「オンラインゲームをプレイするなら,低価格PCで十分」なんて時代がやってくるかもしれない。
日本時間2008年12月17日23:00,NVIDIAは,同社製のノートPC向けグラフィックス機能統合型チップセット
「GeForce 9400M G」が,Intelの低価格PC向けCPU「Atom」をサポートすると発表した。AtomとGeForce 9400M Gからなるプラットフォームには,
「Ion」(イオン)という開発コードネームが充てられているので,今後,プラットフォームレベルでの訴求が行われる可能性もありそうだ。
AtomとGeForce 9400M Gの2チップ構成からなるIonプラットフォーム。とはいえ,NVIDIAが提供するのは後者のみで,システムとして提供したりはしないとのこと。そのため,実際にどういったPCやマザーボードを作るかは,出荷先のベンダ次第になる
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「従来のAtomプラットフォームは,必要以上に制限されすぎている」とNVIDIAは指摘する
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GeForce 9400M G自体すでに発表済みのチップセット(=mGPU)で,
Appleが10月15日に発表したMacBookに搭載されている――Appleは「GeForce 9400M」と呼んでいて,やや分かりにくいが――から,記憶に新しいという読者も多いことだろう。
65nmプロセスルールで製造される本mGPUは,16基(8+8)のStreaming Processor,そしてDDR2/3両対応の128bitメモリインタフェースを内蔵しており,さらにサウスブリッジ機能も統合したワンチップソリューション。標準的なAtom搭載Netbookで組み合わせられるチップセット「Intel 945GSE Express+ICH7M」(以下,945GSE)と比べて,
3D性能は10倍高いとNVIDIAはアピールする。
従来の標準的なNetbookと比べて10倍の3D性能を持ち,Windows Vista(の「Aero」デスクトップ)やWindows 7をサポートできると謳われる
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興味深いのは,NVIDIAがIonプラットフォームを,必ずしもNetbook/Nettop限定とは考えていないことだ。
こちらは,「Ionプラットフォームは低コストで低TDPのノートPCにもご利用いただけます」というスライド
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例えば,Ionプラットフォームを利用すると,「Intel Centrino 2 Processor Technology」対応のIntel製グラフィックス機能統合型チップセット搭載ノートPCよりも3D性能が高い“ノートPC”を,低コストかつ低TDPで実現できるとのこと。また,ワンチップソリューション化によってマザーボード上の実装面積が小さくなった結果,マザーボードサイズ100×72mmのPico-ITXフォームファクタを用いた,超小型の「Media Console」としても使ったりすることも可能であるという。
pico-ITXフォームファクタを採用した,GeForce 9400M Gのリファレンスボード。まさに手のひらサイズだ
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今日(こんにち)的なPCに求められるだろう機能は一通り網羅しており,コストの低減と筐体の小型化,妥協のない性能を,さまざまな用途に合わせて手に入れられると,NVIDIAは強くアピールする
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Pico-ITXリファレンスPC(左)。DDR3 SO-DIMMと組み合わせることにより,超小型PCとして機能する。右はMedia Consoleの利用イメージだ。ざっくり言えば「各種制限を取り払ったNettop」といったところか
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ちなみに発表時点で,Ionプラットフォームを採用したPCのアナウンスはない。NVIDIAのアピールする内容が,どこまで現実のものになるかは,今後,どういったベンダーに採用されるか次第だろう。
Pico-ITXリファレンスPCの内部構造
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現実問題として,Netbookには
ディスプレイ解像度という制限があるため,GeForce 9400M Gをもってしてもゲームの互換性問題に出くわす可能性がある。しかし一方で,(超低価格,は無理にしても)“GeForce搭載の安価なノートPC”や“多機能版Nettop”が登場し,数万円程度の出費で,Webサービスとメール,そして最低限の3Dゲーム環境が整うとすれば,コストを重視するゲーマーにとっては面白いことになりそうだ。
個人的には,Pico-ITXマザーボードが安価に登場してこないかなあ,などとも思ったりしているが,いずれにせよ,「今からスタートしてIntelにキャッチアップできるのか」も含め,今後の動向を見守っていきたくなるプラットフォームである。