テストレポート
55nm版GeForce 9800 GTを試す。今度こそ省電力化&HybridPower対応を実現
今回4Gamerでは,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンの協力で,GeForce 9800 GTを搭載するクロックアップ版グラフィックスカード「N9800GT T2D512-OC」を入手した。同製品は,搭載GPUの製造プロセスについてアピールされているわけではないが,4Gamerが入手した個体は55nm版GeForce 9800 GTを搭載していたので,GPU製造プロセスの微細化で何が変わったのか,さっそくチェックしてみることにしたい。
※本文にもあるとおり,「すべてのN9800GT T2D512-OCが55nmプロセス版GeForce 9800 GTを採用する」と明言されているわけではありません。仮にエンドユーザーの手にした個体が65nm版GPUを搭載していたとしても,筆者,4Gamer編集部,販売店,エムエスアイコンピュータージャパンはいずれも責任を負いませんので,この点は十分に注意してください。
MSI独自のカードデザインを採用した
N9800GT T2D512-OC
とにもかくにもクーラーを外してGPUコアを確認してみると,マーキングは「G92-280-B1」。2008年7月30日の記事で掲載した,65nm版GeForce 9800 GTや,「GeForce 8800 GT」では「G92-270-A2」だったので,A2からB1へと,リビジョンが変更されているわけだ。
ダイサイズは実測15.9×16.4mmで,同17.5×18.0mmだったA2リビジョンと並べて,確実に小型化している。
- GPUコア:600MHz→660MHz
- シェーダ:1500MHz→1625MHz
- メモリ:1800MHz相当→1900MHz相当
へと,それぞれ引き上げられている。
搭載するメモリチップはSamsung Electronics製GDDR3の「K4J52324QE-BJ1A」(1.0ns品)で,このあたりは先にテストした65nm版GeForce 9800 GT搭載カードと同じになる。
電源は4フェーズ仕様に |
搭載するメモリチップは1ns品 |
ちなみにGPUクーラーは一見したところ外排気タイプ風だが,実際には基板へ吹き付ける風量のほうが多く,ブラケットを通じた外部への排気はあまり行われていない。なお,冷却ファンの風切り音は筆者の主観だとさほど大きくなく,静音性に関しては不満のないレベルにあるよう感じられた。
ドライバおよびBIOSを揃えて検証
リファレンスクロックでの比較も実施
テスト環境は表のとおり。65nmプロセス版GeForce 9800 GTのデータに関しては,先に掲載したパフォーマンス速報のものを流用する。
環境を揃えるため,ドライバは「GeForce Driver 175.31」,マザーボードBIOSのバージョンは0403と,いずれも最新ではない状態で統一している点に注意してほしい。ちなみに,筆者が入手したN9800GTの製品ボックスに付属するグラフィックスドライバのバージョンも,GeForce Driver 175.31だった。
前述したように,N9800GTはクロックアップモデルとなるため,今回はNVIDIA製ユーティリティソフト「NVIDIA System Tools」(Version 6.02)を利用して,(ことによると55nm版GeForce 9800 GT搭載製品はクロックアップ版しかリリースされない可能性もあるが)動作クロックを65nmのリファレンスにまで下げた状態(以下,9800 GT[55nm])でもテストを行っている。
ちなみにN9800GTの製品ボックスに付属するグラフィックスドライバを利用すれば,NVIDIA System Toolsを使わずとも,GPUコア/シェーダ/メモリクロックの設定変更は可能だ。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠だが,65nm版GeForce 9800 GTのテスト結果も踏まえ,今回は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)とFPSの「Crysis」,しかも「標準設定」のみで検証を行う。また,比較対象となるグラフィックスカードは,製品名ではなく,「GeForce」を省略したGPU名で表記するが,65nm版GeForce 9800 GTは,55nmとの違いを分かりやすくするため,特別に「9800 GT[65nm]」とする。
55nmプロセスへの移行で消費電力が低減
同一クロック時の性能スコアは若干低めに
まず,プロセスルール微細化によって得られるメリットの一つ,消費電力の低減度合いから確かめたい。OSの起動後,30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークテスト実行時で最も高い値を示した時点を,それぞれ「3DMark06時」「Crysis時」として,電力変化のログを取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」から消費電力をチェックした結果がグラフ1である。
続いて,3DMark06を30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時とともに,GPU温度を測定した結果をまとめたのがグラフ2だ。
テストは,室温24℃の環境に置かれたバラック状態で行い,計測には,GPU温度測定昨日を持つ汎用汎用ユーティリティソフト「ATITool」(Version 0.27 Beta 3)を用いている。
さて,N9800GTが搭載するGPUクーラーはMSI独自のものであるため,リファレンスクーラーを採用する今回の比較対象と横並びの比較はできないが,N9800GTのGPU温度は高負荷時にも70℃を下回っている。2スロット仕様の面目躍如といったところだろうか。
気になるパフォーマンス計測結果はグラフ3〜7にまとめたとおり。グラフ4〜6に示したFeature Testの結果は,3DMark06のデフォルト設定(※1280×1024ドット,標準設定)でテストした結果となる。
興味深いのは,クロックダウンして65nm版9800/8800 GTと動作クロックを揃えたN9800GT(=9800 GT[55nm])のスコアが,やや低めに出ていることだ。「55nmプロセスルールの採用でパフォーマンスが低下した」というのは少々考えづらいため,MSIのオリジナルカードデザインが影響したと考えるのが妥当そうである。
HybridPowerの動作も確認
価格さえ下がれば……
というわけで,GeForce 9800 GTは,55nmプロセスへの移行によって,消費電力の低減を実現できているといっていい。
ただ,問題は価格だ。N9800GTの実勢価格は2万3000円前後で,これは,ブランドやGPUクーラーを問わなければ「ATI Radeon HD 4850」搭載グラフィックスカードを購入できてしまうレベル。GPUメーカーにこだわりがなく,純粋に「2万円台前半で,より高速なグラフィックスカードが欲しい」という人が,55nm版GeForce 9800 GTを選ぶ理由はあまりないと言わざるを得まい。
これが2万円を下回るようになれば,ミドルクラスのGeForceを求めている人達にとって,その存在意義は相応に増すだろう。GPU自体の製造コストは55nmプロセスルールの採用で少なからず下がっているはずなので,今後のプライスダウンに期待したいところだ。
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GeForce 9800
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