プレイレポート
「ハルカ -WONG-YI's stories-」プレイレポート:SF要素が加味された武侠MMORPGを遊んでみた
SFと武侠を融合させた
ユニークな世界観のMMORPG「ハルカ」
ハルカは,SFと武侠要素をミックスさせた世界観が特徴的なMMORPG。近日中にオープンβテストが行われる予定なので,今後の動向にも注目したい |
東京ゲームショウ2007に出展されたハルカのファーストインプレッションは「こちら」に掲載しているが,本稿では,先日行われたクローズドβテストの模様を,プレイレポート形式で紹介している。CBTに参加できなかったという人は,ぜひ目を通してほしい。
タイトルにもあるように,本作は香港の人気作家であるウォン・イー(黄易)氏のシリーズ小説をモチーフとしている。黄易氏の日本における知名度はそれほど高いとはいえないが,氏が得意とするSFと武侠をミックスさせた世界観は,現地では大きな支持を集めているとのこと。
ハルカでは,キャラクターメイクを終えると,近未来風の世界からスタートすることになる。プレイヤー扮する冒険者は,研究者のマー博士と共に,タイムマシンで中国の秦王朝へ向かう実験に参加するが,あるトラブルが発生し,二人は「秦」ではなく「随」の時代(大業十二年)へと飛ばされてしまう。
さらに運が悪いことに,タイムマシンは故障してしまい,すぐに元の時代へ戻ることはできない。そこで冒険者はマー博士と共に,当面過去の世界で生きることになるわけだ。
ゲームの舞台が古代中国ということもあり,世界観としては武侠系のMMORPGに比較的近い雰囲気だ。ここ数年で,日本国内でもそれなりの数の武侠系タイトルがリリースされているので,MMORPGに明るいプレイヤーならば,すんなりと受け入れられる世界だろう。
しかし,冒険者達は未来からやってきているわけで,ここがほかの武侠系MMORPGとは一味違う。なにしろスタート地点である拠点エリアには,古代中国の町並みの真ん中に,タイムマシンがどかんと鎮座しているのだ。その光景のインパクトたるや,並々ならぬものがある。
また,冒険者が着ている服装や,所持しているアイテムも近未来的なもので,秦の舞台にはまったくといっていいほどそぐわない。この二つの時代の奇妙な融合が,ほかの武侠系タイトルとは一線を画した,独特の世界観を醸し出しているのだ。
ゲームスタート直後,いきなりタイムスリップの実験台に選ばれてしまう主人公。左にいる白衣の人物がマー博士だ |
二人を乗せたタイムマシンは……。なんというかお約束の展開だが,このあたりが黄易氏らしさなのかもしれない |
辿り着いた先は,随の時代の揚州城であった。服装からして,周囲にまったくといっていいほど溶け込んでいない |
近未来的な要素を過去の世界へ持ち込むというアイデアは,ゲームシステム面にもしっかり反映されている。例えば,冒険者は最初から“PDA”を所持しており,これを通じていつでもゲーム内ヒントを参照したり,マー博士とやりとりしたりできる。また詳しくは後述するが,オートバイなどの乗り物や,合成用素材を自動採取してくれるロボットなども登場する。
もっとも,オートバイなどの便利なギミックを除いたゲームシステムの骨格は,一般的なクリックタイプのMMORPGだ。基本システムについては,キャラクターの移動はクリックで行い,戦闘時はF1〜F8キーにショートカット登録し,スキルを繰り出すという,まぁお馴染みのタイプである。世界観は珍しいものの,ゲームプレイそのものはオーソドックスなので,必要以上に戸惑うことはないだろう。
気になったスキルを
躊躇せずに試せる育成システム
各種スキルを発動させると,その名称(漢字名)が頭上に浮き出る。台湾生まれのタイトルらしい演出方法だ |
キャラクターは,モンスターとの戦闘やクエストを通じて経験値を取得し,レベルアップしていく。また,本作では“経験値”とは別に,“悟り”というリソースも同時に得られる。スキルはこれを使って習得していく。
スキルのジャンルを大別すると,「武器関連」,「精神関連」,そして「その他」の三つがある。拠点エリアには,スキルジャンルに対応した“師匠”というNPCが配置されており,それを利用して,新たなスキルの習得や,習得済みスキルの強化を行うのだ。
ちなみに,スキルの種類は数百ほど存在するようで,これらを教えてくれる師匠も世界中の拠点エリアに点在している。そのため,冒険者が強力なスキルを習得するには,師匠を探し求め,世界中を冒険しなければならない。
そのほか,本作のスキルシステムで特徴的なのは,各スキルのレベル上限が,種類によっては100〜150と非常に高く設定されていることだ。もちろん,スキルのレベルアップに必要な悟りの量は次第に高くなっていくが,その一方で序盤(低レベル)の間は,とても簡単に強化していける。ここで注目すべきは,さまざまなスキルを手軽に試せる環境が整っている点だ。
例えば武器関連のスキルでは,“剣,刀,拳,槍,棒”の5系統の中から,どれに注力するかを選ぶ必要がある。本作の場合はこれらの武器スキルついて,最初に習得できる5種類の全部を,いきなりレベル5くらいまで上げられる。そのうえで,5種類の武器を実際に試しながら,自分に合ったものをじっくり探せる。
本格的にスキルを強化する前に,例えば“拳”タイプは連続攻撃が強力だとか,“槍”タイプはリーチが長いだとか,そういった特徴を簡単に試せるのは,プレイヤーとしてはかなり嬉しい。
一般的なタイトルの場合だと,スキルポイントの再割り振りが行いにくいなどの理由で,悩ましい選択になる。またスキルポイントの割り振りを誤ってキャラを作り直したくなることもあるだろう。新たなスキルを手軽に試せる本作では,そういったストレスはあまり受けないのである。
ちなみにキャラクターは,最初から3000ポイントの“悟り”を持っており,レベルに見合った敵を一体倒すと,60〜90前後の悟りを獲得できる。さらに休息(瞑想)している間も,少しずつではあるが悟りを獲得していき,そのペースをアップさせるためのスキルも存在する。数千程度の悟りなら短時間で獲得できるのに,それでいてスキルのレベルアップに必要な悟りは,序盤では数十〜数百といったバランスなのだ。
躊躇せずさまざまなスキルを試しながら,レベルをがんがん上げていけるのは,想像以上に痛快だった。ここが本作の大きなアピールポイントといえるだろう。
武器関連スキルだけでも,これだけの数が用意されている。すべて漢字表記なので,よく見ると効果がなんとなく分かるものが多い |
“剛道”のスキルを習得したところ。本作はスキルが気軽に習得できるので,キャラクターを成長させる楽しさが満喫できる |
師匠を探すべく,古代中国全土を旅する。ローカライズの進捗状況は不明だが,現状でもそれなりに雰囲気が出ている |
武器のほかには,精神関連のスキルも重要だ。具体的には魔道/陽道/剛道の3系統があり,クエストを通じて一種類だけを専攻できる。もちろん,それぞれの道には別々のスキルツリーが用意されており,キャラクターの進む方向性は,どの道を選ぶかによって大きく異なる。本作にはいわゆるクラス(職業)といった概念は存在しないが,「道」がそれに相当するものだと考えてもいいだろう。
3種類の道を大まかに説明すると,“魔道”には遠距離攻撃や移動速度アップに関連したスキルが多い。“陽道”は,回復関連のスキルが多く用意されている,ヒーラー/クレリック的な道だ。そして最後の“剛道”は,自分が扱う武器をさらにパワーアップさせるスキルを得意とする。一つの道には2〜30種類のスキルが存在し,その気になればそれぞれレベル100〜150まで効果を高められるわけで,育成ボリュームは相当なものだ。
一度選んだ道を変更することは,おそらく不可能である。武器スキルも結果的には同様で,序盤は気軽に試せるものの,ゆくゆくは1〜2のジャンルに絞ることになるはず。したがって本作におけるキャラクターの大まかな方向性は,“5種類の武器”と“3種類の道”との組み合わせによって分類できる。たとえクラスシステムがなくても,キャラクター育成のバリエーションは幅広く用意されているので安心してほしい。
5種類の武器スキルによって,戦闘時のモーションはまったく異なる。これらのアクションもなかなか見ごたえがある |
スキル習得に必要な悟りは,ハイペースで獲得できる。ゲームに行き詰ったら,気分転換に新たなスキルを覚えるのも悪くない |
瞑想して悟りを開くというのは,いかにも武侠らしいアプローチだ。未来から来た主人公も,この世界にすっかり溶け込んでいる? |
「タイムスリップ」をどのようにして
ゲームシステムへと生かすかに注目
グラフィックスのクオリティはそこそこといった感じだが,要求されるマシンスペックも低めに設定されている。3D MMORPGの中では,ハードルは低いほうだ |
ゲームバランスに関しては,基本的にソロプレイでも十分に楽しめるようになっていた。休息時のHP回復効果がかなり高いため,「ポーションがぶ飲み」の必要性はほとんどない。
またクエストについても,大半は一人でクリアできる。戦闘中,近くのモンスターがリンクすることもなく,パーティプレイが必須となりそうな状況は,ほとんどなかった。
もっとも,パーティプレイ時には人数に応じて経験値ボーナスが得られるので,パーティプレイが好きな人でも十分楽しめるだろう。
戦闘時のアクション性については,戦闘開始後はオートアタックということもあり,それほどシビアではない。一方で,タイミング良くつなげてコンボ攻撃を行うスキルを序盤から習得できるため,戦闘は思いのほか単調にならない。戦闘中の忙しさの目安としては,「パーティプレイ中でもなんとかチャットができる」程度といえば,分かってもらえるだろうか。
そのほかさまざまな場面で,ルーチンワークの単調さを感じさせないような工夫が盛り込まれていた。例えばば屋外マップでは,同レベル帯を対象とした適切なモンスター/狩場が,常に複数用意されている。当然,それらの狩り場に応じたクエストも用意されていて,自然と,数多くの狩り場へ赴くことになる。同じ狩り場で同じ敵だけを倒し続けるというマンネリ感は,あまり感じない。
ちなみに,キャラクターのレベルアップに要する時間は,筆者個人の印象としては,一般的なクリックタイプのMMORPGと似たようなものだった。しかし,先述したようにスキルレベルをガンガン上げていけるため,キャラクターが成長していく実感や,その醍醐味は存分に得られる。
マップをダブルクリックすると,その場所まで自動的にキャラクターが移動してくれる。長距離の移動時には重宝するだろう |
死を覚悟してだいぶ先のエリアまで進んでみたが,モンスターもしっかりと配置されていた。完成度は比較的高い状態に思えるので,正式サービス開始は意外と近いかも |
揚州城だけでも数十種類のクエストを受けられる。単純にモンスターを倒すだけでなく,採取系やお使い系などバリエーションも豊富 |
これが噂の採取用ロボット。仮に離席状態でも自動で作業してくれるため,多くのプレイヤーが利用していた |
SF要素に目を向けてみると,“素材採取用ロボット”の存在が,とくに興味深かった。これを使うと,キャラクターが一時的にロボットの姿になり,その後はプレイヤーが一切操作せずとも,勝手に素材アイテムを集めてきてくれるのである。採取できる時間に制限はあるものの,どうやら10時間以上は使い続けることが可能だと思われる。
「マクロ操作」を禁じるのではなく,ゲームに適した形にアレンジし,積極的に取り込むというアプローチは,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」や「アリアスストーリー」をはじめ,徐々に見られるようになってきた。こういった仕様が,MMORPGというジャンルにどんな魅力を付与するのか。今後も注意深く見守っていきたいところだ。
また,素材アイテムを用いた合成システムも充実しており,CBTの段階でも,生産に必要なレシピや成功率などが,非常に見やすくまとめられていた。合成品の性能は,店売り品やモンスターのドロップアイテムよりも優れていることが多く,それを求めるトレードチャットも活発に行われていた。合成は,正式サービス後さらに盛り上がっていきそうだ。
そのほかには,移動速度をアップするためのオートバイなどの乗り物も登場する。残念ながらCBT時点では未実装だったが,先日行ったインタビューによると,正式サービス開始後に,課金アイテムとして導入される予定のようだ。
本作を,クリックタイプのMMORPGというくくりで見ると,取り立てて目新しいところはない。しかし“SF+武侠”の世界観はかなり新鮮だし,スキルやクエストも豊富に用意されており,丁寧に作られたゲームだという印象を受ける。
「ハルカ -WONG-YI's stories-」は,現在はオープンβテストに向けて鋭意開発中である。本稿を読んで興味を持った読者は,近日中に発表されるであろうオープンβテストの情報に注目しよう。そして,タイムスリップを扱った本作ならではの展開にも,大いに期待してほしい。
採取用ロボットの外見は,素材のジャンルによって変化する(筆者は5種類を確認した)。微妙にレトロさが漂う外見だが,秦の住民にとってはどのように映るのだろうか |
こちらは,合成を行う際のウィンドウ。成功確率やレシピがしっかり表示されており,分かりやすい |
実は主人公とマー博士のほかにも,未来からやってきたNPCがいる。ストーリーにどう絡んでくるのかが気になるところだ |
クローズドβテストでは,これらの乗り物に触れられなかったのが残念。それにしてもインパクトのある光景だ |
ピンチに陥ったときは,ほかのプレイヤーに向けて“救援”を出すことができる。誰が見ても一目で分かる演出だが,ちょっと面白い |
- 関連タイトル:
妄想極限 カオティック・ブレイン -WONG-YI's stories-
- この記事のURL:
キーワード
(c)2007 SeedC,Inc. / Chinesegamer International Corp.,2007. All Rights Reserved.
- 書剣恩仇録 3 砂漠の花香妃/金庸/著 岡崎由美/訳 [本]
- 価格:130円
- 神雕侠侶
- Software
- 発売日:2004/07/16
- 笑傲江湖 (説明扉付きスリムパッケージ版)
- Software
- 発売日:2005/11/11