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新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?
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印刷2019/01/25 00:00

レビュー

「旧37の正統後継」は買いか?

DHARMAPOINT ダーマタクティカルマウス DPTM39

Text by BRZRK


 2019年1月25日,DHARMAPOINT(ダーマポイント)の光学センサー搭載ワイヤードマウス「ダーマタクティカルマウス DPTM39」(以下,DPTM39)が発売日を迎えた。ラバーコート仕様の「DPTM39RC」と,上面カバーをUVコート,側面をドライサンドコートとした「DPTM39DS」の2モデル展開で,価格はいずれも5980円(税込)だ。

DPTM39RC(左),DPTM39DS(右)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?

 登場の経緯から注目を集めているDPTM39だが,PixArt Imaging製光学センサー「PMW3360」搭載モデルの新しい選択肢として,市場で存在感を示すことができるのか。本稿では「2019年1月発売の新製品」としてのDPTM39を評価していきたいと思う。

 テストに先立ってお伝えしておくと,DPTM39の主なスペックは以下のとおりだ。

●DPTM39の主なスペック
  • 基本仕様:光学センサー搭載ワイヤードタイプ
  • 搭載センサー:PixArt Imaging製「PMW3360」
  • 主要ボタン数:6個(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左サイド×2,DPI変更ボタン)
  • メインボタン用スイッチ:オムロン スイッチアンドデバイス製「D2FC-F-7N(10M)」
  • トラッキング速度:250 IPS
  • 最大加速度:50G
  • フレームレート:未公開
  • 画像処理能力:未公開
  • トラッキング解像度:100〜12000 CPI(※100刻み)
  • レポートレート(ポーリングレート):125/142/166/200/250/333/500/1000Hz
  • データ転送フォーマット:未公開
  • リフトオフディスタンス:調整可能
  • オンボードフラッシュメモリ:搭載
  • LEDイルミネーション:非搭載
  • 実測本体サイズ:68(W)×124×39(H)mm(※突起部含まず,公称値も同じ)
  • 実測本体重量:127.5g(※ケーブル含む,公称値は120g),90g(※ケーブル含まず)
  • マウスソール:PTFE
  • 公称ケーブル長:1.8m
  • 対応OS:Windows 10・8.1・7
  • メーカー想定売価:5980円(税込)
  • 保証期間:1年間


※2019年1月29日追記:
 再テスト結果を踏まえ,クリック遅延の段落を更新しました。初出時原文の原文も残してありますが,「発売時点の評価」としては新しいほうのデータを参照してください。



IE3.0クローンとなるオリジナルの「旧37」を最新世代のセンサー搭載で復活させたDPTM39


新生DHARMAPOINTがリリースした“新37”(左)と,旧DHARMAPOINT時代のDRTCM37(右)。左右メインボタンのデザインからして異なる
画像集 No.003のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?
 テストに先立ってごく簡単に振り返っておくと,開発チームの解散をもって2013年に終了した旧DHARMAPOINTには,マウスにいくつか人気製品があった。その1つが,当時の国内コアゲーマーと共同開発し,小型版「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE3.0)的な存在として登場した光学センサー搭載ワイヤードマウス「DRTCM37」(と,そのレーザーセンサー搭載バリエーションモデルである「DRTCM38」)だ。

 ソリッド傘下として復活した新生DHARMAPOINTは,「ダーマタクティカルマウス DPTM37BK」(以下,DPTM37BK)でそんなDRTCM37(以下,旧37)の復活を目指したが,失敗。その反省を踏まえ,「正統後継」として1から開発し直した結果が今回のDPTM39となる。
 これ以上の細かな話は,4Gamerが過去2回にわたって実施したインタビューに詳しいので,ぜひチェックしてほしい。

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[2019/01/19 00:00]
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[2018/04/21 00:00]

「IE3.0クローンだが小さく,そして左右メインボタンはセパレート型」という旧37のデザインが戻った。個人的にはこれだけでけっこうな感動がある
画像集 No.004のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?
 というわけで実機だ。
 今度こそ旧37に戻すというデザインコンセプトで誕生した製品だけに,その外観は(筆者も開発に参加した)旧37そのものという印象を受ける。“新37”たるDPTM37BKでは上面カバーと左右メインボタンが一体化していたり,左右メインボタンが本体から突き出ていたりしたわけだが,ボタンはセパレート,突き出ていた部分も筐体に沿う形となった。本来あるべき姿に戻ったといったところか。

4Gamerの比較用リファレンスマウス「Gaming Mouse G500」と並べたところ。「日本人の手に馴染みやすい,小型サイズ」を追求した旧37を踏襲しているだけに,Gaming Mouse G500と比べると一回り小さい
画像集 No.005のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか? 画像集 No.006のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?
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 そんなDPTM39を新モデルらしくしているのは,旧37とは異なる,2種類の表面コーティングだ。冒頭でもお伝えしているとおり,DPTM39は,上面および側面カバーがいずれもラバーコート仕様のDPTM39RCと,上面カバーをUVコート,側面をドライサンドコートとしたDPTM39DSの2モデル展開となっている。2モデル展開で色を変えたり,サイズを微妙に変えたりというのはよくあるが,表面コーティングのみの違いで2モデルというのはなかなか面白い。

上がDPTM39RC,下がDPTM39DS。並べてみると確かに違うが,遠目で区別するのはちょっと難しいだろう
画像集 No.008のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?

 実際に握ったときの印象だが,まず,全面ラバーコーティングされたDPTM39RCは,表面がサラサラというかスベスベした手触りで,多少手汗をかいていてもベトつかず,しっかりと握り込むことができる。
 上面UVコートと側面ドライサンドコートのDPTM39DSだが,まずUVコートのほうは,(DPTM39RCがまだ新しいからということもあるだろうが)DPTM39RCのラバーコートとの間で,手触りの違いはほぼない印象だ。ザラザラとした目の細かいヤスリのような感触を指先で感じることができ,指の接地面に対してしっかりと食いついて高いグリップ力を得られるドライサンドコートのほうが違いは分かりやすいので,店頭で短時間の比較を行う場合は,上面カバーではなく,側面で比較したほうがいいとは思う。

 実際に数日使い込んでみると,DPTMRCのほうはテカリが目立ち,握った感触も変わってくる。汚れが目立ちにくいので,目に見えた汚れがなくても定期的にウェットティッシュで手入れをするのが長持ちさせるコツだろう。
 DPTM39DSのほうは,数日レベルだと使い勝手に違いは出ない。ただ,素材的には,上面カバー部の握った感触は変わらない一方,ドライサンドのほうは中長期的に必ず削れてくるので,そこをどう判断するかといったところだ。もっとも,旧37のような「1〜2週間も使っているとドライサンドが削れてくる」ようなことはDPTM39DSだと生じていないので,その点では安心している。

DPTM39RC(左)とDPTM39DS(右)。新品の状態だと,上面カバーの手触りで違いを感じるのは難しい。店頭でチェックするときは側面を重点的に触り比べよう
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 なお,実際に「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」や「Project Warlock」といったFPS/TPS,「Heroes of the Storm」といったMOBAで2種類のDPTM39をプレイし続けてみたが,上で述べた「素材感の違い」以上の,プレイフィールにおける決定的な違いは感じなかった。なので純粋に好みで選んでしまっていいように思う。

 以上を踏まえて形状の話に移るが,ここは世に多くある「IE3.0クローン」マウスと比べて,何かが劇的に異なるわけではない。
 左側面は前後中央に向かってゆるやかに凹んだ形状となっており,そんな前後中央部のすぐ上にサイドボタンがあるというデザインだ。左サイドボタンの実測サイズは本体奥側(=左右メインボタン側)が全長約19mm,約7.5mmで,手前側(=「DP」ロゴ側)が全長約29mm,幅約7.5mm。厚みは前後ともに約2mmで,本体から親指を滑らしたとき,高低差のおかげでボタンの位置をしっかりと把握できる。

左側面の凹み方はいかにもIE3.0クローンといったところ。サイドボタンは奥側が大きな凸型なのに対し,手前側はどちらかというとフラットに近い,丸みを帯びた形状になっていた
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 右側面も左側面と同様にマウスの後部が膨らんでおり,そこから中央にかけてゆるやかに凹みつつ前側へと伸びている。中央から前側にかけては上面部から底面部までは平面になっており,傾斜はほとんどなかった。

左側面と同様に右手用マウスとしてはスタンダードな形状だ。かなりフラット寄りなデザインは好みが分かれるかもしれない
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左右メインボタンにはホームポジションを示すガイドとなる小さな凹みがある
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 細部もチェックしておきたいと思うが,左右メインボタンのデザインは旧37そのものといった印象だ。先端に向けてゆるやかな丸みを帯びたデザインは,握っていて違和感がない。
 底面部は旧37と同様の「四隅に小さなソールを貼ったデザイン」が復活。センサーはほぼ中央にあり,その近くにはプロファイル変更用ボタンがある。

 ケーブルは布巻きタイプで実測幅約3mm。硬めで最初は梱包時の癖が残るが,指先で伸ばせばすぐに解消できる。ただ,ケーブル自体の硬さはどうしてもあるので,ケーブルアンカー(※マウスバンジーなどとも言う)などと組み合わせて,ケーブルを浮かせながら使うほうが操作はしやすいだろう。

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底面部。センサーの位置は中央よりも若干奥寄りの配置である。ソールは小さな楕円タイプのPTFEとなっている
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ケーブルは旧37,そしてDPTM37BKから変わっていないとのこと。確かに使った印象もそんな感じだ


日本人好みの持ちやすさはもちろん健在


 前段で触れたとおり,形状はどこまでもIE3.0クローンなので,右手での持ちやすさには期待が持てるところだが,今回も写真とキャプションで以下のとおりインプレッションをまとめておこう。
 テストした持ち方は,定番の「つかみ持ち」「つまみ持ち」「かぶせ持ち」と,かぶせ持ちをベースとしつつ小指と薬指を立たせ親指も立たせるという,筆者独自の持ち方ではないかと考えている「BRZRK持ち」の4パターンだ。

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つまみ持ちの例。親指は好きなところに配置し,小指と薬指は右側面の膨らんでいるところに配置するとホールドしやすい
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つかみ持ちの例。全体を握り込むことができるのでとくに不満もなく操作できた
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かぶせ持ちの例。こちらもに気になる点はなかった。いい意味で「普通に」操作可能だ
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BRZRK持ちの例。手が大きめな筆者には少し窮屈な印象もあるが,マウス本体を気持ち斜めに持つとストレスなく扱えた

 DPTM37BK,そしてオリジナルの旧37同様に,DPTM39も不満のないデザインだ。オリジナルの旧37がそうだったので当たり前と言えばそれまでだが,右手持ちゲーマーであればDPTM39の形状に不満を覚えることはないと断言してしまっていいだろう。


設定用アプリケーションはシンプル。注目のサーフェスキャリブレーション機能は発売に間に合わず


 DPTM37BKおよび旧37と同じく,DPTM39も,Windowsのクラスドライバで動作するが,センサーの調整やボタンのカスタマイズには公式サイトのダウンロードページから専用の設定用アプリケーション「DHARMA CONTROL」(ダーマコントロール,以下カタカナ表記)をダウンロードして導入する必要がある。
 DPTM39対応版はバージョン2.2。従来同様,非常駐型のアプリケーションとなっているため,設定を終えたら閉じてしまって構わない。

ダーマコントロール2.2。起動すると「BUTTON SETTING」タブを開いた状態で立ち上がる(※表示上は選択されていないが,これはバグだと思われる)
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 ダーマコントロールは上部にある3つのタブは,それぞれ以下の機能を持つ。

  • CPI SETTING & TOOL:最大2段階のCPI(≒DPI)設定を行ったり,レポートレートを設定したり,直線補正を調整したり,リフトオフディスタンス(Lift-off Distance,マウスをマウスパッドから何mm離すとセンサーの出力をカットするかの調整値)を調整したり,デバウンス(Debounce,意図しない連打の入力を防ぐため,指定した値より短い間隔で行った入力を無視する項目)を調整したりする
  • SCRIPT SETTING:ボタンに割り当てるキーマクロの登録,設定を行う
  • BUTTON SETTING:ボタンの割り当てをカスタマイズし,その結果を5つのプロファイルとして管理する

CPI SETTING & TOOLはセンサー設定周りをまとめて管理できる。左下にある[較正開始]ボタンを押すと,サーフェスキャリブレーション機能を呼び出せる(ようになるはずだ)
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 最も重要なのは間違いなくCPI SETTING & TOOLだ。1月19日掲載のインタビューで開発者の高山 安氏が予告していたとおり,筆者が入手したβ版ではメニューの左下にある「CALIBRATION」ボタンを押しても,マウスパッドに向けたセンサー出力の自動調整機能,いわゆるサーフェスキャリブレーション機能は使えなかった。ここは今後のアップデート待ちということになるだろう。

[較正開始]ボタンを押すと,PMW3360搭載モデルらしく「マウスを8の字状に動かしなさい」という指示が出る。ただし,筆者が入手したβ版の場合,このツールが機能せず,キャリブレーションは必ず失敗した
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 トラッキング解像度は100〜12000 CPIの範囲を100刻みで,USBレポートレート(ポーリングレート)は125/142/166/200/250/333/500/1000Hzの中からそれぞれ設定可能。直線補正は±30の範囲を5刻み,手動でのリフトオフディスタンス調整機能は「LIFT ADJUSTMENT」の「較正を使用しない」をチェックすることで,10〜50の範囲を1刻みで設定できるようになっていた。
 なお,設定内容は[SAVE]ボタンを押すと本体へ保存できる仕様だ。プロファイルごとに1つ登録できるので,最大では5つのセンサー設定を登録できることになる。

こちらはSCRIPT SETTINGを開いたところ。「SCRIPT EDITOR」に対して仮想キーボードで手動入力したり,右の「SCRIPT LIST」からスクリプトをドラッグアンドドロップで登録したりすることでキーマクロを登録できる。マウスボタンの押下やスクロールホイール操作も登録可能だ。スクリーンショットは「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」用のダッシュをSCRIPT LISTから登録したところ
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 ちなみに本体のスクロールホイール手前にある2連のLEDは,ボタンに近いほうが2段階のCPI設定インジケータだ。なら遠いほうはと言えば,BUTTON SETTINGで登録できる5つのプロファイルに対応したものとなっている。

本体上面にあるLEDインジケータ(左)と,CPI設定インジケータを切り換えた例(右)。色は赤と青である
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プロファイルインジケータを切り換えた例。こちらの発光色は赤,緑,青,紫,水で,BUTTON SETTINGSタブの色とリンクしている
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DPTM39のセンサー挙動は良好


 さて,懸案のセンサー性能検証である。DPTM39は定番のPMW3360を搭載しており,その実装もPixArt Imagingの推奨どおりだというのが新生DHARMAPOINTの言い分だ(関連記事)となると,そのテスト結果には期待が持てるわけだが,実際はどうだろうか。
 今回は以下のテスト環境および設定で検証を行っていきたい。

●テスト環境
  • CPU:Core-i7 7820X(8C16T,定格クロック3.6GHz,最大クロック4.3GHz,共有L3キャッシュ容量11MB)
  • マザーボード:MSI X299 TOMAHAWK(Intel X299)
  • メインメモリ:PC4-19200 DDR4 SDRAM 8GB×4
  • グラフィックスカード:MSI GeForce GTX 1080 GAMING X 8G(GeForce GTX 1080,グラフィックスメモリ容量8GB)
  • ストレージ:Intel SSD 600p(SSDPEKKW128G7X1,NVM Express 3.0 x4,容量128GB)
  • サウンド:オンボード
  • OS:64bit版Windows 10 Pro

●テスト時のマウス設定(PRO Wireless,PRO HEROとも)
  • ファームウェアバージョン:V1.00.09
  • ダーマコントロールバージョン:2.2β
  • DPI設定:400 / 800 / 1600 / 3200 DPI(※主に800 DPIを利用)
  • レポートレート設定:1000Hz
  • Windows側マウス設定「ポインターの速度」:左右中央
  • Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効

 最初は,DPTM37BKで無惨な結果に終わった,「MouseTester」のテスト結果だ。ここではDPTM39をARTISAN製マウスパッド「飛燕 MID」の上に乗せ,400,800,1600,3200とCPI設定を切り換えながら,マウスを一定のリズムで左右に振り,その挙動を確認することになる。ここでのリフトオフディスタンスは工場出荷時設定の11だ。

 その結果が下のグラフ画像だ。グラフはY軸のプラス方向が左への振り,マイナス方向が右への振り,横軸がms(ミリ秒)単位での時間経過を示す。
 CPI設定値ごとにグラフを2枚用意してあるが,どちらも青い点は実際にセンサーが読み取ったカウントである。一方,青い波線は左だとカウントを正規化したもの,右はカウント同士をつないだものとなるので,見やすいほうを参照してもらえればと思う。

400 CPI設定時。減速加速のタイミングでわずかに乱れるが,これは問題のないレベルだ
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800 CPI設定時。1か所小さく跳ねているものの,大きくカウントが飛ぶことはなく,比較的安定している
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1600 CPI設定時。相当にきれいな波形が得られていると言っていい
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3200 CPI設定時。800 CPI設定時と同様,1か所だけ小さく跳ねているが,それ以外は安定している
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 以上,センサーの追従性に大きな不安要素はないと言える。800 CPI設定時と3200 CPI設定時の小さな乱れが気にならないと言えば嘘になるが,この程度であればまず体感はできないはずで,実際,筆者もテストしていて違和感を覚えることはなかった。優秀な結果だ。

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 続いては手動設定でのリフトオフディスタンス計測だが,テストの前に1つお伝えしておくと,今回のダーマコントロール2.2ではLIFT ADJUSTMENTスライダーの挙動が逆になっていた。本来であれば,工場出荷時設定だと相応に大きな数字となっていて,数字を小さくすることによってリフトオフディスタンスを短くできるはずなのだが,前述のとおり工場出荷時設定は11で,20よりも大きな数字にするとリフトオフディスタンスが短くなりすぎてマウスの挙動に問題が出る,という状況なのだ。
 DHARMAPOINTに確認したところ,これはβ版ゆえの不具合とのこと。なので,今回は「リフトオフディスタンス設定が機能するか否か」を検証するために11と20でテストしてみるので,その点はお断りしておきたい。11という数字が製品版でいくつになるかは原稿執筆時点だと不明だが,「今回のテストにおける11の数字が工場出荷時設定のリフトオフディスタンス」と考えることは可能だろう。

 というわけで結果は表1のとおりだ。
 設定値11において,テストしたすべてのマウスパッドで4Gamerが合格ラインとする2.0mmを大きく下回ったので,良好と言っていいだろう。設定値を20まで“詰める”とさらに短くなっているため,設定スライダーは機能していることも分かる。

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 続いては直線補正だ。ここではWindows標準の「ペイント」で線を引き,入力に対しての補正の有無やそのかかり具合を確認する。
 今回は,「ANGLE SNAP」を工場出荷時設定の0(≒無効)と−30(≒最大)にした状態の両方で試したが,結果は下に示したとおりだ。

±0における結果。操作に対して補正がかかっているような違和感は一切なく,操作したとおりのラインが引けていると感じられた
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−30では真横に引いても30度傾いたようなラインになってしまい,まともに線を引くことも困難だった。いや,これ真面目に線を引こうとした結果なんですよ?
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 ANGLE SNAP機能は直線を補正するというよりも,机上スペースの都合でどうしても操作時に角度が付いてしまう人のための機能という印象だが,いずれにせよ,ゲーム用途では±0から変更する必要はない。

 最後は入力遅延のテストだが,初出時,DPTM39のスコアは「平均して0.1秒以上」と極めて遅いものになっていた。本件については4Gamerでも追試を行っていたが,結論から言うと,初出時に大きな遅延が出ていたのは,「4Gamerがレビュー用に入手したβ版ダーマコントロール2.2と,DPTM39の発売に合わせてDHARMAPOINTが公開したダーマコントロール2.2では,デバウンスの初期設定に違いがあった」ためだ。

 というわけで,「マウスをクリックしてから音楽制作ソフト上のシンセサイザが音を鳴らすまでの時間」をチェックするテストを,発売時点での公開版ダーマコントロール2.2で再実施した結果をお伝えしたいと思う。今回は,工場出荷時設定であるDebounce値16と,メーカー保証外の“オーバークロック設定”となる1とで,比較対象用として用意した「PRO Gaming Mouse」と「DeathAdder Elite」との間で比較したい。
 ざっくりとした計測方法は以下のとおりだ。

  1. テスト対象のマウスを定位置で固定する
  2. マイクスタンドに吊したRazer製マイク「Razer Seirēn」を,マウスの左メインボタンすぐ近くに置く
  3. Windowsから音楽制作ソフト「Fruityloops」を起動。同アプリ上にあるソフトウェアシンセサイザの鍵盤をクリックする
  4. クリック音をRazer Seirēnで集音しつつ,「XSplit Gamecaster」を使って,「Razer Seirēnで集音した音」と「Fruityloops上の鍵盤で鳴った音」をミックスし,映像として録画する
  5. 動画編集ソフト「AviUtl」で,音声をWaveファイルとして切り出す
  6. サウンド編集ソフト「Audacity」でWaveファイルを開き,クリック音とシンセサイザの音が出るまでの時間を計測する
  7. テストを連続30回行ったうえで,ブレ対策のため最初の5回をカット。6回めから30回めの平均を取ってスコアとする

 結果は表2のとおりで,Debounce値16だと,一般的なゲーマー向けマウスと比べて若干遅い程度,Debounce値1では最速クラスと比べれば一段落ちるが,一般的なゲーマー向けマウスとして標準的な程度の平均スコアになった。ただ,スコアには比較的大きなブレがあり,ここはマイナスポイントとして指摘する必要があるだろう。

画像集 No.056のサムネイル画像 / 新生DHARMAPOINTのマウス第2弾「DRTCM39」レビュー。「旧37の正統後継」は買いか?

 このテスト結果を基に確認したところ,このブレがファームウェアの問題に起因することを認識しており,修正に向けて動いているとの回答がDHARMAPOINTからは得られた。なので当面は若干遅めであることを許容するか,メーカー保証外の設定値でそこそこの遅延状況を確保するかしながら,ファームウェアのアップデートを待つことになるだろう。

※参考:入力遅延テスト考察,初出時原文

 結果は表2のとおりで,最近のゲーマー向けマウスと比べると遅い。プレイしていて違和感らしきものはないのだが,USBレポートレートを1000Hzに揃えた条件で,今回用意した比較対象と比べて4倍近く遅れており,ここがDPTM39の泣きどころかもしれない。
 なお,筆者は最初,何かテストをミスしたのかと思い,続けて3回テストし直したが結果は変わらなかったため,今回は初回のスコアを掲載している。ほかのテスト結果がよいだけに惜しいところだ。

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インタビューで予告されたとおりのアップデートが入った内部構成


 最後に,DPTM39を分解してみよう。DHARMAPOINTの高山氏はインタビューで一度サンプルを分解してくれているため,そのとき「変わる」と予告されていた部分を中心にチェックしてくことになる。

 さて,DPTM39はマウスの底面部後方にある2枚の楕円形ソールを剥がし,露出したネジをドライバーで取り外せば,上面カバーと底面部を分離可能だ。

上面カバーと底面部を分離させた状態。メイン基板とサブ基板の2枚構成になっており,両者はフレキシブルフラットケーブルでつながっていた
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こちらはインタビュー時のサンプルが採用していたメイン基板。20180518_V1.0なので,平山氏のインタビューが載ってから約1か月後くらいの基板といったところか
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 メイン基板の型番は31-50651-203/Aで,これはインタビュー時のサンプルと同じ。ただしその下にあるバージョン表記はサンプルの20180518_V1.0から最終製品版では20181102_V1.2に上がっていたので,ブラッシュアップが入ったという理解でいいだろう。
 光学センサーがPMW3360,マイクロコントローラが中国Holtek Semiconductor製の「HT32F52352」なのはインタビュー時に紹介したとおりだ。

メイン基板のクローズアップ。2018年11月2日に基板の最終バージョンが完成したと思しき刻印が目を惹く。割と最近である
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 左右メインボタンとセンタークリック用のスイッチはオムロン スイッチアンドデバイス製の「D2FC-F-7N(10M)」。1000万回のクリックに耐えるというタイプで,2000万回や5000万回などと謳う最近のゲーマー向けマウス中上位モデルと比べると見劣りしてしまうのはやむを得まい。

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左右メインボタンとセンタークリック用のスイッチはD2FC-F-7N(10M)。スクロールホイール用のロータリーエンコーダはTTCとなっている
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メインボタンのスイッチを押す機構は高山氏が「復活させた」と述べていたとおり,最終製品でもきっちり旧37タイプに戻っていた

 先のインタビューにおいて高山氏が「製品版でチェックしてほしい」と述べていたサブ基板は,本体手前側(=後方側)のスイッチに氏の言う「下駄」が履かせてあり,見るからに高い耐久性を期待できるものになっていた。

サブ基板(左)。サイドボタン用となるノーブランドのスイッチに注目すると,本体手前側(=後方側)のスイッチが台座の上に載っているのが分かる(右)
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メイン基板の底面側
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 以上,内部を見てみたが,DHARMAPOINTが予告したとおりの仕上がりになっていると言っていいだろう。ゲーマー向けマウスの内部構造としては極めてオーソドックスなので,ハードウェア設計的にもDPTM39は変なクセのない製品だと紹介してしまってよさそうである。

※注意
 マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。



“2度めの正直”。今度こそ旧37が帰ってきた


製品ボックス。「参九」の表記がDPTM39RCだと橙,DPTM39DSだと黄になっている
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 あのDHARMAPOINTが復活すると聞いて,大いに期待したところで登場したDPTM37BKは,近年まれに見るひどいマウスだった。旧37と同じ型番を採用しつつもまるで似ていない外観に時代遅れのセンサー,そしてお粗末なチューニングと,およそ褒める部分のないシロモノだった。
 だが,今回のDPTM39は違う。これこそが,旧37ユーザーの待ち望んでいた後継機だ。注目のサーフェスキャリブレーション機能が未実装で,入力遅延周りも要アップデートの部分があるのは残念なところで,準備できてから発売してほしかった気もするが,少なくとも,DPTM39のセンサー性能はPMW3360搭載機に期待されるレベルをクリアしており,工場出荷時設定のリフトオフディスタンスにも不満は一切ない。そして,微妙な使い勝手で選べる2モデル展開という,旧37にはなかった要素もある。

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 発売日時点の実勢価格は5980円前後と,メーカー想定売価ママだ。ミドルクラス市場における右手用マウスの新しい選択肢として,DPTM39は間違いなく考慮に値するだろう。旧37に関わった筆者としては,1セット購入して手元に置いておきたいと思う。

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