エントリー向けGPUでもDX10.1。AMD，「ATI Radeon HD 3600/3400」を発表

ATI Radeon HD 3650リファレンスカード

　2008年1月23日2：01PM，AMDはデスクトップ向けATI Radeonの新製品3モデルを発表した。
　「ATI Radeon HD 3650」「ATI Radeon HD 3470/3450」は，2007年11月15日にリリースされた世界初のDirectX 10.1（＝Direct3D 10.1）対応GPUシリーズ「ATI Radeon HD 3800」シリーズの“下”をカバーする製品群で，もちろん新製品もDirectX 10.1フルサポート。登場が予告されているハイエンド製品「ATI Radeon HD 3870 X2」が公式には未発表で，ハイエンドだけ存在しないという，少々バランスに欠ける状態ではあるが，ATI Radeonはミドルクラス以下の全価格帯で次世代DirectX環境への準備が整ったことになる。
　製品評価は別記事に任せ，本稿では，報道関係者向け事前説明会の内容を中心に，製品の概要をまとめてみることにしたい。

ATI Radeon HD 3470（左）とATI Radeon HD 3450（右）のそれぞれリファレンスカード

DisplayPort対応のHD 3600＆3400シリーズ

HD 3400はHybrid Graphicsもサポート

DisplayPortをサポートしたATI Radeon HD 3450カードのイメージ

　さて，いきなり一言でまとめるなら，エントリーミドルレンジ向けとなるATI Radeon HD 3650と，ローエンド向けのATI Radeon HD 3470/3450は，それぞれATI Radeon HD 2600シリーズと同2400シリーズを置き換える存在だ。3Dパフォーマンスを左右するシェーダユニット（＝Streaming Processor）やテクスチャユニット，レンダーバックエンド（＝ROPユニット）周りは，置き換え対象となるATI Radeon HD 2000シリーズから変わっていない一方，接続インタフェースはPCI Express 2.0へ移行。また，DVIなどを置き換える目的で策定された次世代ディスプレイインタフェース「DisplayPort」をGPU側でサポートしており，AMDのOEMとなるカードベンダーが望めば，DisplayPortをサポートしたグラフィックスカードを提供できるようになっている。

ATI Radeon HD 3650の概要（左）と，GeForce 8600 GTに対してどれだけ優れているかを示したグラフ（右）。よく見るとGeForce 8600 GTはDDR2だったりするが，これはご愛敬か

ATI Radeon HD 3470/3450の概要（左）と，GeForce 8500 GTよりも高速と謳うグラフ（右）。ローエンドGPUで最も必要なのは十分なDirectXフィーチャーサポート（≒ゲームがきちんと動作すること）だが，それだけでなくパフォーマンスも高いというわけだ

Hybrid Graphicsの概要。左下にさりげなくAMD 780Gチップセットのロゴも配されている

　さらに，最下位モデルとなるATI Radeon HD 3400シリーズでは，グラフィックス機能統合型チップセット側のグラフィックス機能とCrossFire動作させられる「Hybrid Graphics」がサポートされた。これはNVIDIAが先に発表した（「Hybrid SLI」の1機能である）「GeForce Boost」と似たような機能で，AMDの次世代グラフィックス機能統合型チップセット「AMD 780G」（開発コードネーム「RS780G」）と組み合わせることで，CrossFire動作が可能になるというもの。CrossFireを有効化すれば最大1.8倍のスケーリング効果が得られ，無効化すれば最大4ディスプレイ出力が利用可能になるという。

　AMDによるカードの想定売価はATI Radeon HD 3650が79〜99ドル，ATI Radeon HD 3470/3450は順に59〜65ドル，49〜55ドル。このほかスペックの詳細は表1，2にまとめたので参考にしてほしい。ピンク地を敷いたのが今回発表された新製品，白地が置き換え対象となるATI Radeon HD 2000シリーズのGPUだ。

※1　GDDR3版は動作クロック1.6GHz相当，グラフィックメモリ容量256MB。GDDR2版は同1GHz相当で，3パターンのメモリ容量ラインナップが存在する ※2　カードベンダーによって異なる ※3　ATI Radeon HD 3600シリーズはAMDによる予想実売価格，ATI Radeon HD 2600シリーズは2008年1月23日現在の実勢価格

※1　フルHDビデオアクセラレーションに制限あり ※2　ATI Radeon HD 3400シリーズはAMDによる予想実売価格，ATI Radeon HD 2400シリーズは2008年1月23日現在の実勢価格

基本的には小粒な拡張となるHD 3000シリーズ

HD 2000よりやや高め程度の市場価格で登場へ

ATI Radeon HD 3600/3400シリーズのまとめ。UVDに拡張があると記されている

　4Gamer的にはそれほど重要でないため，さらりと流すに留めるが，ビデオ再生機能に関して「ATI Radeon HD 2400シリーズだとフルHD解像度ビデオの完全なハードウェアアクセラレーションを行えなかったのに対し，ATI Radeon HD 3400が搭載する“Gen.2”UVDベースのAvivo HDでは可能になった」など，細かい部分では革新のあったATI Radeon HD 3000シリーズ。
　しかし，こと3D性能に関する部分について述べるなら，シェーダユニット周りを見て分かるように，変更は小規模である。事前説明会でAMDがアーキテクチャについてまったくといっていいほど何も語らなかった（※スペック表はレビュワーズガイドを基に作成している）ことからしても，ATI Radeon HD 2000のGPUダイをシュリンクさせつつ，PCI Express 2.0とDirectX 10.1へ対応させたもの，それ以上でも以下でもないというのが，ゲーマー的には正しい認識だろう。

　2008年1月を迎えてATI Radeon HD 2600/2400搭載グラフィックスカードは大幅に値を下げているが，AMD関係者によれば，ATI Radeon HD 3650/3470/3450搭載カードは，置き換え対象より若干高い程度の店頭価格で国内市場に登場する見込みとのこと。これからATI Radeonの下位モデルを購入するつもりの人にとっては，より新しい機能をサポートするHD 3000シリーズのほうが魅力的である可能性は高そうだ。
　とはいえ，本当にそうなのかどうかは，テストしてみる必要があろう。冒頭で述べているとおり，4GamerではATI Radeon HD 3650/3450リファレンスカードを入手し，さっそくゲームにおけるパフォーマンス検証を行っているので，興味のある人はぜひチェックしてみてほしい。