レビュー
古代ローマの歴史をのんびり体験できる都市開発シミュレーション
インペリアム ローマ
〜ローマ都市建国〜 日本語版
すべての道はローマに通ず!
古代ローマ帝国を作り上げよう
本作はローマ帝国から派遣された総督となり,小さな貧しい村を大都市へと発展させていく都市建設シムで,2006年9月に発売された「グローリー オブ ザ ローマン エンパイア 日本語版」の続編だ。前述のとおり,筆者は前作をプレイしておらず,本作との違いなどは明確に分からないので悪しからず。純粋に本作をプレイしたうえで,どんなゲームに仕上がっているのかを見ていきたい。
都市の中では,市民達が暮らしている様子を自由な角度から眺められる。前作よりも各段に美しくなったというグラフィックスにも注目したい |
時間帯や天候の変化が再現されており,夜間は昼間とは違った都市の顔を見られる。光に浮かび上がる建造物が実に幻想的だ |
メインとなるのが「史実モード」で,実在したローマの植民市の統治者となり,場所や年代など史実に基づいて再現された16ミッションをこなしていく。最初からプレイできるのは「ローマ(紀元前509年)」「ローマ(紀元前146年)」「ポンペイ(紀元前70年)」のみ。それぞれをクリアしていくことで,関連するミッションが徐々にアンロックされていく。各ミッションには,主目標と副次的な目標が用意されており,基本的にはすべての目標をクリアする必要がある。とはいえ,ボーナスの獲得要素である副目標については放棄も可能なので,無理に挑戦して主目標達成に影響が出そうであれば,挑戦せずにあきらめるのも手だ。
史実モードのミッションをクリアしていくことで,関連するミッションがプレイできるようになる。遊びながら古代ローマ史の流れが理解できるのだ |
主目標と副目標はタブレットに書かれており,同時に3〜5枚分の目標をこなしていく。用意されたすべてのタブレットを完了すればクリアとなる |
史実モードのほかには,難度設定が異なる12種類のマップで,自由気ままにローマの植民市を築いていく「シナリオモード」がある。このモードでは,マップごとに史実モードでは発生しないようなイベントなどが仕込まれているのが特徴だ。例えば定期的に資源が供給されるマップや,絶えず蛮族が攻めてくるようなマップでは,その特徴に合った都市開発が求められる。また,ローマの統治者となり,元老院から出される「ここにコロッセウムを建設せよ」「ここに大競技場を建設せよ」といったすべての命令を完遂すべく奮闘していく「ローマモード」も用意されている。
「チュートリアル」は一般のチュートリアルと戦闘のチュートリアルの二つが用意されており,プレイするうえで必要な操作方法や都市開発のやり方が学べる |
史実モードではミッションクリア時のスコアをオンラインランキングにアップロード可能だ。ハイスコア獲得を目指して試行錯誤してみてはいかが? |
資源を手に入れないと一向に進まない
都市開発が大きな特徴
基礎的な資源としては,森の近くに木こり小屋を建てれば木材が,鉱床があるところに採鉱所を建てれば石材や金鉱石などが得られる。食料は,小麦農場を建てて小麦粉を生産し,その小麦粉がパン焼き場に運ばれてパンに加工され,ブドウ園で育てられたブドウがワインへと加工されて酒場で流通される。こんな感じで,資源を消費して建物を建てたり,建物で資源を加工して別の資源や物品を生産し,それらを流通させて都市の活性化を図ったりしていくのが,本作の都市開発スタイルである。
火災が頻繁に発生するので,官舎を建ててプラエフェクトゥスを配置すれば,井戸から水を運んで消火作業をしてくれる。井戸も多いほうが安心だ |
ほかの建物の影響が分かりやすい例が「祭壇」だ。祭壇の影響圏,影響圏外の住宅,道路のデザインを見比べてみると,違いは一目瞭然 |
建設できる建物は「生産と工房」「軍事」「食料生産」「福利」「基礎」「美観」「公共」「モニュメント」の8カテゴリに分かれており,住宅,井戸,倉庫,奴隷小屋,祭壇,市場,酒場,神殿,浴場,学校,小麦農場,養豚場,ブドウ園,木こり小屋,仕立屋,薬草店,官舎,交易所,見張り塔,兵舎,射的場,鍛冶場,武器工房など30種類以上が登場する。
建物の建設は,ゲーム画面を右クリックすると現れる建設メニューの中から選んで,マップ中の建設したい場所を指定するだけと簡単だ。すると奴隷達が建築資材を運んできて建設が始まり,しばらく待てば建物が完成する。もちろん,手の込んだ建造物になるほど完成までに時間がかかるが,せっせと働く奴隷達のアニメーションを眺めているだけでもなかなか楽しい。
建物には,木材のみで建てられるものもあれば,木材と資金(デナリウスという),木材と粘土,石材と粘土,石材と大理石,木材から大理石まですべての建築資材を使うものもあり,建物ごとに必要な建築資材と量に違いがある。実は建築資材が足りなくても建設を命じることができるのだが,当然ながら足りない建築資材が揃うまで工事は進まない。
建物は回転可能で,斜め向きにも建てられる。ただし,ほかの都市開発シムと違って,建物を綺麗に並べにくいのが難点かも |
実は無理に道路を作らなくても市民や奴隷達は移動してくれるのだが,見た目を重視するなら道路で建物同士を繋いだほうが,美しい都市になるはず |
とはいえ,建築資材はないけれど,どうしても早く建物を建てたいという場合もあるだろう。こんなときのために,一部の建物において「突貫工事」が選べる。突貫工事は建築資材を消費しない代わりに資金を払うと即座に建物が完成するので便利だが,多用すれば資金がみるみる減るので,どうしても……という場合以外は控えたほうがいい。
また,建築資材は建設時だけ必要になるのではなく,建物を維持していくためにも必要になる。この供給ができなくなると,建物が老朽化して火災が発生しやすくなる。建物が増えれば増えるほど,おのずと必要な建築資材も増大していくことになる。
建設のときには,その建物の「影響圏」を考えていかないと,無駄の多い都市になってしまう。それぞれの建物には生産物やサービスの供給が行える範囲が決められており,その建物の恩恵に与れる住民は,建物を中心とした黄色い円の範囲内に住宅が建っている人だけとなる。また,住宅の範囲内に職場があれば仕事に就けるが,範囲外の職場には勤められない。
建物によっては通常の影響圏のほかに,建物の「格」を上げる効果を持つ影響圏を持つものも存在する。例えば市民がお祈りを捧げる祭壇などは,住宅の格を上げるのに必要になってくる。この格の影響圏は緑色の円で表示され,範囲内にある建物の格に影響が出る。こんな感じで,影響圏を考えて建てていくのが大きなポイントになる。
建物の建設は,ゲーム画面を右クリックすると現れる建設メニューの中から選んで,マップ中の建設したい場所を指定するだけと簡単だ |
建造が不可能な場合は赤くハイライトされて原因や理由が表示される。向きを変えると建造できることもある。スペースは無駄なく使いたい |
仕事,品物,建物……
わがまま市民の欲求を満たしていこう
市民は住宅を建てると勝手に入居してくるが,たいていは男女一人ずつで住み,裕福な家庭になると子供ができる。無職の市民は早く職に就こうとするので,近くに職場を用意してやればよい。こんな感じで住居を建て,職場となる建物を用意して人口を増やしていくのだ。
市民には場所の格の高さと私財の額で決定される「等級」があり,三等,二等,一等,特等と,等級が上がるほど能力が高くなり,住んでいる住宅もマガリア(三等),カーサ(二等),ドムス(一等),ヴィラ(特等)と変化していく。この等級は市民が生産の仕事に就いた場合に影響があり,三等よりも二等のほうが,一等よりも特等のほうが多くの物品を生産できる。
不満が爆発寸前となって,抗議行動を起こしている市民達。このまま放置しておくと建物に放火したりするので,早急に手を打とう。まったくもう |
建設現場に必要な建築資材を運ぶのは奴隷達の仕事だ。実は奴隷をどの程度の人数確保しておくかも,都市開発を行っていくうえで重要な要素になる |
等級を上げるには,等級ごとに持つ「要求」を満たしていけばよい。たとえば三等市民の要求は「小麦粉」「肉または魚」「祭壇」「井戸」,二等市民は「パン」「ソーセージまたは魚」「衣服」「祭壇」「井戸」という感じで,それぞれ要求する品/サービスがある。これらを満たすことで等級がアップしていくが,上位等級ほど要求がエスカレートしていく。もちろん,祭壇などの建物については前項に書いた,格の影響圏に注意する必要がある。
この要求を満たしてやることは重要で,要求が満たされないと市民は次第に不満を募らせていく。市民が仕事を中断することで経済停滞が発生したり,最悪の場合は不満を抱えた市民が集まって暴動を起こし,都市の中核であるフォルムや不満のある建物に火を放ったりするのだ。暴動や犯罪を防ぎ,火災に対処するには,官舎を建ててプラエフェクトゥス(長官)達に取り締まりをさせるという手もある。とはいえ,基本的に多くの市民が不満を持たない都市作りをしていけばいいのだ。まぁいうほど簡単ではないけど。
都市開発において重要な役割を担っているのが「奴隷」達である。奴隷はフォルムや奴隷小屋,倉庫に住んでいて,建設現場や各建物を維持するのに必要な資源の運搬,建物で生産された資源を倉庫やほかの建物へ運ぶのが仕事だ。奴隷は何も要求してこないが,労働状況には注意する必要がある。奴隷の労働状況は近隣の仕事量などによって変化し,「なし」「ゆるやか」「厳しい」「過度」「過酷」に分けられる。
奴隷の人数が少ないのに,維持が必要な建物が増えて,さらに次から次へと建設現場が増えてくれば,過酷な労働状況に不満を持ち始める。これを解消できないと暴動を起こすこともあるため,奴隷小屋を建てるなどして,都市の状況に見合った奴隷の人数を確保しておくことが重要だ。
歩兵,弓兵,騎兵の軍事ユニットによる戦闘要素もあり,ときに蛮族の村を襲撃することも必要だ。戦闘自体はAI任せで眺めているだけなのが残念 |
敵対的な蛮族達が投石機で防壁を破壊して攻め込んで来るようだ。防壁にある塔からの矢は効果が高いので,塔は多めに作っておくといいかも |
また,一部の土地を蛮族の村が占領しているマップも登場する。蛮族との間には友好的,中立的,敵対的といった関係があり,敵対的な蛮族は絶えず軍勢を送り込んでくるため,都市を守るために防壁で囲んだり,軍隊を整備したりといった必要が出てくる。ときにはこちらから戦闘命令を出して蛮族の村を強襲することもある。
そこで軍隊の出番だ。本作では兵舎,射的場,厩舎を建設することで,剣士,弓兵,騎兵を配備できる。部隊には士気があり,部隊の大半が倒されると士気は下がってしまい,兵士は敗走して都市に逃げ帰る。ちょっと嫌味っぽいメッセージなんかも表示されたりなんかして,非常に気分が悪い。
ただし,蛮族の村を奪い取れれば,蛮族を奴隷として使えるようになり,倉庫なども手に入り,なかなか美味しい。序盤から頻繁に攻め込まれるマップもあり,対応に四苦八苦することも多いが,気合いを入れて蛮族と渡り合ってほしい。
何にせよ本作は都市開発シムなので,RTSばりのシビアな戦闘が待っているわけではない。
本作をプレイしていて実に和んだのだが,これはノンビリとプレイできるゲーム性に拠るものだろう。都市開発シムでは建物の建設を急ぎたいあまり,時間の経過スピードを変えてプレイすることも多いのだが,本作は基本的にノーマル速度のままプレイしていることが多かった。村や都市の中で生活している市民達,働かされている奴隷達を眺めていると,実に人間味溢れる行動をしている。必死になって都市開発に勤しむよりも,市民達をじっくりと眺めて,のんびり楽しむタイプのゲームだと筆者は感じた次第である。
ほかの都市開発シムと比べると非常にシンプルな作りではあり,市民,資材,建物の関連が非常に分かりやすく,逐一発生する目標を達成しながら進行していくというスタイルも個人的に好きだ。手軽にプレイできる都市開発シムとして初心者にも安心してお勧めできるし,ゲームモードのボリュームも十分で,同じマップでも都市開発のやり方を変えて挑戦するなど何度も楽しめると思うので,都市開発シムを好んでプレイしている人も挑戦してみるといいだろう。都市開発をしながら古代ローマの歴史や建造物などを眺め,偉大なる歴史を体験してみてほしい。興味を持った人は英語版デモをお試しあれ。
「インペリアム ローマ」デモ版(英語版)
高解像度でプレイすれば都市を見渡せるだけでなく,各種財政メニューも同時に開けるため,状況を把握しやすくて便利だ |
ゲーム画面内を右クリックすると表示される建設メニューは,ジャンルや建物ごとにアイコン表示され,操作もしやすく好印象だった |
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