レビュー
G92コアのエントリーミドルクラスGPUは,誰のための新製品か
GV-NX96G384H
» とくに大きな発表もなくローンチされたNVIDIAの新GPUを,宮崎真一氏がさっそく評価する。ユニークなスペックのG92コア下位モデルだが,果たしてその価値はどこにあるのだろうか。
4Gamerでは,GBUの販売代理店であるリンクスインターナショナルから同製品を入手したので,さっそくその実力,そして「GeForce 9600 GTと比べてコストパフォーマンスが高いのか低いのか」を検証してみたい。
リファレンスよりメモリクロックが高いGV-NX96G384H
オリジナル基板を採用し,198mmのカードサイズを実現
GPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.2.1)でその仕様を確認すると,コアクロックおよびシェーダクロックはそれぞれ550MHz,1375MHzでリファレンスどおりとなっている一方,メモリクロックは1.8GHz相当(実クロック900MHz)と,リファレンスの1.6GHzより引き上げられていることが分かる。
なお,カード長は198mmだが,これはGBU独自のカードデザインが採用されているため。NVIDIAのリファレンスデザインを採用した製品では228mmとなる見込みだ。
注意してほしいのは,同記事で利用した「ForceWare 174.53」がGeForce 9600 GSOをサポートしていないため,グラフィックスドライバのバージョンがGeForce 9600 GSOのみ「ForceWare 175.16 Beta」と,若干新しくなっていること。もっともNVIDIAに確認したところ,「ForceWare 175.16 Beta」とForceWare 174.53の間にパフォーマンスの違いはほとんどないそうだ。そのため,今回はいち早くGeForce 9600 GSOの3D性能をお伝えすることを優先し,横並びで比較することにした次第である。
また,比較対象としてデータを流用しているカード3製品の詳細は先の記事に詳しいが,念のため表3にまとめたので,参考にしてほしい。
以下,とくに断りのない限りGV-NX96T512Hは「9600 GT」,H385QX512Nは「HD 3850[OC]」,EAH3850/G/HTDI/512Mは「HD 3850」と表記する。
描画負荷が低い状態では高い性能を発揮
やはりメモリ周りが最大のボトルネックか
さっそく,テスト結果の考察に入ろう。グラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)の結果である。スペックからある程度予想できたことだが,9600 GSOのスコアは「標準設定」で9600 GTの9割強程度。描画負荷が高まる「高負荷設定」では,メモリバス幅やメモリ容量で劣る点が大きく影響し,9600 GTからさらに置いて行かれる。
HD 3850とは,9600 GSO[OC]でなんとか互角というレベルだ。
続いて実際のゲームタイトルから,まずはFPS「Crysis」の結果をグラフ3,4に示す。
Crysisでも9600 GSOは9600 GTより一段落ちるが,標準設定の1024×768ドットではHD 3850[OC]のスコアを上回るなど,“軽い”状態におけるパフォーマンスは悪くない。とはいえ,高負荷設定だと3DMark06以上にメモリ回りの制限が足を引っ張っており,とくに1280×1024ドット以上ではまるでゲームにならないスコアとなってしまっている。
同じくFPSから,「Unreal Tournament 3」(以下UT3)の結果をまとめたのがグラフ5だ。レギュレーション5.2採用タイトルでは描画負荷の低いほうに属するUT3でも,9600 GSOは高解像度でスコアの落ち込みが大きい。描画負荷が高い局面でのパフォーマンスがウィークポイントであることに,疑いの余地はなさそうだ。
UT3よりもさらに描画負荷の低い「Half-Life 2: Episode Two」(以下HL2 EP2)だと,9600 GSOはかなり良好な結果を残す(グラフ6,7)。とくに標準設定だと(CPUボトルネックの影響が少なからずあるとはいえ)9600 GTとの差はほとんどない。
TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下ロスト プラネット)から,実際のゲームシーンに近い「Snow」テストの平均フレームレートまとめたものがグラフ8,9となる。
ロスト プラネットは,非常にグラフィックスメモリ負荷の高いゲームアプリケーションだが,こうなると9600 GSOは苦しい。高負荷設定の1024×768ドットで,レギュレーション5.2の合格水準である40fpsをクリアしている点は評価できるが……。
最後にRTS「Company of Heroes」の結果がグラフ10,11だ。Company of Heroesの傾向はHL2 EP2と似ており,標準設定だと9600 GSOと9600 GTとの差はほとんどない。しかし高負荷設定では,解像度が高くになるにつれて両者の差は開いていく。
消費電力はGeForce 9600 GTと同程度
GV-NX96G384Hのクーラーは常時最高回転仕様か
G92の下位モデルとして,消費電力の低減にも期待が高まるところだが,実際はどうだろうか。システム全体の消費電力をワットチェッカーにて測定することにした。OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMark06を30分間リピート実行,その間で最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,それぞれのスコアを取得した結果がグラフ12である。
一目見て分かるとおり,9600 GSOの消費電力は9600 GTと大差ない。“エントリーミドルクラスGPUらしい低消費電力”のようなものは期待薄と見るべきだろう。
グラフ12の各時点におけるGPU温度を,「ATITool」(Version 0.27 Beta 3)で測定したものがグラフ13となる。
GPU温度は搭載するGPUクーラーによって大きく変わってくるため横並びの比較はできないが,同じGBU製グラフィックスカードで,同じZalman Tech製クーラーを採用しているように見えるにもかかわらず,9600 GSOのほうが温度が高いのは興味深い。Streaming Processor数が多く,いきおいトランジスタ数の多いG92コアのほうが,発熱面で不利である可能性を指摘できそうだ。
なお,ドライバのせいなのかカードの仕様なのか断言できないが,今回のテスト中,GV-NX96G384HのGPUクーラーは常時最高回転数で動作しており,その風切り音はかなり耳についた。静音動作を期待する人は注意してほしい。
安く済ませたいのなら選択する価値あり
オンラインゲーマーにとっては福音か?
しかし,描画負荷が低い条件で,かなり良好なパフォーマンスを示しているのも確か。「最新世代のFPSで使われるような3Dエンジンを除けば,1024×768ドットや1280×1024ドットという現実的な解像度で十分な性能を発揮できるカードが1万5000円で手に入る」点に魅力を感じる人は少なくないはずだ。
あと数千円足せばGeForce 9600 GTを購入できることを考えるに,微妙といえば微妙だが,グラフィックスカードにかける予算を少しでも抑えたいオンラインゲーマーなどにとって,9600 GSO,とくにGV-NX96G384Hは有力な選択肢となるだろう。
- 関連タイトル:
GeForce 9600
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