レビュー
傑作マルチプレイFPSが,無料ブラウザゲームとしてカムバック!
QUAKE LIVE
» 「プレイ料金無料のブラウザゲーム」と聞いて,ふーんと思う人も多いだろうが,それがあの傑作マルチプレイFPS「Quake III Arena」をそっくりそのままブラウザ対応にしたものだと聞けば,目の色が変わる人も多いはず。そんなid Softwareの新作「QUAKE LIVE」を,目の色どころか(遊びすぎで)顔色まで変わってしまったという筋金入りのクエーカー,米田 聡氏が紹介する。
Quake III Arenaがブラウザゲームとして
装いも新たにスタート
「QUAKE LIVE」はブラウザで遊べる本格的なFPSだ。最近,ブラウザで遊べる3Dゲームはそれほど珍しくはないが,今回のQUAKE LIVEほど本格的なFPSは例がない。
「QUAKE LIVE」公式サイト
しかも,ベースとなっているのは10年前の名作,「Quake III Arena」であり,Quake III Arenaといえば,つい最近までプロゲーマーのリーグで種目の一つになっていたほどの人気を誇っていたオンラインFPSだ。
ブラウザのプラグイン(Firefoxでは拡張機能の一つ)としてインストールされるQUAKE LIVEは,“ベースにした”とは書いたものの――筆者が見る限り――Quake III Arenaと内容はほとんど変わらない。グラフィックスが美しくなるという話もあったのだが,実際にやってみると,それほどブラッシュアップされたようにも見えない(テクスチャの解像度が少し上がった雰囲気はある)。
ブラウザのウインドウに表示させることはもちろん,フルスクリーンでのプレイも可能で,そうやってフルスクリーンでプレイしていると,Quake III Arenaそのもの。古参の洋ゲーファンにとってはお涙物である。
Quakeシリーズ小史
タイトルを聞いてすぐに「やらせろ!」と思ったあなたは間違いなくベテランゲーマーだが,個人的には若いゲーマーにこそ遊んでほしい作品だと思う。QUAKE LIVEには,グラフィックスがやたら豪華になった最近のFPSでは味わえないスピード感と爽快感があり,これをプレイすることで,Quake III Arenaがなぜ「ネットゲームの帝王」の地位をほしいままにしてきたかその理由が(おそらく)分かるはずだからだ。
id SoftwareのQuakeシリーズは,「機械生命体である異星人Strogg(ストログ)が空間転送機(スプリットゲート)を通って地球に攻めてくる」というストーリーを背景にしたシングルプレイが基本だが,その一方,オンラインマルチプレイFPSジャンルの基礎を築いたゲームでもある。
ネット対戦そのものは「DOOM」にも実装されていたが,DOOMではモデムかLAN(当時最も普及していたNetWareのIPX/SPXプロトコルを使用)対戦どまり。インターネット対戦を他に先駆けて実現したのが,何を隠そう初代「Quake」(1996年)なのだ。
続編の「Quake II」(1997年)においてDeathmatch(Free for All),Team Deathmatch,Capture the Flag(CTF),そしてCo-operativeなどのモードが完成の域に達しており,ご存じのように,これらのゲームモードはid Softwareが制作した以外のタイトルでも,今や定番になっている。
そして,1999年に発売されたQuake III Arenaは,Quakeシリーズのネットワーク対戦の部分だけを取り出した,Quakeシリーズとしては番外編ともいえるゲームだった。ストーリーのあるシングルプレイモードはなく,ネット対戦かスタンドアロンでのボット対戦のみという,当時としてはかなり割り切ったタイトル。趣向を凝らした対戦用のマップが豊富に収録されていた。
Quake III Arenaの特徴(つまりはQUAKE LIVEの特徴)は,個人的に「軽さと速さ」にあると思っている。グラフィックスが軽いということに加え,そもそも,走る速度がほかのゲームに比べてかなり速く,いくら走り続けても疲れて足が止まるといった制約もない。走ることで足音が大きくなり,敵に発見されやすくなるペナルティはあるものの,基本的に,ひたすら高速で走りながら敵を撃ち倒すというゲームデザインになっているのだ。
細かなところにもスピード感が演出されており,例えば,武器を拾ったら(ラグがないという条件つきだが),即座にその武器にチェンジ可能で,引っかかりはまったくない。
微妙に重力が軽いとか,キャラクターのレスポンスが良いとか,気分良く爽快にプレイヤーが遊べるチューニングがあちらこちらに施されていて,そのへんがほかのゲームと異なる個性であると筆者は思う。そして,そんな爽快さこそが,かのプロゲーマー,Fatal1ty氏をして「最高のゲーム」と言わせしめた理由だろう(と勝手に想像しているので,間違っていたらごめんなさい)。
そんなわけで,Quake III Arenaを世に送り出したid Softwareはさぞ鼻高々だろうと思うが,実際はそうでもないようだ。id SoftwareのゲームデザイナであるTim Williams(ティム・ウィリアム)氏が,「Quake III Arenaは,初心者がまったく遊べない失敗作」と語ったことは,実は割と有名だったりする。
要は,ベテランと初心者に実力差が付きすぎて,初心者がプレイできないゲームになってしまったということだ。Quake III Arenaに限らず,リリースからある程度の時間が経ったオンラインFPSには必ずあることだが,Quake III Arenaではそれがやたらと極端になってしまったのは確か。リリースから1〜2年もすると,初心者がサーバーに入ってもまず勝てないというか,何が何やら分からないうちにボコボコにされてやる気をなくすという状況になっていたのである。
QUAKE LIVEでは,そんなQuake III Arenaの反省からか,「マッチングシステム」が取り入れられている。過去の対戦履歴からユーザーの実力を5段階に分け,実力がマッチした者同士が遊べる仕組みになっており,どんなレベルのプレイヤーでも,まったく歯が立たなくてもうゴメン,ということはなくなったと思われる。初心者でも安心して楽しめるQuake III Arena,それがQUAKE LIVEといっていいかもしれない。
誰でも簡単に参加できるQUAKE LIVE
QUAKE LIVEで遊ぶのは簡単だ。公式サイトでユーザー登録を済ませてログイン,ブラウザに適合するプラグインをインストールすればさっそく出陣という手軽さである。ただ,動作条件は以下のように割と厳しめなので注意が必要になる。
QUAKE LIVE動作条件
最低環境 | 推奨環境 | |
OS | Windows XP/Vista | Windows XP/Vista |
CPU | Pentium III/800MHz以上 | 2GHz以上のCPU(詳細不明) |
グラフィックスカード | GeForce 4 MXもしくはATI Radeon 8500以上 | GeForce 7シリーズもしくはATI Radeon X1800以上 |
ブラウザ | Internet Explorer 7もしくはFireFox 2.0以上 | Internet Explorer 8もしくはFireFox 3.0以上 |
Windows 2000など,以前のOSには対応していないので注意が必要だ。また,今のところ,Internet ExplorerとFirefox以外のブラウザには対応していない。ただ,QUAKE LIVEのTwitterに「ほかのブラウザやOSのユーザーはちょっと待ってて」みたいな書き込みがあったので,対応を増やす予定はありそうだ。
とりわけ,Mac OS XとLinuxへの対応はid SoftwareのカリスマプログラマーであるJohn Carmack(ジョン・カーマック)御大自ら「最優先の仕事」と述べているので(また聞きだが),4Gamer読者の中にはあまり多くないような気がするものの,Mac OS XとLinuxのユーザーは期待してよさそうだ。
グラフィックス自体は軽いので,ある程度以上のグラフィックス機能統合型チップセットでも遊べるだろう。ブラウザでプレイができること,無料であることから,プレイのハードルは低く,最新のグラフィックスカードや高速CPUを無理して買う必要はないのが嬉しい。
「QUAKE LIVE」公式サイト
初回のトレーニングで初期レベルが決まる
Crash相手にも手を抜かず戦おう
話がそれた。まずは公式サイトのトップページでユーザー登録を済ませ,プラグインをインストールしよう。インストール後,いったんブラウザを再起動して再ログインしたあとに自分のキャラクターを決めたり,コントローラの初期設定を行ったりするわけだ。これらはすべてブラウザ上で行うことになる。
自分のゲームキャラを決めよう。Quake III Arenaのキャラクター+αが登録されている |
キーボードやマウスのセッティングなどもブラウザ上で可能。全部英語だが,問題ないはず |
設定を終えたら,初回はまずトレーニングをプレイしなければならない
トレーニングは,ヘルメットを被った女性キャラクター「Crash」があれこれとゲームの内容を説明してくれたあと,トレーニングルームで彼女との対戦になる。
トレーニングルームは四つあり,BEGINNER以上のルームに行けるかどうかも基本的なレベルチェックになっている。各部屋の内容はこんな感じだ。
BEGINNERルームのドア。これを抜けるだけで入れる |
何のことはない。単に左側のドアを抜けるだけで入れ,これといった技を披露する必要はない
中央付近に見える飛び石を使って連続ジャンプで通路の向こう側に行くと,INTERMEDIATEのドアがある |
飛び石を使って連続ジャンプし,通路の向こう側に行くとドアがある。連続ジャンプを決めるだけなので,初心者でも2〜3回トライすれば入れるだろう。
ロケットジャンプで溝の向こう側に行ける。別の方法では絶対に無理 |
Quakeで最もポピュラーな技の一つ,「ロケットジャンプ」を使わないと入れない部屋だ。ロケットジャンプとは,ロケットランチャを自分の足下に撃つと同時(あるいは,ちょっと速いくらい)のタイミングでジャンプすると,普通よりずっと高く飛べるというものである。ADVANCEDに続くドアの前にある深い溝の手前でロケットジャンプを決めると,向こう側に行けるが,溝の底にあるジャンプ台を使い,タイミングよくロケットを撃っても大丈夫だ。初めてのプレイヤーにはロケットのタイミングが難しいかもしれないが,何度かトライすれば必ず行けるはずなので,頑張りましょう。
ここから「ストレイフ」を決め,廊下の奥のドアが閉まる寸前に駆け込む必要がある |
EXPERTルームに入るのはやはり難しい。廊下の突き当たりにドアがあり,手前の光のカーテンをくぐると一定時間開く仕掛けになっている。正攻法でいくのなら,STARTと床に書かれた位置から「ストレイフ」で加速しつつ走り,閉まりかけたドアに飛び込むことになる。
ちなみに,ストレイフもQuakeの基本技の一つで,走りつつジャンプし,着地の瞬間にマウスを左右どちらかに振ると,通常以上に加速するという不思議なテクニックである。もともとはQuakeのバグだったらしいのだが,それはそれで面白いということで続くシリーズに引き継がれたのだ。
とくにCTFのようなチーム戦では威力を発揮するので覚えておきたいが,ロケットジャンプに比べると難しく感じられるかもしれない。
かくいう筆者も一度では成功せず,かれこれ10回くらいは試し,やっとのことでドアにたどり着けた。ストレイフは出来るつもりだったのだが,廊下の途中で一度でもタイミングを崩してしまうと非情にもドアが閉まってしまう。さすが達人の部屋だ。
……という具合にそれぞれのトレーニングルームに入るのにはそれぞれの技が必要なのだが,ルームの作り自体は同じだし,中でCrashと戦うのも同じ。ただし,ADVANCEDルームのCrashはそこそこ強く,EXPERTルームのCrashはかなり強い。
このトレーニングルームでのCrashとの戦い如何で「プレイヤーの初期レベル」が決まるため,手を抜かずに戦っていただきたい。
詳しいことが公開されていないので間違っているかもしれないが,EXPERTルームのCrashを倒すと初期レベル4が与えられるようだ。また,トレーニングに再トライすると二度目以降のCrashは(初回で倒していれば)ちょっと強くなっている。したがって,初トライでCrashが「弱いな」と感じたら,トレーニングに再トライするのも面白いだろう。
ちなみに,レベルは――これも情報が公開されていないのだが――1から5まであるらしく(レベル4よりも,さらに上級のサーバーが存在するようだ),レベル5のプレイヤーがごく少数いるようである。ちなみに,Crashとの戦いで頑張りすぎると上級サーバーにしか入れなくなり,初回から鬼のように強い連中と対戦することになるので,そのあたりも考えつつ,ほどほどに頑張ってトレーニングをクリアしてほしい。
いざ参戦。ネット上には強敵だらけ
トレーニングを終えたら,ゲームサーバーを選んでいざ対戦ということになる。自分のレベルに適合するサーバーかどうかは一覧に付けられたマークによって分かる仕組みだ。
もちろん,適合するサーバーで勝ち続ければ,自然にランクアップする。
懐かしい武器も多数登場してくる
戦いの場での相棒となる武器はマップによって登場するものが異なる。Quake III Arenaをベースとして,歴代Quakeに出てきた懐かしい武器がいろいろと登場するので,シリーズのプレイヤーにはすっかりおなじみかもしれないが,基本のものだけを簡単に紹介しておこう。
とりあえず初期状態で持っている武器。威力は弱いが連射が利くのが取り柄で,正確に,しつこく当てると敵にそこそこのダメージを与えられる。
歴代Quakeに登場してきた伝統と格式のある武器。連射はできず,弾はバラけるものの,近距離で正確に当てると中程度のダメージを与えられる。
Quake III Arenaに登場したプラズマを連射する武器で,連射速度は高い。クァッドダメージ(敵に四倍のダメージを与えるアイテム)との併用で威力を発揮する。
ロケットランチャーは近距離戦には不向きだが,派手で与えるダメージが大きいため,使って楽しい |
Quakeシリーズの定番武器の一つ。敵に大ダメージを与えられる半面,スプラッシュダメージもでかく近距離戦には向かない。基本技であるロケットジャンプには必須の武器だ。やや難しいが,ジャンプしている敵にロケットを当てられると実に爽快。ざまあみろ!
レールガンはピンポイントで敵を狙う強力な武器である。ただし,Quake III Arenaよりはやや威力が落とされている印象 |
まっすぐ飛び,着弾までの時間が短く(というより,おそらく撃つと同時),しかも敵に大きなダメージを与えられる武器だ。遠距離の敵を撃つ場合に使うのが基本で,また,QUAKE LIVEでは移動しながらレールガンで敵を狙えるくらいでなければ強くないことから,プレイヤーの習熟度を測る武器でもある。
止まって狙っているプレイヤーはnoobだ!
以上の基本武器に加えて,マップによっては威力が大きい連射系のBFG10Kや,「Quake 4」に出てきたダークマターなどが出てくる場合もある。状況に応じてバラエティに富んだ武器類から必要なものを選びつつ戦うのも,QUAKE LIVEの醍醐味だ。
ゲームモードを覚えて,常勝ファイターに
ゲームモードもQuake III Arenaより増えており,とくにチーム戦が充実している。次は,おもなゲームモードをざっと紹介してみよう。
・Free for All(FFA)
基本中の基本,参加者全員で撃ち合い倒し合い,真っ先にFrag Limit(最大のFrag数=おおむね敵を倒した数)に達したか,または制限時間内に最大数の敵を倒したプレイヤーが勝者になるモード。殺るか殺られるかである。
・Team Death Match(TDM)
二つのチームに分かれて撃ち合い,メンバートータルのFrag数が多いチームが勝利するチーム戦。これもまた,殺るか殺られるかだ。
・Clan Arena
TDMに似ているが,ゲーム中に倒されるとリスポーンできずに観戦者になる。最後まで残ったプレイヤーがいるチームが勝利するわけだ。武器弾薬が最初から最大に設定されているのも,このモードの特徴。
・Capture the Flag(CTF)
2チームに分かれて敵陣の旗を取り合う旗取り合戦。時間内に旗を取った数が多いチームが勝利する。チームプレイが勝敗を分けるだろう。
・Duel
Duelは1対1で戦うモードで,戦っている者以外は観戦している。ワン・バイ・ワンだけに,全般に見応えのある厳しい戦いが多いようだ。
・Instagib
ルール自体はFFAと同じだが,武器がレールガンオンリーになるちょっと特殊なモード。レールガン好きにはたまらないが,それ以外の人には辛いかもしれない。
QUAKE LIVEでは,ゲームモードごと,サーバーごとにマップが異なり,出てくる武器も違っている。ただし,どのモードでも,マップの特徴を頭に入れておくことで戦いが有利に進められるのは同じなので,オンライン対戦に参加する前に,PRACTICEのボット対戦で一とおりマップを回っておくといいかもしれない。
Quake III Arenaに比べてボットの頭がかなりよくなっているようなので,それなりに面白く練習になる。対人戦とボット対戦を交互にプレイすれば実力がつくうえ,末永く楽しめるだろう。
無料で遊べる本格FPS登場! ぜひ参戦しよう
オープンβ開始当初こそサーバーにつながらなかったり,つながっても待ち行列に並ばされてなかなか遊べないという状況が続いたが,現在ではほぼ待ち時間なしに遊べる状態にまで改善されている。
伝説のプロゲーマーFatal1ty氏もいるのだ |
難点はやはりサーバーが遠いことだ。日本からネット的に近いアメリカ西海岸やオーストラリアのサーバーでもpingは120〜200ms程度になってしまう。
Quakeはリアルタイム性の強いゲームであり,pingの違いはハンデになりがちだ。フォーラムの運営側の書き込みよると,いちおう日本にもサーバーの設置予定があるようなので,そのへんも期待したいところである。
いずれにしても,無料で遊べて,しかもここまで本格なブラウザゲームはQUAKE LIVEが初めてだろうと思うので,遊んでみない手はないだろう。多くの若いプレイヤーの参戦を待っている。
「QUAKE LIVE」公式サイト
- 関連タイトル:
QUAKE LIVE
- この記事のURL:
キーワード
QUAKE LIVE(TM)(C)2007-2010, Id Software LLC, a ZeniMax Media company. All Rights Reserved.