レビュー
ヲタ的流行に沿いつつも,よくまとまったターン制ストラテジー
萌え萌え2次大戦(略)
» この年末に発売されるゲームの中で,「Crysis」や「Call of Duty 4」とはまったく違う意味で大きな話題を集めている,「萌え萌え2次大戦(略)」。ストラテジーゲームにもキャラクターゲームにも詳しいという意味で,「このゲームをやるためにライターやってんじゃねえの?」と噂される田村真治氏が,きっちりやり込んで紹介する。
戦場ヲ 少女ハ カケル
第二次大戦開戦前後の世界情勢において,何者かが少女の姿かたちをした兵器の開発に成功,さらにわけの分からないことに,各国がこぞってこれを開発し,彼女達“鋼の乙女”が戦場の主役として活躍する。いやはや,ご無体な世界である。
ただし,すべての兵器が少女型になっているわけではなく,いわば「リーダーユニット」として,通常兵器の部隊を率いて陣頭で戦う。まさに「戦場ヲ 少女ハ カケル」わけである。ちなみに何が「まさに」なのかについては,たいへん微妙な話題なのでツッコミ禁止だ。その理由も含めて,各自で推測してみてほしい。
ストラテジーパートはこれまでの大戦略をベースにしたシステムであり,視点はクォータビュー |
キャンペーンは全10話構成で,各話の演出はアニメ風。ちなみにこのサブタイトルの元ネタは「ガンダムX」と思われる |
各ストラテジーパートのマップにも,それぞれタイトルが付いている。なお,各話中には複数のストラテジーパートがあることも |
登場する擬人化キャラクターは,ストーリーの進行に沿って順に加わる形になっており,どちらのキャンペーンでも,最初は2〜3人のキャラクターからスタートする。
ゲームはキャラクター達の日常(!)を中心に,戦況の推移や,戦闘にいたるまでの経緯を描くストーリーパートと,その結果としてのストラテジーパートで展開する。また,ストーリーパート中に選択肢が入ることもあり,それによって展開が変わることもある。
プレイ時間の割合としてはストラテジーパートよりストーリーパートのほうが長く,いわゆるキャラクターゲームのプレイに近い。
また,各キャンペーンはそれぞれのストラテジーパートの舞台に合わせた10話構成で,テレビアニメ風の仕立てになっている。各話のメインタイトルに会戦名,サブタイトルにどこかで聞いたようなネタ,例えばアニメパロディが盛り込まれていたりする。
なお,各ストラテジーパートに関しては,メインメニューのチャレンジモードで個別にプレイでき,その場合は連合国側を担当することも可能だ。
著名兵器を擬人化した,アクの強いキャラクター
なお,キャラクターの名前の多くは,たいへんキッチュな由来を持つ。日本や連合国側ではそのまま兵器名に由来するものが多いのに対し,なぜかドイツ軍では,ベースとなる兵器を駆って活躍したエースパイロット/タンクエースの名前が中心になっている。とはいえ連合国側にも,搭乗パイロット由来と思われるキャラクター名が含まれているが。
そうはいっても,一種のキャラクターゲームである本作では,各キャラクターに,ベースになった兵器の特徴とは別のパーソナリティが便宜的に付与されている。結果として,きまじめやおっとり型,活発でボーイッシュなど定番どころが揃う。
この種の兵器や乗り物の擬人化(というか擬少女化?)がいつ頃から発生したのかはよく分からないが(MS少女とかあったなあ……),いまや一定の市民権を得ており,例えば鉄道趣味方面でも,そこそこの盛り上がりを見せている。試作型新幹線のエアブレーキシステムが「ネコミミ」に見えると話題になり,ネコミミ擬人化が流行したこともあるので,ご存じの方もいるだろうし,鉄道擬人化はNHKの番組で取り上げられたこともある。
そして鉄道ほどではないにせよ,兵器/ミリタリー趣味の世界にも,そうした擬人化の分野は成立しているわけで,本作でキャラクターデザインを担当するイラストレーター陣は,そうした少女兵器ムーブメント(?)の中心勢力の一つ,雑誌「MC★あくしず」で活躍する面々を多く含む。
大戦略シリーズをベースにした分かりやすいシステム
また,「お供」といってもキャラクターに随伴しなければならないわけではなく,独自に行動させられるので,キャラクターほどではないにせよ,ボーナス付きユニットとしてうまく使いこなしたい。
システム自体は前述のように,定評ある大戦略シリーズのものをベースに大幅な簡略化を施したものなので,プレイしやすく操作性も良好だ。通常ユニットの攻撃方法は1種類しかないが,各キャラクターは武装を2種類装備可能で,そのステージで使う組み合わせは3種類のなかから選択できる。マップごとの勝利条件やシチュエーションに応じて,うまく使い分けることが重要だ。
ストラテジーパートの冒頭で,このように各キャラクターの「お供」の機体と装備の選択が可能だ。装備は3種類あり,キャラクターの下に書かれた1〜3で切り換えられる |
装備選択画面でキャラクターを右クリックすると,このように装備のステータス画面が表示される。右の「リーダースキル」が「お供」のパラメータに与える影響の中身を示す |
さらに各キャラクターは独自の「必殺技」を持っており,これを使えば敵に大ダメージを与えられる。ただし使用時にEP(エネルギーポイント)を大量に消費するので,使いすぎると以後,いっさい攻撃ができなくなってしまう。EPは通常攻撃にも必要なので,使いどころをよく考える必要がある。
戦闘で必殺技を使うと,戦闘画面にキャラクターのインサートグラフィックスが |
必殺技による攻撃結果は,派手なエフェクト付きで表示される。いや,これでも派手なんです! |
また,戦闘中に特定の条件を満たすとミニゲームが出現することがある。画面上のソフトウェアキーボードをマウスでクリックして,表示された文字列(暗号文)を制限時間内に完成させるものや,画面内を動く爆弾や魚雷を特定の位置でタイミング良くクリックすればクリアになるものなどがあって,これらミニゲームをうまくクリアすれば,その後の戦いが有利になるといったメリットがある。逆に失敗すれば難度が上がったりもするので,侮れないのだ。
各ユニットには経験値があり,ある程度溜まるとレベルアップし,一定以上レベルアップすることで「クラスチェンジ」ができる。クラスチェンジの際には,プレイヤーが強化の方向性を選択でき,それに応じて能力が変わっていく。長期展望に基づいたユニットの育成も大事である。
ストラテジーパート中に条件を満たすと指令が入り,ミニゲームがスタートすることがある |
このミニゲームでは,左右に動く爆弾にカーソルを合わせ,タイミング良くクリックすることでスコアを獲得できる |
別のミニゲーム。表示された電文を画面のソフトウェアキーボードから,時間内にマウスで入力する |
経験値が一定以上溜まればレベルアップやクラスチェンジが可能。クラスチェンジでは,向上させる能力のタイプを選べる |
前述のとおり,このカットインは自軍側のキャラクターがダメージを受けた場合でも表示される。だからといって,毎回わざとダメージを受けるような戦い方をしたのでは,勝てるステージも勝てなくなる。煩悩はほどほどに抑えたい……と,言うだけ言っておく。
いまのところ兵器少女と被弾時の表現ばかりが話題になっているものの,本作の戦闘は定評ある大戦略シリーズのシステムがベースになっているだけあって,簡略化されてはいても,そこそこ手応えがある。単にキャラクター同士の掛け合いやグラフィックスが楽しめるだけでなく,ライトなストラテジーゲームとして,バランス良く仕上がっていると思う。
それに続いて,兵器少女というトレンド,昨今のテレビアニメのような演出を盛り込んだ本作の制作は,大戦略のシステムに新たな使命を与える決断であったと思う。正直なところ,筆者は最初に発表された原画の,輪郭線の太さの不揃いさ加減などから,彼らの「本気」をかなり疑っていた。
だがフタを開けてみれば,ある種のチープさも含めたテレビアニメ的な演出と,ストラテジー初心者に向けられたチュートリアルの作りようは,なかなか堂に入っている。システムとして完成したことで,行き詰まってしまった感のある既存のストラテジーゲームを,日本の市場に合った別の切り口でうまく生かした実例に,十分なり得ていると思う。既存のストラテジーゲームファンも,食わず嫌いをすることなく,ぜひ気軽に触れてみてほしい。
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