Turion X2 Ultraプラットフォームについて説明する,AMDのDirk Meyer社長兼COO
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2008年6月4日,AMDはCOMPUTEX TAIPEI 2008で,新プラットフォーム
「Turion X2 Ultra」を発表。同時にノートPC向けの“外付けグラフィックスカードボックス”など,次期グラフィックス製品を披露した。同発表会でデスクトップPC向け次世代GPU「RV770」(開発コードネーム)のスニークプレビューが行われたことは,
COMPUTEX 2008#08のレポートでお伝えしているとおりなので,本稿では,それ以外にもグラフィックス関連の話題が豊富だった同イベントの詳細をレポートしたい。
Turion X2 Ultraプロセッサのアーキテクチャ。CPUコアだけでなく,HyperTransport 3.0インターフェースやメモリコントローラもモバイル向けに最適化が図られている |
Turion X2 Ultraプラットフォームバッジ |
Turion X2 Ultraの正式名称は「AMD Turion X2 Ultra Platform」。これは「Puma」の開発コードネームで長らく知られてきた,ノートPC向けのプラットフォームだ。プラットフォーム名と同じデュアルコアCPU「Turion X2 Ultra」(以下,便宜的にTurion X2 Ultra CPUと表記)と,AMD 7シリーズチップセットで構成される。
Turion X2 Ultra CPUは,HyperTransport 3インタフェースやメモリコントローラなどをモバイル用途に最適化したプロセッサ。2個のCPUコアはシステム負荷に応じて,2分の1,4分の1のクロックへそれぞれ別個に切り替えられるようになっており,さらに「ATI Radeon HD 3200」グラフィックス機能を統合したチップセット
「AMD 780G」と組み合わせることで,既存のノートPC用プラットフォームと比べて3倍の3Dグラフィックス性能を得られ,HDビデオコンテンツのイメージクオリティは5倍に向上するという。なお,今回はプラットフォームの発表で,CPUやチップセットの詳細まで踏み込んだ説明はなく,「なぜ開発コードネームRS780MのノートPC用チップセットが,デスクトップ用のそれと同じ名前なのか。まったく同一のチップセットなのか」などは,現時点をもって不明のままである。
ATI Mobility Radeon HD 3000シリーズにこれまでなかったハイエンドモデルがついに登場。そのパフォーマンスは,ATI Mobility Radeon HD 3650の2倍に達するという
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ただもちろん,(デスクトップ向けチップセットと同じ名称であることから想像できるように)AMD 780GチップセットはHybrid Graphicsテクノロジーをサポートしており,AMD 780Gのグラフィックス機能と単体GPUとでATI CrossFireX(以下,CrossFire)動作を実現する
「Hybrid CrossFireX」や,3Dグラフィックスの負荷に応じて,内蔵グラフィックス機能と単体GPUを動的に切り替え,使わないときは単体GPUへの電力供給をカットできる
「PowerXpress」をサポート。発表会では,AMD 780G搭載のノートPCと,「Mobile Intel GM965 Express」を搭載したノートPCで「Half-Life 2」のフレームレートを比較するとともに,AMD 780GとATI Mobility Radeon HD 3450の組み合わせによるHybrid CrossFireXのパフォーマンスも披露された。また,Turion X2 Ultra採用のハイパフォーマンスノートPCには,同日正式発表となった
「ATI Mobility Radeon HD 3870」を組み合わせることを推奨するという。
ATI Mobility Radeon HD 3450を搭載したTurion X2 UltraノートPCでは,Hybrid CrossFireXによってAMD 780Gのグラフィックス機能比1.7倍の3D性能を実現可能。さらにPowerXpressを利用すれば,バッテリー駆動時に「3D性能を取るか,バッテリー持続時間を取るか」を選択できるようになるとAMDは謳う
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AMDによれば,Turion X2 Ultra CPUおよびチップセットはすでにPCメーカーやOEMベンダーに向けて出荷が始まっているとのこと。東芝やHewlett-Packard,ASUSTeK Computerなどから,Turion X2 Ultraプラットフォーム搭載製品は順次,市場投入される予定だ。
ASUSTeK ComputerのTurion X2 Ultra搭載ノートPC「M51Ta」。GPUにATI Mobility Radeon HD 3450を採用し,Hybrid Graphicsをサポートする |
こちらは東芝が参考出品した,13.3インチワイド液晶ディスプレイ採用の次世代ノートPC。製品名など,詳細は明らかにされなかった |
ついに登場なるか? 外付けグラフィックスカード
「FSC AMILO GraphicBooster」が公開される
AMDはさらに,ノートPC用の新しいグラフィックスソリューションとして,Fujitsu Siemensが開発した
「FSC AMILO GraphicBooster」を披露した。
FSC AMILO GraphicBooster。ATI Mobility Radeon HD 3870を搭載し,ノートPCとはExpressCard経由でPCI Express接続される
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ノートPCにデスクトップGPUのパフォーマンスをもたらすATI XGPテクノロジーも同時に発表された
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FSC AMILO GraphicBoosterは,AMDの
「ATI XGP」(XGP:Xternal Graphics Platform)テクノロジーを利用し,ATI Mobility Radeon HD 3870を搭載した“グラフィックスボックス”。AMDでグラフィックスビジネスを率いるRick Bergman(リック・バーグマン)上級副社長は,同製品がExpressCard経由でPCI Express x8接続されると説明する。現行仕様のExpressCardはPCI Express x1のサポートに留まることを考えると,FSC AMILO Graphic Booster側にPCI Expressマルチプライヤチップなどを搭載することで,x8動作を実現していると見るべきだろう。
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AMILO GraphicBoosterの側面(左)。ATI Mobility Radeon HD 3870を採用しているため,デスクトップGPUのように,大型のチップクーラーライクな冷却機構を筐体に搭載する必要はないようだ。もっとも,GPUには小型のチップクーラーが搭載されているような動作音だったので,ファンレスというわけではない。右はデモ機のディスプレイ出力 |
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PCとの接続にはExpressCardを採用。筐体にはUSBポートが二つ用意されていた |
外部ディスプレイインタフェースはDVI-IとHDMIの2系統で,デモでは3台のディスプレイと接続し,ノートPCのディスプレイと合わせた3画面出力で,「Microsoft Flight Simulator X」を実行していた。
3画面出力のデモ(左)。コンパクトタイプのデジタルカメラと比較した写真から分かるように,筐体はかなり小型にまとまっている(右)
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残念ながら,同製品の担当者が発表会に来ていなかったため,価格や発売時期などの詳細は明らかにならなかったが,小型軽量ノートPCでも高い3D性能を引き出せる製品だけに,期待は大きい。
発表レベルではすでにいくつか存在する同種の技術。今度こそ“形”になるといいのだが。