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  • 発表日:2008/06/19
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省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
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印刷2009/07/02 00:00

レビュー

省電力版「ATI Radeon HD 4830」搭載カードの不思議な仕様に迫る

XIAi AF4830-512XD3 Green

Text by 宮崎真一

»  何の前触れもなく市場に登場してきた,補助電源コネクタを持たない「ATI Radeon HD 4830」搭載グラフィックスカード。「基本的には通常版と同じスペックで,動作クロックが多少引き下げられているのではないか」という想像が通用しない注目の新製品を,宮崎真一氏が検証する。


XIAi AF4830-512XD3 Green
メーカー:エーオープンジャパン
実勢価格:9500〜1万円(※2009年7月2日現在)
画像集#002のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
 具体的な例が多いため,その一つ一つを挙げるのは避けるが,補助電源コネクタを持たないグラフィックスカードに対する需要は高い。とくに,ミドルクラスのGPUを搭載したモデルだと,3Dゲームをそこそこプレイできるレベルのパフォーマンスを持つため,4Gamer読者にも注目している人は多いだろう。
 そんな市場に,突如として登場してきた新製品が,「ATI Radeon HD 4830」(以下,HD 4830)を搭載する,AOpen(※正確には日本法人であるエーオープンジャパン)の「XIAi AF4830-512XD3 Green」である。本来なら補助電源コネクタを必要とするGPUを搭載しながら,補助電源コネクタ非搭載で登場してきた本製品は,いったいどのような特徴を持ったグラフィックスカードなのか。今回は,実際に店頭で購入した個体を使って,その正体に迫ってみたいと思う。


HD 4830なのにSP数800基!?

仕様の異なる2種類のカードが流通中


外部出力インタフェースは3系統用意される
画像集#003のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
 XIAi AF4830-512XD3 Greenのカード長は実測167mm(※突起部除く)で,「ATI Radeon HD 4670」(以下,HD 4670)のリファレンスカードと同サイズ。GPUクーラーは2スロット仕様で,メモリチップにヒートスプレッダは装着されていない。そのメモリチップはHynix Semiconductor製GDDR3「H5RS5223CFR-N0C」(1.0ns品)で,これもHD 4670のリファレンスカードと同じだ。
 外部出力インタフェースはD-Sub 15ピン,DVI-I,HDMIとなっている。

XIAi AF4830-512XD3 Greenを別の角度から
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画像集#008のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
搭載するGDDR3メモリチップ。Hynix Semiconductor製の512Mbit品を8枚搭載することで,グラフィックスメモリ容量512MBを実現する
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「ATI Radeon HD 4770」リファレンスカード(※写真上)と比較したところ。全長167mmということで,さすがに短い

 基本的なスペックは表1に示すとおりで,基本的に従来版(=通常版)HD 4830のそれを踏襲する……はずだった。しかし,実際のカードを見る限り,必ずしもそうではないようだ。

※1 AMDは「Render Back-Ends」と呼ぶことも多い
※2 2009年7月2日時点における実勢価格。4Gamer調べ
画像集#023のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在

 下に示したスクリーンショットは,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.3.4)を実行した結果で,左に示したのは,2009年6月25日にドスパラ 秋葉原本店(以下,ドスパラ)で購入したXIAi AF4830-512XD3 Green。右は,同29日にツクモeX.で購入したXIAi AF4830-512XD3 Greenだ。ご覧のとおり,ドスパラで購入した個体は,統合型シェーダプロセッサ「Stream Processor」(以下,SP)の数が,800基と表示されている。
 
GPU-Z実行結果。左はドスパラで購入した個体,右はツクモeX.で購入した個体のもので,SP数が640基と返されるべきところ,前者は800基となっている
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※2009年7月3日追記
 本記事に掲載したSP数800基版,640基版の出現については,あくまでも編集部が2009年6月25日,29日に購入した結果を示したものです。これらの差異については,エーオープンジャパンから出荷された時点で異なるSP数のものが混在していると思われ,それぞれの店舗で決まったSP数のものが購入できるわけではありませんのでご注意ください。

 800基というのは,「ATI Radeon HD 4850/4870/4890」と同じ。HD 4830のリファレンスと同じ,コア575MHz,メモリ1.8GHz相当(実クロック900MHz)という動作クロックは共通なので,SP数だけ異なっているわけである。
 両者の違いはどこかにないのか。いろいろチェックしてみたところ,製品ボックスやカードの外観にこれといった違いはなかったが,GPUクーラーを取り外して,GPU上の刻印を確認してみると,SP数が800基とされた個体は「215-0669075 D1」,640基とされた個体は「215-0669075」で,「D1」という記載の有無を確認できた。

上段が,ドスパラで購入したSP数800基版,下段がツクモeX.で購入したSP数640基版。製品ボックスは見る限りまったく同じで,カードデザインにも違いはないように見えるが,搭載するGPU上の刻印には,「D1」という表記があるかないかという差異が存在している
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 GPU-Zの返した値がどれだけ信頼できるかは後ほど検証するとして,GPU-Zが正しい前提で話を進めると,ドスパラで購入した個体は,新リビジョン版HD 4850の,動作クロックを落としたもの,ツクモeX.で購入した個体は,従来同様のHD 4830を,それぞれ搭載しているという推測ができそうである。

 ちなみに,TechPowerUp製のBIOS情報表示&カスタマイズツール,「Radeon BIOS Editor」(Version 1.21)でBIOS設定を確認する限り,グラフィックスBIOS(=VBIOS)の内容に違いは見られなかった。
 ちなみに,XIAi AF4830-512XD3 Greenのコア電圧は,Radeon BIOS Editorによると1.046V。HD 4830のリファレンスカードだと,最低クロック時のコア電圧が1.044V設定だったので,XIAi AF4830-512XD3 Greenは,GPUコアの動作電圧を抑えることで,補助電源コネクタの省略を実現したモデルとまとめられるだろう。

Radeon BIOS Editor実行結果。ブート時のコアクロックがなぜか625MHzに設定されているのは,HD 4850の名残だろうか。また,クロックテーブルを見る限り,省電力機能「ATI PowerPlay」は機能しない設定になっているようだ(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
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SP数800基版と640基版の両方をテスト

省電力版9800 GT&9600 GTとも比較


 テストのセットアップに入ろう。用意したテスト環境は表2のとおりで,今回入手した2枚のXIAi AF4830-512XD3 Greenはその両方で検証を行うこととし,以下,「省電力版HD 4830(800SP)」「省電力版HD 4830(640SP)」と書き分けることにする。

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 今回,比較対象として用意したのは,補助電源コネクタが不要なグラフィックスカードから,省電力版「GeForce 9800 GT」(以下,省電力版9800 GT)を搭載したGalaxy Microsystems製グラフィックスカード「GF P98GT/512D3/LOW POWER」と,省電力版「GeForce 9600 GT」(以下,省電力版9600 GT)搭載のZOTAC International製品「ZOTAC GeForce 9600 GT Eco Short」。また,HD 4830とATI Radeon HD 4770(以下,HD 4770),「ATI Radeon HD 4730」(以下,HD 4730),そしてHD 4670のスコアは,HD 4730のレビューで得られたデータを流用することをあらかじめお断りしておきたい。

画像集#018のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
GF P98GT/512D3/LOW POWER
外排気クーラー搭載の省電力版9800 GTカード。HDMI出力標準対応も特徴
メーカー:Galaxy Microsystems
問い合わせ先:info@galaxytech.jp
実勢価格:1万1500〜1万2500円(※2009年7月2日現在)
画像集#019のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
ZOTAC GeForce 9600 GT Eco Short
カード長193mm(※突起部含まず)の省電力版
メーカー:ZOTAC International
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
実勢価格:9000〜1万1000円(※2009年7月2日現在)

 テストは4Gamerのベンチマークレギュレーション7.0準拠となるが,スケジュール,そしてデータ流用の都合上,解像度1024×768ドットは省略し,「Left 4 Dead」「Company of Heroes」のテストも割愛する。


640SP版は通常版と同じ性能

一方,800SP版のパフォーマンスに注目


 まずはグラフ1,2の「3DMark06」(Build 1.1.0)から見ていこう。
 Stream Processorの仕様も,動作クロックも変わらない以上,当たり前といえば当たり前なのだが,省電力版HD 4830(640SP)のスコアは,通常版のHD 4830とほぼ同じ。一方,省電力版HD 4830(800SP)は,アンチエイリアシング,テクスチャフィルタリングともに無効化した「標準設定」,4xアンチエイリアシングと8x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」のどちらでも,HD 4830(640SP)やHD 4830と比べて明らかに高いスコアを出している。4〜8%という違いが測定誤差とは考えにくいため,GPU-Zの「SP数800基」というレポートは,間違いではなさそうだ。
 また,省電力版HD 4830(640SP)のスコアが,省電力版9800 GTとほぼ同じレベルで並んでいる点は興味深い。

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 「Crysis Warhead」の結果がグラフ3,4となる。Crysis Warheadは,グラフィックス描画負荷の高いFPSで,レギュレーションも高グラフィックス設定に振っているため,ミドルクラスGPUだと大きな差がつきづらい。ただ,それでも,省電力版HD 4830(800SP)が頭一つ抜け気味なのは見て取れるはずだ。

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 続けてグラフ5,6は,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果である。Call of Duty 4は,シェーダプロセッサ数がフレームレートを大きく左右するタイトルということもあって,省電力版HD 4830(800SP)と,省電力版HD 4830(640SP)の差が大きい。HD 4770は別格として,省電力版HD 4830(800SP)のポテンシャルも,相当なものである。

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 一方,RPGタイトル「ラスト レムナント」では傾向が若干異なる(グラフ7)。ラスト レムナントは,NVIDIA製GPUに有利なスコアが出やすいタイトルだが,やはりというかなんというか,3枚のHD 4830カードは,HD 4770と揃って,省電力版9600 GT程度のスコアに留まり,省電力版9800 GTの後塵を拝した。
 またここでは,省電力版HD 4830(800SP)と省電力版HD 4830(640SP)の間に,スコアの違いがそれほど生じていない。

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 最後に「Race Driver: GRID」(以下,GRID)の結果がグラフ8,9となる。ラスト レムナントとは異なり,ATI Radeonに有利なスコアが出やすい本タイトルだと,省電力版HD 4830(640SP)が省電力版9800 GTより高いフレームレートを叩き出すが,省電力版HD 4830(800SP)は,それよりさらに一段高い位置にいるのが分かる。

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PowerPlay無効によりアイドル時はやや高いが

アプリ実行時の消費電力は確実に低減


 補助電源を必要とせず,PCI Express x16インタフェースからの75W給電だけで動作可能なカードになったことで,通常版から消費電力はどれくらい下がったか。ログを取得できるワットチェッカー,「Watts up? PRO」から,システム全体の消費電力をチェックしてみたい。
 今回も,レギュレーションに従って,OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時として,それぞれの消費電力値を測定することにした。

ATI Catallyst Control Centerより。アイドル時でも動作クロックは575MHz未満に下がらない
画像集#020のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
 その結果をまとめたのがグラフ10だ。
 アイドル時から見てみると,省電力版HD 4830(800SP)はおろか,省電力版HD 4830(640SP)も,通常版HD 4830より消費電力が高く出ているが,これは,本稿の前半でも指摘したように,省電力機能であるATI PowerPlayが機能しておらず,アイドル時の動作クロックが下がらないためだろう。
 対してアプリケーション実行時で見てみると,省電力版HD 4830(800SP)と通常版HD 4830がほぼ同程度。省電力版HD 4830(640SP)はそれより10W前後低く,省電力版9800 GTと同等以下のスコアを実現している。SP数800基版は,さすがにリファレンスを上回るSP数を搭載した代償を支払わされているが,GPUコア電圧が下がった効果自体はあるわけだ。

画像集#035のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在

Radeon BIOS Editorから,ファン回転数設定をチェックしたところ(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
画像集#021のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
 省電力版HD 4830(800SP)と省電力版HD 4830(640SP)以外はGPUクーラーが異なるため,横並びの評価には適さないことをお断りしたうえで,3DMark06のGame Testを30分間連続実行した時点を「高負荷時」として,アイドル時ともども,CPUID製のモニタリングソフト「HWMonitor Pro」(Version 1.05)から計測した結果をまとめたものがグラフ11である。
 テスト時の室温は24℃。テスト用システムは,PCケースに組み込まない,バラック状態に置かれた状態のものだが,やはりというかなんというか,省電力版HD 4830(800SP)と省電力版HD 4830(640SP)では,前者のほうが消費電力は高め。とくに高負荷時では7℃も差がついている。
 なお,XIAi AF4830-512XD3 Greenが搭載するGPUクーラーだが,筆者の主観でその動作音をお伝えすると,「風切り音が耳につくほどではないが,決して静音とはいえない」レベル。ただ,この高回転が,それほど問題のないレベルにGPU
温度を落ち着かせているのも確かなので,このあたりは悩ましい。

画像集#036のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在



800SP版は補助電源なしモデルとして歴代最高性能

ただし現状,“狙い撃ち”はまず無理


 以上のテスト結果から明らかなように,省電力版HD 4830(640SP)は,補助電源コネクタなしのグラフィックスカードとして,歴代最高レベルの性能を持っていると述べても過言ではない。さらに,そんな省電力版HD 4830(640SP)を上回る性能を発揮する省電力版HD 4830(800SP)の存在感も大きく,しかも実勢価格は1万円以下で,コストパフォーマンスは良好だ。つい先日登場した HD 4730はいったい何だったのだろうか……。

画像集#022のサムネイル/省電力版「ATI Radeon HD 4830」を試す。SP数800基版と640基版の2モデルが混在
 ただし,同じ製品名で,SP数800基のモデルと,640基のモデルが混ざって販売されている点は要注意。序盤で紹介したように,製品ボックスやカードの外観からSP数を判断する方法がないのもユーザー泣かせである。
 今回は,ドスパラで購入した個体が800基版だったが,同店で販売されているものがすべて800基版だという保証や,ツクモeX.で販売されているものがすべて640基版であるという保証はどこにもない。こういう売り方はどうかと思うが,買う側からするとほとんどギャンブルだ。

 その意味において,現時点では,SP数が640基である前提に立ちつつ,800基版が手に入ったらラッキー,くらいのスタンスで購入するのが正解ではなかろうか。
 もっとも,消費電力面でのメリットを踏まえると,省電力版グラフィックスカードとして正しい位置付けの製品は640基版のほうではないか,という気はしないでもないが。

  • 関連タイトル:

    ATI Radeon HD 4800

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