Dadi Perlmutter氏(Executive Vice President, General Manager, Mobility Group, Intel)
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Intelの日本法人であるインテルは,2か月に一度の報道関係者向けミーティングを「インテル・クライアント・アップデート」として開催した。今回は,2008年4月2〜3日に中国上海市で開催された「IDF 2008 Shanghai」の直後ということで,そのトピックを総括するという内容。Intelの主席副社長兼モビリティ事業本部長のDavid(Dadi) Perlmutter氏(ダディ・パルムッター)という,“とてつもなく偉い人”が来日し,主に氏の守備範囲であるモバイル製品を中心にプレゼンテーションを行った。
キーワードは「ペタフロップスからミリワットまで」
次世代ノートPCプラットフォームとAtomは間もなく離陸
IDF 2008 Shanghaiのトピックは,大きく分けて二つ。一つは次世代CPUマイクロアーキテクチャ「Nehalem」(ネハレムもしくはネヘイレム,開発コードネーム)の仕組みがある程度明らかになったことで,このあたりは
4月4日のレポートを参考にしてほしい。もう一つは,開発コードネーム「Montevina」(モンテヴィーナ)として知られる次世代Centrino,「Intel Centrino 2 Processor Technology」(以下,Centrino 2)や,MID用プラットフォーム「Intel Centrino Atom Processor Technology」(以下,Centrino Atom)の詳細が明らかになったことだ。
“上から下まで”45nm High-kプロセスのCPUを出荷しているとアピール
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ゲーマー的に最も注目に値するのはNehalemアーキテクチャになるが,Perlmutter氏はモビリティ部門のトップということもあり,Nehalemに関する説明はさらりとしたものだった。IDF 2008 Shanghaiのキーワードともなった
「ペタフロップス(PFLOPS)からミリワット(mW)まで」をあらためて挙げた氏は,「ハイエンドサーバーから低消費電力のMIDまで,幅広いセグメントに向けて製品を供給していく」と述べ,「2コアから8コアまで高いスケーラビリティを持ち,マイクロアーキテクチャにも多くの革新的な技術が投入されている。Nehalemは,将来的にはノートPCにも展開する予定だ」としていた。
そして“本題”となるモバイル製品については,「いまや40%のPCユーザーがノートタイプを購入するようになった。そう遠くない将来にノートPCのユーザーは全世界で50%に達するだろう」と,モバイル製品の重要性を強調。ユーザーの数が増えることで「よりデザインに気を配ったノートPCが求められるようになる。Centrino 2世代では厚さ1インチ(※約25.4mm)以下,重量1kg前後のノートを可能にする」と,Centrino 2が実現するノートブック製品の新展開をアピールする。
モバイルの普及と同時に重要性を増すのがインターネット接続の手段だ。Intel/インテルは以前からWiMAXに力を入れているが,Centrino 2では新たに「WiMAX−WiFiモジュール」が提供される。このWiMAX−WiFiモジュールは,従来のWi-Fiモジュールと大きさが変わらないため,ノートPCのサイズに与える影響はほとんどないという。
Intelなどが出資するUQコミュニケーションズが,2009年初頭に東京でWiMAX(※モバイルWiMAX)の実証実験を開始する。「日本の導入スケジュールは早く,一番手ではないものの,先頭集団に属するのは確か」と評価したPerlmutter氏だが,「もっと早くできるのではないか」と本音も
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Centrino Atomに関する部分は,先に掲載した
筆者のレポート記事と重なるため割愛するが,Atomプロセッサやグラフィックス機能統合型チップセット「SCH」で,MID全体の消費電力の何%ほどかについて聞いてみると,ベンダーによって液晶ディスプレイなどの仕様が異なるのでケースバイケースと前置きされたうえで,「チップセットとプロセッサで消費電力のターゲットは1W以下。MID全体では3W以下がターゲットとなっているので,割合は3分の1以下になる」という答えがPerlmutter氏から返ってきた。
3分の1というのは,Centrino 2や現行のIntel Cenrino Processor Technologyと同じ割合だが,「『Moorestown』(ムーアズタウン,開発コードネーム)では,待機時の消費電力が(現Centrino Atomと比べて)10分の1になる」とPerlmutter氏。次世代Centrino Atomでは,CPUやチップセットの全消費電力に占める割合が一般的なノートPCよりも下がる可能性を示唆していた。
Atomプロセッサ(左)とSCH(右)。SCHはSystem Controller Hubの略称で,以前は開発コードネーム「Poulsbo」(プールスボー)と呼ばれていた
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というわけで,今回の定例アップデートは「IDF 2008 Shanghaiのまとめ」の域を出ていなかったのだが,報道関係者向けに配布された案内状によれば,近々,ウィルコムとシャープ,インテル,マイクロソフトの4社が共同で発表会を行うとのこと。どうも,Centrino Atomを追いかけている読者には大きなニュースがもたらされそうな気配である。モバイルデバイスも好きというPCゲーマーは要注目といえるだろう。
※2008年4月9日11:30PM追記:誤解を招く表現を一部修正しました。