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[GDC2008 番外編]EAのプレス発表会でEA DICEの新タイトル3本が公開
EA DICE,つまりかつてのDigital Illusions Creative Entertainment(D.I.C.E.)といえば,日本ではバトルフィールドシリーズのデベロッパ。スウェーデンのストックホルムに本拠を置き,1988年からゲーム制作を開始していたが,2004年11月にEAに買収されて傘下に入り,EA DICEとなった。
当夜のカンファレンスでは,EA DICEの2008年のラインナップ,「Battlefield: Bad Company」「Battlefield Heroes」,そして「Mirror's Edge」についての紹介があらかじめ告知されていたが,1月31日に掲載した「奥谷海人のPCゲーム新作ガイド 2008」にもあるように「Battlefield 3」の制作がごく一部で噂されており,そちらの期待があったのも間違いない。とはいえ,事実としては「BF3の情報がリークされたという報道をEA/EA DICEが完全否定しなかった」程度の非常になんちゅうか,はっきりしない話であったのは確かで,結果から述べれば上記三作以外のタイトルへの言及はまったくなかったのである。やっぱりなあとは思うものの,うーん残念。よし見てろ,次はE3 2008だ,と雪辱を胸に誓う私なのであった。終わり。……と,終わってはいけなかった。
今回のカンファレンスには情報公開日が設定されており,Battlefield: Bad Companyは2月28日,残る二本は2月29日(いずれも北米時間)である。とはいえ,Bad Companyに関しては今のところXbox 360とPLAYSTATION 3での発売のみが決まっており,“PCゲーム情報サイト”であるわたくしども4Gamerとしましてはちと微妙。というわけで,PCタイトル2本の公開がオッケーとなった本日のタイミングで,3本まとめて紹介しようという魂胆である。EA DICEが2008年のリリースを予定しているタイトルとは,いかなるものなのだろうか?
カジュアルなオンラインFPSに変身した
Battlefield Heroes
2008年1月に突然発表された「Battlefield Heroes」は,ぶったまげたことにカジュアルなオンラインFPSに変身した。公式サイトに登録して無料のクライアントをダウンロードするだけでプレイ可能(インストールも必要ですよ,もちろん)というわけである。昨年(2007年)6月にお伝えした「Battlefieldオンライン」(仮称)とはどうやら別物らしいが,ちょっとはっきりしない。カンファレンスでは同作のシニア・プロデューサーであるBen Causins氏による解説が行われたが,とりあえず会場で公開されたムービーを見ていただきたい。
ゲームの概要については「こちら」と「こちら」に掲載した記事にもあるが,カンファレンスで明らかになったことをちょっと付け加えてみよう。
とっくにお気づきかと思うが,Battlefield Heroesでは「Royal Army」が第二次世界大戦の連合軍を,また「National Army」がドイツ軍をイメージしており,なんでも次期オリンピックの開催権を巡って戦闘状態に入ってしまったとのこと。うーむ,平和の祭典だというのに。
ルールは従来のバトルフィールドシリーズと同じく拠点制圧によるチケット戦。拠点をより多く,かつ長く占領しつつ敵を倒し,相手のチケットをいち早くゼロにしたほうが勝ちだ。マップ上にある戦車や戦闘機といった大型兵器に好き勝手に乗り込んで戦えるところもご同様。登場したのは,シャーマン風戦車とIV号戦車風戦車,そしてスピットファイア風とメッサーシュミット風の戦闘機である。従来シリーズの航空兵器の操縦の難しさに泣かされたプレイヤーも多いと思うが,今回は「あきれるほど簡単になった」とCausins氏。空中でエンジンを切ればそのままドーンと地面に着陸する。まるで墜落だが,着陸である。しかも,絵的にかなり変だが,両翼に兵士を乗せられたりして。
両陣営とも,選べるクラス(兵科)は今のところ,“Soldier”“Gunner”,そして“Commando”の3種類。それぞれ特技と特殊武器を持ち,Soldierは移動速度が速い万能型,重火器が扱えるGunnerは拠点の制圧にもってこい,そしてCommandoは姿を消す能力を持つ(見えない間,武器はナイフだけになる)ひっそり型というあんばい。さらに最高15までのレベルアップがあり,レベルが上がるごとに武器や能力がアンロックされるのだ。
9種類のラジオチャットに加え,いくつかのジェスチャー機能があり,敵を倒してその前で「あっはっは,ざまみろ」というときなどに使える。やるほうは面白いが,やられるとけっこう頭にきそうだ。アメコミ調で描かれた兵士や武器はコミカルで,出血表現や同士討ちもないというカジュアルさ。リスポーンも(予定では)5秒前後,大型兵器類も次々にリスポーンするので,スピーディーで息つく間もない戦闘が展開されるだろう。
と,駆け足で説明してしまったが,いかがでございましたでしょう? コアなバトルフィールドファンの中には目が点になっちゃった人もいるのではないだろうか。実は私もその一人だったわけだが,Causins氏の説明を聞き,プレイ画面を見るうちにこれはこれでアリなんじゃないかと思ってしまった。兵士のコミカルな動きに会場は爆笑の連続だったのだが,相手が人間である以上簡単に勝てるわけではなく,プレイはそれなりに難しそうな印象。マルチプレイFPSに長い経験を持つEA DICEだけに,非常に簡略になったとはいえゲームシステム面でもソツはなさそうだ。どのようなアイテムが販売される予定なのかは分からないが,ゲームの雰囲気に合った面白いものを期待したい。
日本でのサービスについては未定だが,欧米ではこの夏からスタートする予定だ。
一人称ながらFPSではなくアドベンチャー
Mirror's Edge
というわけで,Mirror's Edgeは,そんなEA DICEが久々に送り出す一人称視点のアクションアドベンチャー作品となる。カンファレンスでは,プロデューサーのOwen O'Brien氏がプレイ画面を見せながら解説を行った。対応機種はXbox 360,PLAYSTATION 3,そしてPCが予定されており,デモプレイにはXbox 360版が使われていたようだ。
舞台となるのは未来の都市。一見すると普通のビル街だが,ところどころに漢字のサインなどが見えたりして,O'Brien氏によるとアジアと欧米の都市を混交したイメージだ。
主人公の女性,Faithはランナーあるいはケーターと呼ばれる配達人だ。ぱっと見は分からないが,この時代は権威主義的な政府による人々への厳しい監視と情報統制が行われており,ちょっとジョージ・オーウェルの「1984年」を思わせる設定である。人々が必要とする情報は,彼女のようなランナーが違法に届けているのだ。
街のグラフィックスは,スクリーンショットにもあるように細かく描き込まれており,道路には車が行き交い,目を凝らせば歩行者の姿も見えてきそうだ。とはいえ,露出オーバー気味に白く飛んだ景色はどこか人工的で,作り物めいている。この白っぽい色合いはのちほど,ゲームにも影響してくる。
仕事を続けているうち,Faithの妹が何者かにさらわれる。それ以外にも不自然な出来事が数多く起き,彼女はそれらの事件の背後にある陰謀に立ち向かうことになるというのが,基本的なストーリーである。
「人間的なヒロインを描きたかった」とO'Brien氏は言う。これは,ストーリーの中で描かれるFaithの人間性だけでなく,彼女の動きもまた人間的であるということで,プレイヤーが彼女を操作するとき,まるで本当の人間を扱っているような感覚(Full body experience)を追求したゲーム性であるとのこと。イメージソースはドイツ映画「Lola rennt」(邦題 ラン・ローラ・ラン。1998年)のダイナミズムであり,またビルでもなんでも,あらゆる障害物を自分の肉体のみを使ってよじ登り,飛び越えていくスポーツ(というか,アートらしいが),Parkour(パルクール)にもインスパイアされている。
高所恐怖症の人なら一発でやられてしまいそうな場所を軽やかに移動するFaithだが,彼女の手足が大胆にスクリーンに表示されるのが特徴の一つ。「Tomb Raider」のような三人称視点なら,今,キャラクターがどういう体勢でどう動いているのか分かりやすいが,一人称でそれを表現しなくてはならないために,こうした手法が取られている。操作しているわけではないので感覚はよく分からないが,移動には慣性も付いており,助走を付けることでジャンプの飛距離が伸ばせたりする。ということは,ビルの縁で急停止すると,勢いがついているので止まりきれずに真っ逆さま,なんてことも起きるのかもしれない。
ミニマップなどは表示されないが,目的地点までのパスはスクリーンショットにもあるように赤く塗られている。白っぽい無機質な街にあって真っ赤なオブジェクトはよく目立ち,鮮やかな赤はまた生命感も表しているようだ。街はオープンエンドに作られており,好きなところに自由に行ける予定だが,デモプレイではその赤い道しるべに沿って進んでいった。「この箱の上に乗ってからパイプにぶら下がって移動し,張り出しに掴まってジャンプ」といったルート開拓のためのパズルもあるので,基本的には一本道になるような気がする。
やがて,警備員だか軍隊だか分からないが,敵に囲まれてしまうFaith。アタッシェケースはすでに仲間のランナーに渡しているので大丈夫だが,敵は容赦なく銃で攻撃してくる。フェンスを飛び越え,敵の背後に着地して蹴りを食らわすなどして対応していた彼女だが,どんどん追い詰められ,もうダメだと思ったそのとき,飛んできたヘリコプターに大ジャンプしてぶら下がり,難を逃れる……というところでデモプレイは終了した。
人間らしい人間の動きにフォーカスしたというアクションアドベンチャー,Mirror's Edge。確かにFaithの動きは面白く,ビルの谷間をピョンピョン飛び回るというテーマは斬新だ。撃ち合いばかりをテーマにしてきたFPSの新しい可能性に挑戦したいというO'Brien氏の試みが成功するかどうかは,今後のブラッシュアップ次第だろう。発売日および日本語版については,今後の情報をお待ちあれかし。
なんでもかんでもぶっ壊す問題兵士3名が大活躍
Battlefield: Bad Company
Battlefield: Bad Companyのセールスポイントは,なんでもかんでも破壊できるというところ。マルチプレイでそれが可能になるということは,マップが常に変化し続けるということである。シングルプレイでさえ,そんな風に何でもかんでも壊せると,例えば建物の破片が進行ルートを塞いだり,遮蔽物として使えなくなったりして,開発者によるプレイヤーのコントロールが難しくなる。マルチプレイでそのようなことができるのだろうか,というのが個人的な興味の中心。
カンファレンス後,試遊台が用意されていたのでちょっと遊んでみたが,実際にはそれほど「なんでもかんでも」ではなく,壊せないオブジェクトも割とあった印象を受けた。また建物の場合,例えば壁にロケット弾を命中させると,あらかじめ決まった部分がアニメーションによって破壊され,また砲弾などを食らって全壊モードになったときもアニメーションによって木っ端微塵になる。破片などもあまり残らないし物理エンジンもそれほど使っていないようだったので,これなら通信量や各プレイヤーの整合性にも問題は少ないだろうと思う。でも,「本当はすごいテクノロジーを使っているのです」と怒られては困るので,以上,あくまで遊んでみた私の感想として,一つ。
とはいえ,やはりこの「炎と破壊の饗宴」はプレイしていて単純に面白く,マルチプレイFPSもいよいよ新時代に突入したかも,という感慨がある。
今後,こうした「なんでも破壊できるシステム」に物理エンジンが導入され,よりリアルになっていくのがトレンドだと思われるが,私の予想はたいてい外れるので話半分で聞いていただきたい。
今回はシングルプレイにも力が入っており,中央アジアの某国を舞台に,問題兵士3名が任務を勝手に離脱して金の延べ棒を探すという,映画「Kelly's Heroes」(邦題 戦略大作戦。1970年)みたいなコミカルなアクションが展開する。前述のように,発売日が延期されて現在は未定だが,日本語版の予定もあるので,ぜひお楽しみに。PC版はないけど。
- 関連タイトル:
Battlefield Heroes
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ミラーズエッジ
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