レビュー
待望の「Half-Life 2: Episode Two」を含む,ボリュームたっぷりなセットパッケージ
ハーフライフ2 オレンジボックス
» 「Half-Life 2」シリーズ3作に加えて,「Team Fortress 2」「Portal」が同梱された「The Orange Box」に関して,同シリーズをずっと追ってきた奥谷海人がレビューする。「Episode Two」の見どころのみならず,パッケージとしてのお買い得度にもぜひ注目してほしい。
待ちに待った,Half-Life 2の新作がついに登場
前作から1年半もかけて開発された「Half-Life 2: Episode Two」だが,「The Orange Box」という形で合計5本のソフトをワンパッケージにすることで,遅延による批判そのものを払拭するかのごときボリューム感。そしてEpisode Twoを含め新作3本は,どれもなかなかの出来だ |
前作「Half-Life 2: Episode One」(邦題 ハーフライフ 2 エピソード 1)がリリースされたのは,2006年5月末のこと。それと同時に,「その年のクリスマスシーズンまでにはEpisode Twoを投入する」と開発元のValveは意気込んでいたものだが,フタを開けてみるといつものように「作り込みすぎで開発は遅延」と関係者から発表があり,発売予定日が2007年夏に再設定された。ところが2007年2月には,新たな販売元となっていたElectronic Artsが「The Orange Box」および「Black Box」の存在を明らかにし,さらに2007年秋へとプッシュバックされるに至ったわけだ。
Black Boxは結果的にキャンセルされたものの,The Orange Boxのほうは「Half-Life 2: Episode Two」(以下,Episode Two)並びに「Portal」,そして「Team Fortress 2」をも含めたパッケージとして, 10月10日にPCおよびXbox 360に向けて無事リリースされた。パッケージとはいうものの,Valveのオンラインサービス「Steam」を利用すれば,それぞれ別個にダウンロード購入可能となっている。そしてSteamでのダウンロードでも,これまで同様日本語化がすでに行なわれているバージョンが楽しめる。
Episode Twoは,「Half-Life 2」から続くエピソディック形式のゲームソフトの第2弾(本編から数えれば3番目のお話)に当たる。エピソディック型式とは,いわばテレビ番組のように小刻みにシリーズ化する仕組みであり,開発期間を短くできたり,ファンの要望を次回作に盛り込みやすかったりという利点がある。すでに述べたとおり,Episode Twoのリリースには皮肉にも1年半を要したのだが,ゲームを立ち上げた直後に前作のクライマックスシーンを編集した短編ムービーが流れるようになっており,エピソディックゲームらしい工夫は見られる。
しかし,そもそもValveが開発したSourceエンジン仕様の Half-Life 2が発売されたのは3年前,2004年11月のこと。「Unreal Tournament 3」や「Crysis」など最新のグラフィックスを重視したゲームの発売が近づき,DirectX 10対応ゲームの話題も増え始めた昨今では,さすがにいくらSourceエンジンをチューンナップしようとも,Episode Twoにはグラフィックス面での旧式化が,あちこちに見られるようになった。
もっともグラフィックスエフェクトの設定を最高にした状態でも,現行の平均的なPCで快適に作動するのは利点といえなくもない。Half-Life 2の短所とされていたローディングタイムの長さや,直線的すぎるゲーム展開などについては,可能な限りの改良が行なわれている。
舞台はCity 17郊外の森や坑道へ
以前はミニ・ストライダーと呼ばれていた新モンスターのハンターが,ストーリーやゲーム性に新鮮な息吹を吹き込む要になっている。地下室であろうが屋根の上であろうが,プレイヤーの行くところにはどこにでも高速で尾いてくるし,ゲーム中では最大3匹のグループで行動する難敵だ |
Episode Oneでは,手榴弾を握ったまま突進してくるゾンビ化したコンバイン兵“ゾンバイン”が初登場したが,コンバインやゾンバイン,ヘッドクラブ,アントライオン,バーナクル,ゾンビ,マンハック,そしてストライダーといった敵役のレギュラー陣は今回も登場する。これに加えて今回の目玉となるのが,以前は“ミニ・ストライダー”として知られていたハンターである。このハンターは,おそらく身長2.5mほどの3本足ロボットで,高速で動き回りながら次々と小型爆弾を投射してくる厄介な敵だ。集団で行動し,近づくと頭突きを試みるなど,プレイヤーはハンターを倒すまでに銃弾をかなり消耗することになるだろう。
いろいろ手が入っているEpisode Twoだが,全体の進行としてはマンネリ化を免れていない。シリーズが長引けば仕方のないことであろうが,暗い建物の中に行けばゾンビがおり,ちょっとしたパズルを解いたあとに坑道に下りてアントライオンと戦い,さらにパズルを解いてコンバインの伏兵に会う……というようなお決まりの展開から,脱却できていないのだ。
ただそうしたなかでハンターの存在だけは,たとえ1匹が相手でも緊迫感のある銃撃戦が楽しめるという意味で,このシリーズの延命に大きく貢献している気がする。
物理効果を利用した,シリーズ特有のパズルにはまったく文句はない。今回はゲーム中盤での,崩れ落ちそうな鉄橋を使ったものがユニークで,ゲーム後半では広大な森の中を駆け巡るのに必要な1969年式ドッジ・チャージャーの改造車を,反対側に移動させるための難題を解く。
以前に巨大クレーンでコンテナを動かして回ったときにも似た,ゲーム以外ではありそうにない無茶な設定なのだが,それが逆にこのシリーズらしいフレーバーとなっている。ちょっとしたシーンであっても,敵を倒したあとで爆発用ドラム缶が意図的に配置されていたのに気づき,ゲームをリロードしてやり直してみるなんてことは,なにも筆者だけの行動ではないだろう。
個性溢れるキャラクター達に彩られた独特のゲーム世界
Half-Life 2シリーズで最も評価されるのは,やはりデザインやアニメーションを含めたキャラクター技術全般だろう。ストーリーやキャラクターとのインタラクションを重視しているわけだが,映画を真似ただけのような嫌味はまったくない。あくまでゲーム的演出手法の一つとして結実している |
アニメーション表現も豊富で,アリックスがチャージャーのドライバーシート側から車体をよじ登って助手席に滑り込むといった行動を取ったり,背中の傷を痛がるような仕草をしたりする。ゲームの前半部分は無名のボーディガント(異世界Xenを追われ,反乱軍と行動を共にするエイリアン種族)がサイドキックとして付き添ってくれるのだが,このボーディガントも遠距離攻撃だけではなく,近づいてきたゾンビを持ち上げて投げ落とすようなアクションも備えている。
キャラクターの個性を際立たせることにも成功していて,NPC達の会話やムダ話の中に,これまで以上に世界の広がりを感じられる。ゴードン・フリーマンがどこへ行っても救世主のように讃えられていた前作までとは異なり,「フリーマン博士,喧嘩をするつもりじゃないけど,あなたが来るまで静かだったんですよ」という兵士がいたり,ストライダーを素手で倒したと言い張る通信兵がいたりするのだ。
今回,White Forestを切り盛りする科学者のリーダーの1人としてマグナソン(Mugnasson)博士という新キャラクターが登場するが,苦虫を噛み潰したような顔で周囲を怒鳴り散らしている。彼は事件の発端となったブラック・メサ研究所の反量子スペクトラム実験炉を製作した人物なのだが,それを破壊した張本人として,フリーマンのことを毛嫌いしているらしいのだ。
Episode Oneでは,ほぼアリックスの独り言でストーリーが展開されていたのと対照的に,今回はさまざまなところでEpisode Threeへの伏線を匂わせる演出を,より自然な形で見聞きできた。
クライマックスで描かれるストライダーとの死闘が,実際にどんなものなのかは,プレイヤー自身に体験してもらうしかない。ただ一つ言えることは,これまでの直線的なゲームプレイを打ち破るかのような,かなり広大なマップでのゲームが楽しめるだろうということだ。FPSやRPGでオープンエンドなゲームが主流になり始めているなか,そうした流行に対するValveなりの回答や,先にも述べたようなマンネリ化への対策が十分に感じられる。まあ,すべてがここに懸かっていることの是非はともかくとして,だが。
質の高さが光る「Portal」と「Team Fortress 2」
左クリックで作った壁のブルーポータルに入れば,同じ部屋の天井に右クリックで開けたオレンジポータルから落っこちてくるといった仕掛けになるので,壁やシールド設備があって行けないはずの場所に行ったり,ボタンを作動させるための箱をちょっと思いつかない方向に動かしたりといったことが可能になる。
主人公はシェル(Chell)という女性であり,何の記憶もないままApature Scienceという企業の実験施設で目を覚ますところから,物語が始まる。GLaDOSという機械的な女性の声に導かれるように,合計で19階(19ミッション)をこなしていき,階を追って障害が増えるなど,難度が上がっていく。
シングルプレイヤー専用で,ゲームそのものは3時間もあれば終わる。しかし,1度するとクリアChallengeモードが出現して時間制限がつく,Advancedモードで障害物が増えるなどといったやり込み要素が用意されている。おそらくは今後もアドオンやMODの形で,追加マップなどが制作されていくだろう。
もう一つのTeam Fortress 2は,元来「Quake」のMODとしてアマチュアによって開発された,最大24人のチーム対戦専用ゲームであり,プレイヤーはBlueもしくはRedチームのメンバーとして,スカウト,ソルジャー,パイロ,デモマン,ヘビー,エンジニア,メディック,スナイパー,そしてスパイという九つのキャラクタークラスを選択してプレイする。
特筆すべきは,クラスによって異なるプレイスタイルや,キャラクターモデルのユニークさだ。ある意味Valve作品らしくないカートゥーンシェーダを利用し,3Dグラフィックスながらもフラットでコミカルな雰囲気に仕上がっている。非常に明るく楽しいノリで,誰でも遊んでみたくなるはずだ。
クラスが多いので簡単にジャンケン関係が成り立つわけでもないが,ヘビーとメディック,ソルジャーとデモマンのように,味方同士で相性の良いクラスはある。グレネードはデモマン以外使用できなくなったのが,原作たる「Team Fortress」のファンには少し残念な変更点だろうか。
プレイヤーごとに,各クラスでのプレイ時間をはじめ,平均得点や最長生存時間などの統計チャートが表示され,プレイの成果や修練度が詳しく分かるようになっているのは良い。ただし,リリース時に用意された対戦マップは六つのみ。マップが今後増えていくのは当然と考えても,BOTなどの機能がなく,現時点ではどこか物足りない感じがするのは否めない。
PortalとTeam Fortress 2のどちらも,The Orange Boxを購入するとHalf-Life 2シリーズに付属する形で手に入るが,Steamユーザーであれば単体での購入も可能となっている。それぞれにクオリティが高く,確かに単品で販売する意味のあるものだ。The Orange Boxを買った人は「付属ソフトには興味ない」などと考えずに,ぜひプレイしてみることをお勧めする。
Episode Twoを筆頭に,これだけのボリュームであれば,Half-Lifeファンでなくとも十分にお買い得といえよう。
- 関連タイトル:
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