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「データカンパニー」を目指すIntelが,2017年の注力分野となるAIやIoT,5Gを解説
そのため,ゲーマーに直接関わるような話は皆無だったのだが,現在のIntelがどういう方向に注力しているのかを理解する参考として,セミナーの概要をレポートしたい。
データカンパニーを目指すIntelが注力する3つの分野
セミナーの最初に登場したのは,日本法人の代表取締役社長を務める江田麻季子氏だ。江田氏の講演テーマは,「さらなる成長にむけた戦略。〜データカンパニーに向けて〜」というもので,Intelが向かう今後の方向性について語った。
江田氏によると,2020年までに,平均的なネットユーザーが扱うデータ量は1.5GB/日,自動運転車では1台あたり4TB/日となり,クラウドベースのビデオ配信事業者にいたっては,750PB(ペタバイト,1PB=1024TB)/日ものデータを扱うことになるという。
つまり,こうした大量のデータが成長とイノベーション促進の原動力になるので,Intelはデータカンパニーを目指すのだという。
データカンパニーを目指すIntelが重点領域として狙うのは,「クラウド,AI,ネットワーク」と,いわゆるIoTビジネスの「データリッチなモノと機器」,そして,それらの間をつなぐ技術としての「メモリ,FPGA,5G」,以上の3分野だという。
「クラウド,AI,ネットワーク」は,Intelのプロセッサが広く使われているクラウドやデータセンター関連のビジネスに当たる。Intelは,CPUやチップセット,ネットワークチップなどの半導体を製造しているが,実際のビジネスでは,それらを使うPCの製造方法をデザインとして提供したり,データセンターの構築方法などについての研究結果などを広く提供したりといった分野もカバーする,幅広いものだ。
つまり,江田氏の言う「データカンパニー」とは,データを扱うビジネスに広く関わることで,結果的にIntel製品の普及や利用拡大を目指すということになる。
そんな「クラウド,AI,ネットワーク」に関して,江田氏がとくに時間を割いたのはAIについての話だ。この分野に向けてIntelは,多数のプロセッサコアを内蔵した「メニーコア」プロセッサ「Xeon Phi」(ジーオンファイ)を提供している。
当初のXeon Phiは,Xeonプロセッサなどのサーバー向けCPUと組み合わせてシステムを構築するものだったが,現在Xeon Phiは単独で動作できるものとなっている。ただ,現状のAI分野では,GPUを活用する事例が主流であり,IntelのプロセッサがAI分野で普及しているとは,必ずしも言いがたい。
そこで,今後はAI用途に向けて,さらなる高速化を目指すだけでなく,ソフトウェア面での投資も,積極的に行っていくという。たとえば2016年にはAI関連企業3社を買収しているわけだが,今後,さらなる投資を予定しているそうだ。また,2016年11月に米国で開催したAI関連の開発者向けイベント「Intel AI DAY」を,2017年4月6日に国内で開催するという。
話は変わるが,「メモリ」の話題で出てきた「Intel Optane Technology」(以下,Optane)についても,簡単に触れておこう。
Optaneとは,Intelが2016年に発表したストレージ技術のことで(関連記事),従来のフラッシュメモリとDRAMの中間に位置するメモリ技術「3D XPoint」(3Dクロスポイント)を使うものだ。速度が速く大容量であるため,メモリスロットに装着する「ストレージクラスメモリ」や,SSDとしての応用が期待されている。
3D XPointも,主な狙いはサーバー分野になるが,Intel 200シリーズチップセットがOptaneをサポートしているので,今後,ゲーマーが目にする機会もあるだろう。
小売業界向けのプラットフォーム「Intel Res pon si ve Re ta il Pl at form」
江田氏が取り上げた次なるテーマは,IoT(Internet of Things)だ。
IoTは,AIや次世代移動通信である「5G」との組合せや,クラウド連携などさまざま広がりを持つので,Intelも期待している分野とのこと。たとえば,ネットワーク接続カメラ250台に対してサーバーは1台必要といった具合に,IoT機器やスマートデバイス,自動運転車といったさまざま製品をサポートするには,大量のサーバーも必要となる。つまり,Intelから見れば,IoTのビジネスを伸ばすことで,必然的にサーバーやデータセンターといったクラウド関連ビジネスの伸びが期待できるわけだ。
小売業界に向けたIoTへの取り組みについて説明を担当したのは,IoTマーケット・デベロップメントディレクターを務める佐藤有紀子氏である。
佐藤氏が挙げた「Intelが実現しようとしているもの」を簡単に言えば,IoT技術を使って小売店店舗にIT技術を導入し,顧客管理や人的資本管理,在庫管理などを高度化するのだという。これによって,Web店舗との連携,顧客や商品動向の短時間での解析,新規サービスの創出などを可能にする。また,デジタルサイネージなどのデジタル広告との連携や,在庫管理や棚卸しの効率化なども可能になるそうだ。
RPPは,2017年1月に発表されたもので,現時点では,HPがRPPベースのシステムを提供しているそうだ。Intel自身がRPPに向けて提供する製品としては,RFIDリーダーの「Intel Responsive Retail Sensor」が挙げられていた。PCやソフトウェア,センサーなどにサードパーティ製品を組合せて,システムインテグレータやサービスプロバイダが販売を行うのだそうだ。
ちなみに,3月7日から10日までの日程で,東京ビッグサイトで行われる流通情報システム総合展示会「リテールテックJAPAN 2017」とセキュリティ・安全管理総合展「SECURITY SHOW JAPAN 207」に,Intelは関連の展示を出展するとのことである。
5G時代には通信の47%が機械同士の通信に
続いて登壇した通信デバイス事業本部グローバルワイヤレス営業本部日本担当ディレクターの庄納 崇氏は,Intelによる「5G」の取り組みについて説明した。
こうした通信の47%は,機械同士の通信となり,大量のデータを毎日生成することになる。たとえば,「高度にネットワーク化された工場『コネクテッド・ファクトリー』の場合,1日あたり1PBものデータを出力する」という予測を庄納氏は披露した。
そんな時代に備えてIntelは,5Gの基地局やネットワーク,クライアントと,多くの領域で関わろうとしている。各国で始まっている5Gの実験にも積極に参加しており,対応デバイスの開発を進めているそうだ。その1つとして庄納氏は,Intelが開発中の5G対応モデムチップ「Gold Ridge」(開発コードネーム)を紹介した。これは2017年1月のCES 2017に合わせて発表したもので,2017年の第2四半期にサンプル出荷が行われる予定のものだ。
ちなみに,5Gのように開発途上の規格に関するデバイスを開発するときには,ソフトウェアで動作を記述して短期間でハードウェア化できるFPGA(Field-Programmable Gate Array,プログラム可能なロジックLSI)が活躍するとのこと。これは,2017年2月に発表したFPGAベースの5Gテストプラットフォーム「5G End-to-End Trial Platform」のことだろう。
Intelは2015年にFPGAの大手であるAlteraを買収して以来,AlteraのFPGAを販売するだけでなく,機械学習分野でFPGAを活用するといった取り組みを進めている。5Gにおいても同様に,FPGAの活用を進めていくようだ。
セミナーの概要は以上のとおり。冒頭でも述べたように,ゲーマーにはまったく関係のない話題ではあるが,コンシューマ向けのCPUとは別のところでIntelが注力している分野がどのようなものか,なんとなく理解できたのではないかと思う。とくにデータセンターやIoT分野への取り組みは,我々の目に見えないところでの変革につながるものであり,遠くない将来の生活やビジネスを,ちょっと便利にしてくれるかもしれない。
Intel 日本語公式Webサイト
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