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極私的コンシューマゲームセレクション:第26回「LocoRoco」
» 今回の「極私的コンシューマゲームセレクション」は,PSP向けの「LocoRoco」を紹介。編集部のoNoは,「ロコロコかわいい」と連発していたが,そういう言葉は妙齢の女性の口から出てこそなんぼなので,黙っていただきたい。ともあれ,「久々の俺的フェイバリット」と言い張る時代遅れの男がお勧めするLocoRocoってどんなゲームなのか,よければ読んでいってやってください。
LocoRocoについては,4Gamer読者なら名前を聞いたことがあるかもしれない。それは[GDC07#26]の記事中,LocoRocoのゲームデザイナー/ディレクターの河野 力氏の講演を取り上げたからだ。LocoRocoの評価が高いのは,先述の記事を読んでもらえれば分かると思う。
とはいえ,筆者が本作に興味を持ったのは,もうちょっと前の話。発売直後,友人が「面白い!」と絶賛していたからである。友人は出かけるときはいつも持ち歩き,電車やバスの中でずっとプレイ。外でPSPのバッテリーが切れたら,プレイできないストレスで本人までキレそうになっていた。いわば禁断症状が出るくらいハマるゲームってどんなもんなの? と気になってはいたのだ。
主人公キャラではなくステージを操作する2Dアクション
個人的にはピンボールに近い操作感だと思う。ステージは半強制スクロールで,ある程度は自由に行き来できるが,ステージの要所要所に後戻りできないポイントが設けられている。
ステージには敵キャラとして“モジャ軍団”がいて,ロコロコがモジャに捕まると食べられてしまい,ロコロコの大きさが1段階下がってしまう。捕まらないように逃げるのが基本だが,ロコロコを体当たりさせてやっつけることもできる。
また,ステージには“ムイムイ”と呼ばれる妖精が隠れており,見つけると後述するロコハウスで使えるパーツなどをもらえる。そのほか,ロコロコが一定段階以上になっているときのみ進める分岐ルート,うまく操作しないとたどり着けない隠しルートがあったり,“あること”をしないと先に進めない仕掛けがあったりするのだ。
ゲームの概要を書いていたら,「一昔前のアクションゲームじゃね?」と言われそうな感じになってきたが,これがなんというかその,一度プレイし始めると止まらないのだ。プレイするだけならそれでいいのだが,原稿を書いて人に説明するには「まあやってみてよ」というわけにはいかないので,自分なりにいろいろと理由を考えてみた。
一般的な2Dアクションゲームでステージクリア方式を採っている場合,ステージクリアの制限時間(クリアまでの想定時間)を設けているタイトルが多い。
古くはアーケードゲームで,“回転率”を考えた設計としての制限時間だと思うのだが(回転率を上げないと利益も上がらないので当然だが),その概念をそのままコンシューマゲーム機に持ってきたタイトルも多い。筆者もそれはそれで楽しいものだというのは分かっているが,開発者達によってふんだんに盛り込まれた謎解きや隠し要素を楽しむには,足かせになる場合もある。謎が解けなかったり,プレイヤースキルを要求されたりすると,上手くできないうちにどんどん時間が過ぎてタイムアウトになってしまう。
コンシューマゲーム機で独自開発されたタイトルでは時間の制約をなくしたものが増えたが,今度は操作方法が難しく,プレイヤースキルを要求されることが多くなったように思う。筆者の個人的な印象ではあるが,“できること”が多くなる分,“覚えること”も多くなるのは,あまりいい傾向だとは思わない。もちろん,ゲームメーカー側もチュートリアルモードを用意して,マニュアルを見ないでも操作を覚えられるようにするといった努力をしているのは理解できるが,そもそもチュートリアルモードをプレイしないと操作が覚えられないのでは,そこでやる気をなくしてしまう人も多いだろう。
筆者はそういった理由から,最近のアクションゲームに食指が伸びなかったのだが,LocoRocoをプレイしてみたら,温故知新というか,筆者の考えていた不満を上手く解消しつつ仕上げたゲームだという印象を持った。
LocoRocoのステージ内には,ムイムイが隠れていたり隠しルートがあったり謎解きがあったりといった仕掛けがふんだんにある。LocoRocoではステージクリアにかかった時間はカウントされるが,基本的に制限時間はない。行き詰まったらじっくり考えられるし,隠しルートがありそうだったらとことん探すこともできるわけだ。
また,操作も基本的にボタンを三つしか使わないため,マニュアルを読まなくても操作方法をすぐに覚えられる。その分最新のアクションゲームのような“できること”は少ないが,それを感じさせない作りになっているのだ。
なんだか堅苦しい説明になってしまったが,要は制限時間がないから自分のペースで遊べ,操作をすぐに覚えられるとっつきやすさに好感を持てた,ということだ。
ライトなプレイにもヘビーなプレイにも対応できる間口の広さ
隠し要素についても,「見つけられなくてもデメリットはほとんどない」というバランスになっているのがいい感じだ。ステージ内に隠されているのは,主にロコロコの実/ムイムイ/分岐ルートとなる。見つけられないときのデメリットは,高スコアをマークできない,ロコハウスの(一部)パーツが手に入らないといった程度で,ステージクリアできないようなことは起きない。
本作は,ステージをクリアするだけなら5分もかからず,その難度もかなり低い。だが,いま挙げたようなやり込み要素があるため,じっくり腰を据えてプレイすることもできる。パーフェクトでクリアするには,ステージ内に隠されたロコロコの実,ムイムイや虫を探さなければならないのだが,個人的にはそのバランスが絶妙だと感じた。隠し通路や隠し部屋があるのは,ゴールに向かうコースから外れたところだったり,なにかしらヒントがある場所だったりする。それがあからさますぎず,分からなさすぎずで,「なにかありそうだから寄り道してみよう」という気にさせてくれるのだ。
ロコロコを見て歌を聴いているだけでほんわかできる
ゲームのシステム面での特徴は以上だが,これだけではパンチ力不足に感じる読者もいるかもしれない。LocoRocoにハマる理由としてはロコロコのかわいらしさがかなりの後押しをしていると思う。こればかりは好みの問題なので,画面を見て好きになれない人にはごめんなさい,と言うしかないのだが。
ロコロコはスライム状の生き物で,基本的に球状(2Dなので円状?)の姿をしている。プレイヤーが地面(ステージ)を傾けたり震動させることで,あっちに行ったりこっちに行ったり飛び跳ねたりする様子を見ているのが楽しい。
ロコロコは,静止した状態だと,地面を傾けてからしばらくしないと転がり始めない。慣性の法則が働くわけで,人によってはもどかしさを感じるかもしれない。ただ筆者は,「まあまあゲームだしのんびりやろうよ」と言われているようで,この感覚が大のお気に入りである。
もう一つ,ロコロコで特筆すべきなのがそのBGM。以前CFソングでも流れていたので覚えている人もいるかもしれないが,その独特な曲はすごく耳に残る。ゲームのBGMとしては珍しく歌詞が付いているのだが,それはたいてい意味不明な,いわばロコロコ語となっている。
普通に意味の理解できる歌だとどうしても歌詞に気が行ってしまって集中できないが,意味不明な言葉であるがゆえに,歌詞があっても気にならない。どこかで聴いたような感じがありつつ聴いたことのないオリジナルで,音楽だけでもなんとなく楽しめる,そんな感じの楽曲なのだ。興味を持った人は,公式サイトでゲームタイトルに使われている音楽を聴けるので,訪れて聴いてほしい。
冒頭で述べた友人がLocoRocoにハマっているという話を聞いたときは半信半疑で,「そんなにハマるわけないだろ」と思っていたのだが,すいません謝りますごめんなさい。
筆者は通勤のお供としてLocoRocoをプレイし始めたのだが,片道1時間弱かかる通勤時間も,あっという間に感じられるようになった。年甲斐もなく電車の中でプレイに熱中しすぎて,乗り継ぎ駅や降車駅を通過してしまったのが,一度や二度じゃないのはここだけのヒミツだ。ちなみに,残業などで終電に乗るときは乗り越すのが怖いので,LocoRocoのプレイは封印している。
基本的に買って大満足という,個人的にはPSP久々のヒット作品(周回遅れ)なのだが,不満がないと言えば嘘になる。プレイしていて気になったのは,ロコロコが分裂/合体する意味合いが薄いという点である。ロコロコが分裂して20匹いるとき,合体して1匹のときしか基本的には使わないというか意味がない。中くらいの大きさのロコロコ数匹という状態にもなるのに,それを生かすシチュエーションが作ってあれば,もっと楽しくなったんじゃないかなと思わずにはいられない。
LocoRocoは,アクションゲームの上手/下手にかかわらず,老若男女誰でも楽しめるという間口の広さを持ちつつ,ライトなプレイにもハードなプレイにも対応できるという奥の深さを持っている。また個人的には,5分10分というちょっとした空き時間にプレイできる“軽さ”も,携帯ゲーム機にはちょうどいいと思う。この記事を読んで興味を持った人は,ぜひプレイしてみてほしい。
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LocoRoco
対応機種:PSPメーカー:ソニー・コンピュータエンタテインメント
発売日:2007年7月13日
価格:4800円/ベスト版は2800円(ともに税込)
CEROレーティング:A(全年齢対象)
公式サイト:http://www.jp.playstation.com/scej/title/locoroco/
(c)2006 Sony Computer Entertainment Inc.