レビュー
ゲーマー向けスマートフォン「ROG Phone II」レビュー。順当な進化を遂げた第2世代モデルに
ASUS ROG Phone II
ROG Phone IIについては,2019年7月に台湾・台北で開かれたメディア向けイベントで概要が明らかとなり(関連記事1,関連記事2),2019年9月には世界市場向けの発表が行われ,国や地域によってはすでに販売も始まっている。そのため,日本での販売開始がいつになるか気になっていたという読者もいるだろう。今回,国内発売に先駆けてROG Phone II本体を検証する機会を得たので,前モデルである「ROG Phone」と比べて,何が変わったのかを中心にチェックしたい。
なお,今回評価できたのはROG Phone II本体だけで,別売りの合体型ゲームパッド「ROG Kunai Core Gamepad」や,2画面ゲーム機化する合体ドック「TwinView Dock II」などは触れていない。これら周辺機器を組み合わせての評価については,改めてレポートできればと思う。
縦方向に大きくなったボディ
ROG Phone IIは,ディスプレイに6.59インチサイズで,解像度が1080×2340ドットの有機ELパネルを採用したスマートフォンだ。6インチサイズのディスプレイを搭載する前モデルと比べると,横幅はそれほど変わらず縦長になったわけだが,それでもサイズはずいぶんと大きくなった印象を受ける。
ASUSは,ROG Phone IIを「横持ちで使用しやすいように設計した」と説明しており,たしかに横方向に持って両手で操作するのなら問題なさそうだ。ただ,縦持ちではディスプレイの端まで指が届きにくい。画面端にボタンを配置するゲームも多いので,片手がふさがった状態だと操作しにくい場面もあるだろう。
公称本体重量は,前モデルの約200gから約240gへ増加した。実際に手にするとズシッとした重みを感じる。
外観のデザインは,ROG Phoneからそれほど大きく変わらない。ただ,スピーカー部分にあるオレンジ色のラインと背面の通気孔が小さくなったことで,若干だが外連味が薄まったように思う。
一方の右側面には,「電源/スリープ」ボタンと音量調整ボタンに加えて,左右端にタッチセンサー「AirTriggers II」を備えている。これも初代ROG Phoneが採用していたものの改良版で,ゲームパッドのショルダーボタンのような感覚でゲームを操作できる。
最大リフレッシュレート120Hz表示に対応したディスプレイ
ROG Phone IIにおける見どころの1つがディスプレイだ。パネルサイズの大型化に加えて,最大リフレッシュレートが前モデルの90Hzから120Hzへと向上したのである。現状のスマートフォン向けゲームでは,60fps以上のフレームレートを実現可能なタイトルが少ないので,90Hzでも持て余し気味ではあるが,今後60fpsを超える可変フレームレートに対応したゲームが増えてきたときに,より滑らかで低遅延な映像でゲームをプレイできるのは利点と言えよう。要は,ゲーマー向け液晶ディスプレイが120Hzから144Hz表示対応へと進化したメリットと同じだと理解していい。
ASUSでは,ゲームだけでなく,たとえばWebブラウザの画面をスクロールしながらでも文字が見やすいといった,日常使いにおける体験でも効果があるとしているが,今回使っている中では,そこまで大きな違いは感じられなかった。
余談だが,ディスプレイ表面のカバーガラスは,少し指が引っかかるような感触があったので,フリックやスライドを多様する場合は,滑りやすい保護フィルムを選ぶといいだろう。
SMATCHの連打設定を,1秒間に20回として試したところ,途中で飽和することもなく,リニアにスコアを伸ばして,10秒間で200回という結果となった。速い連打が求められるゲームでも問題なく対処できるだろう。
また,ROG Phone IIでは,指紋認証センサーをディスプレイ直下に組み込んでいるところも改良点である。初代ROG Phoneでは,背面に指紋認証センサーを設置していたのだが,クーラーなどの周辺機器を取り付けた場合,とくに縦持ち状態ではセンサーに触れにくかった。ディスプレイ部分で指紋認証を行うことで,周辺機器を取り付けていても問題なく読み取れるようになったわけだ。
机などに置いた状態から端末を持ち上げなくてもロックを解除できるので,ディスプレイ内蔵指紋認証センサーの採用は,細かいが使い勝手に直結する変更と言えよう。
国内初のSnapdragon 855 Plus搭載機
ROG Phone IIでは,内部のスペックも大きく強化されている。とりわけ,
Snapdragon 855 Plusを搭載するスマートフォンは,世界市場においてはいくつか登場しているが,日本国内で販売する製品としてはROG Phone IIが初となる。
メモリ容量は12GBで,内蔵ストレージ容量は512GB,または1TBと,こちらもSoCに見劣りしないハイエンド構成となっている。スペックを表1にまとめておこう。
メーカー | ASUSTeK Computer |
---|---|
OS | Android 9.0(Pie) |
ディスプレイパネル | 6.59インチ有機EL, |
プロセッサ | Qualcomm製「Snapdragon 855 Plus」 ・CPUコア:Kryo 485(最大2.96GHz)×1 ・GPUコア:Adreno 640 ・モデム:Snapdragon X24 LTE |
メインメモリ容量 | 12GB |
ストレージ | 512GB,1TB(UFS 3.0対応) |
アウトカメラ | 2眼式,メイン:約4800万画素, |
インカメラ | 約2400万画素 |
対応LTEバンド | FDD-LTE:Band 1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/18/19/20/26/ TD-LTE:Band 34/38/39/40/41/46 |
対応3Gバンド | WCDMA:Band 1/2/3/4/5/6/8/19 |
無線LAN対応 | IEEE 802.11ad |
Bluetooth対応 | 5.0+LE |
待受時間 | 未公開 |
連続通話時間 | 未公開 |
バッテリー容量 | 6000mAh |
USBポート | USB 3.0 Type-C×1, |
公称本体サイズ | 77.6(W) |
公称本体重量 | 約240g |
本体カラー | ブラックグレイ,マットブラック |
Snapdragon 855 Plusの性能はどれほどか
文句なしのハイスペックを備えるROG Phone IIだが,その実力はいかほどだろう。ベンチマークアプリで性能を検証してみよう。今回は,比較対象として初代ROG Phoneと,Snapdragon 855を搭載した一般向けハイエンドスマートフォンである「ZenFone 6」を用意した。ROG Phone IIとROG Phoneでは,バックグラウンドアプリの使っていたメモリを解放してゲームに割り当てるゲーム向けの最適化モード「X mode」を有効にした状態でもテストを行っている。
まず総合テストである「AnTuTu Benchmark v8.0.4-OB」の結果から,
続いて,定番の3Dグラフィックスベンチマークアプリである「3DMark」から,Sling Shot Extremeテストの結果を見てみよう。グラフ2はOpenGL ES 3.1ベースのテスト結果を,グラフ3はVulkan APIベースのテスト結果をまとめたものだ。ここでもROG Phone IIの性能が際立っている。総合スコアにおいて,ROG Phone比で約1.3倍,ZenFone 6比で約1.1倍のスコアを叩き出しており,AnTuTu BenchmarkのGPUテストと同じ傾向が見えた。なお,3DMarkでもX Modeは,CPU性能を見るPhysics scoreでは有意なスコアの向上が確認できたものの,それ以外の総合スコアでは誤差レベルでX modeオフ状態に逆転されており,明確な効果は見られない。
ゲーム向け設定アプリは「Armoury Crate」に刷新
ハードウェア面に続いて,ソフトウェアでの改良点にも触れよう。ROG Phone IIでは,ゲーム向けの設定を「Armoury Crate」というユーティリティから行う。Armoury Crateには,「ゲームライブラリ」と「コンソール」という2つの項目があり,ゲームライブラリでは,ゲームタイトルごとにCPUの動作クロックや画面のリフレッシュレートを,個別に設定できる。
個別タイトルに対して設定可能なものとしては,まずタッチやスライドの感度調整がある |
横持ちしたときに手のひらが当たる領域のタップを無効化する設定も |
ディスプレイの設定では,アンチエイリアスのオン/オフと,リフレッシュレートの調整が行える。ただし,仮に120Hzで設定してもゲーム側で対応していない場合,リフレッシュレートはゲーム側の上限までとなる |
CPUクロックの上限値なども変更可能なほか,システムが許容する温度を変更して,発熱によるCPUの動作クロックの低下を防ぐ設定もある |
「通話優先モード」の設定では,ゲームをプレイ中に,マイクをゲームチャット側で使うか,電話アプリ側で使うかを決められる |
キャリアの通信網とWi-Fiとの切り替えを無効化したり,バックグラウンドで通信するアプリを設定することも可能だ |
一方のコンソールでは,ゲームライブラリのリストに表示するアプリの追加や,
設定関連の機能でもう1つ触れておきたいのが,ゲームの動作中に画面左端から中央へスワイプすることで呼び出せる「Game Genie」だ。これは,初代ROG PhoneやZenFone 6でも使える設定パネル的なもので,ROG Phone IIの場合,以下のようなゲーム向け機能をまとめて設定可能だ。
- 通知を制限
- 着信の拒否
- ディスプレイの輝度調整
- リアルタイム情報(CPUやGPUの使用率,システム温度,バッテリー残量を画面に表示)
- 最適化(メインメモリの解放)
- AirTriggers IIの設定
- マクロの設定
- タッチロックモード(一時的にタッチ操作を無効とする)
- YouTube LiveもしくはTwitchへのライブ配信
- プレイ中のゲームに関する動画やWebサイトを検索
この中で注目すべきは「AirTriggers IIの設定」だ。Armoury CrateとGame Genieのそれぞれに,AirTriggers IIの設定項目があって分かりにくいのだが,Armoury Crateでは,前述のとおり,AirTriggers IIの感度調整を行う。一方のGame Genieでは,AirTriggers IIに対するタップ位置の割り当てや,AirTriggers IIのオン/オフ,AirTriggers IIを押したときに画面のどこをタップするのかといった設定が可能なのだ。
また,ROG Phone IIの新機能として,AirTriggers IIを押し込む操作に加えて,画面上で指を横,または縦にスライドする操作を割り当てることが可能となっている。ただし,ただ,スライド操作はまだβ版ということもあってか,AirTriggers IIに触れる位置の調整が難しく,慣れが必要だと感じた。
ROG Phone IIでプレイフィールを検証
実際のゲームにおける動作の検証として,今回は「PUBG MOBILE」をプレイしてみた。
ROG Phone IIは,画質設定の「クオリティ」で「HDR」にしたときでも,「フレーム設定」で「極限」を選択できる。前モデルのROG Phoneでは,クオリティで一番低い設定の「スムース」にすると極限が選択可能になるが,HDRに設定するとフレーム設定では極限が表示されずに「ウルトラ」までしか選べない。
極限は最大60fps,ウルトラは最大40fpsの表示が可能なので,ROG Phone IIのほうが高いフレームレートでプレイできるということになる。
これに加えて,アンチエイリアスとシャドウを有効とし,さらに端末上でプレイ動画を録画する高負荷な状態でも,GameGenieのシステム情報では,ほぼ60fpsを維持できていた。GPUの負荷率は60〜80%程度で余裕があり,AeroActive Cooler IIを使わない状態にもかかわらず,システム温度は35℃程度に収まっていた。
また,ROG Phone IIはが内蔵する6000mAhのバッテリー容量も,効果を体感できた。HDRおよび極限という設定は,バッテリーの消費が激しいことで知られているが,1ゲーム(30分前後)でだいたい7〜8%ほどのバッテリー消費で済んでいたので,満充電状態からならバッテリー駆動時でも数時間はゲームをプレイ可能だと思われる。
順当な進化を果たした第2世代製品
ROG Phone IIは,初代のROG Phoneから,SoCやディスプレイといったハードウェアを中心に大きな強化を果たした。2019年に入って,Blackshark Technologiesの「Black Shark 2」が発売となるなど,日本でもゲーマー向けスマートフォンの選択肢が広がった。しかし,それらをしのぐROG Phone IIの高いスペックは,ゲーマーにとって大きな魅力となるだろう。
初代ROG Phoneでは,豊富な周辺機器を用意する点も特徴の1つだった。今回は機材が調達できなかったので触れていないが,ROG Phone IIでもそれは変わらない。高速無線LAN規格WiGig(IEEE 802.11ad)に対応したWireless HDMIアダプタ「ASUS WiGig Display Dock」や,据え置き型ドック「Mobile Desktop Dock」など,ROG Phoneと同時に登場した製品の一部はROG Phone IIでも利用可能だ。
一方で,本体に取り付けられるゲームパッド「ROG Kunai GamePad」や,2画面ゲーム機化する専用ドック「TwinView Dock II」といったROG Phone II専用の新製品もある。これらを利用した拡張性の高さもROG Phoneシリーズならではの見どころと言えようか。
本体サイズや重量など,普段使いをする端末としては気になる面もあるのだが,スマートフォン向けゲームを快適にプレイしたいのであれば,検討する価値のある製品と言えるだろう。
ASUSのROG Phone II製品情報ページ
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