プレイレポート
リバティーシティにようこそ。「グランド・セフト・オートIV」のファーストインプレッションを掲載
ギャングやマフィアが暗躍する裏社会をモチーフとした,ハードでバイオレントな世界観と,広大な箱庭を思うがままに歩き回れるという圧倒的な自由度が人気を博し,現在までに全世界で累計約8000万本を売り上げているというGTAシリーズ。その最新作となるGTA IVはどのような進化を遂げたのか? 実際にプレイした感想を交えながら,序盤のストーリーと本作の特徴について紹介していこう。
なお,本作は18歳以上のみ対象のCERO Z指定となり,18歳未満の人はプレイできない。そのほか,記事内にハードな表現が多々含まれる,序盤のストーリーに関して若干のネタバレがある点などは,あらかじめご了承いただきたい。
暴力がすべてを支配する街
欲望渦巻く“リバティーシティ”
しかし,フタを開けてみればローマンの成功話は真っ赤な嘘。古びたタクシーに乗って彼の言う“豪邸”に到着してみると,そこはゴキブリの這い回るボロアパートだった。
ローマンは,アメリカンドリームとは言いがたい小さなタクシー会社の経営者で,しかもギャンブル中毒で多額の借金を背負っていた。ニコは彼が嘘をついていたことに対して激昂するが,それをローマンはのらりくらりとはぐらかす。あとで事務所に来るようにニコに伝えて,あわただしくアパートを出ていってしまう。
こうして,ニコのリバティーシティでの生活は,最悪の始まり方を迎えたのだった。
……と,こんな感じのプロローグが終わると,本格的にニコを操作できるようになる。とりあえず,ボロアパートを出ると,そこに広がっていたのは排気ガスの臭いさえ感じ取れそうな,ゴミゴミしたダウンタウン。リアルな市街地の描写がウリであるGTAシリーズの最新作だけあり,グラフィックスは間違いなく最高峰レベルだ。
しばし観光に来たかのようなワクワク気分で街を歩いていたが,ローマンから事務所へ来るように言われていたので,遊んでばかりもいられない。
徒歩じゃキツイしどうすっかね……。ここでお約束,本シリーズのタイトルにもなっている行為といえば? そう,“車泥棒”だ。あたりを見回してみると,良い具合に路上駐車している車があったので,早速拝借することに。
車を運転し,ローマンの事務所に到着。そこでニコはローマンの意中の女性“マロリー”と,ローマンの借金を回収に来たロシアンマフィアの下っ端“ブラッド”に出会う。
ブラッドの嫌味と罵倒に怒りもせず,ひたすらヘコヘコするローマンの情けない姿にいらだつニコ。結局,借金返済はもう少し待ってもらうことになり,ローマンと一緒に事務所をあとにした。
その後,仕方なくローマンから依頼されるタクシー運転手の仕事をこなしていたニコ。ローマンがギャンブルに興じている間の見張りや,ガールフレンドの送迎など,その内容はろくなものではなく,事実上ただのパシリだった。
しかし,つまらない仕事でも多少の収穫はあった。一つはローマンから貰った古い携帯電話。本作において携帯電話は非常に重要な役割を担っており,新たなミッションやストーリー上の節目となる展開など,携帯電話を通じて知らされることが多い。また,“911”をプッシュすることで警察や救急車を呼んだり,ミッションによってはカメラ機能で写真を撮ることもある。
目的地に到着し,「ヤバイことになったら助けてくれ」とジェイコブにピストルを渡されるニコ。物陰に潜んで様子をうかがっていると,案の定相手が懐からピストルを取り出し,銃撃戦となった。
ここで初の本格的な戦闘となるのだが,本作では物陰に隠れながら射撃する“カバーアクション”が可能になっており,既存シリーズに比べて戦略性がはるかに高くなっている。もちろん,敵もカバーアクションを積極的に使ってくるので,かなり手強い。物陰からいかに正確にヘッドショットを狙うかが,本作の戦闘のポイントとなるだろう。
ともあれ,軍隊仕込みの射撃術に街のチンピラごときが敵うはずもなく,難なく敵を殲滅したニコ。この一件でジェイコブから信頼され,以後彼の仕事を手伝うようになる。
また,ローマンの友人であるステロイド中毒でマッチョ系の“ブルーシー”とも出会い,ニコは順調に人脈を広げて行った。
過激さを増していく仕事,裏社会に浸かっていくニコ
ローマンが借金を返せない代わりに,ニコに仕事を手伝えというのだ。ローマンのため,仕方なくブラッドの言いなりになるニコ。店の窓を叩き割ったり,相手を叩きのめして車を強奪したりと,過激な方法で借金を取り立てて行く。しかし,労力のわりに報酬はスズメの涙ほどしかもらえず,ブラッドに対する不満と憎しみが積もっていくばかりだった。
そんなある日,ローマンの事務所へ行くと,彼はひどく落ち込んだ様子で頭を抱えていた。話を聞くと,なんとローマンの意中の女性であるマロリーが,ブラッドと付き合っている可能性があるという。その話を聞いて,ブラッドに対する怒りがついに頂点に達してしまったニコは,ブラッドを殺す決意をする。
ローマンとともに車を飛ばし,ブラッドのいるバーに殴り込むニコ。部下をけしかけて逃げるブラッドだったが,ついには追い詰められてしまう。最期のあがきのつもりか,彼のボス,ロシアンマフィアの大物である“ミハイル・ファウスティン”の名前を出すブラッド。その名を聞いて震え上がるローマンだったが,ニコはそんなことを気にもかけずブラッドを射殺し,海に沈めてしまった。
その後,ローマンに呼び出されたニコ。待ち合わせの場所に着いてみると,ローマンが見当たらない。どこからかニコを呼ぶ声がすると思えば,ローマンはゴミ箱の中で震えていた。なぜそんなところに隠れているのか理由を聞くと,ミハイルに狙われているとのこと。
そんな心配はないと,ローマンを落ち着かせようとするニコだったが,突然後ろから何者かに殴られて気絶してしまう。次に目を覚ました時,ニコとローマンは薄暗い地下室でイスに縛り付けられていた。ミハイルの部下らしき男から拷問を受け,憔悴していくニコとローマン。
いよいよ命がヤバくなったその時,「悲鳴がうるさい」と怒鳴りちらすミハイルと,その右腕,“ディミトリ・ラスカロフ”が現れた。ミハイルは酒とヤクに溺れているせいで狂気的な暴力性を剥き出しにしており,ディミトリの静止を振り切って二人を拷問していた部下を射殺。
そんな狂った状況のなか,ブラッドは大した部下ではなかったとニコに語るミハイル。そしてニコに自分の部下になれと言ってきた。絶体絶命の状況で,思わぬ活路を見出したニコ。以後,彼はマフィアの殺し屋兼ボディガードとして活躍していくことになる……。
序盤のストーリーについて語るのは,ここまでだ。この後に訪れる衝撃の展開は,ぜひとも実際にプレイして確認してほしい。ここからは,本作をプレイしていてとくに気になった点を挙げていこう。
また,ダーツやボーリング,ビリヤードといった豊富なミニゲームについても語っておくべきだろう。これらは,ついメインストーリーを進めるのを忘れて没頭してしまうほど非常にデキがいい。これらのミニゲームは,恋人や友人を誘って一緒に遊ぶことが可能なのだが,そうやって一緒にゲームを楽しんだり,ほかにも食事をしたりすることによってどんどん友好度が上がっていく。そして,友好度が高まると,ジェイコブなら武器の格安販売,ブルーシーならヘリコプターでの送迎などという具合に,キャラクターによってさまざまな恩恵が得られるようになるのだ。
勝つためならば何でもアリ! 充実のマルチプレイモード
遊べるモードは大まかに分けて“個人戦”“チーム戦”“Co-op”(協力プレイ)の3種類。そのほかにも,決まった目的が存在せず,自由にリバティーシティで暴れ回れる“フリーモード”も存在する。ルールも豊富に用意されているが,個人的にオススメなのは,“GTAレース”“チームデスマッチ”“ボム・ダ・ベースII”の三つだ。
個人戦のGTAレースは,武器による妨害や車の強奪など,とにかく何でもアリのレース。単純に順位を競うだけでなく,最終的にはカネを多く稼いだプレイヤーの勝利となるため,場合によってはレースを完全無視して妨害に徹したほうが良い結果を残せることもある。ロケットランチャーでライバルの車を破壊することに徹するプレイヤーがいたり,ひたすら特定のプレイヤーに追いすがって銃弾の雨を浴びせかけるプレイヤーがいたりと,非常にカオスでバイオレントなレースが楽しめる。
チームデスマッチはオーソドックスな対戦モードではあるが,やはり安定して面白い。マップ上のいたるところに配置された武器を使って敵を倒すのだが,マップが非常に広大なので,さまざまな立ち回りが可能だ。仲間と協力して攻めるのもいいが,腕に自信があるなら戦線を離脱して武器をかき集めてから,一人でランボーのごとき活躍をすることもできる。敵の集団にロケットランチャーをお見舞いしたときの爽快感は,それはもうなんともいえないものだ。
Co-opのボム・ダ・ベースIIは,対戦でなくほかのプレイヤーと協力してミッションをクリアしていくモード。トラックを襲撃してヘリに乗り,タンカーの敵を殲滅して爆弾を仕掛けて脱出するという,ハリウッド映画さながらにスケールのデカイ展開を楽しめる。難度も設定可能で,難しいほど獲得できるカネが多い。積極的にランクアップを目指すなら,Co-opモードを繰り返しプレイするのが効率が良くオススメだ。
シリーズ最高傑作にして集大成的な作品という感触
ここまで長々と書いてきたが,筆者はその魅力を語りつくせたとは思っていない。ゲームをまだクリアしていないのだが,クリアするまでプレイしたら,それこそレビューの3,4本は余裕で書けてしまうほどのボリュームを持った作品だと思う。
また本作は,ゲーム内の描写について,異常といえるほど細部にまでこだわっている。キャラクターが身に着けている帽子やメガネなどは,車の衝突など強い衝撃を受ければ吹っ飛ぶし,酔っ払った時の動きや通行人の行動,室内の細かな汚れまでもが非常に生々しい。
ゲームというものは,“非現実”を楽しむという一面を持っているものだと思うが,本作は“そこ”にある世界がリアル過ぎて,車をカッ飛ばしたり,悪質な犯罪行為に手を染めたりしても,非現実とは思えないほどだ。きっと本作を楽しむということは,乱暴で,残酷で,しかしどうしようもなく魅力的な“もう一つの現実”を楽しむということなのだろう。
……柄にもなくお堅いことを書いてしまったが,GTA IVは,「ゲームはあくまでもゲーム」だというたしなみを持った大人のエンターテイメントとして一級品であることは間違いない。クライム系が苦手でなければ,ぜひプレイしてもらいたいタイトルだ。
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