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【山本一郎】「ハーツ オブ アイアンIII」ブルガリア繁盛記(前編)
切込隊長 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家
切込隊長:茹で蛙たちの最後の晩餐 |
少し長い前説だけど大事なことがたくさん書いてあるから読んでね
君たち! 「ハーツ オブ アイアンIII」(以下,HoI3)の新しい拡張パッチ「ハーツ オブ アイアンIII ゼア・ファイネスト・アワー」が出たよ! もちろん,もうみんな買ったよね!!
例えば,私の大好きなフィンランドでプレイしてみよう。はい,冬戦争が始まりますね。ソ連が攻めてきますね。いままでであれば,フィンランドは「ソ連との戦争ありき」で準備を進めます。当然ですよね,攻めて来るんですから。がんばって戦争準備して政策スライダー動かしてスウェーデンに宣戦布告し,スウェーデンもノルウェーも飲み込んで国力の増大と部隊の強化を存分に行ってから,ソ連軍を迎え撃ちます。このノルウェーの鍛え上げられた部隊が塹壕に籠もってソ連を撃退するのが最高のカタルシスなわけです。弱小国プレイの醍醐味であります。
その極め付けが,前回プレイレポートを掲載したリトアニア攻防記です。泣きながらプレイしました。ソ連に攻め込まれ,首都だけになっても要塞に立て籠もって同盟国ですらないドイツのバルバロッサを待ったものです。気合でアメリカとの同盟を果たし,見事未来の扉を開けたリトアニアの輝ける歴史は私のAARを読んでください。
しかし,しかしですね,HoI3はキツい。悲しいぐらいにヤバイのです,弱小国は。ゲームデザイン的に存在を許されていないが如くに,歴史の翻弄であっという間に国家が蒸発します。それはもう,蹴散らされるためだけの国家/存在です。そこに込められた思いも,その国に暮らす人々の願いもお構いなし。そういう弱小国にとっては残念すぎるシステムを搭載しているのがHoI3です。
頑張って,フィンランドでプレイしたとしましょう。結構な割合で,ソ連さんは冬に攻めてきてくれません。ええ,AIが賢いのです。泥濘にはまり機甲部隊に深刻なマイナス影響が出たり,氷点下10度以下に気温が下がって双方の攻撃にペナルティがついてお互いなかなか作戦が遂行できない状態を避けるためか,奴らは夏に攻めてきます。ずるい。おいソ連,冬戦争だぞ。冬に攻めてこいよ。頼むよ,勘弁してくれ。そういう言葉も通じることなくあっという間に赤軍がヘルシンキに殺到して降伏してゲームオーバーになるのが,HoI3のフィンランドです。ヤバイ。マジヤバイ。
他にもイタリアからの宣戦布告で即上陸されてゲームオーバーなアルバニアや,何も悪いことしていないのに仲良く共産ソ連に踏み潰されるバルト三国も健在です。でも生き残れません。100時間以上プレイしてきて,HoI3で生き残った試しがありません。どうにかなるのでしょうか。本当に助けて欲しいです。誰か。誰か。
そのぐらい,今作は厳しい。それでも立ち向かうのが私の役目と割り切って,今回は少し国力のあるブルガリアをチョイスしてみました。いま,時代の風はブルガリアに向かって吹いていると思うんですよ。二次大戦のゲームだけど。お前らブルガリアといえばヨーグルト以外思い浮かばないかもしれないけど,ヨーロッパとアラブ社会の玄関口として,あるときは繁栄を,またあるときは通過点として戦争の最前線であり続けたブルガリアをもっと敬えってば。
ゲーム的には中堅国と弱小国の間ギリギリの国力,微妙な感じのマンパワーに指導力,列強諸国とはそれほど不利な絡みがないけど決定打もないイベント群と,成長の余力がまだまだ残っている国家とお見受けいたしました,ブルガリア。プレイの目標は,東ローマ帝国に負けない規模で東欧の雄となること。そのためには,手段を選ばず,前を向いて成り上がっていこうというスタンスです。全力で部隊を溜め,戦術の限りを尽くして頑張って拡大していくブルガリアに明日は来るのでありましょうか。
ということでブルガリアなんですが
ブルガリアを開始してみて思うのは,なんというか,とても……平凡です。別に何かがいかんというわけでもないんだけど,取り得も特にない。重大な欠点は原油が出ないことでしょうか。ビッグな問題ですけど,燃料を使ってブイブイ言わす機甲師団は開戦まで使うこともありませんので,泣いて諦めることとしましょう。
そうそう,ブルガリアには海軍空軍がありません。今作では贅沢品の代表とされる空軍ですが,爆撃の効果が下がったとされる割に爆撃され放題だとそれなりに痛いので,迎撃隊は将来的に用意したいところです。海軍も,近い将来ブルガリアが嫌われると誰からも貿易してくれなくなるでしょうから,残された取引先として名高い南米諸国との連携を模索する上でも最低限の防衛体制は考えて参りたいところです。
ちなみに。HoI3の優れたところは,すべての要素が国力維持の要件となっているため,HoI2時代のように「まあ海軍捨てておくか」とはならないところに完成度の高さを感じさせます。その代わり,そういうところに国力の割きようのない弱小国が何もできないのもまた事実でありまして,分かっておるのかお前ら!!
戦争国家ブルガリア事始
ブルガリアに必要なものは何でしょうか?
まず国力です。次いで国力,そして最後に国力です。というわけで,国力を上げよう。それも他国よりも早く。効率的に。
そのためには何が必要か? 戦争だ。領土確保するぞ。領土を広げて部隊を増産するぞ。人口増やして工場建てて,骨の髄まで戦闘国家の精神を叩き込み,富国強兵を旗頭に頑張っていくんだ。
……ということで,一番最初はブルガリアより格上だけど,原油を産出するルーマニアに目をつけます。というか,過去の経験から申しますと,先にギリシアやユーゴスラビアに宣戦布告いたしますと,どういう理由か真っ先に連合国に加盟するなどして大戦争となり世界不思議大戦が始まってしまう可能性がお高ぅございます。いきなりね,黒海にイギリス海軍が現れるんだよ。不思議だね。ということで,ここはルーマニア奇襲の一択。
この間,やっておくべきことは二つあります。ひとつは,旧式も旧式な軍隊の近代化,も一つが予備役になっちゃってる軍隊を常備軍と同じだけ補充すること。どちらも工業力を投資しなければなりません。
っていうか相変わらず東欧では,おうまさん部隊が機動部隊の一角を占めております。これがまた弱い。後ろに回って補給路絶って……とか思ってると,敵の予備戦力が笑顔でやってきて,こちらの騎兵部隊が壊滅とか普通です。貴重なマンパワーが削られるぐらいなら,騎兵部隊など投げ捨てたほうがマシです。
しかし,自動車化歩兵? 機甲師団? 何言ってるの?っていうのが現状のブルガリアであります。せいぜい歩兵に砲兵旅団をつけて悦に入る程度の能力しかありません。充分なスパイを育成したら技術への投資も始めるわけですけれども,この騎兵部隊を捨てるかどうかというのは大変重要な決断ポイントだろうと思います。そして,今回のプレイでは騎兵部隊を残しました。もちろん,領土が拡大したときに発生するパルチザン祭り対策であることは言うまでもありません。目の前の作戦は考えつつも,ブルガリアの栄光を目指して先のことにも手を打っていく,これがHoI3の醍醐味であります。ほんとにそうかは良く分かんないけど。
そろりそろりとルーマニア国境へ軍隊を集結させるブルガリア軍。もうこの時点で戦争吹っかける気満々なようにも見えるが,別に文句も言われないから気にしない |
国力の過半を軍事に注ぎ込むことしばし,壊滅的な赤字に見舞われるブルガリア。どういう理由かフランスが労働法改正とか平和ボケなのんびりしたニュースを流してきて血圧が上がる |
持てる国力を可能な限り軍事に注ぎ込んでいるブルガリアは,一戦必勝の体制で国家を運営していきます。というのも,放っておくと資源がないんですよ,資源が。貿易をAIに任せて自動化すると,足りない物資はとりあえず調達という方法をとりやがるので,効率がよくありません。AI自体は良くできているんですけどね。
ただ,私が目指している目標は高く遠いのです。あの坂の上の雲の向こうのアンドロメダ星雲を目指してブルガリアを率いる覚悟ですので,少し便利だ,ぐらいでは使いません貿易AI。したがって,全部地道に一個一個相手国を見て少しでも有利な取引を選んでは承認するという,スーパーでセール品を物色するおばちゃんと変わらない行動にでるわけですが……。
ただ,そんな涙ぐましい遣り繰りをしてもなお,資源は完全にマイナスです。減る一方です。戦争になってルーマニアを占領すれば,彼らが溜め込んだ資源は我らのものだ。しかし戦争に負けたら,ブルガリアは保有資源が枯渇して物資が続かず,そこで終わり。もうね,全力で勝つしか,生き残る道がないんだよ。諦めたら,そこで終わりなんだよ。貧乏一直線で,共産化するかナチの手先になるか,そういう覚悟で立ち向かっていこうってことですよ。分かりますかお客さん。
善良なルーマニアに大量のスパイを送り込んで,泣くほど名誉毀損や誹謗中傷を流し,かの国の脅威度を上げていくブルガリア諜報部。その国境線にはブルガリアの部隊がごっそりとひしめいて睨み合ったまま,1938年3月,ブルガリアは「お前らの顔が気に入らないから」くらいの理由で堂々ルーマニアに宣戦布告します。いいですね,この理由になってない感じが国際社会的で。
別に危機を感じておらず予備役を招集していないルーマニアは,部隊の数の割に人員充足が低く,攻め込む気満々のブルガリア軍の前に壊走を始めます。やったねいいぞブルガリア。もちろん,この電撃戦の狙いは,ルーマニアが対ソ連に貼り付けている部隊がこっちの戦線にやってくる前に重要都市を占領し,戦意を喪失させること。HoI3では,降伏はこの国民結束度によって行われるので,首都や重要都市を囲んで占領することが大事なわけですね。
結果として,開戦からものの3週間でルーマニアは降伏,我らがブルガリア王国の領土となったのであります。併合だ! いいですね,いいですねこの充実感。まずは原油と資源を確保し,わずかではありますが指導力や資源,工業力が確保できるに至りました。素晴らしい。まずは中堅国として見られる程度の領土と生産力になった。やったぞブルガリア! 東ローマ帝国再建へ向けて,全力で成長していくぞ。
頑張って戦争準備。もちろん戦争前諜報は重要。マキシマムの10人までスパイを送り込み,全力で相手の脅威を煽る誹謗中傷を日夜流す。すべてはブルガリアの栄光のためだ |
そのルーマニアが我々の寛大な(我々にとって有利な)貿易をキャンセルしてきやがった。畜生め…… |
しかし時代は非情に動く
その間,工業力もひっそり増加しましたので,全力で歩兵師団の近代化やなんちゃって中戦車部隊の建設に勤しみます。……とかのんびりやってたら,希少資源が枯渇しそうだ! 急げ,ハンガリーを倒して希少資源を手に入れるぞ!
戦争しないと資源がなくなるというシビアな自転車操業に陥ったブルガリアですが,そのようなことは問題とせず,素敵な微笑を湛えてハンガリーに宣戦布告。国境線にいるハンガリー地上部隊に襲い掛かります。
楽勝楽勝!……と思いきや,なんか強いぞハンガリー。簡単に勝つはずが,前線では一進一退の熱い攻防が繰り広げられ,国力や戦力で勝っているはずのブルガリアと互角の戦いになってしまいます。ああ,被害が増える。マンパワーが……。
配置完了……するも,資源がないよおっかさん。少し貿易に手抜きをするとすぐに資源欠乏のシステム警告が表示されてしまうブルガリアに明日はあるのか |
そしてハンガリー軍に対して容赦なく奇襲。大損害を出し崩壊していくハンガリーと,国内パルチザン対策のために奔走する騎兵部隊の皆さん |
意外に精強なハンガリー軍に手こずるブルガリア,戦術的優位を重ねて被害を減らそうと,必殺包囲殲滅陣にハンガリー軍を呼び込む作戦に出る |
ハンガリー軍が被害を増やしマンパワーが底をついたため,補充が利かなくなって崩れ始める。その間,チェコスロヴァキアがドイツに併合される。急がねば…… |
戦術上の技巧を凝らそうにも戦線が狭くてプロヴィンスがひしめきあっているため,先方も分厚く前線に部隊を重ねてます。これはヤバイ。
ハンガリーに大量に送り込んであったスパイからの情報で,ハンガリー国内のマンパワーが枯渇したのを察知するや,補充の利かなくなってそうな部隊に暴力的な戦闘を波状的にしかけてついにハンガリー前線を突破。ようやく敵首都ブダペストにヨーグルト片手のブルガリア軍が到達するかと思いきや……。
ハンガリーの枢軸国陣営への参加が承認されました。
ぬぅーわーーにーー。これではハンガリーどころか,向こうからドイツ軍が攻めてくるやんけ。勝てるか馬鹿野郎。いい加減にしろ畜生。やってられっかそんなもん。講和だ講和。はいはい,攻め込んだ私どもが悪ぅございましたねえ。撤収しますよ。へぇへぇ,ドイツ様はお強いでございますねえ。ハンガリーはさぞドイツ様の××を綺麗にされるおつもりでしょうねえ。
次回後編では,我らが戦闘国家ブルガリアがギリシャやバルカン半島を統一して東欧の雄になる決死の作戦を進めていきますよ! お楽しみに!
東欧王に,俺はなる!!
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■■山本一郎■■ 言わずと知れたアルファブロガーで,その鋭い観察眼と論理的な文章力には定評がある。が,身も蓋もない業界話にはもっと定評がある。ゲーマーとしても知られており,時間が無いと言いつつも,膨大に時間を浪費するシミュレーションゲームを愛して止まない。ときに山本さん。以前,あなたは「もう切込隊長は卒業する」とかおっしゃっていましたよね。子供も生まれ,40歳になろうかというのに,ロックな生き方はもうできないと。しかし,最近のネットでのご活躍(某公開質問状案件)を見ていて,やはり「切込隊長は切込隊長だな」と思いました。怖い人だなって改めて思いました。今後は私も,口の利き方に気を付けます。いままでいろいろ舐めたこといって申し訳ありませんでした。サーセン。今後ともよろしくお願い致します。隊長……じゃなかった山本さん。でも,「HoI3を100時間遊んじゃったんだけど(www」とか言ってて大丈夫なんですか? |
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