HD 4600は先駆けてDDR3をサポートすることになる |
Shaila Bansal氏(Product Marketing Manager,Graphic Product Group,AMD) |
NVIDIAを意識し,直接の競合といえるGeForce 9500と価格や性能を比較し,優位性をアピール |
最後に,実際に販売が開始される製品の詳細と価格をまとめておこう。HD 4670はグラフィックスメモリの容量が違う2種類のラインナップが設定されている。双方ともGPUのコアクロックやメモリクロックなどのスペックは同一だが,1GB搭載版は低価格化のためDDR3が選択されているのが特徴だろう。一方,HD 4650は1種類だ。
HD 4650はメモリとしてDDR2をサポートする低価格バージョンで,GPUのコアクロック,メモリクロックともにやや低い値が設定されているが,GPUの機能自体はHD 4670と同一である。ただし,事前発表会では触れられなかったが,会場に展示されていたグラフィックスカードを見る限り,HD 4650搭載カードにはATI CrossFireX(以下,CrossFireX)用のブリッジコネクタが装備されておらず,Native CrossFireケーブルを利用したCrossFireXはサポートされない。
HD 4670はグラフィックスメモリの容量が違う2種類が設定される。グラフィックスメモリ1GB搭載版では,DDR3メモリを選択している |
HD 4650はグラフィックスメモリにDDR2を512MB搭載したものが用意されている |
気になる価格だが,HD 4670はGDDR3メモリを512MB搭載するモデルで79ドル,HD 4650は69ドルが予定されている。HD 4670でも日本円にして1万円そこそこで非常に手頃だ。会場に招かれていたグラフィックスカードベンダーは,スタート価格1万2000円程度を予定しており,価格がこなれてくれば1万円そこそこに落ち着きそうだと言っていた。
なお,ショップに並ぶのはメモリ512MB版のHD 4670搭載カードが早ければ2008年9月12日頃から。メモリ1GB版のHD 4670カードとHD 4650カードはそれよりやや遅れ,2008年9月末ごろの発売が予定されているという。
エントリーミドルクラスGPUの
底上げを図る順当な新製品
Intelのグラフィックス機能統合型チップセットはやや出遅れている感があるが,AMDは「AMD 780G」に続いて「AMD 790G」を投入するなど,性能の底上げが順調に進んでいる。それに伴って,既存のエントリーミドルクラスGPUは微妙な立ち位置に置かれつつあったわけだが,1万円強という価格帯に,前世代のシングルGPU最上位モデルと匹敵するスペックを持ったGPUをAMDが投入してきたというのは,ATI Radeonファミリーのラインナップ全体を俯瞰するうえで,非常にわかりやすい。エンドユーザーにとっては,順当に登場してきた新製品といえそうだ。
- 関連タイトル:
ATI Radeon HD 4600
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(C)2008 Advanced Micro Devices, Inc.