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「ROG Swift PG27UQ」レビュー。4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る
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印刷2018/12/29 00:35

レビュー

4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る

ASUS ROG Swift PG27UQ

Text by 米田 聡


 ここ数年の間にゲームグラフィックスの画質を取り巻く状況は大きく変わってきている。120Hz超級の垂直最大リフレッシュレートがFPSやTPSゲーマーの間で定着しただけでなく,3840×2160ドットのいわゆる4Kが“市民権”を得,さらにはHDR(High Dynamic Range)対応のタイトルが登場したり,リアルタイムレイトレーシングや機械学習ベースのポストプロセスといったGPU側からの提案もなされたりと,さまざまな動きが同時多発的に生じているためだ。

 ただ,ディスプレイはそうそう頻繁に買い換えるものでもないので,新しいディスプレイの導入を考えているゲーマーにとっては少し悩ましい状況と言えるかもしれない。
 そんなタイミングでASUSTeK Computer(以下,ASUS)から国内発売になった「ROG Swift PG27UQ」(以下,PG27UQ)は,このうち120Hz超級の垂直最大リフレッシュレートと4K,HDRに対応し,さらにはNVIDIA独自のディスプレイ同期技術「G-SYNC」にも対応と,トレンドてんこ盛りの製品だ。

ROG Swift PG27UQ
メーカー:ASUSTeK Computer
実勢価格:25万8300〜27万4200円程度(※2018年12月29日現在)
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 税込の実勢価格は25万8300〜27万4200円程度(※2018年12月29日現在)と極めて高価だが,機能面において現状考えられるほぼすべてを満たした製品は,ゲーマーにとってどのような価値があるだろうか。検証結果をお伝えしたい。

「ROGブランドのゲーマー向けディスプレイ」らしい仕様のPG27UQ


 PG27UQのウリはなんといってもスペックだということで,まずはそのスペックを以下にまとめておこう。

●ROG Swift PG27UQの主なスペック
  • パネル:27インチ,IPS方式,ノングレア(非光沢)
  • バックライト:LED,フリッカーフリー
  • パネル解像度:3840×2160ドット
  • 最大垂直リフレッシュレート:144Hz
  • ディスプレイ同期技術:G-SYNC HDR対応
  • HDR対応:DisplayHDR 1000対応
  • 輝度(通常):1000cd/m2(最大),600cd/m2(通常)
  • 表示色:未公開
  • コントラスト比:50000:1(HDR),1000:1(通常)
  • 視野角:左右178度,上下178度
  • 中間調応答速度:4ms(gray-to-gray)
  • 内部フレーム遅延:未公開
  • ビデオ接続インタフェース:DisplayPort 1.4×1,HDMI 2.0×1
  • そのほかの接続インタフェース:3.5mmミニピンヘッドフォン出力×1
  • USBハブ機能:USB 3.0×3(アップストリーム×1,ダウンストリーム×2)
  • スピーカー:―
  • チルト(上下回転):−5〜+20度
  • スイーベル(左右回転):左右35度
  • ピボット(縦回転):右90度
  • 高さ調整:上下120mm
  • VESAマウント:100×100mm
  • 公称消費電力:180W(HDR有効時)
  • 公称本体サイズ:634(W)×268(D)×437〜557(H)mm
  • 公称本体重量:9.2kg
  • 主な付属品:DisplayPortケーブル,HDMIケーブル,USB 3.0ケーブル,ACアダプターなど
  • 保証期間:未公開

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「ROG Swift PG27UQ」レビュー。4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る
 一部は冒頭で紹介した内容の繰り返しになるが,PG27UQは27インチ,解像度3840×2160ドットで垂直最大リフレッシュレート144Hz対応,中間調(gray-to-gray)応答速度4msのIPS液晶パネルを搭載し,384分割したエリア単位で制御するLEDバックライトと組み合わせたディスプレイだ。
 エリア制御バックライトというのは,画面の中で暗い部分のLEDの輝度を落とし,明るい部分では逆に上げることでコントラストを引き上げる技術のこと。PQ27UQでは27インチの画面を384のエリアに分けてバックライトの輝度を制御するという。

 そのエリア制御バックライトと組み合わされる液晶パネルは量子ドット(Quantum Dots)技術を採用したものであるとASUSはアピールしているが,これは,量子ドット素材のフィルムシートをフィルタとして使うことにより,従来の液晶パネルと比べて優れた発色や光学特性をするとされるものになっている。

 もう1つ,PG27UQは「DisplayHDR 1000」に対応しているというのもトピックだ。
 DisplayHDR 1000はVESAが定義しているDisplayHDR規格仕様の1つで,対応する製品は,最大1000cd/m2の輝度を実現していることを示す。「HDR対応」と言っても最大400cd/m2の「DisplayHDR 400」や同600cd/m2の「DisplayHDR 600」対応に留まるディスプレイが多い中で,PG27UQがDisplayHDR 1000対応を果たしているのは重要なポイントだろう。

本体正面左下の額縁部にG-SYNC HDRのロゴマークがある
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 しかもPG27UQはそれに加え,NVIDIA独自のディスプレイ同期技術である「G-SYNC」にも対応している。NVIDIAはそれにわざわざ「G-SYNC HDR」というマーケティングネームを与えているのだが,G-SYNC HDRに「HDRにもG-SYNCにも対応している」以上の意味はとくにない(はずな)ので,その点は注意が必要だろう。

 そんなPG27UQだが,製品ボックスには2ピースに分かれた状態で梱包され,別途,ACアダプターも付属している。おそらく,4Kでバックライトのエリア駆動を行うことを考えると,電源部の本体内蔵は現実的な選択肢でなかったのだろう。実際,ACアダプターの出力は180Wと大きく,実測サイズも75(W)×165(D)×30(W)と立派な感じだった。

本体は2ピース構造。ケーブルはDisplayPortとHDMI,USB 3.1 Gen.1用が付属する
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外付けのACアダプターは本体背面側に置いてしまえば邪魔にならないだろうが,付属のACケーブルが実測約0.4mと短いので,取り回しには少々苦労するかもしれない
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 一般的な液晶ディスプレイ製品と同様に,パネル部が下を向いた状態で平らな場所へ置き,スタンドの根元に台座を取り付ければ組み立ては完了だ。台座は填め込んだうえで手回しビスを使って固定するだけなので,場所さえ確保できるなら,作業に難しいことは何もない。

台座をスタンドの根元に填め込んだうえで手回しビスを固定する。以上で組み立ては完了である
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台座部の赤色LEDを光らせた例
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製品ボックス付属のポーチにはROGマーク付きのLEDユニット用カバーと,模様の異なるもう1つのROGマーク,そしてマークなどを書ける透明のものが3枚付属する
 上の写真を見て,台座の根元に何やら基板があるのに気付いた読者もいると思うが,ここにはPG27UQが持つ特徴の1つでもある「机上照射型赤色LEDイルミネーション」とでも呼ぶべきLEDユニットが実装されている。

 面白いのは,製品ボックス付属のポーチにLEDユニット用カバーが付属しており,これを利用することで机上にマークや模様を表示できることだ。LEDユニット用カバーの中央にあるROGマーク部は変更できるようになっており,標準で取り付けられているもののほかに,LED透過量の異なるROGマークが1枚,透明のものが3枚,標準で付属する。ユーザーに絵心があるなら,好きなマークを机上に照射できるわけである。

LEDユニット用カバーは▲マークを合わせることで台座部へ簡単に取り付けられる(左)。右は実際に取り付けた例
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 机上照射型赤色LEDイルミネーションは,消灯を含む4段階でOSDメニューから輝度を調整可能だ。
 ちなみにLEDユニット用カバーはけっこうしっかり固定されるので,寝かした状態以外で着脱するのはけっこう大変だった。取り付けるかどうかは任意だが,取り付けるのであれば組み立てのタイミングで取り付けてしまったほうがいいだろう。

輝度を変更した例
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 これだけでもなかなか凝ったLEDイルミネーションだと言えるが,それだけではない。スタンド部にLEDプロジェクタが埋め込んであり,壁や天井にROGマークを浮かび上がらせることができるのだ。
 なお,こちらは机上照射型赤色LEDイルミネーションと異なり,照射できるのはROGマーク固定となる。

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LEDプロジェクタにより,本体の背面側にROGマークを照射できる
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写真左のスタンド部に赤い光が見えるが,ここにプロジェクタが埋め込んである
スタンド部のノブによってLEDプロジェクタの照射角度を調整できる
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本体背面の大きなROGマークはAura Sync対応だ
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 もう1つ,本体背面のROGマーク部はASUS独自のイルミネーション同期技術「Aura Sync」に対応している点も押さえておきたい。OSDメニューから「Aura Sync」を「オン」にすることで,PC上で動作するAura Sync設定ツールから一括で色や光り方の調整が行えるようになる。
 組み合わせるASUS製デバイスがとくにない場合は,OSDメニューの「Aura RGB」から,基本的な色や光り方を調整可能だ。

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OSDメニューからAura Syncを有効化すれば,本体背面のROGマーク部に埋め込んであるLEDの光り方をほかのAura Sync対応機器と同期できる
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Aura Syncを利用しない場合はAura RGBを選ぶ。この場合はサブメニューから光り方や色を指定できる仕様だ
Aura RGBの「Static」では赤,緑,青,シアン,マゼンタ,黄の6色から色を選択できるようになっていた
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ポート類は本体背面で下を向いている。写真左からACアダプター専用×1,HDMI 2.0 Type A×1,DisplayPort 1.2×1,USB 3.1 Gen.1 Type-B×1,USB 3.1 Gen.1 Type-A×2,ヘッドフォン出力用3.5mmミニピン×1で,カバーで覆うことができるようになっている
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I/Oインタフェース部にはゴム製カバーで覆ってある部分がある。写真はそれを開けたところだが,ここの端子はメンテナンス用で,エンドユーザーが使うためのものではない
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スタンドにはケーブルマネジメント用の穴が空いている
 Aura Syncの話が出てきたのでお伝えしておくと,Aura Syncの利用にはUSB 3.1 Gen.1 Type-B端子を用いてAura Sync対応PCと接続するのが必須となる。USB 3.1 Gen.1接続すると,2ポートのUSBハブも使えるので,基本的にはそのように接続しておいたほうがいいだろう。

 ビデオ入力インタフェースはDisplayPort 1.4×1,HDMI 2.0×1の2系統。4K解像度で垂直最大リフレッシュレート144Hz表示に対応できるのは前者のみで,後者では帯域幅の制限から60Hzまでとなる点に注意してほしい。
 なお,機能がウリのディスプレイとしてはインタフェースの数が極端に少ないと言わざるを得ない点も注意が必要だが,これはG-SYNC対応ディスプレイの宿命でもある。

 というわけで組み立てた状態のPG27UQだが,ここまでの写真でも分かるように,台座は3点で支えるタイプである。見た目からして安定感が気になると思うが,足先の設置面積が存外大きく,また重量も相応にあるため,(少なくとも平らな面に置く限り)安定感に問題は生じない。
 足の下にケーブルを挟むという意地悪な実験もしてみたが,その程度だと倒れることもなかったので,バランスはかなりちゃんとしているという理解でよさそうだ。

 気になる本体サイズは,4K対応ではあるものの,27インチクラスなので決して大きくはない。実測だと約640(W)×437〜555(H)mmといったところで,27インチクラスとしては一般的なサイズ感と言える。

公称で約120mmの高さ調整が可能。実測だとディスプレイ頂点の高さは机上から437〜555mmmだった
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 左右35度の左右回転(スイーベル)と下5度,上20度の上下回転(チルト),90度の縦回転(ピボット)のすべてをサポートするのは多機能モデルらしいところだ。縦回転時は本体の高さが机上から680mmに達する。

左右回転させてみた例
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上下回転の例(左,中央)と縦回転の例(右)。本文で触れた縦回転時の高さは写真の状態で計測したものになる
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 OSDメニューの操作系は本体正面向かって右側の背面にある。主要なOSD操作をスティックで行いつつ,いくつか機能系はボタンで呼び出すという仕様になっており,スティック操作は行いやすい一方,機能呼び出しボタンおよび電源ボタンは分かりにくい。一応,本体正面向かって右の額縁部に対応するアイコンはあるのだが,機能呼び出しボタンを押そうとして電源ボタンを間違えて押すというミスが多発した。せめて電源ボタンだけでも距離を離してくれればよかったのだが。

本体背面側のスティックと4ボタン。スティックの押し込みが決定,4ボタンの一番上がキャンセルとなっているので,基本操作はこれだけで行える。ここまでは非常によい。ただ,その下にある[GamePlus][GameVisual]ボタンまで使おうとすると,一番下の[電源]ボタンとの間で“誤爆”が頻発した
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背面側では排気孔の存在が目立つ
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 冷却系の話もしておきたい。
 公称消費電力180Wという仕様から推測はできると思うが,PG27UQは,最近の液晶ディスプレイとしては稼働時の発熱が大きいディスプレイである。

 そもそも4K解像度のディスプレイはドット密度が高いためバックライトの輝度を上げる必要があり,解像度が低いディスプレイより発熱が大きくなる。そこにDisplayHDR 1000対応の高輝度バックライト組み合わせてあるので,エリア駆動により発熱の低減を図っていても,発熱が一定レベルに達するのはやむを得ないところだろう。
 結果としてPG27UQの背面には多数の排気孔が空いているのだが,発熱に関しては少なからず覚悟しておく必要がありそうだ。


OSDメニューの設定はシンプル。ただ「4K&144Hz」の利用には注意が必要だ


ユーザーが明示的に垂直リフレッシュレート144Hzを有効化しない限り,PG27UQは120Hz駆動となる
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 続いては機能面をチェックしていこう。
 まずはPG27UQの目玉である「4K解像度で垂直最大リフレッシュレート144Hz」というところかだが,実のところ,PG27UQにおける垂直リフレッシュレート対応は基本的に最大120Hzで,OSDメニューの「Over Clocking」から「最大リフレッシュレート144Hz」を「オン」にしてメーカー保証付きの“クロックアップ”を行わないと144Hz動作はできないようになっている。

 また,注意が必要なのは,3840×2160ドット解像度で82Hzを超える垂直リフレッシュレートに対応できないグラフィックスカード(≒GPU)がある点だ。具体的にはピクセルフォーマットとしてYUV422をサポートしているグラフィックスカードを使わないと4K解像度のリフレッシュレートの上限が82Hzまでになる。

 通常,グラフィックスカードからディスプレイに送信されるピクセルフォーマットはRGB444と呼ばれる形式だ。RGB444は「4つのピクセルに対してR,G,Bそれぞれの情報を4つずつ持つ」という意味で,欠落する情報がないフォーマットである。
 一方のYUV422は,4つのピクセルに対して4つの輝度情報「Y」と青から輝度を差し引いた色差情報「U」を2つ,赤から輝度を差し引いた色差情報「V」を2つ持つフォーマットだ。輝度情報はピクセルの数だけ持っているが,色の情報は4つピクセルに対して2つしか持っていない。

 人間の視覚は輝度の変化に対しては敏感だが色の変化に対しては敏感ではないという特性があるので,データ量を減らしたい動画などでYUV422のようなピクセルフォーマットが用いられてきた。4K解像度で82Hzを超えるリフレッシュレートだとDisplay Port 1.4の帯域幅でもRGB444を使うと不足してしまうため,4K解像度で82Hzを超えるリフレッシュレートを設定したときにはデータ量が少ないYUV422のピクセルフォーマット使わねばならないのである。

 残念ながら,GPUを手がけるNVIDIA,AMD,Intelの3社はいずれも「ディスプレイ出力でサポートするピクセルフォーマットがまとまった資料」を出していないのだが,少なくともグラフィックスカードレベルで4K出力時に120Hz超級の垂直リフレッシュレートに対応するものならYUV422にも対応していると考えていい。
 ただ,Radeonだと「『Radeon Settings』から明示的にピクセルフォーマットを切り替えれば対応できる」などいった情報もあったりするので,ここは各自調べる必要があるだろう。

 今回テストに用いたのは「GeForce GTX 1080 Founders Edition」だが,本製品は公式にYUV422をサポートするので問題なく利用可能だ。本カードの場合,デスクトップ解像度を3840×2160ドットへ指定した状態で垂直リフレッシュレートを120Hzなど82Hz超級のものへ変更すると自動的にピクセルフォーマットをYUV422へ切り替えてくれるので,手動による設定も不要だった。

 ところで,注意という点ではもう1つ,これまたPG27UQの目玉であるHDR関連のものがある。というのも,Windows側でHDRを有効にしているときとそうでないときとで,OSDメニューにおける色関連の項目が変わるからだ。
 PG27UQのOSDメニューでは,「色」から色関連の設定を行えるのだが,Windows側のHDRが無効なときの設定項目は以下のとおりとなる。

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HDR無効時の「色」。明るさとコントラストは1〜100の100段階で調節できる
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「カラー」は「通常」「冷たい」「暖かい」という3つのプリセットモードと,RGB各要素を100段階で調節できるユーザーモードの4通りから選択可能
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「ガンマ」値は1.8/2.0/2.2/2.4/2.6の5段階から選択できる。標準は2.2だった

 一方,Windows側でHDRを有効化すると,「色」が下のように変化する。コントラストとカラーの設定はHDR無効時と同じだが,コントラストと明るさの設定がなくなり代わりに「参照ホワイト(ニト)」の設定に変わる仕様だ。

HDRを有効にすると「色」以下は「参照ホワイト(ニト)」「コントラスト」「カラー」の3つに切り替わる
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 参照ホワイト(ニト)というのは100cd/m2の明るさになる信号をディスプレイに入力したとき,それをディスプレイパネル上においてどれくらいの明るさで表示するかの設定だ。
 「cd/m2」(カンデラ/平方メートル)はnit(ニト)とも表記するため,OSDメニュー上では単位の見方として「(ニト)」と括弧書きしてあるわけである。

本体上面中央の外光センサー。PG27UQはこれで周囲の明るさを常時検出している
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 ただし,話はそう単純でもない。というのも,ここまであえて触れてこなかったが,PG27UQは本体上面部に外光センサーを搭載しており,このセンサーで検出する周囲の明るさに応じて自動的に画面の明るさを変える仕様になっていて,しかもユーザーが明示的にこの機能を無効化することができないからだ。
 この点については後段でテスト結果をお伝えしたい。

 以上がとくに気を付けるべき部分だが,そのほかOSDメニューにある設定項目も確認しておこう。
 OSDメニューにある「画像」ではオーバードライブやバックライトの設定が可能だ。

「画像」ではオーバードライブ機能や暗い部分の視認性を高める機能,LEDバックライトの調整機能などを利用できる
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 OSDメニュー上で「OD」という表記になっているオーバードライブは,液晶パネルの駆動信号を最適化して液晶の応答を速める機能だ。PG27UQでは「最大」「通常」「オフ」の3段階から指定できる。
 「ダークブースト」はガンマ曲線を変えて暗部を浮かび上がらせる設定だ。ゲーマー向けディスプレイによくある「暗いところにいる敵を見つけやすくする設定」と言っていいが,PG27UQのダークブーストはガンマ曲線を変えるだけの単純なものだった。選択肢は「なし」「レベル1」「レベル2」「レベル3」の4つとなっている。

「可変バックライト」の設定はLEDバックライトのエリア駆動速度を調整する項目だ。HDR有効時はセンサーによる自動調整となるので,当然,カスタマイズはできなくなる
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 少し分かりにくいのはPG27UQ特有の機能を調整する「可変バックライト」で,これは,エリア駆動するLEDバックライトにおける明るさ切り替えの応答速度を設定する項目だ。選択肢は「高速」「中」「ゆっくり」「オフ」の4つで,「オフ」にするとエリア駆動なしとなり,一般的なLEDバックライトと同じ挙動になる。
 ここまでの説明で,先ほど紹介したHDRの話と矛盾するのではと思った読者は鋭い。実のところ「可変バックライト」を指定できるのはWindows側のHDR設定が無効のときのみだ。有効化するとグレーアウトして設定できなくなる。

 「自動黒レベル」は黒の明るさを自動で調節してくれる機能で,選択肢は「オン」「オフ」の2つ。「アスペクトコントロール」は「1:1」「アスペクト」「フル画面」の3つが選択できる。
 「1:1」はドットバイドット表示,「アスペクト」はスペクト比16:9または4:3の固定表示,「フル画面」は入力に関わらず全画面表示となる。


HDR有効時における画面のダイナミックレンジには謎が多い


 以上,基本的な説明が長くなったが,テストに入っていこう。
 まずはPG27UQの大きな特徴にして,4Gamerでテストするのが初となるHDR対応からだ。今回は初の試みとして,台湾TES Electrical Electronic製の輝度計「TES-137」を用い,画面の明るさを測定してみることにした。

HDR Image ViewerはMicrosoft Storeから入手可能
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 測定にあたっては,Microsoft Storeから入手できるアプリ「HDR Image Viewer」を使って,PQカーブの理論値に基づいて0.5cd/m2から1000cd/m2で表示するように調整した灰色の四角を画面中央に表示する。そしてその輝度を計測するという流れだ。
 高輝度の表示時に,ディスプレイが高輝度部の面積に応じて輝度を下げてしまう製品の存在も知られているが,今回の四角形はそういったことが起こりにくい面積に調整してある。

というわけでこちらがHDR Image Viewerだ。HDR画像を表示できるWindowsストアアプリである
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テストに集中していたらテストの環境撮影を完全に忘れてしまったので,PG27UQの返却後,担当編集にイメージカットを追加撮影してもらった。ここで撮影に使っているのはHDR対応ディスプレイではないが,テストはこんな感じで,ディスプレイパネル部を真上に向けて置き,その上に輝度センサーを設置して行っている
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 前段で述べたとおり,PG27UQだと,HDRの有効時には外光センサーが周囲の明るさを検出し続けており,それに応じて画面の明るさを自動的に調整する仕様になっている。
 そこで今回は,PG27UQのパネル部分をスタンドから外して段ボール箱の上に水平を取りながら載せ,さらに室内の照明を最も明るい状態にしたうえで輝度計をディスプレイパネルの上において計測するという手法を採った。
 こうすることで,バックライトの明るさが意図せず変わってしまうということがなくなり,安定した測定を行える。というか,こうしないと輝度の測定値が安定しなかった。

 さて,下に示したグラフ1は,いま述べたテスト環境で,「参照ホワイト(ニト)」を設定できる最小の30nitに設定したときと,50nitに設定したときの輝度データをまとめたものになる。工場出荷時設定は80nitなのだが,これでは明らかに「明るすぎ」で,(後述するテストを見てもらうと分かるように)参考になるテスト結果が得られなかったため,いろいろ試して後者を最終的に50nitまで落とした次第だ。
 グラフの縦軸は測定器で調べた輝度,横軸はHDR image Viewerで表示した画像の明るさである。

 「参照ホワイト(ニト)」を最小の30nitとした場合,全体的に画面は暗いが,HDR Image Viewer上の設定値1000cd/m2まで輝度の直線性が得られている。設定値100cd/m2における測定値は42.38cd/m2なので,設定した「参照ホワイト(ニト)」の値より大きい値になっているわけだが,これは画面を上に向けた状態で照明を明るくしているので,PG27UQの外光センサーが周囲の明るさ判断して輝度を引き上げているためかもしれない。
 とはいえ前述のとおり,こうしないと安定的に輝度を計測することができないのでご容赦を。

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 一方,「参照ホワイト(ニト)」を工場出荷時設定である50nitに設定すると,HDR Image Viewer上の設定値500cd/m2で輝度計による測定値が1000cd/m2を超えてしまい,輝度が頭打ちになってしまった。設定値100cd/m2における測定値の時点で237.3cd/m2と2倍以上の輝度になっているので,設定値500cd/m2で測定値が1000cd/m2を超えて飽和してしまうのも納得といったところだ。

 1000cd/m2を超えたところで頭打ちになるのはDisplayHDR 1000を満たすディスプレイの動作として正しいのだが,「参照ホワイト(ニト)」が50nitでこうなるのはやや不思議だ。「参照ホワイト(ニト)」を100nitに設定したときに,1000cd/m2の明るさになる画像を表示するとディスプレイパネル上の画像の明るさも1000cd/m2になれば理にかなっていると思うのだが,そうはなっていないのである。
 原因として考えられるのは外光センサーで周囲の明るさに応じて画面の明るさも変えるというPG27UQの仕様ではないかと思うが,断言まではできない。

 で,以上の結果から何を見るかだが,「参照ホワイト(ニト)」を最小値である30nitにした場合の輝度実測値がリニアに上がっていることから,入力に対する輝度のリニアリティ(直線性)は良さそうだと言える。
 また,参照ホワイトを50nitにしたときに最大輝度として1000cd/m2を測定したため,DisplayHDR 1000の仕様をしっかり満たしていることも断言できる。1000cd/m2までのダイナミックレンジは確保できているわけだ。
 参照ホワイトの設定値と実測値の間の齟齬が気になるが,これは外光センサーの挙動によるものと筆者は推測している。

 1000cd/m2までのダイナミックレンジを実現できている理由の1つがエリア駆動のバックライトであることは間違いないだろう。ただ,そのエリア駆動バックライトの挙動には気になる点があったこともお伝えしておきたい。

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 再現性に難があるので実例を掲載することができないのだが,Windowsデスクトップやゲームの一部とバックライトのエリア駆動は,実のところ相性があまりよろしくない。
 たとえば,Windowsデスクトップ上でウインドウをドラッグ&ドロップで動かすと,「ウインドウがいなくなったエリア」がまれに明滅することがあった。おそらくは,ウインドウを動かしたことによる輝度の変化に対応するために,そのエリアのバックライトの明るさを変える動作が安定しないときがあるのだろう。必ず生じるわけではないというのが厄介なのだが,発生するとかなり気になった。

 また,ゲームで画面の一部が激しく点滅するような映像が表示されると,点滅が終わったあとも,バックライトの点滅がしばらくの間止まらないという問題もあった。ややバグっぽい挙動ではあるのだが,点滅による輝度の上下動に合わせてバックライトを明滅させる動作が画面の変化が終わったあとも多少続いてしまうのだろう。

 画面に動きがあれば目立たないが,画面に動きがないのにバックライトが点滅するとかなり気になる。また,この動作も必ず起こるわけではないので,発生するとますます気になるといったところだ。

 繰り返すが,HDRを有効したときには可変バックライトの設定変更を行えないので,こうした不規則なバックライトの動作も抑制したりといったことができない。なので,少なくともWindowsのデスクトップで使うときや,HDR非対応のゲームを使うときは面倒でもHDRを無効化しておいたほうが無難だろうと思う。HDR対応ゲームタイトルやUltra HD Blu-rayといったコンテンツを利用するときだけ有効化するのが,少なくとも現時点では正しい使い方ということになるはずだ。


4K解像度対応かつHDR対応だけに表示遅延は大きめ


 続いては,垂直リフレッシュレート144Hzというスペックから期待されるディスプレイ表示遅延測定結果である。

 4Gamerではディスプレイデバイスの表示および操作遅延を測定するために「4Gamer Input and Display Latency Checker」というシステムを構築している。その概要は2017年12月28日掲載の記事を参考にしてほしいが,簡単に言えば,「マウスクリックからディスプレイに変化が現れるまで」の時間を1ms未満の精度で計測できるシステムである。

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 テストでは,4Gamer Input and Display Latency Checkerと,マウスクリックを検出して画面中央に白い四角を描く筆者自作のWindows用ツール「Display Latency Tester」を組み合わせ,「マウスクリックから白い四角がが枯れるまでの時間」を1ターン100回計測し,測定された時間を頻度解析する。
 ここで得られるデータはPC内部の操作遅延など表示遅延以外の遅延を含むが,4Gamerのリファレンス機であるBenQ ZOWIE製ディスプレイ「XL2430T」と測定値を比較することで,「XL2430Tよりも表示遅延が速い/遅い」といった判断が可能になる。

 リファレンス機であるXL2430Tでは,「画像モード」を「FPS1」としたうえで,「インスタントモード」を有効化し,かつ「AMA」を「プレミアム」とした。XL2430Tで表示遅延が最も小さくなると期待できる設定だ。
 対して本稿の主役,PG27UQにはいわゆるスルーモードにあたる設定がない。そのため,液晶パネルの応答速度を速めるオーバードライブの設定を「最大」にして測定を行うことにした。

 テスト結果を順に見ていこう。グラフ2,3は垂直リフレッシュレートを144Hzに指定したときの測定結果だ。縦軸は測定された頻度,横軸は測定された時間を示す。最も測定頻度の高い遅延が,当該テスト対象における典型的な表示遅延と考えてもらって構わない。
 グラフは前者がVsync無効時,後者が有効時のものだが,Vsync無効時にPG27UQはXL2430Tより約12ms遅く,さらにHDRを有効化するとさらに8〜12ms程度遅れるのが分かる。垂直リフレッシュレート144Hzにおける1フレームや約7msだから,HDR無効時でPG27UQはXL2430Tより1〜2フレーム遅く,HDRを有効にするとさらに1〜2フレーム遅くなるという理解でいいかと思う。

 Vsyncを有効化するとXL2430TとPG27UQのスコア差はさらに大きくなる。XL2420Tだとマウスクリックから最短8ms,遅くとも14msで表示になっているが,PG27UQだとHDR無効でも最大26msなので,ざっくり2フレームは置いて行かれていると見ることができる。
 また面白いのは,PG27UQのVsync有効時だと,HDRの無効/有効間でピークの遅延時間が変わらない点だ。つまり,HDR以前に,PG27UQの内部遅延によって表示遅延が頭打ちになってしまっていると見ていい。

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 グラフ4,5は垂直リフレッシュレート120Hz設定時における測定データだ。
 Vsyncを無効化したときのテスト結果となるグラフ4だと,PG27UQのHDR無効は34msにピークがあり,HDR有効だと38ms〜48msにピークが広がっている。対するXL2430Tのピークは20〜26msだ。HDRが無効なPG27UQはXL2430Tより8〜14ms,つまり1〜2フレーム遅く,HDRを有効にするとさらに4〜14ms遅れるわけである。

 一方,グラフ5を見ると,Vsync有効時のPG27UQはHDR無効で32〜34msにピークがあり,HDRを有効化すると42msがピークとなった。XL2430Tは18msと26msにピークがあるので,HDR無効の状態でXL2430Tより1フレーム程度遅く,HDRを有効にするとさらに1フレーム遅れるといった結果だ。

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 次にグラフ6,7は,垂直リフレッシュレート60Hz設定時における測定結果だ。
 Vsyncを無効時だと,HDRが無効なPG27UQは50msに,HDRを有効化すると66msにピークが出ている。XL2430Tは20msに測定のピークが出ているので,PG27UQはHDRを無効化した状態でXL2430Tより1〜2フレーム遅く,HDRを有効にするとさらに1フレーム遅れるという格好である。

 Vsync有効時の結果は非常に分かりやすい。PG27UQではHDRを無効化した状態だとピークが50msに,HDRを有効にすると66msにピークがそれぞれ集中している。XL2430Tは34msにピークが出ているので,PG27UQのHDR無効時はXL2430Tよりも1フレーム遅く,HDRを有効にするとさらに1フレーム遅れるという,ある意味できれいな結果だ。

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 以上のテスト結果から,PG27UQの表示遅延は垂直リフレッシュレート120Hzで頭打ちになり,また,FPS用途に特化した高速なゲーマー向けモデルと比べるとHDRを無効化した状態であっても表示遅延は1〜2フレーム大きいことが分かる。そして,HDRを有効化するとさらに1フレーム遅れる。
 HDRが有効になると,エリア制御型のバックライト駆動を行うためにフレームの表示内容を解析しなければならないので,そのために1フレームの遅れが生じるのはやむを得ないところか。

 なお,PG27UQはG-SYNCにも対応することから,Vsync有効時(≒G-SYNC無効時)とG-SYNC有効時の遅延時間も測定してみたが,結論から先に言ってしまうと,両者で遅延時間の違いはなかった。
 テストに使ったツールの問題なのか,あるいはG-SYNCはこういうものなのかは何とも言えないのだが,G-SYNCがその原理上,Vsync無効時よりも遅くなることは間違いない。なので,PG27UQにおけるVsync無効時と有効時の違いを考えると,G-SYNC有効時のスコアがVsync有効時と揃ってもそれほどおかしくはないように思う。

 ともあれ参考としてグラフ8〜13を並べておくので,眺めてみてほしい。

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オーバードライブはHDR有効時に顕著な違いが現れる


 PG27UQが採用する液晶パネルは前述のとおりIPS型だ。IPS型だけに発色,視野角はともに良好。斜めから見るとやや白っぽく見えるが,これはノングレア加工された表面の影響で,角度による色の変化はほとんど気にならないレベルである。

視野角は極めて広い。斜めから見ると写真でもやや白かかっているが,これはノングレア表面加工の影響である
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 そんな発色に優れた液晶パネルの応答速度を高めているのが,前出のオーバードライブ機能というわけだが,実際のところはどうか。
 4Gamerではオーバードライブの効き方を,「画面のリフレッシュに合わせて点滅する白い四角」を描く自作ツールを実行し,それを光学センサーで検出したうえで,光学センサーの出力をRigol Technologies製のオシロスコープ「DS1054Z」で測定することで調べている。
 オーバードライブ機能は「オフ」「通常」「最大」の3段階から指定できるので,それぞれの違いをオシロスコープの測定画像で見ていくことにしたい。

 前段とは異なり,ここでは垂直リフレッシュレート60Hz時のスコアから見ていくことにしよう。下に示したのはそのテスト結果で,上から順にオーバードライブ「オフ」「通常」「最大」となる。

HDR有効,垂直リフレッシュレート120Hz時のテスト結果一覧
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 非常に面白いのは,オーバードライブを無効化したとき,波形の立ち上がりにコブのようなものが現れる点だ。はっきりとは断言できないのだが,これはエリア駆動するLEDバックライトの輝度変化が現れているのではないかと筆者は考えている。
 オーバードライブを「通常」や「最大」にするとコブは見られなくなるので,オーバードライブの設定を有効にすることでLEDバックライトの駆動が内部的に変わっている可能性もありそうである。

 また,オーバードライブ「通常」と「最大」を比べると,波形の立ち上がりにおける“肩”の部分の角度が変わっていることも見て取れると思う。
 「通常」よりも「最大」のほうが“肩”は高いため,オーバードライブ「最大」化によって波形の立ち上がりが速くなっていることが分かる。

 お次は垂直リフレッシュレート120Hzの結果である。
 ここでは,オーバードライブ「オフ」と「通常」で波形のピーク値が変わる。前者のスクリーンショットを見ると,画面下にある「Max」の値が3.45Vになっているが,これはオシロスコープに接続している光学センサーが出力しているピークの電圧で,輝度とほぼ比例していると考えていい。

 一方,「通常」だと4.17Vにまでピーク値が上がる。つまり画面が白くなっているときの輝度が高くなっているわけで,ここから,オーバードライブを通常に切り替えるとピーク時の輝度が上がることが分かる。
 ただ,「通常」と「最大」との間で違いはほとんどない。ここでは,前者でも十分な効果が得られているようだ。

HDR有効,垂直リフレッシュレート120Hz時のテスト結果一覧
画像集 No.067のサムネイル画像 / 「ROG Swift PG27UQ」レビュー。4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る
画像集 No.068のサムネイル画像 / 「ROG Swift PG27UQ」レビュー。4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る
画像集 No.069のサムネイル画像 / 「ROG Swift PG27UQ」レビュー。4K 144HzのG-SYNC HDRディスプレイという「いま買える未来」の価値を探る

 最後は垂直リフレッシュレート144Hzにおけるテスト結果だが,下に並べたスクリーンショットを見ると,オーバードライブ無効時と有効時でピーク値が変わるのを見てとれよう。
 オーバードライブ「オフ」だとピーク値は3.74Vだが,「通常」では4.46Vまで上がる。ただ,4.46Vというのはオシロスコープに接続している光学センサーの上限電圧で,そのために波形が平らになってしまった。つまり,画面の明るさが光学センサーの上限を超えたことになる。

HDR有効,垂直リフレッシュレート144Hz時のテスト結果一覧
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 垂直リフレッシュレート120Hzのときと比べて測定されたピーク時の電圧が高いということから,「画面が白くなったときの輝度が高くなっている」と判断できる。よって,リフレッシュレート144Hzのオーバードライブ有効時にPG27UQはエリア駆動バックライトの輝度を引き上げている可能性が高いということになるだろう。

 なお,オーバードライブ「通常」と「最大」の間で違いがとくに見られないのは垂直リフレッシュレート120Hz時と同様だが,前述のようにオシロスコープに接続している光学センサーの測定上限を超えてしまっているので,ピーク値が変わっている可能性は否定できない。

 ……というわけで,HDR有効時で比較したとき,オーバードライブの有効無効で明らかに違いが出ているのは面白い。そしてこのことからは,PG27UQが,オーバードライブの無効/有効でエリア駆動バックライトの輝度を変えているであろうことも言える。
 PG27UQのオーバードライブ機能はエリア駆動バックライトとパネル駆動法との合わせ技で実現しているという理解でよさそうだ。

 ただ,これは「HDRを無効化した場合,オーバードライブの無効/有効で違いがほとんどなくなってしまう」のと同義でもある。参考までに垂直リフレッシュレート144Hz時の測定結果を下に示しておくが,オーバードライブの3設定で波形に違いが生じておらず,またピーク時の電圧にも違いがないのを確認できると思う。

HDR無効,垂直リフレッシュレート144Hz時のテスト結果一覧
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まだ「万人向け」とは言えない4K G-SYNC HDRディスプレイ。PG27UQはあくまでもこのスペックが欲しい人向け


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 今回も長くなってしまったが,4K,HDR,G-SYNCというキーワードてんこ盛りのディスプレイであるPG27UQを見てきた。
 テストだけでなく,実際にゲームでも使ったうえでの正直な感想は,「エリア駆動バックライトを使ったDisplayHDR 1000対応は発展途上」といったところだ。エリア駆動型のLEDバックライトはWindowsのデスクトップや一部ゲームタイトルとの相性問題があり,落ち着いて使えるレベルにはない。不規則に顕れるバックライトの不規則な明滅はとても気になるので,これが何とかならないと,HDRの有効性についてはとても評価できないのである。

 ゲームで重要な表示遅延は,FPSやTPSに特化した高速モデルと比べるとHDR無効時で1〜2フレームほど遅い。また,垂直リフレッシュレート144Hz設定は,垂直リフレッシュレート120Hzに対して遅延を短縮する効果がなく,あくまでも「対応してみた」レベルに留まるようだ。
 なのでPG27UQは高速なディスプレイとは言えないが,本機のスペックを考慮するに最高速クラスの製品と比べて1から2フレーム程度の遅れなら,許容範囲と言ってもいい。少なくとも,垂直リフレッシュレート120Hzで使えば,垂直リフレッシュレート60Hz止まりのHDR対応ディスプレイと比べて表示遅延は確実に小さい。この点は評価していいはずだ。

 G-SYNC対応は残念ながらVsync有効と遅延において有意な差が見られなかったものの,ゲームのフレームレートがリフレッシュレートを下回るケースではVsync有効より操作遅延が原理的に小さくなる可能性はある。4K解像度だとフレームレートがリフレッシュレートを下回っていることが多いはずなので,操作遅延という点では意味があるかもしれない。
 今回は時間の都合で,実ゲームベースでの遅延テストまでは行えていないが,いずれ機会があれば試してみたいところである。

 というわけで,全体的に見るとまだ一般のゲーマーにおすすめするには微妙という評価になってしまうが,測定機による輝度の測定の結果からDisplayHDR 1000対応というスペックに偽りはなく,リフレッシュレート120HzやG-SYNCにもしっかりと対応している。なので,このスペックが欲しいという場合に,PG27UQはその期待にきっちり応えてくれるのも間違いない。

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 一般のゲーマーにとっては,DisplayHDR 1000対応かつ垂直リフレッシュレート120Hz超級となるディスプレイの完成度がさらに上がり,同時に低価格化が進むことを期待しつつ,今後のディスプレイやグラフィックスの動向に注目しておくといい,といったあたりが今回のまとめになりそうだ。

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ASUSのPG27UQ製品情報ページ

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