プレイレポート
「ファイナルファンタジーXIII」を徹底検証! 体験版から分かること総まとめ
4Gamerの読者には今更説明するまでもないだろうが,一応簡単に説明しておくと,FF XIIIは,スクウェア・エニックスが誇る超人気RPG「ファイナルファンタジー」シリーズの最新作。常にその時代の最先端技術が存分に盛り込まれてきた本作は,スクウェア・エニックス……いや,日本のゲームを代表するタイトルの一つだ。
「ファイナルファンタジーXIII」公式サイト
プラットフォームを最新のPLAYSTATION 3に移して初の正式なナンバリングタイトルとなる本作だけに,「どれだけ進化したのか」「どこまで凄くなったのか」と期待に胸を膨らませるファンも多いことだろう。
物語の舞台は,宙空に浮かぶ未来都市“コクーン”と,未開の大地“パルス”という二つの世界。その独特の世界観を背景に,女性主人公「ライトニング」らの壮絶な戦いが描かれていく。
今回公開された体験版は,主人公のライトニングを操作する前半パートと,大柄な金髪の青年「スノウ・ヴィリアース」を操作する後半パートの2部構成。コクーンの辺境である“ハングドエッジ”を舞台にした,ゲームの序盤部分を遊ぶことができる。総プレイ時間は,1時間前後。製品版と同じオープニングムービーなどの導入部分を一足先に楽しめるほか,シリーズ伝統のアクティブバトルをさらに進化させた戦闘パートを体験できるといった内容だ。
国民的なRPGシリーズの最新作は,果たしてどんなゲームなのか。早速その概要を確認していこう。
圧倒的な映像美はさすがの一言。シーン切り替えのロード時間もほぼ皆無
物語は,忌み嫌われた下界パルスに追放される人々を運ぶ,輸送列車の中から始まる。主人公のライトニングとその仲間サッズ・カッツロイ(ライトニングとの関係はまだ明らかにされていない)は,コクーンを支配する「聖府軍」の守る輸送列車に潜入。ハングドエッジで「ファルシ」と呼ばれるものを探すため,探索を開始する。
冒頭からスリリングなイベントシーンの連続で,プレイヤーをぐいぐいと物語に引き込んでくれる本作なわけだが,イベントシーンから戦闘への切り替え,あるいは戦闘からイベントシーンへの切り替えは,完全なシームレスで,まったくストレスを感じさせないシステム設計はさすが。体験版ということもあって,成長システムなどの細かい要素の確認はできなかったが,最初にカメラ操作の設定を選択できるなど,超大作らしく,細かい配慮が行き届いた作品になっていることがうかがえる。
またシリーズの大きな売りである「映像美」は,本作でももちろん健在だ。映像面において,常にゲーム産業をリードしてきた本シリーズだが,今回のムービーシーンに至っては,映画やアニメをはじめとした,あらゆる映像メディアを引っくるめてかなり高いレベルにある。
ゲームメディア編集者の端くれとしては,いったい開発費をいくら投じたらこんな凄い映像が作れるのかと思わず考えてしまったりもするわけだが,(下手な映画などよりも)多額の開発費をかけられるということは,それだけゲーム産業の規模が大きくなった証拠でもあり,なんだか感慨深いものがある。
ちなみに移動方式は,前作XIIと同じようにキャラクターを操作して3Dマップ上を走り回るタイプなのだが,まるでFPSのように,周囲でさまざまな“イベント”がリアルタイムで展開される演出も,FF XIIIの大きな特徴だといえよう。
走っている途中で,近くに戦闘機が墜落したり,敵の巨大なモンスターが遠方で戦っていたりなどなど,芸の細かい演出の数々は,これまでのいわゆる国産RPGでは,あまり見られなかった要素。
カメラをぐるぐると操作して,いろいろなイベントを発見する楽しみも,本作では大きな要素なのかもしれない。
アクティブバトルを進化させた“コマンド シナジー バトル”とは?
さて,アクティブバトルを進化させたシステムを実装している本作では,戦闘はリアルタイムで進行していく。時間と共に「タイムゲージ」が溜まっていき,これを消費することで,「たたかう」「ファイア」「ケアル」などといった,戦闘コマンドを実行していくスタイルである。
面白いのは,戦闘コマンドにはそれぞれタイムゲージを消費する“コスト”が設定されている点だ。つまり,強いアクションほど消費コストが高く,弱い攻撃は低コストで行える。例えば,「ファイア」はタイムゲージを1コストぶん消費すれば放てるが,「ファイガ」は3コストぶん必要になる,という感じだ。
さらに,この戦闘コマンドをタイムゲージ総量の許すだけ“ストック”できるのも,コマンド シナジー バトルの大きな特徴だ。体験版では,最大で3コスト分のタイムゲージを貯めることができるのだが,要するに,「たたかう」「ファイア」「たたかう」などというように,戦闘コマンドをワンセットにしてから攻撃を実行することで,いろいろなバリエーションの連続技を編み出せるわけだ。
筆者もいろいろと試してみたのだが,どうもコマンドの順番やキャラクターの位置次第で,攻撃のモーションや当たり判定などが変化するようで,コマンドの組み合わせ,そして放つタイミングなどを工夫することで,戦闘をより有利に導いていける模様。製品版では,さらにゲージが増えることなども公表されており,コマンドの種類が増えるであろうゲームの後半では,より高い戦略性が求められていきそうである。
大人気シリーズながらも,毎度かなり大胆なシステムを導入してくるファイナルファンタジーシリーズだが,今回もなかなかに興味深いシステムを実装してきたと感じる。
また,戦闘後に体力が全快するシステムになっているのも,地味ながら大きな変更点かもしれない。この手のシステムは,同じスクウェア・エニックスの「ロマンシング・サガ」シリーズでも見られたが,戦闘後の回復作業も無駄といえば無駄な要素だ。
またゲームデザイン的にも,戦闘ごとに全快する仕様にすることで,一戦一戦をメリハリのあるバランスに調整しやすくなるという側面もある。個人的には,この変更も「なにげに英断なのではないか?」という印象を受けた。
連続技で一気に大ダメージ? チェーン&ブレイクシステム
戦闘システムのもう一つの目玉は,敵を連続で攻撃することで攻撃ボーナスを得られる「チェーン」および「ブレイク」システムだ。
チェーンとは,言葉からも分かるように,連続して攻撃を当てるとボーナスが得られるというシステムで,そのたびに画面右上の「チェーンゲージ」も溜まっていく。ゲージがゼロに戻る前にどんどん攻撃していくと,2CHAIN,3CHAINといった具合に,チェーン数が増加していくわけだ。
チェーン中は通常よりも高いダメージを与えられるほか,BONUSが一定以上溜まると,敵を「ブレイク状態」にできる。ブレイク状態では,チェーンとは別途ダメージが上乗せられるほか,「うちあげ」コマンドで,まるで格闘ゲームのように“敵を浮かせられる”ようになるところがミソ。敵を打ち上げたあとに追撃すると,大ダメージを与えられるからだ。
このように,うまく連続攻撃を当てながらBONUSを溜め,チェーンやブレイクを狙っていくというのが,本作における戦闘の基本的な戦略になるわけだが,巨大な機械のような“重い敵”は浮かせにくい,あるいはそもそも浮かせられないなど,敵の種類によっては有効でない場合もある。
コマンド シナジー バトルの説明の際にも触れたコマンドの種類や組み合わせ,これによって,チェーンゲージが溜まりやすくなったりもするらしい。状況や敵に合わせて,いろいろと戦い方を変えていく必要がありそうだ。
ちなみに,今回の体験版では,メニューを開くことができず,成長システムなどの細かい部分を確認することはできなかった。このあたりのシステムについては,続報を待ちたい。
見るからに気の強そうなレブロは,勝ち気な性格ながらも面倒見の良い姉御肌の女性 |
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ファイナルファンタジーが示すゲームというメディアの可能性
体験版で判明した各要素をざっと紹介してきたが,実際に遊んだ感想としては,日本のゲームを代表する作品だけあって,さすがによく作り込んであるという印象。製品版の発売が非常に待ち遠しくなる内容であった。
月並みではあるが,その作り込み……とくに映像面の作り込みは,本当に圧倒的だ。映画やアニメを含めて,このレベルの映像には,簡単にはお目にかかれない。映像制作を専門とする映画会社,あるいはアニメーション会社でも,これほどのクオリティを誇る映像は,そう簡単に作れるものではないだろう。
これは上でも軽く触れたことだが,ゲーム中の映像(ムービーシーンも含め)が,ほかの映像コンテンツに匹敵(あるいは凌駕)するレベルになったという点は,個人的には,もっと称賛されて良い部分なのではないか? と思う。
ファイナルファンタジーといえば,昔からその映像美を売りにしてきた。しかし,例えばスーパーファミコン時代の「美しい」と現時点での「美しい」には,大きな差がある。つまり,昔はあくまでも「ゲームの中では美しい」という意味合いだったのに対して,今のFF XIIIのそれは,言葉どおり“一般的な映像作品として美しい”と言えるレベルに達している。これは,とても大切な意味を持つのではないか(念のため補足しておくが,FF XIIIが映像だけの作品だという意味ではない)。
ゲームは,その可能性の高さと定義の難しさがあるためか,ゲーム業界やゲーム開発者達の中でも,さまざまな捉えられ方をされる。ある人に聞けば「ボールや積み木のような遊び道具だ」というし,別の人は「物語を語るメディア」という。まぁそれだけ,ゲームというメディアが「なんでもあり」になっているという話だと思うのだが,ゲームというメディアが,単純なゲーム性云々だけで語れなくなっているのも,また確かである。
エンターテインメントとして考えてみれば,要は「楽しませれば勝ち」なのであり,その実現のために映像,物語,キャラクター,そしてインタラクティブ性など,あらゆるものを投入できるメディア,それが現在のゲームではないだろうか。
そういう意味では,FF XIIIは,映画なみの映像美さえ要素の一つでしかないほどの,類を見ない豪勢なタイトルの一つ。エンターテインメント業界の最先端を突っ走る娯楽大作というわけだ。これほどのタイトルを楽しみにしないわけにはいかないだろう。
ちなみに体験版の最後では,製品版の発売日が2009年冬とアナウンスされている。要するに開発が順調に進めば,今年の年末商戦に合せて投入される可能性が高いわけだ。冬休みをFF XIIIで過ごすためにも,スクウェア・エニックスにはぜひ頑張ってほしいところ。追って出てくるであろう,新情報にも期待したい。
「ファイナルファンタジーXIII」公式サイト
「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」公式サイト
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ファイナルファンタジーXIII
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