北米時間2011年5月17日,Intelは米カリフォルニア州サンタクララ市において投資家向け会議「Investor Meeting 2011」を開催した。その位置づけ上,基本的には“お金”の話がメインなのだが,4Gamer的にも気になるポイントがいくつかあったので,今回はそのあたりを中心に,Webcastされた(=インターネット上で放送された)会議の内容をまとめてみたい。
Atomは2014年に向こう3年で14nmプロセスへ
Intelの2010会計年度は,コンピューティングデバイスに対する旺盛な需要を背景に,堅調な成長を示した
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Investor Meeting 2011で登壇したPaul Otellini(ポール・オッテリーニ)社長兼CEOは,Intelが過去12か月の間に,年間の収入で24%,営業利益で89%という,堅調な成長を成し遂げたと挨拶。進行市場を中心に存在する,コンピューティングデバイスに対する旺盛な需要が反映されたもので,「2010年度の総出荷トランジスタ数は7450京,世界人口1人あたり100億に上る」とアピールしていた。
トランジスタの出荷推移。2010年には世界人口1人あたり100億ものトランジスタが出荷されたことになるのだとか |
新興市場がPC市場を大きく牽引したというスライド。いわゆるBRICsだけではなく,それ以外でも成長が目立つ |
Investor Meeting 2011で投資家の質問に答えるPaul Otellini社長兼CEO
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また,北米や欧州をはじめとする市場では,同社が
「Smart Device」(スマートデバイスと呼ぶタブレットPCなどの成長も著しいとのことで,Otellini氏は市場調査会社IDCの予測を示した。具体的には「クラウドサービスの拡大を背景として,容量比で見るストレージの出荷量は2014年に80エクサバイト(8000京バイト;1GBの800億倍)へと達し,2009年比で670%の成長を見せる。また,スマートデバイスやノートPCにおけるデータトラフィックも2015年には大幅な増大を示す」というものだ。
北米や欧州などでは,スマートデバイスが堅調な伸びを見せた(左)。そしてその傾向は今後も変わらず,クラウドサービスなどの拡大によって,モバイルデバイスのデータトラフィックは大幅に拡大していくと見られている(右)
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Intelは,Atomプロセッサを,ムーアの法則比2倍の速度で進化させる計画だ
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そこでIntelは,モバイルデバイス市場に向け,さらに低消費電力のPCを実現するCPU群を投入。さらに,現状ではPC用CPUより古いプロセス技術で製造されているAtomを,今後3年間で一気に14nmプロセスにまで進化させ,PC向けCPUと製造プロセスを揃え,Atomの優位性を高めて搭載デバイスの拡充を図る計画を披露した(
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Otellini氏は,Atomの新しいロードマップも示し,2011年末〜2012年に32nmプロセス世代の次世代Atomプロセッサ
「Saltwell」(ソルトウェル:開発コードネーム),2013年には22nmプロセス世代の
「Silvermont」(シルバーモント,同),2014年には14nmプロセス世代の
「Airmont」(エアモント,同)を市場投入すると明らかにしている。
2014年には,Core iプロセッサの後継製品と,Atomプロセッサの後継製品とで,採用するプロセス世代が揃うことになる
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Ivy Bridge&HaswellではノートPCの新カテゴリを創出
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Dadi Perlmutter氏(Executive Vice President,Intel Architecture Group, Intel) |
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PC市場拡大のため,新たなノートPCのセグメントとして投入を計画している,超薄型かつ省電力のノートPC。同社はこの新しいセグメントを2013年までに立ち上げる計画だ |
続いて,IntelでクライアントPCやスマートデバイスのビジネスを統括するDavid“Dadi”Perlmutter(ダディ・パルムッター)上級副社長は,
「PCを再創出する」として,超薄型で,10時間以上のバッテリー駆動時間を持つノートPCを2013年までに実現する意向を示した。同セグメントのノートPCにおいて,2011年〜2015年の間に,
CPU統合型グラフィックスの性能を2010年比で12倍以上にするほか,
タッチインタフェース機能,モバイル端末とのよりシームレスなコミュニケーション機能などをノートPCに搭載していく考えとのことだ。
この次世代ノートPCは,3次元トライゲート・トランジスタを採用する次世代CPU「Ivy Bridge」そして,新しいマイクロアーキテクチャへ移行する次次世代CPU「Haswell」(ハスウェル,開発コードネーム)の世代で登場し,システム全体の消費電力は10〜20W程度になる見通しとなっている。
新しいノートPCセグメントのプラットフォームとなるのは,22nmプロセスを採用するIvy Bridgeと,新アーキテクチャを採用するHaswellの世代だ |
新しいノートPCのユーザー体験を向上させるべく,2015年を目処に,統合型グラフィックス機能のGPU性能を2010年比12倍へと引き上げる |
タブレットPCと現行のノートPCとの間を埋める新しいノートPCには,タッチインタフェースや各種センサー技術,携帯端末とのコミュニケーション技術などを順次盛り込んでいくという
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左は,今日(こんにち)的なモバイルデバイスの立ち位置。ノートPCとSoC製品の間には,消費電力的に大きなギャップがあるのだが,Intelが展開を計画している新しいセグメントのノートPCでは,この間,10〜20Wの間へ収まることになる。図では同時に,AtomプロセッサをベースとするSoCの守備範囲が広がっている点にも注目してほしい
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Intelがパートナー向けに提供を開始するAndroid 3.x(Honeycomb)の開発機。2011年末にはAtomベースのAndroid 3.xタブレットPCが登場する見通しという
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Perlmutter氏はここで,32nmプロセスを採用する次世代Atomで,携帯デバイス向けの
「Medfield」を搭載したAndroid 2.2(Gingerbread)端末を披露し,2012年に市場へ登場する見込みのMedfield搭載端末では,
「40nmプロセスを採用したARMベースの携帯プロセッサと比べて,優れた低消費電力性を実現する」とアピール。
また,携帯端末向けのAtomプロセッサでも,2011年〜2015年の間にフレームレートで10倍以上のグラフィックス性能を目指すと予告している。
Medfieldの消費電力をまとめたスライド。40nmプロセス技術で製造されるARMベースのプロセッサよりも省電力性は高いと謳われる |
低消費電力の端末で,2015年までに現行製品比10倍以上のグラフィックスおよびCPU性能向上を目指すというスライド |
スーパーコンピューティング向けメニーコア製品についてもアップデートが行われた
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なお,Investor Meeting 2011ではこのほか,
「Larrabee」(ララビー)技術を応用したメニーコアプロセッサである
「Knights」(ナイツ,開発コードネーム)ファミリーを,スーパーコンピューティング市場へ積極的に展開する計画や,Googleとの協業,次世代プロセス技術やファブへの投資などに関するアップデートも行っている。これらについては,またあらためてお伝えするつもりだ。
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GoogleやMicrosoftとの協業に関するスライド |
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モバイル端末市場で急成長しているARM陣営に対するアドバンテージも披露された |