連載
ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第28回「Bethesda Softworksは『Fallout 3』だけじゃない!(1)」
今回からは,Bethesda Softworks(以下,Bethesda)について紹介していこう。
ここ最近のBethesdaといえば,RPGファンから大絶賛を受けている「Fallout 3」を思い出す人が多いことだろう。Rockstar Games作品や学園いじめっ子モノが好きな人は,「Bully」を思い出すかもしれない。
そんなBethesdaは,2008年に日本法人(ベセスダ・ソフトワークス)が設立されたばかり。そんなこともあって,洋ゲーメーカーとしては歴史の浅い会社だと思っている人もひょっとしたらいるかもしれないが……,実はそんなことはないのだ!
この連載のために,発売中止になってしまった“あのソフト”のことを含め,同社の高橋 徹氏に直撃もしてみたのだが,まずはその前に,Bethesdaの歴史をシネゲーを軸にひもといていこう。
当時,West L.A.のSilshire Blvd.沿いにあった個人経営の小さなPCショップで,半ば興奮しながら購入した記憶がある。おそらくこれが,世界初のターミネーターゲームだろう。
そういえば購入時,店主からは「このゲームは飛ぶように売れているんだ。なぜって? カイル・リースとターミネーターのどちらを選んでも遊べるからね! しかもLAのマップが網羅されていて,車で移動できるんだ! HAHAHAHA」みたいなことを言われたものだ。ターミネーター2がヒットする前の話だから,きっと地元が舞台になっていたのが嬉しかったのだろう。
この作品は,3Dで再現されたLAを車で移動できるというもので,当時としてはかなりがんばっていた印象だ。
筆者だけかも知れないが,本作のファーストプレイから10年を経て「Grand Theft Auto 3」と遭遇したときには,「あ,これ……The Terminatorに似てるじゃん!」なんて叫んでしまったもの。もっとも,周囲のゲーム仲間からは完璧にスルーされたが。
まあ,この時代のPCゲームは非常にニッチな市場に向けて作られたものばかりだったので,知っている人が少ないのも致し方ない。筆者自身にしたって,生粋の洋ゲーマニアというわけではなく,90年代半ばまでのシネゲーといえばば洋ゲーばっかりだったため,必然的にその周辺の知識が増えていっただけだし。
アイスホッケーという競技自体が,本作で初めてゲームになったということもあり,アイスホッケー人気の高いカナダを含む北米で飛ぶように売れたのである。
ちなみにグレツキー選手は,6歳でその才能を開花させると,左利きを生かしたショットを武器に“カナダの至宝”と称賛されたほどの名プレイヤーだ。プロアイスホッケー選手になってからは,20年もの間,第一線で活躍し続け,“グレートワン”と称されていた。
Bethesdaは当時,そんなグレツキー氏と5年間の独占契約を締結し,1988年にAmiga向けに同作をリリースしてから,他機種も含め6〜7タイトルを世に送り出している。
日本ではマイナーな競技のゲームでも,大ヒットの可能性を秘めているというのは,北米市場の特色ともいえるだろう。
ここでシネゲーの話に戻そう。Bethesdaは,グレツキー氏のアイスホッケーゲームの大ヒットを契機に,肖像権や版権タイトルにビジネスチャンスを見いだして,前述したThe Terminatorのライセンスを,当時の権利もとであったOrion(オライオン)から獲得したのである。
なんでもジェームズ・キャメロン監督自身もコンピュータの世界が大好きだったらしく,ライセンス交渉はスムーズに行われたという。当時,米国のPC雑誌に掲載されていた記事によると,ジェームズ・キャメロン監督側は,カイル・リースを使ってサラ・コナーを守りきるというヒーロー的な内容だけでなく,ターミネーターとしてサラ・コナーを抹殺しに行くこともできるピカレスク的な内容にもしてほしいとのリクエストをしたのだそうだ。
現カリフォルニア州知事を選んでプレイしたのだが,車を奪ったら3Dポリゴンで描かれた街を走り,サラ・コナーを探す作業の退屈さにびっくり。購入当時はもっと興奮して遊んでいたはずなのに,一体なぜ? の嵐。よくよく考えてみると,当時はポリゴンの3D空間で遊べるゲーム自体がまれだったため,必要以上に興奮できたのかもしれない。
それでも気づけば5時間連続で遊び続けてしまったのは,筆者のシネゲースピリットのせいなのか,ターミネーターが好きだからなのか……。プレイ中,サラ・コナーを数回見つけるも,カイル・リースに邪魔されてしまい任務は失敗。結局,クリアには至らなかった。
ターミネーター2に出てきたようなガトリングガンでもあれば,バトルももっと快適かつ爽快なものになるのに……とは思ったが,ダメージ回復アイテムなどを入手できる薬屋に,なぜか明るい家族計画までもが置いてあったり,スポーツ用品店にグレツキー氏のポスターが貼ってあったりといった遊び心も含め,細部まできっちり作り込まれた作品であり,映画を原作としたPCゲームとしては,秀逸な完成度を誇っている。
ここでちょっとした豆知識を一つ。FPSの始祖と呼ばれる作品「ウルフェンシュタイン3D」の開発スタッフは,The Terminatorの影響を受け,ああいった形の世界を構築したのだそうだ。つまり,現在のFPSの根っこの一つが,The Terminatorなのである。
また,ターミネーターとなって一般市民に危害を加えたり,車を盗んだりといった要素は,そのまんまGTAシリーズに受け継がれているような気が……。
何にせよ,Bethesdaは当時から斬新なゲームを生み出そうという気概に溢れており,それがのちのさまざまなゲームに影響を及ぼしているということは,覚えておいてもいいだろう。
次回は,The Terminatorのヒットで自信を持ったBethesdaが,映画版ターミネーターとは別シリーズのスピンオフ作品をリリースしていたエピソードを紹介しよう。
■ドブ漬けゲームスープレックス(28)
Xbox360
「タイガー・ウッズ PGA TOUR 09」(エレクトロニック・アーツ)
筆者はゴルフゲームがけっこう好きだ。総プレイ時間でいえば,ファミコンの「ゴルフ」が最も多いが,「ジャンボ尾崎のホールインワン」あたりも4人対戦で遊びまくったものだ。ゴルフゲームは,どちらかというとゲーム機を子供に買い与えた親御さんに向けたジャンルという印象があるが,あのストイックな緊張感は,スポーツゲーム好きにとってたまらないのである。
で,今回遊んでみたのはタイガー・ウッズ選手の冠ゲーの最新作。このシリーズは毎年リリースされているのだが,筆者は今回が初めてのプレイだ。
最初からXbox Liveにつなぎ,ジャンボ尾崎のホールインワン気分で海外のプレイヤーとの4人対戦に挑戦してみたのだが,いやぁ……みんな上手くてびっくり。全然勝てないまま,ボイスチャットで「へたくそ!」なんて言われて落ち込む始末。
仕方なく,オフラインで腕を磨くことにしたのだが(順序が逆!),タイガー・ウッズ選手のコーチであるハンク・ヘイニー氏がアドバイスしてくれるため,やたらとテンションが上がってしまった(腕は……うん,まあその……)。
登場キャラクターの表情や動きは恐ろしいまでにリアルで,こうした作り込みっぷりからEA SPORTSの本気度がひしひしと伝わってきた。
ゲーム本編は英語のままだが,日本語マニュアルはしっかり用意されているので,英語が苦手な人でもさほど不便は感じないはず。ゴルフ好きのゲーマーは,試しにプレイしてみては?
「タイガー・ウッズ PGA TOUR 09」公式サイト
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タイガー・ウッズ PGA TOUR 09
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