レビュー
ブースト最大クロック2GHz超級の「ROG STRIX」なGTX 1080カード,その速さに迫る
R.O.G. STRIX-GTX1080-O8G-GAMING
ROG STRIXブランドの製品は,R.O.G.ブランドのファンよりも若い世代や,初心者に近い層をターゲットにしているとのことだが,それはカードの特徴から感じ取ることができるだろうか。しっかり確認してみたい。
流行の「3つの動作モード」を採用。メーカー保証付きでブースト最大クロック2GHz超を達成
- OC Mode:ベース1784MHz,ブースト1936MHz
- Gaming mode:ベース1759MHz,ブースト1898MHz
- Silent mode:ベース1721MHz,ブースト1860MHz
工場出荷時設定はGaming modeで,その動作クロックはリファレンスのベース1067MHz,ブースト1733MHzよりざっくり1割高い。OC modeはそんなGaming modeと比べてさらに,ベースクロックが25MHz,ブーストクロックが38MHz,それぞれ高い設定となり,逆にSilent modeは,Gaming modeよりベースクロック,ブーストクロックともに38MHz低い設定となる。
メモリクロックはどのモードも10GHz相当(実クロック約1251MHz)と,リファレンスから変わっていない。
なお,動作モードの切り換えは,今その名を挙げたGPU Tweak IIから行う。今回はバージョン1.3.2.2で試したが,GPU Tweak IIの「Home」から各モードのボタンをクリックするだけで動作モードの選択が可能だ。
ちなみにProfessional Modeでは,ブーストクロックを1MHz刻みで1733MHz〜2068MHzの範囲,メモリクロックを1MHz刻みで9009MHz相当〜11011MHz相当の範囲で設定できる。また,設定内容はそのまま使うほか,[Apply]ボタンを押すことで,追加の動作モードとして保存することも可能だ。追加の動作モードは,標準だと「User1 Mode」という名称だが,これは変更可能で,登録すると,GPU Tweak IIのメインメニューから,プリセットの3モードと同じように選択できるようになる。
また,メインメニューにある「0dB Fan」スライダーは,「OFF」を選ぶことで,GPUへの負荷が低いアイドル時にファンの回転を停止させる「0dB Fan Technology」を無効化し,ファンが常時回転し続けるようにも設定できる。工場出荷時の設定は有効だ。
正直,GTX 1080を搭載するようなハイクラスのゲームPC(や自作PC)でGame Boosterにどの程度の効果があるかは疑問というか,実際に試しても効果は体感できなかったのだが,こういう機能があることは押さえておいてもいいだろう。
GPU Tweak IIに統合してほしい気もするが,こちらがAURAアプリケーション |
カード背面側のロゴ。ここもファン側と同じ色で光る |
LEDイルミネーションはファンの周辺にある線状の装飾部とクーラー側面部および背面部のR.O.G.ロゴだが,個別の設定は行えないので,その点は注意してほしい。
ちなみに色は約1677万通りから選択可能。光り方は常時点灯の「Static」,明滅を繰り返す「Breathing」,点滅する「Strobing」,順に色が変わっていく「Color cycle」のほか,「Special Effects」にチェックを入れれば流す音楽によって点滅する「Music」や,GPUの温度を色で通知する「GPU Temperature」も選択可能だ。
Founders Editionより長い,約30cmのカード長。電源部は8+2フェーズ構成へ強化
端的に述べてSTRIX GTX 1080は大きい |
補助電源コネクタは8ピン+6ピンという仕様だ |
そのカード長は実測で約298mm(※突起部除く)で,GTX 1080 Founders Editionの同267mmと比べると,30mm強長い計算になる。基板自体も285mmとFounders Editionより長く,そこからさらに,カード後方へ向かって,3連ファン仕様のGPUクーラー「DirectCU III」がはみ出た格好だ。
また,マザーボードに差したときの垂直方向に,ブラケットから実測約24mmせり出しているのも目を引くが,補助電源コネクタの部分だけはFounders Edition相当のところまで凹んでいるので,この方向の大きさが問題となることは(筐体内の余裕が極端に少ない超小型PCケースを別にすれば)そうそうないのではなかろうか。
その補助電源コネクタは,8ピン+6ピンという構成。Founders Editionが8ピン×1という実装だったので,6ピン1つ分の強化となる。
STRIX GTX 980 TiのDirectCU IIIだと,10mm径のヒートパイプを2本採用するのがウリで,その太さを誇示するかのようにクーラーの側面をヒートパイプが走る構造だったのが,今回のSTRIX GTX 1080だとそういうことはなく,外観はすっきりしたものになっている。
GPUクーラーを取り外したところ |
ヒートパイプは8mm径が4本,6mm径が1本。これらがGPUダイに直接触れる仕様となる |
ヒートパイプの本数は5本で,は8mm径が4本に6mm径が1本という構成になっている点や,電源部の熱を熱伝導シート経由で放熱フィン部へ運ぶようになっている点,メモリチップにヒートシンクを被せてあり,ファンからのエアフローで冷却するような格好になっている点も,合わせて見てとれる。
その部品は,ASUSが「Super Alloy Power II」と総称するもので揃っている。具体的には,コイル鳴きを極限まで抑えられるというチョーク「Super Alloy Power II Choke」,耐用年数が一般的なVRM用と比べて2.5倍あるというコンデンサ「Super Alloy Power II Capacitor」で,対応電圧を30%拡大したMOSFET「Super Alloy Power II MOS」といった具合だ。
搭載するグラフィックスメモリはMicron Technology製のGDDR5X「MT58K256M32JA-100」(※パッケージ上の刻印は「6IA77 D9TXS」)。10Gbps品でチップ8枚により,総容量8GBを実現している。
3つの動作モードでFounders Editionと比較
さて,テストだが,今回は比較対象としてGTX 1080のFounders Editionを用意してこれをリファレンスとし,STRIX GTX 1080の標準動作モード3種が,それぞれリファレンスとどのように異なる結果を出すかチェックしたい。グラフ中に限り,3つの動作モードは「STRIX GTX1080(OC)」「STRIX GTX1080(Gaming)」「STRIX GTX1080(Silent)」と書いて区別する。
テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。ただし,「3DMark」(Version 2.1.2852)では,DirectX 12世代のベンチマークテストである「Time Spy」も実行する。
Time Spyは,レギュレーション準拠となるDirectX 11版テストと同様に2回連続で実行し,スコアの高いほうを採用するので,この点はあらかじめお断りしておきたい。
テスト解像度は,GTX 1080がハイエンド市場向けであるため,2560
用いるグラフィックスドライバは,テスト開始時の公式最新版となる「GeForce 368.81 Driver」。そのほかテスト環境は表のとおりで,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除する目的で,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。
Gaming modeではクロック分の順当な性能向上を確認。ただしブースト最大2GHz超のインパクトはそれほど大きくない
それでは,順にテスト結果を見ていこう。
グラフ1は3DMarkのDirectX 11版テストにおける総合スコアをまとめたものだが,STRIX GTX 1080のGaming modeはGTX 1080 Founders Editionに対して5〜6%程度高いスコアを示した。OC modeだとそこにプラスして1〜2%程度,Silent modeだとマイナス2〜3%程度といったところだ。大きな違いはないものの,きれいな階段状のスコアになっているので,動作モード設定が機能していると言うことはできるだろう。
3DMarkのDirectX 12版テストであるTime Spyのスコアがグラフ2で,ここでもスコア傾向は変わらない。Gaming modeで動作するSTRIX GTX 1080は,GTX 1080に対して約5%高いスコアを示している。
グラフ3,4は「Far Cry Primal」の結果だ。描画負荷が高めのテストとなるFar Cry Primalで,3つの動作モード間にある違いは最大でも2fpsしかない。GTX 1080との違いもほとんどないので,クロックアップモデルの効果を体感するのはまず不可能だ。
「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)のスコアをまとめたグラフ5,6だと,Gaming modeのSTRIX GTX 1080はGTX 1080に対し,「Low」プリセットで7〜10%程度,「High」プリセットで5〜6%程度高いスコアを示している。GTX 1080搭載PCでより現実的なグラフィックス設定プリセットとなるHighだと,実フレームレート上の違いは大きくないが,クロックアップの効果自体は確認できよう。
なお,3つの動作モード間で違いがそれほどないというのは,ここまでと同じ傾向である。
「Tom Clancy’s The Division」(以下,The Division)のテスト結果がグラフ7,8で,ここではSTRIX GTX 1080のGaming modeがGTX 1080に対して7〜12%と,比較的大きめのスコア差を付けた。また,「中」プリセットの3840
グラフ9,10は「Fallout 4」の結果だが,解像度2560
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果をまとめたグラフ11,12では,なかなかインパクトのある結果が出た。STRIX GTX 1080はSilent modeでも,「最高品質」の3840
「標準品質(デスクトップPC)」の2560
「Project CARS」の結果をまとめたグラフ13,14でも,解像度2560
消費電力はGaming modeで最大29W増加。DirectCU IIIの冷却性能と静音性は申し分なし
4Gamerで先にテストしたクロックアップ版GTX 1080カードはいずれもFounders Editionに対して相応に消費電力が上がっていたが,STRIX GTX 1080はどうか。今回も,ログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定,比較してみたい。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。
その結果がグラフ15で,アイドル時はむしろGTX 1080 Founders Editionより若干低めとなるSTRIX GTX 1080ながら,アプリケーション実行時だと5〜29W程度高いスコアを示した。クロックアップと,基板の豪華な作りを考えると,やむを得ないところといった印象で,少なくともGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gよりは大人しめの消費電力増大率で済んでいる印象だ。
ちなみにOC modeだとGaming modeからさらに2〜15W高く,クロック引き上げ分の代償を支払っているが,Silent modeだとGTX 1080 Founders Editionとの違いは1〜9W程度で済んでいる。
GPU温度もチェックしておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 1.9.0)からGPU温度を取得することにした。なお,テスト時の室温は約24℃で,システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いてある。
その結果をグラフ16に示すが,ここではアイドル時にファンの回転が止まるデフォルト設定でテストを行っているため,STRIX GTX 1080のスコアはやや高め。ただ,それでも50℃未満なので,まったく問題のないレベルではある。
一方の高負荷時だと,OC modeでも75℃なので,やはりまったく問題ない。DirectCU IIIクーラーの冷却能力は十分に高いと言っていいだろう。
さて,気になるファンの動作音だが,これは動画で確認してほしい。
下に示したのは,カメラをカードと正対する形で30cm離した地点に置き,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の3840×21600ドットで4分間実行した,計5分間を録画したものだ。
再生してもらえば分かるとおり,最初の1分間はファンの回転が停止しているため,聞こえる音は環境音のみとなる。そして,1分後にFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを実行すると,まずコイル鳴きらしき音が聞こえてくる。Super Alloy Power II Chokeでコイル鳴きを抑えているにもかかわらず,なお聞こえてくるのは残念だが,ベンチマーク開始約20秒後(=ファイルの冒頭から約80秒後)にファンの回転が始まると,ファンの回転でほぼ聞こえなくなるので,PCケースに入れてしまえばまず問題にはならないように思う。
その後,ファンの動作音は次第に大きくなっていくが,それでも,さほど大きくはならないのが分かるだろう。このクラスのグラフィックスカードとしては,かなり静かだ。
クロックアップ動作に過度の期待は禁物。ただし全体のバランスはよい
DirectCU IIIクーラーが大きく,カード長が300mm近くなってしまっている点は人を選ぶものの,その分,冷却性能と静音性は高いので,むしろ魅力と感じる人のほうが多そうだ。
実勢価格は10万4000〜11万円程度(※2016年7月30日現在)と,空冷仕様のGTX 1080カードとしては最も高価なクラスで,しかも原稿執筆時点ではほぼ完売状態だが,流通量が回復し,価格がもう少し下がってくると,鉄板の1枚になるのではなかろうか。
STRIX GTX 1080をAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
※2016年7月30日時点では転売業者による高値設定となっているので注意してください。ASUSのSTRIX GTX 1080製品情報ページ
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Republic of Gamers
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