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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:第19回「殺られる前に殺れ! 殺人カーレース『デス・レース』が襲来!(その2)」
11月29日(土)より公開される映画「デス・レース」のポール・W.S.アンダーソン監督は,シネマゲームならぬゲームシネマ界の要注目人物である。前回は,そんなアンダーソン監督の誕生から,出世作の「モータル・コンバット」までの足跡を紹介したが,今回はその後のお話である。
脚本(新人脚本家のフィリップ・アイズナーが手がけた)を読んで,これを気に入ったアンダーソン監督は,Paramount Picturesから本作の仕事を引き受けることに。
この作品でアンダーソン監督は,細部までこだわったミニチュアや宇宙船内のプロダクションデザイン,徹底的に作り込まれたシリアスな内容,そして狂気に陥った人間の恐怖をゴア表現満載で描いた点などが評価され,1998年のブリュッセル国際ファンタジー映画祭でペガサス賞を受賞した(日本では1997年に公開されたのだが,たいして話題になることはなかった)。
個人的にも,筆舌に尽くしがたい斬新なカメラワークや映像美,迫り来る恐怖描写の連続は,アンダーソン監督作品でもナンバーワンだと思っている。
そう考えると,マイケル・クライトン原作の映画「ジュラシック・パーク」の主演だったサム・ニールを,イベント・ホライゾンの主役として起用したのは,アンダーソン監督なりのオマージュだったようにも思える。
ちなみにピープルは,1997年にWestwood StudiosがPC向けに開発したゲーム版「Blade Runner」でも,脚本を担当している。こちらは映画と同じ時間軸で,デッカードではない新人ブレードランナーが活躍するというストーリーで,映画と同じキャストも登場する。現在では入手困難だが,映画同様にカルト人気の高い作品だ。
ソルジャーに話を戻そう。アンダーソン監督はのちに,「やはりこの手の作品は,予算に出来が左右されるものだと痛感した」と語っている。確かに,微妙にチープな部分があるし,なんとも中途半端な所が多いのも事実である。映画評論家達からの評価は決して高くないし,興行的にも失敗に終わってしまった。
ただし,殺人兵器として育てられたものの,不要になって捨てられたソルジャーの葛藤が深く描かれているあたりは,ブレードランナーにおけるレプリカントを彷彿とさせ,筆者は「さすがデヴィッド・ウェッブ・ピープル脚本!」と思ったものである。
しかし,アンダーソン監督は,自身がもともとテレビ業界で活動していた縁から,アンドリュー・マッカーシー主演の霊体サスペンスドラマ「ザ・サイト 霊界からの依頼人」のパイロット版を監督,脚本,演出するチャンスに恵まれた。その後のテレビシリーズには関わらなかったものの,連続殺人の謎を追っていく場面のテンポをはじめ,作品への評価は非常に高く,「アンダーソン監督は低予算のほうがクオリティの高い仕事ができるのでは?」などとイギリスでは皮肉られたりしたのだそうだ。
バイオハザードにおける実写といえば,ゲームの第1作のオープニングにはモノクロの実写シーンが挿入されていたほか,「バイオハザード2」のTVCMはゾンビ映画の第一人者であるジョージ・A・ロメロ監督が演出を担当していた。なお,このCMはレオン役を故ブラッド・レンフロ,ゾンビの特殊メイクをスクリーミング・マッド・ジョージが担当するなど,ホラーファンにはたまらない布陣となっていた。そのため,日本でしかオンエアされなかったものの,海外のホラーファンの間でも大きな話題を呼び,結果的にバイオハザードというゲームが世界中に知れ渡るきっかけにもなったのである。ちなみにこのCMのレオン役には,ブラッド・ピットも候補として挙がっていたようだ。
以前,その脚本に目を通したことがあるのだが,登場人物の設定がゲームとは異なっていたのが印象的だった。
ロメロ監督の脚本の主人公がクリス・レッドフィールドなのは,ゲームと同じ。しかしS.T.A.R.S.の隊員ではなく,地元の州警察官という設定だった。そしてラクーン・シティに滞在するS.T.A.R.S.所属のアンダーカバーという設定で,ジル・バレンタインも登場。この二人が出会ってから,S.T.A.R.S.はアンブレラ社が所有する巨大な洋館に突入するという流れになっていた。やがて二人は恋仲になるのだが,クリスはジルがアンダーカバーであることを知らないまま,物語は進んでいくのである。また,劇中にはゾンビだけでなくケルベロスやカラス,ワニなど,ゲームと同じ敵が登場することも,その脚本には書かれていた。
だが,この作品は形にならなかった。当時,カプコンの役員であった岡本吉起氏(現 ゲームリパブリック代表取締役社長)は,「ロメロ監督の脚本はどうも古くさい感じだったんですよ。ゲームとほとんど同じ内容の脚本を見たときには,正直ガッカリしましたね。サム・ライミ監督や,プロモーションビデオなどで斬新な映像を撮っていた監督などにもオファーしていたんですが,どれも中身に新しさがありませんでした。もちろん,スタンダードなゾンビ映画を得意とする監督達には敬意を持っています。しかし僕らが作ろうとしていたゾンビ映画は,ゲーム同様に商業的な成功を収めなければならず,作家性は二の次だったんです。こちらとしては,ゲーム世代の観客が見て度肝を抜かれるような映像を望んでいたので,監督選びはとてつもなく難航しました」と,その理由を語っていた。
こうした経緯の末,アンダーソン監督がバイオハザードを手がけることになったのである。次回は,バイオハザードを皮切りに「エイリアンVSプレデター」,そして最新作「デス・レース」を手がけるに至るまでの舞台裏を一気に紹介しよう。
ドブ漬けゲームスープレックス(19)
プレイステーション2
「PRIDE」(カプコン)
先日,裸のディスクメディアを10枚ほど入手したのだが,その中に5年ほど前にカプコンから発売された「PRIDE」の姿があった。そう,もはや伝説となってしまった総合格闘技イベントのPRIDEをゲームにした作品である。
しかしメディアの裏面は傷だらけで,ロードは不可能になっていた。そこで,記録面をコンパウンドで磨きまくってみた。が,手持ちのプレイステーション2では読み込んでくれない。もう少し磨いてみても,やっぱり読み込んでくれない。これはダメか……と思ったものの,ものは試しとPLAYSTATION 3に挿入してみると,見事に読み込み成功!
早速,ゲームで遊んでみることに。発売当初は「UFC」そのまんまの内容という評価だったこともあり,購入はしなかったのだが……う〜ん,実名選手と顔のテクスチャーは頑張っているが,駆け引きのなさがイマイチか。
ふと思ったのだが,“わがままな膝小僧”または“青春のエスペランサ”こと高田延彦が実名で登場するのは,13年前にスーパーファミコンでハドソンから発売された「最強 高田延彦」以来じゃなかろうか。
ちなみにこちらのゲームはもともと,タイガーマスクのゲーム化ということで進められていたらしいのだが,それが諸事情でNGに。結果,UWFインターナショナルのトップとして当時イケイケだった高田延彦を起用したという衝撃作である。
ところが発売直前,当時の新日本プロレスでエースだった武藤敬司とシングルマッチで対戦した高田は,見事に敗れてしまったんだよなぁ。最強なのに……。
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