テストレポート
GeForce 8200チップセットの3DパフォーマンスをAMD 780Gと比較する
……あれから3か月。ようやく一部マザーボードベンダーからGeForce 8200 mGPUベースのマザーボードが登場するに至った。今回は,BIOSTAR MICROTECH(以下,BIOSTAR)製の「TF8200 A2+」(以下,TF8200)を店頭で購入してきたので,ひとまずはパフォーマンス速報として,最も基本になる3D性能をチェックしてみたいと思う。
チップセットはHybrid SLIをサポートも
現時点では対応ドライバが存在せず
チップセット構成はGeForce 8200+nForce 730aとされるが,実際は1チップ。TF8200のノースブリッジには,GeForce 8200の開発コードネームと目される「MCP78S」の文字が刻まれている。
また,GeForce 8200 mGPUベースのチップセットに共通する機能面の目玉としては,「Hybrid SLI」が挙げられよう。Hybrid SLIは,下に挙げる2要素で構成されている。
- GeForce Boost:対応するローエンドGPUとの組み合わせにより「mGPU+dGPU」(dGPU:Discrete GPU,単体GPUを意味する“NVIDIA語”)構成でのNVIDIA SLI(以下,SLI)を実現
- HybridPower:3DゲームをプレイするときはdGPUを使ってパフォーマンスを最大限に発揮し,一般的なWindows操作時はdGPUの電源をオフにしてmGPUを使うことで消費電力と動作音の低減を実現
冒頭で述べたように,GeForce 8200チップセットはローエンド向けだが,イメージとしては,DirectX 10世代グラフィックス機能統合型チップセットとして市場で先行する「AMD 780G」と似た存在と理解しておいて問題ない。GeForce 8200とAMD 780Gの主な違いは表1のとおりだ。
もっとも,現時点でHybrid SLIをサポートするドライバ――BIOS側の対応が必要となる可能性もゼロではないと思われるが,なんとも言えない――は公開されておらず,検証できない。そのため本稿では,GeForce 8200チップセット(≒GeForce 8200 mGPU)単体の3D性能を,AMD 780Gと比較するに留める。Hybrid SLI周りについては,ドライバの公開後,あらためて検証したい。
3+1フェーズ仕様? のTF8200
ASUS製AMD 780Gのベンチマークデータと比較
ヒートパイプ近くの白いスロットは,一見PCI Express x1だが,よく見ると天地逆に実装されている。対応アダプタは国内で販売されるのだろうか……? |
POST状態を示すLEDを,メモリモジュールとグラフィックス用に二つ用意している。動作時に二つとも点灯していれば問題ない。点滅/消灯はNGだ |
CPUソケットをはじめ,全体的に“端へ寄った”レイアウトだ。奥行きの短いPCケースでは,ケーブルの配線に少々難儀するかもしれない |
デジタルYCbCr&RGB(HDMI)またはデジタル/アナログRGB(DVI-I),アナログRGB(D-Sub)の2系統出力に対応する外部インタフェース |
さて,今回は速報ということで,TF8200のスコアを,2008年4月15日のレビューでお届けしたASUSTeK Computer製AMD 780Gマザーボード「M3A-H/HDMI」(以下,M3A-H)のスコアと比較することにしたい。そのため,解像度は800×600/1024×768/1280×1024ドットの3パターンとし,アンチエイリアシングや異方性フィルタリングを適用しない「標準設定」のみでの検証となる。
また,4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2をベースとしたテストは「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06),「Crysis」「Company of Heroes」に絞り,さらに「Crysis」のグラフィックスオプションはすべて「低」とした。一方,ローエンドのGPUでもプレイ可能なタイトルとして「三國志 Online」と「ファイナルファンタジーXI」をピックアップし,それぞれのベンチマークソフト「三國志 Online ベンチマークソフト」および「Vana'diel Bench 3」(Ver1.00)のテストを追加している。
このほかテスト環境は表2のとおり。TF8200はUMAメモリサイズを256MBまでしか確保できないため,512MB確保しているM3A-Hと比べると,スコアは若干不利になる可能性がある点に注意してほしい。もっとも,M3A-Hでグラフィックスメモリ容量を512MBと256MBで切り替えてもスコアに劇的な違いは生じなかったので,パフォーマンス速報という位置付けの本稿では大きな問題はないと考えている。
最新世代の3DゲームではAMD 780Gに歯が立たない
消費電力でもAMD 780Gが相対的には有利
というわけで,まずグラフ1は3DMark06の総合スコアである。ご覧のとおり,どの解像度でもAMD 780G搭載のM3A-Hが大きくリードしており,TF8200のスコアはその7割弱となっている。UMAで確保されているグラフィックスメモリ容量の違いを差し引いても,圧倒的大差といって差し支えないだろう。
ちなみに,あくまで参考値だが,2007年5月9日の記事で「Athlon 64 X2 4800+/2.5GHz」とPC2-6400 DDR2 SDRAM 512MB×2という構成でテストした「GeForce 7050 PV」グラフィックス機能統合型チップセットのスコアは,800×600ドットで500にも届かなかった。それと比べてGeForce 8200 mGPUが大きくスコアを伸ばしているのは間違いないが,AMD 780Gと比べるとパンチの弱さも否めない。
このほか,CPU ScoreやFeature Test結果をグラフ2〜5にまとめてみた。低負荷では健闘するGeForce 8200 mGPUだが,高負荷になるとAMD 780Gが有利になる傾向が見て取れる。
実際のゲームタイトルから,CrysisとCompany of Heroesを見てみるが,ここでもAMD 780Gの圧勝(グラフ6,7)。とくにAMD 780Gが800×600ドットでかろうじてゲームになるスコアを出しているのと比べると,GeForce 8200 mGPUの非力さが目立つ。パフォーマンスはAMD 780Gの63〜77%程度だ。
グラフ8,9の三國志 OnlineとファイナルファンタジーXI,二つのタイトルではTF8200のスコアが若干持ち直した。ATI Radeon系はMMORPGで弱い傾向を見せるので,ある意味順当な結果といえるが,しかしここでもGeForce 8200 mGPUは描画負荷が高くなるとスコアを落としがちである。
最後に,ワットチェッカーでシステム全体の消費電力を計測してみよう。CPUの省電力機能は無効にした状態で,Windowsの起動から30分間放置した直後を「アイドル時」,3DMark06を30分連続実行して最も消費電力の高かった時点を「3DMark06実行時」,CPUだけに負荷をかけるべく,MP3エンコードソフト「午後のこ〜だ」ベースのベンチマークソフト「午後べんち」をやはり30分連続実行して最も消費電力の高かった時点を「午後べんち実行時」として,各時点のスコアをまとめたがのがグラフ10である。
マザーボードが異なることを考えると,8W程度の違いは無視できるレベルといえ,消費電力はほぼ互角と見るべきだろう。あえて優劣を付けるなら,「3Dアプリケーション実行時の絶対的な消費電力はGeForce 8200が有利だが,3D性能差を加味すると,性能の割にGeForce 8200の消費電力は大きい」といったところか。
マザーボード設計の影響には考慮の余地ありも
AMD 780Gとは立ち位置が異なる可能性が
もちろん,
- BIOSTAR製のAMD 780Gマザーボードと同様,TF8200がおかしなスコアを出しているだけで,もう少し差は小さい
- NVIDIAはGeForce 8200を「HybridPowerとの組み合わせが半ば前提の,デスクトップ操作用グラフィックス機能」と考えていて,3D性能でAMD 780Gと勝負する気はない
可能性はある。スケジュールの都合で,現時点でこれ以上は突っ込めないが,とくに後者については,Hybrid SLI対応ドライバが出てきてから,その是非を問う必要があるだろう。
ただ,いずれにせよ「マザーボード単体でローエンドGPU相当のパフォーマンスを実現する」というAMD 780Gのメッセージと比べると,GeForce 8200が“分かりづらい”のも確かだ。コストパフォーマンスを重視する人達はAMDを選ぶことになると思われ,ローコストのAMD製CPU向けマザーボード市場は,しばらくAMD製チップセットを軸に展開することになるのではなかろうか。
- 関連タイトル:
nForce 700
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