nForce 780a SLIのリファレンスボードを紹介するDrew Henry氏(GM,Desktop MCP Products,NVIDIA)
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IT&AV系展示会「2008 International CES」の開催を北米時間2008年1月7日に控えた1月6日,同展示会が開催される米ネバダ州ラスベガス市で,NVIDIAは報道関係者向け製品発表会
「CES Press Briefing」を開催した。ここでは,NVIDIA初となる,DirectX 10世代グラフィックス機能を統合したチップセット
「nForce 780a SLI」や,それに付随する新技術などを一気に発表した。本稿では,その内容をまとめてお知らせしたい。
AMD製CPU向けのnForce 780a SLI
GeForce 8200 mGPU搭載のフラグシップ
シングルCPU対応のAMDプラットフォーム向けフラグシップ製品としては,「nForce 590 SLI AMD Edition」以来となるnForce 780a SLI(左)。右はnForce 200
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nForce 780a SLIは,AMDプラットフォーム向けとなる新型チップセット。「GeForce 8400」をベースとしたグラフィックス機能
「GeForce 8200 mGPU」(mGPU:Motherboard GPU)と,サウスブリッジ機能を1チップにまとめた製品だ。
「nForce 780i SLI」でも採用された「nForce 200」チップとの組み合わせにより,PCI Express 2.0 x16 ×1,PCI Express 2.0 x8 ×2による「3-way NVIDIA SLI」(以下,3-way SLI)もサポートし,2008年1月時点のフラグシップ製品と位置づけられる。
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HybridPowerのイメージアイコン |
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GeForce Boostのイメージアイコン |
GeForce 8200 mGPUのストリーミングプロセッサ数や動作クロックは明らかになっていないが,nForce 780a SLIに関しては,このグラフィックス機能と単体グラフィックスカードの組み合わせでSLIを実現する
「Hybrid SLI Technology」(以下,Hybrid SLI)の実装が明らかになった。
Hybrid SLIは,ユーザーの使用状況に応じてチップセット側のグラフィックス機能とグラフィックスカードを切り替え,省電力性能とパフォーマンスを両立させる
「HybridPower」と,内蔵グラフィックスとグラフィックスカードの組み合わせでSLIを実現する
「GeForce Boost」の二つの機能からなる。
HybridPowerは,メールチェックやWebブラウズなど,日常的なWindows使用環境において,PCI Expressインタフェースへの電力供給をオフにし,チップセット側のグラフィックス機能のみを駆動させることで,消費電力と動作音の大幅な低減を図るものだ。逆に,ゲームプレイ時はチップセット側のグラフィックス機能をオフにし,グラフィックスカードによるレンダリングに切り替えられる。
Hybrid SLIの省電力機能であるHybridPowerの仕組み。3Dゲームなど,グラフィックスパフォーマンスが要求されるときはグラフィックスカードを,一般的なWindowsのアプリケーションではチップセット側のグラフィックス機能を使い分けることで,パフォーマンスと省電力性能を両立する。また,同技術はSLIとも組み合わせられる
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nForce 780a SLIは,ハイエンドのゲーム環境をターゲットにしていることもあり,モード切替はWindows Vistaのタスクバーから手動で行う仕様だ(※Windows XPには非対応)。Windows Vistaの電源管理にHybridPowerの項目が入るため,ユーザーが望んで,かつ適切な設定を行えば,自動的に切り替わるようにできるという。
HybridPowerの設定画面(左)。動作切り替えはタスクバーから制御できるようになる。また,Windows Vistaの電源管理と組み合わせれば,システムアイドル時などにはチップセット内蔵グラフィックスに自動的に切り替えられるようにもできる(右)
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グラフィックス機能の切り替えには,PCのシステムを監視するシリアルインタフェース「SM Bus」(System Management Bus)を採用しており,HybridPowerでは,グラフィックスカードの出力もチップセットを通すことになる。そのため,ディスプレイインタフェースはチップセットの仕様に左右されることになる。例えばnForce 780a SLIの場合だと,“デジタルYCbCr&RGB(HDMI)またはデジタル/アナログRGB(DVI-I)”と“アナログRGB(D-Sub)”の2系統サポート。よって,デジタル接続の液晶ディスプレイを2台利用したいという用途には対応できない。
HybridPowerにおいて,ディスプレイはチップセット側,すなわちマザーボード上のディスプレイ出力に接続する必要がある。グラフィックスカードの描画結果もPCI Express 2.0 x16レーンを通じてチップセットに送られ,出力される |
ローパワーモードとなるチップセット側のグラフィックス機能による動作に切り替えた場合,グラフィックスカード側にあるグラフィックスメモリのデータはメインメモリにコピーされ,素早い描画切り替えを実現する |
さらに,HybridPowerに対応するためには,グラフィックスカードがSM Busに対応したり,グラフィックスデータをPCI Expressインタフェースでチップセットへ転送できるようにしたりといった,回路上の変更が必要となる。発表会でHybrid SLIについて解説した,NVIDIAのTom Petersen(トム・ピーターセン)氏いわく「次世代GPUを待つ必要がある」とのことだ。
GeForce Boostの動作(1)。まずCPUから描画命令が二つのグラフィックスチップ/コアに伝達され,それぞれでレンダリング処理が行われる
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一方のGeForce Boostは,グラフィックス機能統合型チップセットと単体グラフィックスカードの組み合わせでSLIを実現する技術だ。こちらは,HybridPowerと異なり,グラフィックスカードまたはマザーボードのグラフィックス出力,どちらのディスプレイインタフェースを利用するか選択できるのが特徴だ。ただし,GeForce Boostはあくまでもローエンド――NVIDIAのいう「メインストリーム」――グラフィックスカードとの組み合わせがターゲットになっており,現時点での対応モデルは,GeForce 8500 GTとGeForce 8400 GSの2モデルのみとなる。
GeForce Boostの動作(2)(3)。(1)の描画結果を,ディスプレイ出力するほうのGPU側にあるグラフィックスメモリへ転送し,出力する。その仕組みはHybridPowerとも共通する部分が多い
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Hybrid SLIの対応状況。HybridPowerについては,次世代グラフィックスチップの登場を待つ必要がある(※クリックすると拡大し,チップセット側を含むスライド全体を表示します)
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しかしNVIDIAは,そんなGeForce Boostを含むHybrid SLIをノートPCではなく,ハイパフォーマンスデスクトッププラットフォームに実装した。この真意について,同社でチップセットビジネスを統括するDrew Henry(ドリュー・ヘンリー)氏は「Hybrid SLIは,競合他社製品に対するNVIDIAチップセットの大きな利点であり,新しい資産となる」と説明する。確かに,HybridPowerの採用により,消費電力の大幅な増大を招く3-way SLIや,ハイエンドグラフィックスカードを搭載するシステムが抱えるノイズの問題に対応できるようになったのは間違いない。
またNVIDIAは,HybridPowerを応用して,
マルチGPU環境で駆動するGPUの数を制御することも視野に入れている。ハイエンドゲームシステムでも,動的にグラフィックスカードを制御する技術として進化していく可能性を秘めているのだ。
HybridPowerが真っ先にデスクトッププラットフォームに実装されたのは,マルチGPU環境における消費電力と動作音の増大へ対応する必要があったのも一因だ
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もっとも,Hybrid SLIはそもそも省電力性と高い3D性能を両立する必要のあるノートPCのために考案された技術。2008年第2四半期以降には,ノートPC用プラットフォームにも導入の見込みとなっている。
3-way SLIのキモ
「nForce 200」の詳細が明らかに
発表会では,nForce 780a SLIに合わせて,nForce 200の詳細も明らかになった。
nForce 200はPCI Express 2.0ブリッジチップだが,前出のPetersen氏は「nForce 200にはいくつか特許がらみの案件があり,nForce 780i発表時には詳細を発表できなかった」と断ったうえで,PCI Express 2.0ブリッジ機能に加え,
SLIのパフォーマンスを向上させるための新機能が追加されていると述べる。
nForce 780a SLIのブロックダイヤグラム。65nmプロセスで製造されたGeForce 8200 mGPU(グラフィックス機能統合型MCP)とnForce 200(PCI Express 2.0ブリッジチップ)の組み合わせで,3-way SLIに対応する。なお,Intelプラットフォーム向けチップセットのnForce 780i SLI同様,ESAもサポート
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Tom Petersen氏(Director, MCP Technical Marketing, NVIDIA)
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nForce 780a SLIでは,MCPとnForce 200の間をPCI Express 2.0 x16で結ぶが,同チップセットが採用するPCI Express 2.0 x16 ×1とPCI Express x8 ×2という構成では,3-way SLI時にMCPとnForce 200の間の帯域幅が不足してしまう。そこでnForce 200には,GPU間で行われるデータのやりとりをnForce 200内でバイパスさせる
「Point to Write Short」機能を搭載。MCPにいったんデータを書き戻すことなく,グラフィックスカード間の連携ができるようにしている。
さらにnForce 200では,CPUからグラフィックスチップに与えられる命令を共有可能にする
「Broadcast」機能も備える。SLI動作時には,同じ描画命令がCPUから複数のGPUに与えられるわけだが,このとき,CPUとチップセット,GPU間の帯域幅を節約できるのだ。「nForce 780a/780i SLIでは,nForce 200が持つこれら新機能によって,SLI処理の効率化を果たし,マルチGPU環境の性能を最大限引き出せるようにしている」とPetersen氏は説明する。
nForce 200には,Point to Write ShortとBroadcastの両機能が実装されている。Point to Write Shortは,複数のグラフィックスチップ間のデータ転送を,MCPを介さず,nForce 200内で完結することを可能にするもの。一方,Broadcast機能はCPUから各グラフィックスチップに送られる命令を,nForce 200が一元管理することで,CPUとグラフィックスカード間のデータ転送効率を引き上げる。これにより,3-way SLIなどのマルチグラフィックス環境でも,シームレスなパフォーマンスアップを図ることができるというわけ
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GeForce 8200のブロックダイヤグラム。基本的な構成は(ATXマザーボードに最適化された)nForce 730aも同じだ
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ところでNVIDIAは,フラグシップとなるnForce 780a SLIに加えて,一般的な“2-way”SLIプラットフォームとなる
「nForce 750a SLI」,ローエンド向けの
「nForce 730a」を同時に発表。さらにmicroATXフォームファクタへ最適化したモデルとして,nForce 730aとほぼ同じ仕様だが,HybridPowerとGeForce Boostの両方をサポートする(チップセット製品名としての)
「GeForce 8200」もラインナップする。
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nForce 780a SLIのリファレンスボード。DVI-DとDsub,計2系統のディスプレイ出力を持つ。また,HDMIにはDVI−HDMI変換アダプタで対応可能だ |
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GeForce 8200チップセットを搭載したGIGABYTE UNITEDの「GA-M78UM-S2H」。こちらはDVI-IとHDMI,D-Subを標準装備する |
GeForce 8200 mGPUの3Dパフォーマンスに関しては,発表会で「Crysis」を動かしてみせるデモが披露されたが,エントリーレベルのDirectX 10環境としては十分な性能を発揮しているといっていいだろう(※下のムービー参照)。同グラフィックス機能には高解像度ビデオ再生のハードウェア支援を行う「PureVideo HD」も実装される。
なお,最後になるが,今回発表された新製品の基本仕様は下の表に示したとおりだ。
※nForce 780a SLIは「PCI Express 2.0 x16 ×2」,nForce 750a SLIは「PCI Express 2.0 x16 ×1」という構成も可能
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