インタビュー
史上最難度シューティングはいかにして攻略されたか? 〜「怒首領蜂 大往生 デスレーベル」クリア者と開発者に聞く
このモードの内容は,いわゆるボスアタック。つまりゲーム本編に登場したボスキャラクターと連続して戦うものだが,一部ボスの難度が非常識なほど高く,タイトル発売後7年半にわたってクリアしたプレイヤーが現れなかったいわく付きのゲームなのである。そのためこのモードは,これまで「史上最高難度のシューティングゲーム」「人間にはクリア不可能なモード」とも言われてきた。
さて,これだけ高い難度を持つゲームをクリアするために,プレイヤーはどんなことを感じ,考えてプレイしているのか? また,そんなゲームを攻略するとは,具体的にはどういった工程を踏むのか? 4Gamer読者にも,こうした点に興味がある方は多いのではないだろうか。
そこで今回は,プレイヤーであるMON氏と,デスレーベルを開発したアリカの取締役副社長である三原一郎氏に直接インタビューを行った。デスレーベルの攻略に関する詳細のみならず,プレイに使うジョイスティックの話,またシューティングゲーム初心者へのアドバイスなど,シューティング以外のゲーマーにも参考になる情報をお聞きできたので,紹介したい。
なお今回は,MON氏が持参したクリア動画を見ながら解説を進めてもらった。これは画面の様子だけでなく,MON氏のプレイの風景を同時に収めた「攻略証明」仕様のものだ。今回掲載した画面は,この動画より作成したものである。ネットでの動画公開については「検討中」とのことだ。
PlayStation 2版「怒首領蜂 大往生」公式サイト
MON氏のWebサイト「ひとりよがり日記」
史上最高難度のシューティングは,
本当はどんな点が難しいのか?
まずはデスレーベルのクリア,おめでとうございます。本当に凄いです。
MON氏:
ありがとうございます。
4Gamer:
最初にプレイの期間をお聞きします。ざっと7年半と聞いていますが,発売当日(2003年4月10日)から継続してプレイされていたのですか?
MON氏:
はい。発売当日に購入して,とりあえずプレイしてみたのです。そして絶望しました(笑)。
4Gamer:
なるほど……。
MON氏:
1週間ぐらいプレイしてみて,2周目3面(以下,2-3と略。以下,面数表記は同様の形で表記する)まではいけたのですが,そこで詰まってしまったのです。
2-1ボスの攻撃である放射状の青い敵弾を避ける。静止画で見るとかなりギリギリだが,これは「パターンで避けているので大丈夫」という |
2-1ボスの最終攻撃。ピンク色と青い円形のものが敵弾。自機はアイテムを使って無敵状態なので,中央上でボスに接近している |
4Gamer:
1週間で既に2-3までは到達していたのですか。
MON氏:
はい,そこからは断続的にプレイしながらも,詰まりっぱなしの状態でした。実はここで6年間経過しています。
4Gamer:
なるほど。最近……というか2009年までは,2-3が壁だったのですね。やはりそれだけ難しいと?
MON氏:
難しくてどうしようもなかったです。実際私も,他のプレイヤーが2-3で挫折してやめる……というパターンを多く見てきました。
普通のゲームであればミス前提で,残機を使って倒すような難しい敵なのですけど,デスレーベル2周目は残機がないので,その手が使えません。
※デスレーベルは2周目に突入した時点で残機が強制的に0となり,一切ミスができなくなる。
4Gamer:
その6年間は,プレイをしなかったのですか?
MON氏:
いや,プレイを休んでいたわけではないですね。たまにプレイしては挫折して,やっては挫折して……を繰り返しました。昨年に2-3の攻略方針が頭で理解できて,そこからやっと2-4に進めたのです。
4Gamer:
今はクリアなされたわけですが,2-3は2周目全体を見ても,やはり壁となる場所なのですか?
MON氏:
はい。デスレーベル全体の難度を話すとすれば,話の半分は2-3の後半部分になると思います。残り半分はラスボス,つまり「真・緋蜂改」ですね。
※真・緋蜂改とはデスレーベル2周目の最終ボスの名称。「しん ひばち かい」と読む。
4Gamer:
どこがそこまで問題なのでしょうか。もちろん,見ていてとてつもなく弾が速いことはわかるのですが。
MON氏:
まず,2-3後半に関してですが,ボス本体からの赤弾と青弾という2種類の攻撃に加えて,ボスが放出する浮遊砲台と,そこからの針状の弾という4種類の攻撃が混在します。さらに個々の弾の速度も速いため,画面上の弾密度からは想像できないくらいに避けにくいのです。かといって,何も考えずにボムで回避するとボスや浮遊砲台の耐久力が回復してしまい(※),最終的に押し負けてミスしてしまうという罠まで仕込んであります。
次に,2-5の真・緋蜂改ですが,弾が速いこと自体もそうなのですが,敵が2体いるため,弾幕全体の規則性が歪んでパターンにならない攻撃が多々ある……という点が問題です。実は,敵の弾幕の形がきれいに揃っている攻撃の場合,一見難しそうな攻撃でも,対処法を突き詰めるとある程度パターン化できるようになります。
ところが,大枠は規則的にも関わらず細かい部分で弾幕の形が乱れるような要素が含まれていたりすると,動きをパターンにすることが難しくなります。真・緋蜂改ですと,2体の敵の位置がランダムであるため,パターン化ができないのです。
※本作(というより最近の弾幕型シューティングゲーム)でのボムとは,使用回数限定の緊急回避兼攻撃手段のこと。使用後に自機が一定時間無敵状態となるため,緊急回避として重要となる。ただしデスレーベルの2週目では,一部のボスを除き,「使用すると敵が耐久力を回復する」という厳しい制限が付く。
4Gamer:
なるほど。攻撃として微妙なズレがあるので,弾幕の形を見ると歪むように見えるのですね。
MON氏:
困ったことに,敵の位置は毎回異なるんです。先ほどの2-3後半も似た感じで,ボス本体の動きが激しいという点も,難度を押し上げています。
4Gamer:
ボス本体に関しては誘導して避ける(※)っていう話はありますけど,そこはそんなに楽な話じゃないですよね。
※本作の敵ボスキャラは固定しているように見えるが,実は一定の移動範囲を自機の位置に合わせて動いている。この場合の誘導とは,自機の動き方によってボスキャラの位置を調節すること。
MON氏:
そんなに楽な話ではない……のですが,それでも誘導しないと,根本的に避けられない位置で弾を撃たれてしまいます。なのでやるしかない,というレベルの話です。
4Gamer:
それは基本的に2-3だけではなくて,後半は全部そうなのですか?
MON氏:
いや,そうでもないですよ。2-4ボスと2-5ボス「黄流」の前半に至っては,実は最初から最後まで,一定のパターンで動いています。自機の動きを一定にしてしまうと,敵弾の撃たれ方……つまり避け方もパターンにでき,最終的には「レバー操作を間違えなければ死ぬことはない」というレベルにまで詰められます。
あとは,2-1ボスが完全パターンですね。2-2ボスは,途中までは完全パターンで,後半はパターンが複数に分岐するという攻撃です。
4Gamer:
パターンではあるけれど,分岐するということですか。
MON氏:
はい。これは2-2ボスだけではなくて全体的に言えることなんですが,あるパターンが崩れたときに受ける攻撃もパターン化することで,最終的には未知のパターンがこない状態までパターンを作ってしまいます。自分がプレイする条件での,すべてのパターンということです。そのうえで,「1〜10個あるパターンのうち,1が来たらこう,10が来たらこう」と避けます。
シューティングゲーム攻略で重要な
「パターン化」と「クリア計画」とは?
4Gamer:
それはもうプレイをマジメに覚えるというところから始まるということですね。地道な作業ですよね。
MON氏:
はい。基本的にデスレーベル2周目の敵弾は全部速いのですが,とくに速い弾は,見てからでは避けられない速度になります。そこで基本は「敵の攻撃を覚えて,自機の動きを決める。決まったらそれを忠実にトレースする」という形になります。敵の攻撃に対して,動く場所とタイミングを一定にしてしまうのです。
すると,多くの敵では,弾幕の形がある程度収束してきます。これを進めて,「自機が同じ動きであれば,避ける必要がなくなる」という状態に持っていくのです。この作業がパターン化ということになります。
4Gamer:
なるほど。パターン化の動きがわかりやすいところはありますか?
MON氏:
デスレーベルの中で典型的な箇所は,2-5の開幕あたりですかね。これは私が以前にWebサイトで公開した動画でも見られます。これはabiさんという方が考えた避け方で,一見するとかなり危なそうでアクロバティックな避け方をしてるように見えますけど,あれは全部パターンで避けているのです。プレイ中は,ほとんど何も考えずに動いているのに近い状態です。
4Gamer:
パターン化という視点からデスレーベル2周目を見た場合,やっかいなところってありますか?
MON氏:
先ほども言いましたけど,1回でもミスしたら終わり,という点があります。これは単純に条件として厳しいという点もありますが,クリアの計画を立てられない,という点でも厳しいのです。
クリアの計画とは,普通のシューティングゲームを攻略する場合に使う大局的な考え方で,コンティニューしても何でも良いのでとりあえず1回ラスボスを拝むところまでプレイした後に,ラスボスを倒すためには何が必要かを見積ります。
具体的には,まずラスボスを確実に倒すためには,残機が何機必要で,ボムが何個必要……と条件を設定します。次に,それだけの残機とボムを残すためには,そこまでのプレイでどれだけ消費できるのかと,使える残機とボムの数を1面から計画していくのです。
4Gamer:
シューター用語でいうところの「リソース管理」ですね。
MON氏:
そういうことですね。ですがデスレーベル2周目の場合,残機が常に0なので,そうした計算が根底から崩壊するのです。頼りになるのは,ボムとハイパーアイテム(※)しかありません。実際に今回のクリアも,無い資源を無理やりかき集めて頑張ったという形です。
で,そういうクリア計画を元に突き詰めると,ボムが使えない場所の攻撃は,全部避けるしかないという簡単な結論になるので,避けようと。
※ハイパーアイテムとは,本作でのゲームシステム的な救済策のひとつ。ゲーム中でいくつかの条件を満たすと,このアイテムが出現。アイテムを取得した状態でこれを使用すると,短時間ではあるが無敵状態となり,さらに一定時間自機の攻撃力と攻撃範囲が大幅に増す。敵ボスとの対戦時における無敵時間は2秒。この短い時間をいかに有効に活用するパターンを作れるかが,攻略では非常に重要となる。
4Gamer:
計算をしていくと当然そういうことになってしまうんですね。
MON氏:
なってしまうので,どうしようもない。もう避けるしかないんだなと。
4Gamer:
その結論が出たときに,なにか頭の中で迷いませんでしたか? 「理屈では避けるしかないんだけど,でも本当に?」っていう迷いは,当然出てくるのでは。
MON氏:
迷うことはないですね。そんなレベルではなく,もう計算上からして避けざるを得ないので,とにかく実行するという感じです。
4Gamer:
なるほど。そうした避けざるを得ない箇所で,特に印象に残っているのは……。
MON氏:
やはり2-3の最終攻撃と,真・緋蜂改の攻撃全部です。
4Gamer:
全部ですか。
MON氏:
まず第1攻撃と第2攻撃は,見てからでは避けられない弾速なんです。特に第2攻撃にいたっては一番厳しくて,プレイ中に録画した動画をスローモーションで見てでさえも,避けられる気がしません。
なので,第1・第2攻撃は,もうボムとハイパーを使って攻撃を飛ばす(※)しかない,という結論になりました。第3攻撃はそれに比べたらまだマシなんで,こちらを避けるしかない……という話になってしまうのです。このあたりは動画で見てみましょう。
※攻撃を飛ばすとは,ボスキャラに一定のダメージを与えて,攻撃パターンを強制的に変更させてしまうこと。本作のボスキャラは耐久力(画面上部にゲージとしても表示される)や時間によって攻撃パターンが変わるので,難しい攻撃に対してボムやハイパーアイテムを使いつつ耐久力を減らすことで可能となる。真・緋蜂改はボムで耐久力を減らせないが,第1・第2攻撃はそれぞれ一定時間で終了するため,時間経過用としてボムを使用する。
4Gamer:
これは……ハイパーアイテムの出現タイミングが凄いですね。
MON氏:
はい。ハイパーアイテムは完全に出現タイミングを調整して,第2攻撃をハイパーの無敵時間で凌いでいます。ちなみに,2-5におけるハイパーアイテムの出現タイミングと,ハイパーゲージが満タンになった際の弾消しのタイミングは,ある程度パターン化しています。
4Gamer:
第3攻撃はガチ避け,つまり「見て避ける」という世界になってしまうんですか?
※ガチ避けとは,パターンなどではなく,純粋に弾の軌道を目で見て,反射神経で避けなければならない状態を指す。
MON氏:
はい。極力見て避けています。2-5の後半,いわゆるジェット蜂(※)以降は,基本的にパターンにならないので,見て避けるしかないのです。
ただし,「この動きの攻撃であれば,自機はこう動かす」という方針は,おおまかですが決まってます。ある程度の戦略だけ決めて,あとは戦術でなんとかしようという感じです。
※ジェット蜂とは,5面ボス「黄流」(こうりゅう)の第2形態のこと。外観がジェット噴射で飛ぶ蜂型メカなのでこう呼ばれる。
4Gamer:
なるほど。
MON氏:
こうした箇所は攻略の上での不確定要素になるわけですが,これは逆説的に,パターンを作る重要な理由の一つでもあります。ガチ避けが必要になる以上,必然的にミスをする確率が出てくるからです。であれば,とにかくそれ以外の箇所での確実性を上げて,失敗の確率を低く収めなければならない。
たとえば,ある攻撃を超えられる確率が10分の1だとして,同じような攻撃が10箇所あると考えると,全体を突破できる確率はとんでもなく低い確率になってしまいます。でも,仮にその内の9箇所の攻撃が仮にパターン化可能なものであるならば,突破確率は10分の1という,手の届く範囲にまで上昇します。
だから,シューティングの攻略で重要なのは,パターンを作ることで「いかに不確定要素をつぶしていくか」という点なのです。
4Gamer:
となると,実際にプレイするよりも,パターン構築のほうに時間が掛かったのですか?
MON氏:
実はプレイした時間とパターン構築の時間は,ほぼ同じです。頭の中でこうでもないああでもないと考えている時間が,相当長かったんですよね。
4Gamer:
考える場合は,プレイ動画を見直して考えるのですか? それとも頭の中でシミュレートするのですか?
MON氏:
両方ですね。仕事中で眠くなったときなどにパターンを考えて,家に帰って検証することもあります。場合によっては,とんでもないときに思いつくこともありますね。サクラ大戦の歌謡ショウを見ている途中で閃いたこともあります(笑)。
結局はパズルみたいなものなんですよね。いかに敵弾を避けなくてすむパターンを自分のなかで作れるか。ここは攻略に関して,本当に重要な点です。
今回のクリアは
実は天運にも恵まれた?
4Gamer:
今回のクリアは,そうした地道な,緻密なパターン作成の成果だということですね。
MON氏:
実は今回のプレイは,最後までのパターンが一通り完成して,あとはガチ避けする箇所を,ミスしないように繋げるだけになった状態だったんです。
で,ここからはいよいよ確率の問題で「真・緋蜂改の最終攻撃を50回プレイすれば,1回はクリアまで繋がるだろう」と思ってプレイしていました。なので予想としては,「2010年末までクリアできればいいかな」という感じだったのです。ですが,なんと一回目でクリアできてしまったという。
4Gamer:
ほんとに一回目だったんですか,その時点で。
MON氏:
はい。運の要素を最低限まで排除した時点でプレイしたら,運の部分が一発で通った。言い換えれば,繋ぐための下準備を終わって,さてここから……という時に繋がってクリア,というタイミングでした。
4Gamer:
ではその意味でいうと,まだこれからパターンなどの改良のしがいはある,ということですか?
MON氏:
いや,もう後はスコアを伸ばすくらいしかやることがないと思います。あとはもうちょっと避け方を整理して,綺麗な動き方でクリアすることくらいですね。ただ,それをやるかどうかは,正直悩んでます(笑)。
独特のプレイ環境の秘密と
ミスを減らすレバーの持ち方とは?
プレイしている環境についてもお聞きします。公開している写真を拝見すると,あぐらをかいてプレイされているように思えるのですが……。
MON氏:
はい。あぐらをかいてプレイしてますね。
4Gamer:
あぐらをかいて長時間プレイしていると,足が痺れて辛くなったりしませんか?
MON氏:
私の場合,それはないですね。
4Gamer:
あぐらをかいてプレイするというと,肘を伸ばした状態でジョイスティックを操作しますが,実は肘を曲げた状態で(アーケードゲーム筐体のように)プレイすると操作がしにくい,ということですか?
MON氏:
いや,そうではないです。私にとってアーケードゲームの筐体は非常にプレイがしやすいので,それを基準にしています。それを踏襲しつつも自分が一番やりやすいパターンを……と考えたら,あぐらをかく体勢に落ちついた感じです。
4Gamer:
なるほど。ディスプレイはブラウン管テレビを縦画面にしていますが……。
MON氏:
基本的にゲームはブラウン管でやるようにしていますね。
4Gamer:
やっぱり遅延の問題ですか。
MON氏:
遅延ですね。とくにデスレーベル2周目の場合ですと,反応速度の限界に挑戦するようなところがありますから,画面への表示に関しては極力遅延させたくないのです。
4Gamer:
ちなみにスティックは,HORIの「リアルアーケードPro」ですよね。これは改造はされてます?
MON氏:
実はちょこっといじってます。ですが,電気的な改造ではなく,レバーを動かしたときにスイッチが反応するまでの遊びの幅を調整してます。具体的には,ジョイスティック基部のスペーサーを入れています。
4Gamer:
遊びをなくす方向に調整されているのですか?
MON氏:
必ずしもそうではないですね。ちょっと遊びを残してます。そこらへんは自分のやりやすいようにしています(笑)。
4Gamer:
レバー自体やボタンなどは交換されてますか?
MON氏:
いや,何も交換していないですね。
4Gamer:
それは意外ですね。
MON氏:
ゲーマーの間では,「シューティングのレバーはセイミツ工業製がベストで,格闘は三和電子製」と言われますが,実は自分としては,最終的に自分がどれだけ操作しやすいのかの方が重要だと思います。実は今回は,三和のレバーでプレイしています。
4Gamer:
ところで,これはちょっと突っ込んだ話なんですけど,たとえば避けるときに「頭では動きが入っていて目でも見えるんだけれど,手が動かない」っていうことはありませんか。
私などはそういったことが多いのですが,MONさんのようなプレイヤーの場合でもそういったことがあるのかをお聞きしたいかなと。
MON氏:
それはありますね。
4Gamer:
ではその逆で,いわゆる「勝手に手が動いてしまった」という状態でミスをしてしまうことはないですか。
MON氏:
あ,それはないです。人間の動きとしては,認識してから手が動くもので,認識より手が先,という場合はまずないですよね。「目で見えて当たると思ったのに,動かすのが間に合わなかった」というパターンですね。
4Gamer:
なるほど。では,敵の弾幕などを潜るときに,動きすぎて逆に当たるっていう場合はありませんか。シューティングに慣れてない人のミスの原因として「自機を動かしすぎて,余計な敵弾に当たってしまう」といったお話を聞きますが。
MON氏:
あれは慣れてくるとなくなりますよ。
4Gamer:
なるほど。練習で解消できるものなのですね。ここでもう一つお聞きしたいのですが,腕立てなどで,筋肉を鍛えることはありますか? 自機の移動を精密にするためには,スティックを操作する腕力なども必要だと思うのですが。
MON氏:
いや,していません。というより,実はそこは,考えが逆なのです。そもそもレバーに力を入れているようでは,細かな操作の避けはできません。力をかけているということは,筋肉が無理をしているということでもありますので,レスポンスには悪影響が出るのです。
私の場合は,レバーはワイン持ちですが,スティックに力を入れずに,いくらプレイしても腕が疲れないくらいの状態で持っています。
シューティング初心者へのアドバイス
「まずは計画を立ててみましょう」
4Gamer:
さて,ここまでに何度も「パターン化」というお話が出てきました。私は初心者から「パターンを作ると言っても,何をするのかわからない」と言われたことがあるのですが,アドバイスをいただければ。
MON氏:
まずは,先ほど述べたクリア計画を立てること。クリア前であればゲームオーバーになった箇所でもいいのですが,終わりを決めて逆算するという作業が重要です。
クリアにはどれだけの残機とボムが必要かがわかれば,その時点で何をする必要があるかという方針が決まってきます。
実は難しい箇所でも,計画上でボムが使える余裕があるところは,極論すれば弾を避ける必要がないのです。ボムを使えない箇所であることがわかって,はじめてボムを使わないでいかなきゃいけないので,そこのパターンを作ろう……と考えます。
まず全体の計画を立てる。そしてそこでの必要性に応じて,個々の場面でのパターンを作り始めていくのです。
4Gamer:
ちなみに,これからシューティングゲームをプレイされる方に対しては,なにかメッセージはありますか。
きっと今回の件で,興味を持たれる方もいらっしゃると思います。
MON氏:
「シューティングゲームだけとか,ゲームだけではなく,いろんなことを幅広くやってみましょう」とアドバイスしたいです。変な話ですけどね。シューティングは面白いですけど,そればっかりやってしまうと,視野が狭くなってしまいます。ゲームもいいけれど,他にも趣味を作ってみると楽しいですよ。
4Gamer:
さて,今回のクリアで刺激されたデスレーベルのプレイヤーもいると思うのですが,そういった方に向けてのアドバイスなどはありますか?
MON氏:
一応私が公開している動画とかが参考にはなると思うけれど,ある程度であっても,自分でパターンを考えていく楽しみを味わってほしいと思います。そこがやっぱり楽しいところなので(笑)。
そして明かされる,デスレーベルの難度の秘密
闘いの舞台は360版大復活へ……?
ここで三原さんにお聞きしたいのですが,今回MONさんがクリアまで7年半を必要とした……というのは,想定したタイミングより速いのですか? 遅いのですか?
三原一郎氏(以下,三原氏):
そうですね,想定では今回MONさんが達成したクリアまで2〜3年ぐらいかな……と思っていました。
デスレーベルの難度調整は,基本的には当時のアーケード版の一流プレイヤーにクリアするまで付き合ってもらい,それをクリアできないように調整していきました。
4Gamer:
クリアできないようにしている(笑)。
三原氏:
クリアされる度に,「これはどうやったらクリアできないようになるか?」と,ケイブさん側とも話をしつつ,壁を塗り固めていきました。それが今のデスレーベルの形ですね。
正直なところ,クリアは正直ちょっと微妙なところで,できてもいいし,誰もできなくてもいいかも……という感じでした。
4Gamer:
そういう感じだったんですか。
三原氏:
これまでも,デスレーベルはクリアできるのか? という質問をよく受けましたけど,ミスさえなければクリアが可能なように調整しました。しかし実際にミスがないように「繋げる」のは,それは一流プレイヤーでも相当な時間と苦労が掛かるかと思っていたのですね。
だからこの一報は,もう「よくぞクリアしてくれました」という思いです。
4Gamer:
なるほど。
三原氏:
偶然なのですが,ちょうど今日言えることがあります(笑)。暗号みたいな話ですが,今回デスレーベルをクリアしたことが,2つのゲームのストーリー上で,2つの未来に続いていくのです。一つはクリアしたプレイヤーがデスレーベルの世界で戦い続ける可能性です。もうひとつはケイブさんの新作である,Xbox 360版「怒首領蜂大復活」(以下,大復活)のアレンジAモードに続く……というものです。
これからは未来と過去,2つの舞台で戦っていただきたいと思います。MONさんは未来担当で(笑)。
MON氏:
その未来というのが大復活ですか?
三原氏:
大復活は過去ですね。
MON氏:
やっぱり未来の方(デスレーベル)を担当しなきゃだめですか……。ちょっと自信が(苦笑)。
三原氏:
とりあえずは,彼が今回クリアを達成してくれたおかげで,大復活のアレンジAにストーリーが繋がったと。ケイブの池田さんも浅田さん(※)も,そして私も,「よかったね」と言ってます。大復活の発売直前なので,タイミングもよいと。
※池田(恒基)氏は,アーケード版怒首領蜂 大往生開発元であるケイブの取締役。アーケード版大往生のプログラマでもある。通称は「IKD」。浅田(誠)氏は,ケイブのプロデューサー。Xbox 360版怒首領蜂大復活を担当している。
MON氏:
それは本当ですか!! 嬉しいお話です。
三原氏:
たまたま偶然ですけど,最近お二人とお会いしたときに,「大復活のアレンジは,デスレーベルで作った設定を基にして,こんな風にしたら面白いんじゃない?」と軽くアイデア出しをしたのですが,池田さんが気に入って,ノリノリで作ったのですね。それでストーリーが繋がるという。
だから「レイニャン」(※)も出てくるし,ストーリー的にも大佐の野望を止められるのはレイニャンになる……? という感じです。
そこはぜひ大復活を買っていただいて,確認してください(笑)。
※「レイニャン」とは,ストーリー上で自機に乗り込む「エレメントドール」(アンドロイド)の中の1人。ほかに「ショーティア」「エクスィ」というキャラクターが存在する。
4Gamer:
では,MONさんも新たな戦いですか。
MON氏:
やりこむかどうかはさておき,大復活はまずはプレイヤーとして楽しもうと思います。既にソフトの予約もしていますし(笑)。
4Gamer:
今後のMONさんの活躍に期待しています。本日はどうもありがとうございました。
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PlayStation 2版「怒首領蜂 大往生」公式サイト
MON氏のWebサイト「ひとりよがり日記」
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