ニュース
[TAIPEI2008#05]PC/Xbox 360でサーバーが共有されたMMORPG「Xenjo Online」は,中国攻略の切り札か?
中国の道教を主たるモチーフに,仙人になることを目指すというこの作品,独自の修練やスキル構成もさることながら,なんとPCおよびXbox 360から同じサーバーにアクセスしてプレイ可能という,「FFXI」以来の画期的なクロスプラットフォーム作品になる予定なのだ。
まずはゲーム内容から説明していこう。本作の世界は,大陸中国の蕭潜氏が書き,後に書籍としてもヒットしたインターネット小説「飄〓之旅」に基づいている。ちなみに飄〓とは,仙人などが住む山奥の,霧が立ち込めた幻想的な雰囲気を示す語だ。ゲーム世界には,剣術を得意とする「古剣院」,暗器を使う「隠雷閣」,砂漠を根城とする「瀚漠金杉堡」,火を崇拝する「烈火炎殿」,女性がメインの「恵〓2宮」(〓2は,くさかんむりに「衡」),武器/防具の製作に長じた「重玄派」,儒学に基づく「海圜軒」という七つの門派があり,プレイヤーはそのどれかに属し,また必要に応じて門派を渡り歩きつつ,仙人になるための修行を続ける。
キャラクターの成長システムはレベル制で,必要なスキルを取得しつつ戦闘力を伸ばしていくのが基本だが,門派固有のクエストを通してスキルを身につけたり,アイテムを手に入れたりもする。本作で仙人になるためには,「旋照」「開光」などといった段階を経つつ,修練を続けていく必要があって,こうした段階を踏むための一連のクエスト/ミッションが,いわば物語全体のチャプターとなっている。ちなみに,1段階めから2段階めへの修練過程は,おおよそ2〜3日で済むのに対し,仙人に近い段階まで行くと1か月以上かかるという感じで,修練は次第に厳しくなっていく。
そして,仙人に向かう各段階でも固有のスキルを身につけられるため,単純にキャラクターレベルを上げて一般スキル,門派スキルを取り進めただけの状態よりも,仙人を目指す階段を上がっていったほうが,結果的に強くもなれる。そのスキルは瞬間移動などといった,いかにも仙人らしいものであるという。
剣術を得意とする「古剣院」のイメージキャラクター |
同じく,暗器を使う「隠雷閣」のそれ |
砂漠を根城とする「瀚漠金杉堡」 |
コミュニティ要素としては,門派を問わない「工会」(ギルド)が結成でき,工会戦という形でPvP要素も盛り込まれ,戦績如何ではレアアイテムが手に入ったりもするそうだが,ゲームの主軸は,あくまで仙人を目指すプレイにあるとのこと。
ちなみに,英題に含まれる「Zenjo」とは,台湾の言葉「仙石」を読み下したもので,これはMagic Stoneというほどの意味だ。それを消費しつつ,キャラクターを守り,攻撃を助ける「飛剣」を成長させていくのも,このゲームの特徴的なルールである。
このほか,プレイヤーにはあまり関係ない話ではあるが,本作のゲームエンジンはSoft-Worldが開発した最新鋭のもので,Grid Computing技術を応用し,ある時点でゲームサーバーの能力が足りなくなったら,1台単位でサーバーマシンを追加していけるという,スケーラビリティに優れた設計になっている。その運営面でのメリットは,たいへん大きいはずだ。
さて。PCとXbox 360でサーバーを共用できるMMORPGが新たに登場するのは,実のところたいへんなことである。あのNexonが,「マビノギ360」をPCと完全に別立てのゲームとして開発し,サーバーを共有できなかった理由を「Microsoftの方針ゆえ」と説明するくらいなのだ。現在までに,それが実現した例は世界にただ一つ,FFXIしかないのである。
だがSoft-Worldはこの件に関し,十分に自信を持っている様子だった。ここからは解説調でなく,今回この作品について語ってくれた,Soft-World 遊戲開發中心 執行製作課長(Xenjo Onlineディレクター) 王 宣策氏へのインタビューとして,質問と回答をお届けしよう。
この作品については,PCとXbox 360どちらからでも同じサーバーに接続できるとアナウンスされていますね。それは本当の話でしょうか。
王 宣策氏:
そうです。Xbox 360のプレイヤーもPCのプレイヤーも,同じ世界でプレイできます。
4Gamer:
それは,技術的には十分に可能だと思うのですが,世界にほとんど例がありません。 そこは一般に,Microsoftさんのスタンスの問題と考えられているのですが,その点についてはどうお考えですか?
王 宣策氏:
Microsoftさんとはお話を続けており,まだ最終的な合意に到ったわけではありません。ですがとりあえず,PC版を先に出すことは決定していますし,技術的には確かに問題ありません。
4Gamer:
……ここでこんなことをお聞きするのは,明らかにおかしなお話なんですけれども,Microsoftさんは本当にこれを許可するものでしょうか?
王 宣策氏:
双方にとって利益のあることですので,いまのところ楽観的に見ています。
4Gamer:
ええと,ではちょっと別の角度からお聞きします。ここまで,Microsoftさんの反応は好意的でしたか?
現在話し合っている段階では,非常に好意的です。ただし,MicrosoftさんにはMicrosoftさんとしての,社内での意見集約過程がありますので,それで思っていたより時間がかかっているのだと思います。
4Gamer:
直接の窓口となっているのは,どこでしょうか?
王 宣策氏:
シンガポールのMicrosoftです。そこがアジア全域を統括していますので。
4Gamer:
協議の結論が出る時期を,いつごろと見込んでいますか?
王 宣策氏:
まだ時間がかかるかもしれません。
火を崇拝する「烈火炎殿」 |
女性がメインの「恵〓宮」(〓は,くさかんむりに「衡」) |
武器/防具の製作に長じた「重玄派」 |
4Gamer:
では,PC版のサービススケジュールを教えてください。
王 宣策氏:
いまの目標としては,今年(2008年)の第3四半期です。そのタイミングではまず(大陸)中国でクローズドβテストを行います。
4Gamer:
もちろん台湾でもサービス予定なんですよね? また,オープンβテストに移行するおおまかな時期は決まっていますか?
儒学に基づく「海圜軒」 |
オープンβテストは大陸と台湾で同時期に行う予定で,それは2008年内です。
4Gamer:
Xbox 360でプレイする場合,「Xbox Live」を経由する形でしょうか?
王 宣策氏:
そのとおりです。
4Gamer:
では,PC版のクライアントシステムは,「Live for Windows」に載っている……?
王 宣策氏:
そうです。Xbox 360のオンラインでのテストについて,ごく基礎的な部分は終わっています。現在はクライアントプログラムを「Live for Windows」に合わせるための調整を行っているところです。
4Gamer:
仮に両方のプラットフォームで無事サービス可能になった場合,このゲームの課金システムはどうなりますか?
いまのところはアイテム課金を考えていて,PC版はそれで問題ないものの,Xbox 360でもアイテム課金にするか,それとも月額課金のほうがよいのか,そこはまだこれから協議していかなければならない部分です。
4Gamer:
Xbox 360と相乗りになると,もう一つ気がかりなのがアップデートパッチや修正パッチです。それらはMicrosoftさんの品証を経てリリースされることになりますよね? それによるタイムラグなどは心配ではないですか?
王 宣策氏:
パッチについては,おそらく先に完成させておいて,公開できる段階になってから,同時に公開する形になるでしょう。ただ,そこも含めて協議中なので,あまりはっきり言うことはできません。
4Gamer:
なるほど。……では,そもそもなぜ,Microsoftさんがこのプロジェクトに好意的なのだと,お考えでしょうか。
王 宣策氏:
先方のエンジニアさんがよく当社に来て,話していく感じからして……というところなのですが。こちらが何か言ったときにも,素早く対応してくれますし。
4Gamer:
あ。いえいえ,そこではなく,なぜMicrosoftさんが好意的なのだろうと。つまりその理由が知りたかったのです。Nexonさんの「マビノギ360」の経緯と比べたとき,いったいなぜなんだろうと。
マビノギ360の件に関しては,私どもでは分かりませんが,こちらの話でいえば,今のところMicrosoftさんとのコミュニケーションはうまくいっています。実際この作品については1月31日に発表会を行うのですが,そのときにXbox 360からサーバーに接続する,簡単なテストのデモンストレーションを予定しています。あくまでデモであって,正式なサービス提供が決まったということではありませんが。
4Gamer:
さらに抽象的な質問になってしまって,本当に恐縮なのですが,Microsoftさんが好意的な理由として,(大陸)中国市場の攻略があるのではないかと,お考えになってはいないですか?
王 宣策氏:
Microsoftさんのお考えについては,私どもとしてはなんともいえませんし,それはMicrosoftさんに聞いていただくほかないのですが,Microsoftさんも台湾や(大陸)中国,シンガポールなど,いろいろな地域にわたってXbox 360タイトルの開発メーカーを探しています。台湾で私どもがこの作品を開発することに関しては,Microsoftさんと一緒に進めていますし,その点で良い関係を保てていると考えています。
いかがだったろうか? そうそう簡単にマルチプラットフォームのオンラインゲームプロジェクトが成立するはずがないという,既存の前提認識との関係からいえば,納得のいく説明になっているわけではないが,少なくともSoft-WorldがMicrosoftとの協力に基づいて,いたって現実的にマルチプラットフォームタイトルの開発に臨んでいることは,お分かりいただけたと思う。
ちなみに本作の日本でのサービス可能性について聞いてみたところ,現在は開発に専念しており,海外サービスについてはまだ検討を進めていないとのことだった。ともあれ,このプロジェクトの成り行きが,世界中のゲームメーカーにとって,注目に値する話題であることだけは間違いないだろう。
- 関連タイトル:
Xenjo Online
- この記事のURL: